SEATA Conference Report 3 - Sudden Cardiac Arrest

さて、昨日の続きです。
講義の後半は主にSudden Cardiac Arrest (SCA)に関してだったのですが、
これは個人的に非常に興味のある分野だったので楽しく聞かせていただきました。

アメリカではSCAで一年に400000人もの犠牲者が出ているそう。
そのうち生存率は5%以下だというから、恐ろしい数字ですよね。
ただその中で若いアスリートが占める割合は非常に少なく、実際はその多くが年配の方によるHeart attackなわけですが、世界で一番最初にreportされたAthleticなSCAは何と紀元前490年にまで遡ります。それがペルシャ軍を撃退したギリシャ軍の勝利を伝えるために、伝令のPheidippidesという人物がアテネまで走り、勝ったと報告したあとそのまま絶命したというちょっと神話めいたエピソードなのですが、ちなみにその時に走った約26miles(=約42km)という距離が今のフルマラソンの距離の元になったと言われています。
…まぁそんな小話はいいんですけども。

さて、そのSCAの生存率を少しでも高めるために有効なのが、一分でも一秒でも速いAEDによる処置(詳しくは過去の記事1&2参照)。文字通り一分一秒がキーになってくるので(時間が経てば経つほど生存率は劇的に下がってきます)、私たちATCはいち早く行動するように訓練されているものですが、そんな中で私が全く知らなかった罠があることもあるようなのです。

Courson氏が見せてくれたのはひとつのビデオ。だいぶ古そうな大学のバスケットボールの試合の映像だったのですが、選手のひとりが突然コートに倒れ、全身を痙攣させ始めました。
この状況を見て、真っ先に私たちの頭に浮かぶべきはSeizure(癲癇)、ですよね。
Seizureの処置は何するんでしたっけ?そう。何もしない、んですよね。
Seizureはlife-threateningではありません。周りのヒトを現場から離れさせ、頭を打ちそうな危険なものをどかし、治まるまでmonitorしろと、そういう風に私たちは教わっているわけです。でも、実際はこの選手はSeizureではなく、HCM(これも詳しくは過去の記事参照)によるSCAで倒れていたんです。こういう風に、SCAの患者がcollapse時にSeizure-like activityを起こすことは珍しくないんですって。珍しくないどころか、資料によって数値に幅はありますが、20~30%のケースでこういった症状が見られるという報告がなされています。これをpureなseizureと勘違いして放っておいたりして治療が遅れれば、致命的。こういった事実をふまえて、Courson氏は、患者が意識を失って倒れている場合、seizure-like activityがあろうがなかろうがとにかくSCAとして扱うべきだ、と何度も強調していました。なるほど、知らなかったなぁー。
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でも、同時に、患者がseizure-like activityを起こしていたらAEDによる正確なanalyzeはできないんじゃないか?という疑問も沸いたのですが…。この場合はどうするんでしょう??

それからそれから。以前にも心臓震盪と心挫傷の話をしたことがありましたが(7/29/07付け)、この講義でもCommotio Cordisの話が出ました。ひとり、年配のATCと見られる方が“Commotio Cordisって何ですか?”と質問をしたのにはびっくりしましたが…。プロとして絶対に知っていなくてはいけない内容です!ちゃんと知識をupdateしておかないとダメですよ奥さん!
今回この内容をまとめるにあたって&興味が沸いたので、この講義の参考文献としてあげられていたArticle(*1)を読んでみたのですが、それによれば面白いことに、胸への衝撃って、その速度が速ければ速いほどCommotio Cordisを引き起こしやすいってわけではないんだそう。物体の硬さ、当たった場所等、Commotio Cordisの発生確率には色々な要素が絡んできますが、速度としては40mphあたりが一番確率が高く、50mphを越えると逆に落ちるのだとか。原因は定かでないようですが、速度が上がってしまうとelectrical activityへの影響よりもmyocardial damageが出てしまうからでは、という見方が有力なようです。

最後にもうひとーつ。
Courson氏が繰り返し繰り返し言っていたのが、
“No such thing as always or never.”
“There's no technique that's perfect.”
Emergency careにおいて最も大事なのは、状況にadaptすること。
例えば、Football選手が意識を失って倒れていてもヘルメットを外さない、というのは基本中の基本ですが、でも、外さざるを得ないという場合だってあるのです。Courson氏曰く、
“(Footballの試合で)ヘルメットを外した映像がTV中継で流れ、批判にあったことがあった。
 でも、あの状況は、ヘルメットが外れこそしなかったもののrotateしてしまっていて、選手の口が
 ear holeを向いている状態だったんだ。breathingを確認するためにも、外さざるを得なかった。”
“ホッケーの試合で、ボールが胸に当たって選手が意識を失って倒れたんだけど、
 顔からものすごい量の血が出ていたんだ。だから、スタッフたちは「胸に当たったと
 思ったけれど、それは自分たちの見間違えで、実際は顔に当たったのかも」と勘違いしてしまって
 commotio cordisの認識が遅れたことがあった。でも実際は、衝撃を受けたときに
 選手が舌を噛んでしまって、それによって起こった出血だったんだよね。”
“どんな状況でも、決め付けないこと。状況を冷静に見て、適応すること。”
勝手に自分の中でalways、やneverというルールを作らないこと、って、大事ですね。
一分一秒が大事な世界だからこそ、flexibleに。そしていつでもreadyで。

*1. Link MS. Mechanically induced sudden death in chest wall impact (commotio cordis). Prog Biophys Mol Biol. 2003; 82: 175-186.
非常によくまとめられている良いarticleですので、興味のある方は参考にどうぞ!
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  by supersy | 2008-03-07 23:59 | Athletic Training | Comments(2)

Commented by Kana at 2008-03-09 15:41 x
さゆりちゃん久しぶり〜。元気そうで良かった!
SCAについて勉強してると、そのときの状況を自分でイメージするだけで
なんとなく緊張してしまうわたし(笑)
まだまだ経験が足りないんだろうなーということを実感します。

でも、ATが現場でしなければいけない一番の仕事はこういうときの
FirstAidだと思うし、しっかり知識を持った上で対処したいものだね。
私は今度EMTを取りにいこうと計画中です・・・

勉強させてもらいました、ありがとー!
Commented by さゆり at 2008-03-21 10:33 x
Kanaさん、それからメール等でresponseをくれた皆様ありがとうございます!
(まとめてお礼して申し訳ありません)
私も初めてのSpineboardを先学期しましたが、意外に冷静に対応できるものだと自分でもびっくりしました。まだAEDやCPRの経験はありませんが、こうして時々みっちり勉強しなおして知識を自分の中でフレッシュに保っておけば自然に出てくるんじゃないかなと思っています。

…でも、実はOpen fxのときにちゃんと対応できるか不安なんです。
ぎゃっ。とか言ってしまいそう…。

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