月刊トレーニングジャーナル5月号発売 & Shoulder Impingement Syndrome (SIS)診断について、その1。

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月刊トレーニング・ジャーナル5月号が発売になっています!連載最終回の今回は、「ATは医療の一部に特化した専門家であるべきなのか、オールマイティなジェネラリストであるべきなのか?」という観点から、現在アメリカで活発に交わされている、「我々はどこからきて、どこへいて、どこへ向かうべきなのか」について書いています。最終回には相応しいトピックかなぁと個人的に思っています。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。

全12ヶ月分の連載もこれで終了です!お世話になった皆様、ありがとうございました。資料提供など友人らに協力してもらったりして、とてもとても助かりましたー。



さて、諸事情あって少し間を空けましたが、最後の10文献をまとめておきたいと思います。トピックはSISの診断です。
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#1 MacDonald et al., 2000
NeerとHawkins Impingement Tests(↓)はSubacromial Bursitis/Rotator Cuff Pathosisの診断に有効なのか?という研究。少し古いので、研究デザイン自体にも色々flawあり。それから、SIS診断なんだとしたらどうしてBiceps tendinopathyについて触れていないのかも疑問が残りますね。
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被験者: Shoulder Arthroscopy(内視鏡手術)を受ける予定の患者85人(平均年齢40才、男性62人、女性23人)が対象。85 "consecutive" patientsという書き方をしてあるので、quota samplingだったのか?と思うけれど、どう被験者を集めたのか、どうして85人なのか(= statistical power analysis)など詳しい記述はなし。Inclusion/Exclusion Criteriaに関する記述も一切無し。Scopeを不可避と判断される程状態の悪い患者のみが対象なんだとしたら、この研究にはsample biasがかなりあると言える。Internal validityとExternal validityがあるかは甚だ疑問

検証方法: ひとりのsurgeonが全ての患者をexamine - 1) Physical Examと、2) Arthroscopyとをそれぞれおこなった。

結果: 結果は以下のテーブルに示した通り。Likelihood ratiosが求められていなかったのでついでに足しておきました。内容としては、「Bursitisの診断はNeerとHawkingが両方陰性だった場合は除外が可能」「Rotator Cuff Pathosisの診断はNeer、Hawkinsの陰性が共に除外に有効」という結論でしたが、95% CIが求められていないのは非常に痛い。Point valueだけ見ててもなー
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#2 Calis et al., 2000
これはトルコの研究ですね。先ほどの研究に比べてもう少し手広く、「SIS診断するのにはどのテストがいいのか」ということで、Neer, Hawkins, Horizontal adduction, Speed, Yergason, Painful arc, Drop arm testの7つそれぞれの診断価値と、clusterとしての使用価値を検証しています。

被験者: 慢性的な肩の痛みを訴えてrheumatologyもしくはorthopaedic surgery unitから該当医院に委託された、もしくは直接該当医院に来院した患者120人(両側のケースもあったので肩は合計125、男性48人、女性72人、平均年齢51.6 ± 13.9歳)が対象。Inclusion Criteriaは年齢幅が18-70歳であること、そしてExclusion criteriaは 1) inflammatory or systemic diseases; 2) acute traumatic conditions, 3) postoperative conditions and 4) neck and elbow disorders…どうこれらの「該当条件」を探したのかは明記されていませんが。もっと細かい表記があるとより好ましいですが、先の研究よりは条件の絞り方がしっかりしています。

検証方法: 患者のdemographics、physical exam (2名の医師によって行われた―それぞれ4年と8年の臨床経験ありinterobserver reliabilityは98%…どう測ったか説明はないが、真実だとすれば優秀な数字)とX-ray、MRI (一人のradiologistが読む経験不明、blindされていたかの記述なし)を通じて患者の状態を検証したのち、SIT (subacromial injection test)を使って最終比較。SITが陽性で、且つX-rayが陰性だった場合にSISという最終診断が下されたようです。SITがSIS診断のgold standardであるという話は、理屈は通っていますがエビデンスを見たことがありません。これが最も適切な診断法なのかという判断が読み手としてしにくいのと、もしこれの診断法そのものに欠陥があった場合、この研究結果の全ての意味が著しく薄れるという懸念はあります。

