KTテープ文献レビュ―その3。

って、KTテープじゃない文献も入ってきてるんですけど、そこはご愛敬。
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#7 Mey et al., 2012
こちらはベルギーの論文。王室御用達ベルギーチョコレート食べたい。SIS患者では筋肉の活性のバランスの乱れ、そして発火のタイミングの遅れが見られるということから、リハビリによる介入の可能性を示唆。リハビリとModalityの併用の研究などは過去にあるが、リハビリそのものをin isolationで検証したものはないよね、ということでのこの研究です。Overheadスポーツをする軽度(まだ運動ができる程度)のSIS患者に限って、6週間のエクササイズ介入をし、その結果を追っています。

研究タイプ: Case series (Control groupがないのは痛い)
被験者: 47人(男性25名、女性22名、平均24.6 ± 7.81歳)の、「週に平均で6時間はcompetitiveなoverhead sports(バレーボール、テニス、カヌー、水泳、バドミントン)をしている」というアクティブな人たちが対象 (年齢層、アクティビティーレベル共にrelevant、ただ、週に平均6時間という中途半端な練習量が気になる…アスリートにしては少なすぎる)。競技歴は平均6±1.5年で、症状は最低3ヶ月以上続いていたものの、総じて症状は軽く、競技は継続可能だったため、研究開始時点で医師の診察を受けた人数はゼロ、time lossもゼロだったそう(痛みはあるけど競技ができないわけじゃない…こういうケースはATとしては一番対処が難しいので、この研究設定は興味深い)。このサンプルサイズはこういう結果を確認する前提で決められました…という「見たかった結果」の記述はしっかりとしているところと、15% dropoutを見こんだところは評価できるが、実際その計算の結果何人が必要と出て、今回実際に被験者となった47人という数字がその基準を満たしていたかどうかは説明がない。いや、恐らくしてるんだろうけどそこはちゃんと書いてほしい。
Inclusion Criteria: 以下の5項目のうち最低2項目が当てはまること ― 1) (+) Neer sign; 2) (+) Hawkins sign; 3) (+) Jobe's sign; 4) Apprehension testで痛みが伴う; 5) Relocation testで痛みが伴う(ApprehensionとRelocationは前方不安定症のテストであり、SISのテストとして使うにはvalidityが不十分、それに、Relocationで陽性になるにはApprehensionも陽性であるのが条件と考えれば、これらの要素は独立していない。基準を本来のapprehension = 陽性ではなく、痛み = 陽性と変えているところも主観的で、何故それを基準にしたのか説明とrationaleが不十分。"No subjects were included in the study based on the last 2 criteria alone"と文中に追記はあるが、私の解釈が正しければそれは結果論であり、理論上は4)と5)で痛みが伴えば研究に参加可能だったことに変わりはない)。加えて、Resting Scapular PositionとScapular Dyskinesisがある患者のみが研究に参加可能 ― Scapular Dyskinesis Testを行い、Uhl et alの推奨するyes/noの基準を元にScapular Dyskinesisの有無を検査したとあるが、このテストは(私も臨床で使っているからこそ言わせてもらうと)Sensitivityは76%、Specificityは30%とestablishedされたテストというわけではないし、これは動的な異常(= Scapular dyskinesis)を計るテストであって、resting scapular positionを計った方法は一切記述がない (Lateral Scapular Slide Testなどをどうして入れなかったのか?)。
Exclusion Criteria: 肩の脱臼歴、肩の手術歴、頸椎損傷疑い、NSAIDsを摂取している(一定期間以上?過去何週間にまで遡る?)、過去12ヶ月以内にステロイド注射を行っている(肩に?それとも他の部位を含む?)、肩のelevationのROMが欠けている、もし他のリハビリを既に開始している場合は対象から除外される(これらの既往歴は患者本人に尋ねたのか、それとも医療従事者に確認を取ったのか?)。
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リハビリエクササイズ: 被験者は6週間、上の写真の4つのエクササイズを毎日続けた (軽度の障害に対して、6週間という介入期間は長くないか?現場での実用性はあるのか?)。10回を3セット、セット間に1分間の休憩を挟みながら。1回目のセッションで直接PTによる指導を受け、各エクササイズの説明イラストを受け取ったのち、残りの運動は自宅で各自で行う(文中にはホームエクササイズも監視下で行うエクササイズも効果は同じという研究を引用していたが、果たして?)。正しくエクササイズを行えているか、適切なprogressionを踏んでいるか確認するため、第2週と4週時にクリニックに来院してもらうか、PTと電話で話す機会が設けられた(来院は強制すべきだったのでは…電話では正しくエクササイズを行えているか確認できるとは思えない)。エクササイズ中の痛みはVASで5/10までならオッケー(軽度の障害で5/10の痛みというのもそこそこ高いのでは…、痛みを伴うということは特定の患者は好まないエクササイズということになる)、それ以上なら負荷を減らし、regressする、という流れ。きちんと運動をこなしていることを確認するために、被験者はcompliance logをつけていた(どういった形式のものなのかは不明、結局のところself-report)。"repetitive overload"を最小限に抑えるために、エクササイズを行う順番は毎週変えた(Week 1: 1→2→3→4、Week 2: 4→3→2→1、Week 3: 1→4→2→3、Week 4: 4→1→3→2、Week 5: 1→3→2→4、Week 6: 4→2→3→1…しかし、これでrepetitive overloadが避けられるという理屈を教えてほしい。結局やっている運動は同じなのだから、総負荷は同じだと思うが?)。実験期間中、被験者はスポーツを続けるのは認められていたが、"additional upper limb strength training"は禁止されていたとのこと(その定義は?実際に上肢のトレーニングを行っていないことはどう確認したのか?)。

