続・Clinical Human Anatomy Lab。

さて、噂の(?)解剖の授業なんですが、もうなんつーか、とにかく今学期取ってる授業の中で一番面白くて、笑いとオドロキが耐えないクラスなのであります。教授のDr. Borsaもさることながら、TAのJenもGarrethもクラスメートも息ピッタリで最高のメンバーです。たくさんのエピソードが溜まっているのでご紹介します。

●骨を切る。
全身の解剖をだいたい終え、2nd Examを終えたのが2週間ほど前。
それからはもっとカラダをdeepに見ていこう!と、例えば脳や目や内臓や各関節など深いところに進んでいっていました。膝や足首、手首、肘などの関節を見るにはそれぞれの関節をカラダから切り離し、余分やtissueを取り除いて関節包や深くにある靭帯などをexposeする必要があります。
b0112009_1283595.jpgさて、関節を切り離す、とサラっと書きましたが、実際にやってみるとこれがなかなか大仕事。Autopsy Saw(左写真)という器具を用いて、骨ごと切断しなければなりません。例えば足首を見るのであれば脛の真ん中へんをばりばり切らなければいけないし、膝を見るには大腿骨ど真ん中をばりばり切らなければいけないし、そのためには欠かせない道具がコレなのであります。

やってみたーいやってみたーいと騒いでいたら、そいじゃあやってみろーいとこのsawを渡されました。そんなに大きくは無いけれど、なかなかずっしり重たいもんですこの機械。
ゴーグルをしてスイッチを入れるとものすごい振動。しっかり握って思い切って骨にえいやっと当ててみると、切断面の骨が細かい粉になって飛び散って、さらには摩擦で骨の焼けるようなニオイ。うむぅ、真っ直ぐ切るのは思ったより難しい!
私の切った大腿骨は体の中でも非常にしっかりした骨なので、sawだけでは奥まで切れずにトンカチとノミも用いて最後はポキッと折りました。膝関節をトレーに移してほっと一息。いやー、これだけの機械を使わないといけないんだから、ヒトの身体というのは本当に丈夫にできています。
それでもFemur fractureがスポーツで起こることもあるんだもんなぁ。どれだけの衝撃がかかってそーなるもんなんだろうとか考えを巡らすとなかなか恐ろしいですけど。

●Fecal Matter
b0112009_1511045.jpg解剖学に精通してる皆さんならGray matterやWhite matterという単語はもちろんご存知だとは思うのですが…。(Gray matterは文字通り、CNSの中でも灰色がかった部分を指し、主にNeuronで構成されています。Capillary blood vesselsやNeuronal cell bodiesを含むのでこんな色になるんですね。一方White matterは白い部分でCell Axonsから成っています)

これを踏まえて続きを読んでみてください。

さて、このクラスで再三面白単語が飛び出しているのは前述の通りですが、
またもこの日新しい単語が作り出されました。その名もFeco matter。
内臓をそれぞれ取り出すにあたって、ちと厄介だったのが小腸と大腸。これらは全長7mとも言われる長さがあり、折りたたまれるように人体に収まっていますが、なんていうか、スペース取りすぎてて邪魔、なんですよね。解剖を進めていく上で。どかさないと見えないものがあるし、どかしちゃうとトレーに収まらないので置くところに困るし。
なので、各structureをindentifyしたあとにDr. Borsaの指示の下、切り取って人体用ゴミ箱に廃棄してしまうことになりました。いわゆるボクら用語で言う“Appreciate it”です(笑)。
胃のすぐ下の小腸の始まりの部分はハサミですかっと切ってしまえば良いので簡単でしたが、問題は大腸の終わりの部分。言われるままに私ともうひとりのクラスメイトで紐で大腸をキュっと縛り、そのすぐ上の部分をBorsaがハサミでぱちっと切ったのですが…。
その瞬間、中から何やら柔らかそうなものがボトリ。
大腸のほぼ終わりに含まれているモノなんて限りなくアレに近いわけで…。
わひゃぁ、と反射的に声にならぬ悲鳴を上げる私と友人。
どうしたの、と寄ってくる他のクラスメイト。
そこでDr. Borsa、
“いやーFecal matterが飛び出したね”

