Shoulder Impingement Syndrome (SIS)診断について、その2。

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#5 Silva et al., 2008
実際に臨床でよく使われるreference standardであるMRIとPhysical Examの結果を比べましょう!というこの研究。いやー、うーん、それでもやっぱりGold StandardであるArthroscopyと比べるべきだと思うんだけど、「臨床的によく使うから」という理由でMRIと比較するのはどうなんだろう。そのJustificationには少し疑問が残ります。

被験者: 18歳以上の新たに肩の痛みが出始めた患者をリクルートし、30人(男性14人、女性16人、平均年齢54.87 ± 13.8歳、平均症状期間97.5日)が参加。かなり人数は少ない印象。Sample sizeは計算していない、と明言してます(なぜ?)。Exclusion Criteriaは1) history of shoulder trauma or surgery, 2) inflammatory rheumatic diseases, 3) painful cervical motion, 4) other musculoskeletal problems of an UE (#4は曖昧すぎる気が)。

検証方法: Demographicを取った後、AROM、PROMと7つのスペシャルテストをひとりRheumatologistが実地。RAを除外した後なのに、なぜ専門外とも思えるRheumatologistが…?Ortho MDじゃなくて…?検証されたテストはNeer, Hawkins, Yocum, Jobe (Empty Can), Patte Manoeuvre (先のIRRSTのERをテストせず、IRのみやるバージョンという感じ), Lift-off, Resisted Abduction。Physical Examをおこなった3日以内に、Physical Examの結果を知らない(blinded)RadiologistがMRI画像を撮って診断し、その結論が比較されました。MRIは閉所恐怖症の被験者がひとりだけいたため、それ以外の全員(これはExclusion Criteriaに含めておくべきだったのでは…この患者はどういう風に分析されたのか?)を対象として行われたそうな。

結果: 結果は以下のテーブルの通り。MRIでは患者をSISかどうか診断しただけでなく、SSB = Subacromial-Subdeltoid Bursitisがあったかどうかも検証、分析に加えたそうなんですが…この怪我のみ分けて検証した理由はなんだったのか?説明が不十分に感じます。
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LR値はなぜかPositiveしか求められていなかったので-LRを追加しました。残念ながらSISの診断に有効なテストはないですね。SSBは…Neer, Hawkins, Yocum, Lift-offにPassive Abductionが陰性で除外が可能そうです。最も有効なのはLift-off Testでしょうか。しかし、被験者の数が少ないこと、そして95%CI値が求められていないことを考慮すればこの数字にどれほど一貫性があるのかは甚だ疑問です。
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ひとつでダメなら合わせればどうだ、ということで、2つのテストを組み合わせた場合の結果も表にまとめられているのですが、SensitivityとPPV、+LRだけ載せられても…という感じです。きちんとcomplete dataをプレゼントするべきだと思います。私がこの表を見た感想は「やはりSISに有効なテストは組み合わせてみても無し。SSBは『PatteとLift-off』の組み合わせを著者らは推しているが(+LR 10.27)、95%CI幅は広いし信頼に足る数字ではない」というところです。

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#6 Michener et al., 2009
やっときちんと統計やってくれてる研究が…(涙)!
この研究では1) SIS診断によく使われるテストのreliabilityは?2) 個々のテストの診断的価値は?3) 効果的な組み合わせはあるのか?という3つの観点から5つのテスト(Neer, Hawkins-Kennedy, Painful Arc, Empty Can, ER Resistance)を検証しています。

被験者: 整形外科に来院した、一週間以上続く肩の痛みのある患者55人(男性47人、女性8人、平均年齢40.6 ± 15.1歳、平均症状期間33.8 ± 48.9ヶ月)。男性が多い(85.5%)ですね。Power Analysisに基づき、合計57人の被験者が要るという分析まではしたようなんですが、実際の被験者の数はこれをわずかに満たしていません。あと2人、見つからなかったのかな…。