Outcome Measures: Shoulder Pain and Disability Index (SPADI、13項目の質問、0-100点で評価し、点数が高いほうが機能制限も高い、validity & reliabilityは過去の研究によってestablishされている、MCID 8-13.2点)とnormalized EMG (upper trap, middle trap、lower trap、SAに装着)…1) それぞれの筋肉に対してMMTしながらそのmaximal voluntary isometric contractions (MVIC)を計測 (ICC = 0.96-0.99)、加えて、2) 負荷なしScaptionをconcentric (腕を上げる), isometric (上げ切ったところでhold), eccentric (腕を下げる)のphaseでそれぞれ3秒間かけて(メトロノーム使用)行った場合の各筋肉のEMGも記録(↓写真、このelectrodesが筋活性に影響を与えた可能性は?)。この研究ではpre-trainingの結果を知らない研究者がデータcollectを行った(= blinding)とあるが、Control groupがないのだからblindingの意味もほとんどないと思われる
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Results: 47人の被験者で始まったこの研究だが、7人がdropout (7/47 = 14.89%、これはこの研究では想定の範囲内)。4人は「プライベートな理由」で(詳細不明)、3名は痛みが悪化したから(これはこの運動で悪化した可能性も否定はできない、Control groupがないのでnatural historyかどうかも分からない。記述がないことから、この研究ではITT分析を使わなかったと予測される。その場合、これらのデータをただ無かったことにするのはバイアスの危険性を高める)。実験を完了した40人のうち、12人は再来院をせず、電話のみでコミュニケーションを行った ― この12人は「特にこまめに」連絡を取り続けたというが、やはり来院と電話では隔たりがあるように思える。Compliance logを提出したのは68%の被験者に留まった(少ない。また、compliance logの結果どの程度患者がcompliantだったかは報告がない)。報告されたresultには95%CIがついておらず、統計的決定性は不明
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SPADI ― スコアは平均で、29.86 ± 17.03から11.7 ± 13.78 (p < 0.001)に減少。6週間が経った段階で、被験者40人のうち7人(17.5%)がSPADI 0点に(機能制限ゼロ)。統計的、臨床的(MCID= 8-13.2)にも有意義な改善に思われるが、Control groupが無いため、どこまでがnatural historyなのか判別不可能
EMG (MMT) ― 上テーブルにあるように、最大筋出力という観点から、統計的に有意な改善が認められたのはUpper (p = 0.003), middle (p = 0.026), lower trap (p = 0.003)の3つの筋肉のみで、SAの活性レベルの上昇は統計的に有意ではなかった (p = 0.285)。イマイチEMGの臨床的有意性がわからないのよね、私の知識不足なのかもしれないけど
EMG (Scaption) ― 最大筋力は改善が見られたtrap筋群だが、scaptionの腕の上昇中の筋出力は3つのtrap全てにおいて減少していた(p = 0.43、筋肉がより効率的に収縮できるようになった?)一方で、SAに関してはscaption中の筋活動の減少は認められなかった(p < 0.05)…とあるが、p-valueが逆では?これだと、trapの変化が見られず、SAが統計学的に有意な変化があったということになり、文章と矛盾が見られる。これは、UT/SAの活性化率がトレーニング後には腕の上昇、停止、下降時のいずれの時も著しく減少した(p = 0.005、つまり、UTの活性度が低下したのに対してSAの活性が上がり、より理想的な筋収縮のratioがrestoreできた)ことからも、「矛盾」と捉えられる内容だが…。同様に、「UT/MT, UT/LTの活性率には変化がなかった(p < 0.05)」という記述も矛盾が…p > 0.05では?
筋発火のタイミングに関してはトレーニング前後で変化は見られなかったが(p = 0.69)、scaptionという動作において、異なる筋肉が異なるタイミングで発火されることは明確に(p<0.001)記録できた。腕を上げる際、まず真っ先にSAが活性化され、その約0.25秒後にLTが、その更に0.4秒後にUTとMTが同時に発火されるようである(↓Posterior Deltoidと比較=0した場合の各筋肉の発火のタイミング。正直この研究ではこのfindingが一番おもしろい!ただ、発火のタイミングに関しては様々な研究でやれUTが先だ、いやいや、MTも早いとか、consensusは今のところないそうだ)。
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結論: 6週間のホームエクササイズにより、肩の機能は著しく上昇、UT, MT, LTの最大筋出力、つまりポテンシャルは上がったもの、負荷の無いscaptionという単純な作業中の筋出力は低下した、つまり、簡単な動作を最低限の出力で行う、能率の良さが身についたと言える。SAの活性化は大きな変化はなかったものの、UTの動作中の活動は低下したため、相対的にUT/SAの筋活動のバランスがより最適化した。筋肉の発火のタイミングはこのエクササイズでは変化が見られなかった。結果自体は面白いのだが、Controlがないため、個人的にこの研究の臨床的な意味はあまり感じない。RCT希望
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#8 Henri, 2015
これはフィンランドのSatakunta Universityという大学に所属していた学生の書いた学士論文ですね。学生として、SIS患者へのKTテープの知識・実践をどの程度持っていればいいか、みたいなちょっと変わった切り口の論文です。研究ではなく、narrative review。