Fecal=大便というボクら医療専門家独特のjokeなのですが、
もうコレが私たちのツボというツボにはまり、しばし大爆笑してしまいました。

●まさに鉄壁。
脳を取り出そう、ということになって頭蓋骨を眉の上辺りで水平に切り始めたのですが、
何しろ大事な大事な脳ですから、骨以外にも沢山の組織が脳を守り固めていて、
取り出すのは本当に至難の技。骨だけ切ればすぽーんと出てくるってもんじゃないんです。
b0112009_2293629.jpg
せっかくなんで脳をprotectしているstructureをざっと挙げてみましょう(↑)。
まず、skin。肌も大事なバリアのひとつです。身体の他の部位においてもそうですが、病原菌の進入を防ぎ、血管の膨張・収縮/Sweat gland等を通じて体温調節をし、伸び縮みして他の組織への負荷を逃がしてくれる重要な役割を果たします。たかが皮一枚とあなどってはいけません。
それからご存知Skull(頭蓋骨)とそのPeriosteum(骨膜)。
hard protectionとしてがっつり脳を囲んで衝撃から守っていますよね。
更に、その下には3重の脳膜が存在します。外側から順にDura mater、Arachnoid mater, Pia mater。このmaterはgray matterとかとは違ってtがひとつ。materはラテン語でmotherという意味で、Dura materは“Strong mother”という意味になります。その名の通りDura materは3つの中で最も丈夫にできており、伸縮性もほとんどありません。次のArachnoidは同じくラテン語でSpider=クモという意味。というのも、その膜がクモの巣状に張り巡らされているからです。Pia materはDuraの逆で、訳すと“Tender mother”。脳のすぐ表面に位置し、メッシュのような薄~い膜なので脳が簡単に透けて見えます。つまり、脳に近づけば近づくほど柔らかな膜になっていって、ふわふわほわほわ脳を守っているわけですね。
b0112009_2444255.jpg
さーて、それだけではありません。ArachnoidとPiaの間にはSubarachnoid spaceという空洞があるのですが、この空間はCerebrospial fluid(脳脊髄液↑)という液体で満たされています。つまり脳みそって、液体の中に浮いているような感じなんですよね。こうしておけば、万が一先に挙げた防護壁を突破して衝撃が脳に伝わってこようとしても、液体で吸収できるでしょ、ってことなんです。
(私としてはtwisting forceに関しては逆にこのfluidがマイナスに働くように思えるのですが…。まぁこのへんは割愛します)
あっぱれ。まさに鉄壁の守りです、脳みそ。

前置きが長くなっちゃいましたが。
友人のDewayneが頭蓋骨をsawでがりがり切っているのを横で見ていたんです、私。
そしたら、
いきなりどばばばばっと液体が出てきたんですよね。
血液のように濁ってもいない、それはそれはclearな液体が。で、あー、Cerebrospinal fluidだ!!と思って。Arachnoidの膜を切った瞬間だったんでしょうね、きっと。
何でそんなに驚いたかって、普通Cadaverというのは乾いています。もちろん薬品で保存はしているのでパリパリにはなってないですけど、血管の中の血液は凝固しているし、関節包の中の関節滑液はもう全てsynovial membraneを通じてdiffuseしてしまっているから、何かを切って液体がドバっと出てくる、っていうことは基本的に無いんです。死んでもなお今の今まで液体をcontainしていた膜の強さはある意味驚異的で、さっすが脳、よく守られてるなぁとまたも人体の神秘に打ちひしがれ感動すら覚えたのでした。
…マニアックすぎですって?

●脳とか目とか。
さて、何だかんだあってやっと取り出せたBrain。
Jenに、“Sy、脳みそ出たよー”と言われたので、やっていた他の仕事をほっぽってわーいと見に行きました。脳って本当に面白いですよね、皆さんがイメージするまさにそのとおり、しわしわ折り畳まれてるんですもん。誰がいつどうしてこういうカタチにしようと決定したんだろう、不思議だ。
b0112009_3113819.jpg
脳を丸ごと持ってみると、それは意外に軽くて両手にスポンと収まってしまうような大きさで。
でも、それをしみじみ見ながら、これに人一人分の人生が詰まってるんだよなぁと考えたら限りなく大切なモノのようにも思えて。これがその人らしさ、を構成するものであり、もう取り出すことは出来ないけれど沢山の思い出や記憶が詰まっていて、それは確かにヒトとして息づいていたわけであって…。それを両手に今持っているというのは、実に不思議な感覚です。