結果: SITに基づいてSIS有りと判断されたのは86/120人 (prevalence/pre-test probability = 71.7%)、MRIによるグレード分けでは、19人がステージ1、50人がステージ2、18人がステージ3だったそうな。SIS患者(86人)と非SIS患者(34人)の間の平均年齢差は大差なし。個人的にはsymptom durationの比較も見たかったですが。では、個々の診断テストの結果とクラスター・テストの結果を下の表にまとめます。例によってLikelihood Ratioが求められていなかったので足しました。
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確定のトップ3はHawkins, Neer, Horizontal Adduction testで、除外のトップ3はDrop Arm, Yergason, Painful Arcの順番ですね。どちらかのみに特化したテストが多いため、LR値は陰性・陽性どちらも優秀とは言えません。クラスターのほうは…月並みですが、この7つのテストを実施し、陽性が多ければ多いほどSISの確定力が上がり、陰性が多ければ多いほど除外力が下がるということでしょうか。確定・除外のどちらにも使える基準というのは残念ながら存在しなさそうです。Accuracyの値は、pre-test probabilityが高いんであんまりアテにならないかと…Sensitivity値に引っ張られる形になってしまっているので。

うーん、興味深い結果ではありますが、これも先ほどの研究同様、95%CIが報告されていませんのでこの結果を鵜呑みにすることは危険です。きちんと統計報告せーよーほんとにもー、もったいないなー。


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#3 Zaslav, 2001
SISとヒトクチにいっても直接subarcomial archの構造上の問題を含むPrimary Impingementと(=surgical decompressionなどが有効の可能性高)、Instabilityなどに起因するintraarticular structureのImpingement、つまりはSecondary Impingement (リハビリによる介入や手術による関節包のtighteningが有効?)など、様々なunderlying pathologyが考えられます。ということで、この論文では新しい「Internal Rotation Resistance Strength Test (IRRST)」というテストがその鑑別に有効なのかどうかを検証しています。ちなみに、IRRSTというのは肩を90°外転、80°外旋した状態から、ER、IRの順でそれぞれのIsometric Strengthを試験者がテストし、ERに比べてIRが弱ければ陽性…というテストです。以下の動画参照。うーん、まずはこのテストのinter-rater reliabilityを明記してほしいですね。強さを比較して陽性かどうか決めるって、少しsubjectiveな気がするので。

被験者: 平均16週間(range: 2-25ヶ月)のconservative treatment(cortisone injectionからのリハビリ)を試しても症状の改善が見られず、肩の内視鏡手術を受ける予定の患者110人(男性65人、女性45人、平均年齢44歳)が対象。これも#1の研究同様、「リハビリが失敗し、内視鏡を受けざるを得ないような深刻なケース」の患者のみが被験者になっているため、「現場で肩を痛めた患者(=軽いものも深刻なものもバラバラに含まれる)」にこのまま結果を当てはめてもいいものとは限らない…sample biasの可能性高しですInclusion CriteriaはNeer Testが陽性であることで、Exclusion Criteriaは明記されていないものの、X-rayとMRIでAVNが確認された患者は除外された、と説明されています (ここまでの研究から、NeerはSensitivityが優秀なのは報告済みだけど、Specificityは決して高くない。それを考えれば、Neer陽性にどれほどの価値があるのか?)。

検証方法: まずはPhysical Examを、そのあとArthroscopyという順番で検証。Physical Examをおこなったのは「アシスタント」さんで、経歴などの詳細は不明。この人がIR Resistance Strength Testをおこなったのであろうと予想しますが、前述したように少しsubjectiveに見えるこのテストを陽性か陰性か判断するこの試験者の定義や背景はもう少し説明されるべきだったのではないでしょうか。一方、scopeをおこなったのはひとりの医師これもそれ以外の経歴は不明です。Blindingに関する記述はないので、おこなわれなかったと判断するのが妥当でしょう。

結果: 2x2テーブル(↓)を見る限り、このIRRSTはIntraarticular pathology、つまり分類でいうとSecondary SISの場合に陽性になり、Extraarticular pathology、つまりPrimary Impingementの場合に陰性になる可能性が高いということが言えそうです。この観点からSensitivity、Specificity、+/-PVと+/-LRを計算すると、下のようになります。またしてもLR値が計算されていなかったので足しておきました。昔の研究ではいかにPVがLRに比べて重宝されていたかわかるなー。今ではその関係性はほぼ真逆になっているけれど。
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この結果を見る限りでは、IRRSTはIntra vs extraarticualr tissue involvementを区別するのに非常に有効なテストであるということが言えますね。除外、確定共にかなりの診断力があります。やはり、95%CI値が求められていないのは致命的な統計欠陥と言えるでしょう。それから、少し疑問なのが、このテストがPrimary vs Secondary Impingementを区別するのに有効だというのはともかく、そもそもImpingement Syndromeではない患者に使った場合はどうなるのか?という点です。この研究のProtocolのままでいうと「Neer Impingement Testが陽性であることがImpingementであるという確定条件」なのかもしれませんが、これは前述したようにここまでの研究結果から論破可能な前提条件です。一体どういった患者にそもそもIRRSTの使用を考えるべきなのか、そこの背景設定が甘ければ我々臨床者にとってはあまり意味をなさないテストになってしまいます。例えば、subscapの肉離れ患者さんがいたとして、その障害はnon-SIS、extraarticular pathologyと解釈するのが自然だと思うんですけど、このテストはまー陽性になりそうですよね。でもだからといってSecondary ImpingementともIntraarticularとも言えないですよね。使いどころが定義されていないぶん、このテストには表面的な数字ほどの臨床的効果は実際はないだろうな、と個人的には思ってしまいます。

