SCAT5と最新脳震盪コンセンサス・ステイトメント: その1。

6月17・18日に東京は立川で開催するエビデンスに基づく実践(EBP)講習ですが、引き続き受講申し込み受付中です!

<講習日時>
2017年6月17日(土)
18:15pm-21:30pm エビデンスに基づく予防医学: 基本から応用まで

2017年6月18日(日)
9:15am-12:30pm エビデンスに基づくスポーツ傷害評価: 基本から応用まで
12:30pm-13:15pm 昼食(各自)
13:15pm-16:30pm エビデンスに基づく治療介入: 基本から応用まで

<会場>
   JR中央線立川駅南口より、徒歩13分
   JR南武線西国立駅より、徒歩7分
   多摩モノレール立川南駅より、立川南通りを直進、徒歩12分

<受講料> 
  一般 1コース 9,000円
     2コース 16,200円 (10% off - 1,800円引き)
     3コース 22,950円 (15% off - 4,050円引き)
  学生 1コース 8,100円 (10% off - 900円引き)
     2コース 14,400円 (20% off - 3,600円引き)
     3コース 20,250円 (25% off - 6,750円引き)
     *現役大学・専門学校生(国内外不問)さん対象。申込後に学生証の提示が必要です

講習の内容など、詳しくは3月30日付の記事をどうぞ!申込はこちらからです。



さて、忙しくてバタバタしていましたが、ようやく春学期が終わりました!明後日の土曜日に卒業式に出席して、日曜日に日本へ帰ります。そんな時期になんですが、つい先日 "Consensus Statement on Concussion in Sport - the 5th International Conference on Concussion in Sport Held in Berlin, October 2016"1と、SCAT5が発表になりましたね!毎度のことですが錚々たる著者陣…名前だけを眺めていてもワクワクどきどきゾクゾクというか…著者の専門分野から内容もそれなりに想像つくところがいいですね。Dr. Leddy氏、がっつり今回は入ってますよ!さすがです。
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それにしても…最初にSCAT5って目にしたときに、「えっ、いつのまにSCAT4が出てたの?それをまさか何年も見逃していた!?教師失格!?」とひやりとしたのですが、なんと「第5回国際脳震盪会談だったのでキリがいいからSCAT4を飛ばしてSCAT5にしました」というオチとは…。かなり焦ったのでやめてほしい…。

では、とりあえず最初から順番に読み進めて、私が気になったことを勝手にどんどん挙げていきます。

1. Preamble (全文)
「『絶対』ではない」―このコンセンサス・ステイトメントは2016年10月現在持てる知識を全て集めて作られたもの。脳震盪をめぐるエビデンスは日々発見され続けているからこそ、このコンセンサス・ステイトメントはその他のsystematic reviewなど一緒に読まれるべきであり、あくまで我々の医療を導く「一般的に作られた」「ガイド」なのであって、「医療ガイドライン」や「法的スタンダードケア」として解釈されるべきではない、という文章が頭に残ります。「2020年12月までにはまた新しい声明出しますので」という記述からもあるように、脳震盪に関しての研究が爆発的に進んでいることから、今回のこの声明を絶対的なガイドラインとして発表することはあまりにリスキーだと踏んだのでしょう。「皆はこれを参考に、現場では個々の判断でやってよね」という含みを持たせたニュアンスです。一見無責任にも聞こえますが、これは現状仕方ないのではと私は思います。

