Stener Lesionに関する知識のアップデートまとめ。

Stener Lesion。 (2008年12月27日付)

Stener Lesionその2。(2008年12月28日付)

大学院時代に地区学会で症例報告発表をする機会があり、その際にStener Lesion (ステナー病変)についてまとめましたが、この診断基準などについてアップデートはあるかな?と思ったのでエビデンスをさらってみました。そろそろClinical Prediction Ruleなどできてるだろう!と思ったんですけどね…。結論からいうとないです。大学院の症例報告で文献を洗いざらい読んでから早10年…意外とこの分野の研究は進んでないみたいなんです、びっくり。
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最初はこの論文1、以前斜め読みしたことがあったのですが、いい機会なので、ちょっと古いですけどまとめておきましょかね。「Stener Lesionを診断する際に我々が意識して確認すべきこと」の項目が、私が症例報告で出した結論とほとんど同じだったので発見したときに嬉しかったのを覚えています。Stener Lesionの診断基準になりえるのは、

- 30°1st MCPを屈曲した状態で行うValgus Stress Testで35°以上の弛緩が確認できる(Sensitivity 94%; Specificity 57%)2
これは伸展位でやれとか最大屈曲位でやれとか、20°開いたら陽性だとかいや健側と比較して>45°開いて初めて陽性だとか、諸説あります…というか、諸説ありすぎです。3
- MCP関節の僅かに近位にPalpable Tumor(↓)がある4
つまるところ、断裂した靭帯が「ダマ」を作っていて、これをごりっと触診中に確認できることがあるってことですね。これは好意的な解釈をすれば、Sensitivity 100.0% (59.0-100.0%); Specificity 94.1% (71.31-99.9%); +LR 17.0 (2.54-113.8); -LR 0.00と言えるのかもしれませんが、サンプル数24だし、きちんとした比較試験使ってないし、どうなのかな。
- USの画像診断力はSensitivity 76%にSpecificity 81%とまぁまぁ。MRIはSensitivity 100%にSpecificity 94%と「USよりはMRIのほうが少し診断力が高いか」という印象。
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この論文では論じられていませんでしたが、Supinated Appearanceっていうのもあると思います。UCLが断裂し、逆側のRCLが「綱引きに勝った状態」になるため、指そのものがSupinationに引っ張られるのです。文献がどれだったかは忘れちゃいましたけど。

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この論文5では、X-rayでは剥離骨折が確認できたものの、一見Displacementが確認できなかった(↓左)UCL断裂の症例を報告。その後のMRIと手術でStener Lesionが在ったことが確認されており、どうやら剥離骨折は内転筋に付着していた模様(= レントゲンで確認された骨折がUCL断裂部と一致していなかったことから、この論文でこの症例はOccult Stener Lesionと名前が付けられている)。後日撮影しなおしたX-rayでは(↓右)やっと、というかなんというか、UCLが付着した二つ目の欠片(Second Fleck)が見つかっていて、1) PA/Lateral Viewには限界があるかもしれないこと(そもそも痛みで理想的なPlaneに手を置けない場合も含め); 2) 場合によってはOblique Viewも撮るべきであるし; 3) 結局のところMRIを取ることで全体像が見えてくるのでは、と提案しています。剥離骨折の骨片が確認できた=UCLの断裂部位がCorrelateしているとはAssumeするな、最悪の場合(手術で)開けてみなきゃわからない、ということも書いてますね。ふーむ。
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この論文6が今回一番Relevantかなぁ、と思って読み始めたんですけど、歴史の話ばっかりでした。なんだかDr. Stenerの伝記のようなNarrative Reviewで、特にまとめることはなかったです…。ふたつ、記憶に残すために書き残しておくと、1) 冒頭、『年間20,000件起こるUCL断裂のうち、Stener Lesionの割合は14-88%』という興味深い統計の紹介があったこと。14-88%って、幅広っ!でもこれはUnderreportedってこともあるんじゃないかなぁ、信じるなら高いほうの数字かなぁということで、私個人的には「(部分断裂は保存療法が十分効果的なので手術が必要ないからreferしなくてもよいとして)UCL完全断裂の可能性が否定できなければ安全を期してReferせよ」という委託基準は変わっていません。2) MRIとUSの話が最後のほうに出てくるのですが、この論文では優劣をはっきりつけることはなく、どちらも有効であるが、これ!という所見はない、とまとめられています。これも、うっすらMRIのほうが優秀だとしても現段階では妥当な結論でしょうか。