このまとめによれば、KTテープの大きな効果は4種類: 1) 筋肉のサポート、2) 体液の流れのつまり(congestion)の除去、3) 痛みの減少、4) 関節の(ポジションの?)修正。テープを実際に貼る際は、
 1) 肌にオイルやローションがついてないことを確認
 2) テープを適切な長さに切る
 3) Y, I, X, Fan, Web, Donutのいずれかの形に切り、角を丸める
"Y"…筋活性にも抑制にも使用可能。大きな筋肉や、複数の筋肉をカバーするのによい。ターゲットを包むようにapply。
"I"…急性の筋損傷向き。ひとつの筋肉をターゲットとし、包むというよりは直接その上にapplyする。
"X"…originとinsertionが動作によって入れ替わるような筋肉や、ふたつの関節をcrossする筋肉に適している。
"Fan"…腫れ向き。アンカー部分をductに、腕をlymphatic drainの方向に伸ばすように貼る。
"Web"…Space correction向き(意味が100%分からないのだけど、lymph用のスペースができるってことかな)。
"Donut"…同じくSpace correction向き。真ん中の空洞に治療したい部位を持ってくる。
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 4) アンカーとなる部分(i.e. Yの場合は一番下の根本部分)にはテンションをかけずに貼る。
…というのがどのテクニックにも共通したルール。Contraindicationとしてはopen wound, unhealed scars, neurodermatitis, psoriasis…それから、妊娠後期に性器周辺に貼ることは禁止だそうだ(むしろ後期じゃなければいいのか?)。あとは、テープやテープの接着素材にアレルギーがある場合も。

Muscle Technique (Y, I, or Xテープを用いるのが一般的)
筋抑制が目的の場合はInsertionからOriginへ、活性したい場合はOriginからInsertionへ貼る(近年起始停止というコンセプトは使われなくなっていると思うが…?)。アンカー部分となるテープ両端はそれぞれ起始停止を越えた部分に、5cmほど、テンションかけずに貼るべきである。貼る際は、筋肉を最大限まで伸ばしながら、Kase氏よれば抑制なら15-25%ほど、活性なら25-50%ほどテープにもテンションをかけつつ貼るそうだ…が、10%のストレッチで十分だという研究者もいる。

Fascia Correction Technique
Y stripをFasciaを動かないようHoldするか、より望ましい場所に導く目的で使う。

Ligament/Tendon Correction Technique
損傷したり、overloadが起きている腱・靭帯に対してmechanoreceptorを刺激するために使う。Ligamentなら25-75%のテンションを、tendonなら>50%のテンションをかけ、方向は自由ではあるが抑制目的ならinsertion → originで貼ることが推奨されていたりもする。真ん中から初めて、両端に伸ばしていくような貼り方もOK (しかし、両端のアンカーは伸ばさないよう気を付ける)。