2. Recognize
ConcussionはTBIスペクトラムの一部で、中では軽度であると書いてはいるものの、「脳震盪」という言葉の曖昧さ、不正確さを改めて指摘しているのも印象的です。脳震盪の定義は今までと変わらないのですが、改めて書いておくと…
 ● caused by a direct blow to the head, face, neck or elsewhere on the body with an impulsive force transmitted to the head
  必ずしも頭部に直接衝撃を受けなくても脳震盪は起きますよー、と。
 ● typically results in the rapid onset of short-lived impairment... However, in some cases, signs and symptoms evolve over a number of minutes to hours
  「症状はほとんどの場合すぐに出る」としながら、「しかし、症状が如実に出るまで数分から数時間かかることがある」というのも大いに記しておく価値のある文章です。
 ●頭部にかかる衝撃と脳震盪の関係性はまだまだ解明しきれていない。脳震盪やマウスガードを使った研究も進んではいるが、脳にかかる衝撃を直接計測できるような道具はまだないので、今回の声明ではそういったデータはあまり考慮されていない。
 ●脳震盪の症状は時間の経過と共に変化するので、診断は非常に複雑で難しい。現在、完璧な診断の指標となるテストやマーカーは存在せず、逆に言うと一過性の神経系症状を訴えている患者に対して即座に脳震盪という診断を除外することは不可能である。疑わしき患者は即座にプレー中止させるべきである。
  脳震盪の除外はできない…これ、あんな人やこんな人たちに読んでほしいです…。

3. Remove
脳震盪を受傷した患者は一人きりにするな、という記述は他でも見たことがあるのですが、「症状の悪化が無いか、受傷後数時間に渡って監視されているべきである」という表記は初めてはっきり見たように思います。
それから、一番興味深いのは「Sporting bodies should allow adequate time to conduct this evaluation (= SCAT5などのサイドラインテスト)」というところで、現在のルールで(時間制限や交代制限などで)しっかりとした診断をさせてくれないスポーツのルール変更をはっきりを要求するような文章になっています。

4. Re-evaluate
前回のコンセンサス・ステイトメント2ではNeuropsychological (NP) assessmentは脳震盪マネジメントのコーナーストーンであるとかなり銘打って書かれていましたが、今回ではその重要性を強調しながらも、「ソロで使われるべきではない」「Baseline NP Testを現時点ではmandate(強制)しない…が、取っておくことはお勧めする」と少しマイルドな書き口で〆ています。
バイオマーカーや脳画像診断の可能性は示唆しながら、「決定的なエビデンスはまだない」とも。

5. Rest
受傷後24-48時間の休息は必要であるが、それ以上の休息がリカバリーに有益であるというエビデンスはない。24-48時間後からは、症状が悪化しない範囲でactiveに過ごすべきである、という文章がこういったコンセンサス・ステイトメントレベルではっきりと書かれたのも初めてなんじゃないのでしょうか?「激しい運動は控えるべきだ」「適切な運動量や時間はまだ研究中」としながらも、動ける範囲で動こう、というメッセージはきっとDr. Leddy氏の影響も大きいのでしょう。2020年のアップデートにはもっと詳しいprotocolが載るんじゃないかなーと勝手に期待しています。

6. Rehabilitation
コンセンサス・ステイトメントやガイドライン、ポジション・ステイトメントで正式に脳震盪の「リハビリ」という項目が設けられたのも初めてなのではないでしょうか。今のところ、リハビリというコンセプトは10-14日以内に回復しきらない、いわゆるPCS患者限定ではあるが、psychological, cervical, and vestibular rehabilitationは一定の効果を上げている、とのこと。
それから、来ました、controlled sub-symptom-threshold, submaximal exercise! このプロトコルがはっきりと「safe(安全)」かつ「may be of benefit in facilitating recovery(回復を促進させる効果があるのではないか)」と書かれたのは、脳震盪診断・治療の歴史で大いに意味ある一歩かと思います。

長くなるので、次回に続きます!


1. McCrory P, Meeuwisse W, Dvorak J, et al. Consensus statement on concussion in sport-the 5th international conference on concussion in sport held in Berlin, October 2016. Br J Sports Med. 2017;pii:bjsports-2017-097699. doi: 10.1136/bjsports-2017-097699.
2. McCrory P, Meeuwisse WH, Aubry M, et al. Consensus statement on concussion in sport: the 4th International Conference on Concussion in Sport held in Zurich, November 2012. Br J Sports Med. 2013;47(5):250-258. doi: 10.1136/bjsports-2013-092313.

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  by supersy | 2017-05-11 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

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