検証方法: Physical Examはそれぞれの患者に対して2人の臨床家(1人のOrthopedic surgeon, 17年の臨床経験、1人のPT、8年の臨床経験)が別々におこない (blinded to each other's findings)、その結果を比較しました。その後、平均2.6 ± 2.7ヶ月の期間を経て(報告されているのはありがたいけど、ちょっと長いな…)、これまたPhysical Examの結果を知らないOrthopedic SurgeonArthroscopyを実施。最終診断を下し、Physical Examの結果と比較されたというわけです。Blindingがふたつあるのがいいですね。

結果: まずはreliabilityから。17年の臨床経験のある医師と、8年の臨床経験のあるPTが5つのテストをおこない、どれだけその結果が一致したかという分析です。
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これは…意外と低いですね。Kappa CoefficientはPoor < 0.20; Fair 0.21-0.40; Moderate 0.41-0.60; Good 0.61-0.80; Strong >0.81なので、Hawkins-Kennedyが『Poor』なの以外は『FairからModerateに収まる』と言ってしまってもいいんですけど、これらのテストは比較的スキルの要らない簡単なもののはずで、それらの信頼性がここまで低いというのは、正直なところびっくりです。もう少し各テストのスタンダード化が進むべきってことなんでしょうか。

では、個々のテストの診断的価値は?確定に使えるのはEmpty Can, ER Resistance Testのふたつで、除外に最も有効なのはNeer Testといったところでしょうか。これら3つのテストのSensitivity, Specificityは95%CI幅もそこそこ狭く、それぞれの能力にそれなりに長けていることが確認できます。LR値は…どれもイマイチですね。95%CI幅も広いです。あまり参考になりません。組み合わせてはどうか?ということで、確定能力トップ3の『Painful Arc, Empty Can, ER Resistance Test』のコンビネーション除外力トップ3の『Painful Arc, Hawkins-Kennedy, Neer』のコンビネーションの統計的価値もそれぞれ計算してみたそうなんですが、残念ながら「どの組み合わせも適切とは言えない」という結果になっています。
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5つ全てのテストをおこなった場合、「〇以上陽性だと」というようなcutoff pointはあるのか?と分析した結果、最も確定と除外のバランスが取れていたのは『3つ以上陽性である場合、集合的に陽性と考える』という場合でした(Table 4)。こちらは除外も確定もボチボチ、といったところです。

個人的にはTable 5のような表を眺めているのは大好きなのですが、finding時代は残念ながらそんなにわくわくするものではありませんね。LR値はどれもイマイチ。どのテストも決定的なprobabilityの変化にはつながらないようです。

結論としては、SISの確定には 1) Empty Canをソロで使う、2) ER Resistance Testをソロで使う、3) 5つのテストのうち、陽性が3以上ある、という3つの条件のいずれかを用いることが、そして除外には 1) Neerをソロで使う、もしくは2) 5つのテストのうち、陽性が3未満である、という2つの条件のいずれかを用いるのが有効なようです。有効なコンビネーションは残念ながら無し、probabilityを決定的にシフトさせるテストもこれまた残念ながら無し。95%CIも含め、丁寧な統計分析が行われている研究で、非常に好感が持てます。読んでいて楽しい論文でした。
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#7 Salaffi et al., 2010
さて、最後の論文はUSをReference Standardとして用い、5つの「肩障害用」のテストの診断力を検証したものです。USをReferenceに用いた理由として、2004年に発表された研究によればUSの正確性は87%で…とその有効さを説明をしてはいるものの、これはその1でまとめた2006年発表のArdic氏らの報告とは食い違う見解なわけで、そこらへんの背景の説明は不十分であるんではないかなーと疑い深くなりたくなってしまう導入です。