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#4 Ardic et al., 2006
この論文は画像診断に焦点を置いたもの。超音波画像(ultrasonography、US)とMRIが肩の臨床的評価、機能的評価とどうcorrelateするかを検証しています。

被験者: 58人(男性13人、女性45人、平均年齢55.5 ± 12.4歳、平均症状期間11.8 ± 7ヶ月)の"clinically suspected SIS"患者が対象。Inclusion Criteriaは1) no history of trauma、2) 肩の痛みが3ヶ月以上続いている、3) 3週間鎮痛剤を試したが無効、4)且つclinically suspected SISの診断を受けたことで(最後の条件はあまりにpoorly defined)、Exclusion Criteriaは1) history of trauma or cervical trauma、2) cervical discopathy、3) neurologic origin of muscle weakness、4) additional musculoskeletal problems of UE (#3と#4はpoorly defined)、5) systemic, metabolic, or inflammatory diseases、6) MRIやultrasonographyが何らかの理由で禁忌、と記述されています。

検証方法: ひとりの医師が一貫して全ての患者のPhysical ExamとX-ray (AP, Axillary views)をおこない、それからUSとMRIを撮る…という流れ。USとMRIはそれぞれ異なる、しかし一貫した"experienced" ragiologistによって撮られたそうで、その人物らはPhysical ExamとX-rayの結果にはblindedであったという表記がしっかりとあるところは好印象です。USとMRIに関してはどの角度からそれぞれの組織をどう見たかという詳しい説明があり、ここは素人目ながら再現性は高そうだと感じます。逆に疑問に感じるのはPhysical ExamとX-ray、USとMRIがそれぞれ「同じ月に撮った」という表記はあるもの、Physical Exam/X-rayとUS/MRIの間がどれほど空いていたのかは不明だというところです。もしかしたら一ヶ月以上空いており、例えば病状がこの間に進行してしまった可能性も考えられます。もっと短いスパン、同じ週…なんなら同じ日のうちにやるのが理想的なのではと思います。それから、これらはあくまでお互いのcorrelationを計算されただけで、何かほかのGold Standard、例えばarthroscopyの結果と比較したわけではありません。MRIとUSが共に何かを見逃せば、不正確であっても正解っぽく見えてしまう危険性もあるわけです。

結果: X-rayの結果は全員がWNL(特に異常なし)。興味深いのはUSとMRIの比較診断です。かなりの数の肩障害について、USはMRIに比べて見逃しやすい (p < 0.05)という結果が出てます。USとMRIが統計的有意な差なく同様にdetectできるのはBiceps rupture, Biceps effusion/hypertrophy, Supraspinatus tearのみで、他の傷害はMRIのほうが圧倒的に感度が高いのが印象的です。うーん、でもp値はきちんと具体的にリポートしてほしいな、0.05未満だったかどうかだけではなく。どうしてこういうところ手を抜くんだろう。95%CIも相変わらず報告されていないし。
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MRI画像とclinical findingの報告は正直言ってかなりまとまりが悪く、あまり意味のある結論が導けないので少しばかり省きます。特筆すべきは「Regression analysisの結果、glenoid labral tearとbursal effusion/hypertrophyがMRIで確認された場合、その肩の機能は著しく低い」というところくらいなんですが、うーん、でもこれにしたってこの発見のどこに臨床的価値があるのか…。
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USとPhysical Examの関係性もテーブルに示されています…が、前述したようにこれらの診断がそもそも真のGold Standardによって示されたものではないので、この表のappreciateの仕方が私にはさっぱりよくわかりません。Neer、Hawkins-KennedyやSpeed'sに頼るより、USのほうがずっと正確だよってことが言いたいのかもしれませんが、私としては「そりゃーそうでしょう、USのほうが劣っていたら困るわい」という感じです。

途中まで丁寧に作られていただけに、結果のプレゼンの仕方と分析に仕方が非常に雑に感じる、もったいない研究です。コストや手軽さから考えて、USのほうがMRIよりも現実的な場合が臨床的には圧倒的に多いかと思うのですが、この研究結果を見る限りでは「Biceps tendon pathologiesとRCの完全断裂を見るのでなければ、USよりもMRIのほうが圧倒的に正確である」…つまり、USはMRIの代わりには現段階で成りえない、というのが私の出す結論です。現在のテクノロジーを持ってしても同じことが言えるかどうかは疑問ですけれど…。

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  by supersy | 2017-04-09 16:20 | Athletic Training | Comments(0)

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