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Valgus Stress Testを行うことでDispositionを起こしてしまうのでは?怖くて思い切った診察ができないよー、という不安を抱えるクリニシャンもいるかもしれません。そんな人にはこの論文(正直、今回の中でこれが一番面白かった)7!6体の献体(Preserved Specimenではなく、Fresh Frozen Cadavers)を使ってUCLが無傷の場合、Proper UCL(PL, pUCL)のみ断裂した場合、Accessory UCL(AL, aUCL)も断裂した(= 完全断裂)場合、Adductor Aponeurosisを含む周辺のFasciaも付随損傷していた場合…など様々な「想定」でValgus Stress Testを繰り返し、実際にUCLのDisplacementが見られるか(= Creation of Stener Lesion)を検証しています。ちなみに、Valgus Stress Testは通常通り基節骨と中手骨を持ち、"firm endpoint"があるまで最大Valgus Loadをかけていく、という形で行われたそうな。
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結果を言ってしまうと、UCLが完全断裂を起こしていても、Fasciaが無傷であればStener Lesionを作ってしまうことはない、とのこと。1) Fasciaにも損傷を起こさせた状態で、且つ2) 屈曲に3) Supinationを足してからValgus Testを行った場合、6人中2人の献体でStener Lesionができた(33.3%)そうなんですが、この3条件が整わなければDisplacementは起こらなかったとのこと。これは本文中の「Pronationをしてもそれほど関節の不安定性は引き出せないが、Supination位だと不安定気味(p = 0.39なので統計的有意差は無し)。同様に、指は1st MCPは伸展位よりも30°の屈曲位のほうが著しく不安定(= opens up more)である(p = 0.001、統計的に有意な差有り、↑上図参照)」なんだそうで、中でもSupinationと30°屈曲を合わせた際に関節が最も弛緩するようである(下Table 1参照)という所見とも一致します。

つまるところ、SupinationをさせないNeutralの状態で(これで3要素のうち一つが取り除けるので)、ゆっくり優しく力をかけながらテストを行えば("controlled, gentle manner")、Stener Lesionを作ることはない、と。Supinationさせんな!と明言している研究は私が知る限りこれひとつなので、忘れないようにしたいですね!
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…そんなわけで最後の論文が一番有益でした!皆さん、UCL Testする際は、Supinationを絶対にしないよう、Neutral Rotationで行うようにしてくださいね。

1. Papandrea RF, Fowler T. Injury at the thumb UCL: is there a stener lesion? J Hand Surg Am. 2008;33(10):1882-1884. doi: 10.1016/j.jhsa.2008.09.025.
2. Heyman P, Gelberman RH, Duncan K, Hipp JA. Injuries of the ulnar collateral ligament of the thumb metacarpophalangeal joint. Biomechanical and prospective clinical studies on the usefulness of valgus stress testing. Clin Orthop Relat Res. 1993;(292):165-171.
3. Patel S, Potty A, Taylor EJ, Sorene ED. Collateral ligament injuries of the metacarpophalangeal joint of the thumb: a treatment algorithm. Strategies Trauma Limb Reconstr. 2010;5(1):1-10. doi: 10.1007/s11751-010-0079-7.
4. Abrahamsson SO, Sollerman C, Lundborg G, Larsson J, Egund N. Diagnosis of displaced ulnar collateral ligament of the metacarpophalangeal joint of the thumb. J Hand Surg Am. 1990;15(3):457-460.
5. Thirkannad S, Wolff TW. The ''two fleck sign'' for an occult stener lesion. J Hand Surg Eur. 2008;33(2):208-211. doi: 10.1177/1753193408087106.
6. Lark ME, Maroukis BL, Chung KC. The stener lesion: historical perspective and evolution of diagnostic criteria. Hand. 2017;12(3):283-289. doi: 10.1177/1558944716661999.
7. Lankachandra M, Eggers JP, Bogener JW, Hutchison RL. Can physical examination create a stener lesion? J Hand Surg Asian Pac. 2017;22(3):350-354. doi: 10.1142/S0218810417500411.





追記です。翌日に続編をアップして、この記事に書いたことと少し異なる解釈についてまとめました。個人的にはそちらのほうが納得です。

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  by supersy | 2018-02-11 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

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