Cranial Nerve(脳神経)をindentifyしなさい、と言われてそれからいそいそ働いていたわけですが、すすっとJenが後ろから近づいてきたかと思うと、“Sy, look, eyeball”
ぎゃっ。このヒト目玉を手に持ってるっ。
ぎょっと固まった私を見て満足そうにわははと笑いながら去っていくJen。遊ばれすぎです、私。
いやでも目玉は反則ですって。さすがに気味が悪いですって。
b0112009_3394996.jpgちなみにeyeballには6つの小さな筋肉がくっついていて、上下左右、回転といった動きを可能にしているんですよ。もちろん瞼を動かしているのも筋肉です。アナタが本を読んでいるとき、きょろきょろ辺りを見回しているとき、意識していなくてもこれらの筋肉は常に微妙に収縮しあって1mmの誤差も無く目を動かし、“見る”という動作を可能にしてくれているわけです。ヒトのカラダって、実によくできているでしょ。


●おまけ
このエントリーを書くにあたって調べていたら、腸の長さ(小腸+大腸)は欧米人が平均で約7m、日本人は平均約9.2mという資料を発見しました。文献によって長さに多少の違いはあるものの、日本人の腸はアメリカ人のそれに比べて絶対的圧倒的に長いようです。これは何故なのか??
これは、古くからの食文化の違いにあるようです。欧米人は肉を沢山食べる一方で、日本人は米や野菜を多く摂取します。草食動物が肉食動物に比べて長い腸をもつのと同様で、食物繊維を多く取る日本人に置いてはより時間をかけて消化する必要が生まれたところから腸が長く進化していったんですかね。言うなれば日本人は草食動物、欧米人は肉食動物。だからあんなに肉大好きなのかアメリカ人。妙に納得。

もう春学期も架橋を迎えようとしてます。来週が最後の授業で、そのあとはFinalに突入。
というか、もうフライングで来週もFinalじみたテストがいっぱい。
早く終えたい授業も終わるのがもったいない授業もありますが、とりあえず学べるだけ最大限に学んで、Finalまでしっかり受けきりたいですね。クリスマス休みもほぼ返上で走り続けてきたので、ちょっと精神的に楽になるかな、これが終われば。学生の皆さん、あとちょっと頑張りましょう!
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  by supersy | 2008-04-17 23:59 | Athletic Training | Comments(7)

Commented by hiro at 2008-04-20 01:05 x
お久しぶり。
Pia Materが、L1にAttachしてるって噂を聞いたんだけど、
その辺聞いてみてくれないかい?
Commented by さゆり at 2008-04-20 11:05 x
CNSをカバーするというのならSpinal cordがterminateするところまであるんじゃないかなと思ってNetterを見てみたら、conus medullarisのcross sectionの絵にはpiaがlabelされてなかったですね。それらしいものはあるように見えるんですけど…。

Dr. Borsaなら知ってそうな気がするので聞いてみます!
Commented by かや at 2008-04-23 21:58 x
脊髄軟膜は左右両側で三角形のひだ状の突起(歯状靭帯denticulate ligament)となって硬膜に付着している(約20カ所)・・・のですが,それとは違うモノでしょうかねぇ。頸随から腰随中央付近までと書かれてるので,違うかも?? どうでしょう?
Commented by さゆり at 2008-04-24 09:04 x
いつまでたっても神経系はなかなか得意になれません…。
賀屋先生、やっぱり反復しかないですか(泣)?
Commented by かや at 2008-04-24 12:54 x
反復なんでしょうかねぇ。
でも,神経だけじゃなく,関連部分とセット(例えば支配している筋とか,間隔領域とか,反応とか)にして,実際の身体の一部としてとらえて考えるとおもしろさ(みたいなの)がでて来てよいかな!?
Commented by さゆり at 2008-04-25 03:05 x
そうか、苦手意識があるから余計に固体として見すぎなのかもしれませんね。everything is connected、もっと総体的に
見なければ!
Commented by かや at 2008-04-26 13:35 x
木を見て森を見る(考える,感じる)。森を見て木を見る(考える,感じる)・・・
で,楽しければなお良し。

わけ分からんこと言ってすんません m(_ _)m

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