被験者: 肩の痛みを訴えてリウマチ科に来院した203人(男性64人、女性139人、平均年齢58歳、平均症状期間2ヶ月)の患者が対象。Exclusion Criteriaは 1) historyof trauma, surgery or radiation therapy, 2) tumor in the shoulder girdle, 3) septic arthritis 4) inflammatory rheumatic diseaseで、うーん、あまり普段は見かけないようなものもありますね。どうしてTumorなんかを入れようと思ったんでしょう?別にあって悪いものじゃないですけど、理由が気になります。

検証方法: 患者のdemographicsのあと、一人のRheumatologistがphysical examinationをおこない(私の認識が間違っているのか…RAの専門家はOrthopedicの専門家とは違うのではと思うのだけど、違うのかな?どうしてOrtho MDじゃないのか疑問に思ってしまうのだけど…)、Hawkins, Jobe, Pette, Lift-off, Speed's Testの5つを実施。これらのテストの結果を得点化して集計するcomposite index、SNAP SHOT (Simple Numeric Assessment of Pain by SHOulder Tests、↓写真参照)として記録しました。このSNAP SHOTに関しては誰がどうやって作ったのかの説明は一切なく、あまりに唐突なので「なぜこの5つのテスト?」「なぜこの得点形式(各テスト痛みのレベルに合わせ0-2点、総合で0-10点)?」という疑問しか沸きませんが…。で。そのあとでUS診断。また別のRheumatologistの医師が、Physical Examの結果を知らない状態で(blinded)おこないました。Physical ExamからUS診断までの期間は明記されておらず、同日だったのか数か月後だったのかは不明です。
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結果: 各テストの統計は次の通り。ここで一度明らかにしておきたいのが、それぞれのテストは違う障害の診断目的で使われているという点です。HawkinsはSISを、Empty Can (Jobe)はsupraspinatus tendon、Patteはinfraspinatus tendonを、Lift-off (Gerber)はsubscap tendonを、Speed'sはbiceps tendonのpathologyをそれぞれ診断するのに使われています。なので、下のテーブル (Table 1)は、5つのテストの診断力を比べ合いすることはできないのだという前提で眺めてみてください(この説明は本文中でもしっかり説明されておらず、何分かりにくくしているのさー、という印象です)。

眺めている限りでは、アレですかね、95%CIも含めて解釈するならば「PatteはInfraspinatus tendinopathyの確定に」「Lift-offはSubscap tendinopathyの確定に」「Speed'sはBiceps tendinopathyの確定に」それぞれ有効、ということが言えるでしょうか。除外はあまりいいものがないですね。一番マシなのはHawkinsのSISの除外力ですけれど、それだってイマイチ決定力に欠けます。
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さて、私がこの研究で一番疑問を感じているのはこのSNAP SHOTという名前のcomposite index (↑Table 2)です。私、もともとcomposite系のテストは嫌いじゃないんですけど、これははっきり言って目的が不明だと思います。そもそもこのSNAP SHOTは何を診断しようとしているのか?ここの部分の説明が一切記載されていないからです。5つの異なる肩障害を診断するテストを合わせて、一体その点数が高かったからといって、どんな診断名が付くというのでしょう。もしこれが論文に繰り返し書かれている「painful shoulder」の診断のためなんだとしたら、その診断は患者が「肩が痛い」という主訴を訴えて来院した時点でestablishされているはずです。私は臨床家として、患者に「painful shoulder」という診断を課すことを目標に診断に臨むことは永遠にないと思うので、そういう意味ではこのcomposite scoreは私にとって何の意味も生みません。

そういったセオリーの部分は無視して統計だけを見ると、10点満点のSNAP SHOTのうち、「3点より高いかどうか」をcutoffと設定すれば除外と確定に最も理想的であるということは言えます。但し、くどいですが、臨床的意味は皆無だと私は思います。

うーん、つまらないものを切ってしまった次元の気分です。どうせ課題として課せられるなら、もう少し面白い論文を読みたいです。せんせー…。

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  by supersy | 2017-04-09 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

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