Lymphatic Technique
肌を引き上げ、リンパ液や血液の流れを促進させるのが目的。

SIS用のKTテープ
SupraspinatusとDeltoidにMuscle Techniqueを使って抑制をかけ(insertion → origin)、さらに周辺のFasciaにFascia Correction Techniqueを作ってスペースを広げるのがKase氏の提案するSISテープ。…で、これが今まで言及されたようなThelen et al, Kaya et al, Hsu et alさんなんかが検証してますよーと。うーん、使ってるテープはいちいち違うんだけどなー。

結論: 結論というか、ただのKTテープとは、という紹介の記事なので特に特筆することはなし。やはり、「そんなにSISのテープがKase氏によってスタンダード化されているというなら、なんでこんなに各研究で検証されているテープが異なるの?」というところの疑問は消えない。
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#9 Wong et al., 2012
この論文ではKTテープを膝に貼った場合と貼らなかった場合の筋活動を検証。

研究タイプ: Cross-over (前述通り、個人的にCross-overは嫌いではない…同一のグループがExpにもなりControlにもなる), random order of treatment (コイントスで決められた、KT→テープなし, or テープなし→KT)、no-placebo
被験者: Power Analysisに基づき、とある病院に勤務するスタッフ30人(男性14人、女性16人、平均28.4 ± 4.7歳。分析の結果、最低30人いればよかったのか?明記はされていない)を被験者としてリクルート。
Inclusion Criteria: 筋骨格系や心肺系の疾患がなく、関節の痛みやその他の症状が過去12ヶ月にわたってないこと(これはどう事実確認を行ったのか?self-reportの場合、recall biasなどのリスクは?)。あくまで健康な被験者なので、怪我をしている患者で同じ結果が出るかは不明
Exclusion Criteria: 特になし
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テーピングはKase氏による公式ガイドラインからそのまま引用したもので、股関節を30°、膝を50°屈曲した状態から、KTテープをVMに沿ってoriginからinsertionへ75%のテンションをかけて貼る (= facilitation effect)。テンションのかかり具合はanthropometricを使って計測し、同一人物がテーピングを一貫して担当

Outcome Measures: Biodexを用いての最大Knee extension & flexion (concentric) 筋力測定 (peak torque = 10回の筋収縮で記録された最大筋出力の平均値、normalized; total work done = 10回収縮合計の総エネルギー消費量、normalized; time to peak torque = 全てのトライアルで、最大筋出力到達までにかかった時間、をそれぞれ記録)。各被験者のテスト前にcalibrationをおこなった。股関節の角度や他の関節の固定、練習回数など、手順はスタンダード化済み (ICC = 0.82-0.95)。Carryoverをなくすため、2セッションの間は最低でも7日間あけていた。しかし、あくまで椅子に座った状態の計測であるため、実際のfunctionalな筋出力と同等とは解釈ができない
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Results: テープをしてもしていなくても、膝の屈伸・伸展共にpeak torqueに大差は見られなかった(p≥0.37)。Total work doneは、p < 0.05を「統計的に有意」と設定しなおすと(この研究ではp < 0.01としているようなので、上のテーブル参照)、伸展60°ではテープをしたほうが総労力が下がる傾向(trend, p = 0.07)が、120°と180°では著しい減少(p = 0.04, p = 0.03)が確認できたが、ANOVA分析によるinteraction効果に関しては統計的に有意な差は認められず(p = 0.24)。屈曲は一貫して変化が見られなかった(p≥0.63)。
Time to peak torqueはというと、テープをしたほうが伸展のpeak torqueにかかるまでの時間が著しく減少(p < 0.01、ANOVAで測定したinteractionもp = 0.03、時間にして36-101ms速くなった)、屈曲は変化が見られなかった。36-101msという差はスポーツパフォーマンスだったら大きな差になるのかなケガの予防にもつながるかも (VMOの発火がVLに比べて3.4-10 ms遅れるだけでPFPSになりやすいという研究もある)

結論: KTはどうやら健康な人間の筋出力を上げる効果はないが、恐らくtactile inputを増やし、皮下のmechanoreceptorの刺激を上げることでVMの発火を早める効果があるようである。しかし、ケガや痛みのあるアスリートでの再現性と、(テープ直後の計測だったため)効果の持続性は不明。また、Controlがなかったため、効果がplaceboであることも否定はできない
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#10 Williams, et al., 2012
最後はKTテープが外傷治療・予防にもたらす効果のMeta-analysis。

"kinesio taping/tape"のキーワードでデータベースを検索、96つの文献から、Inclusion/Exclusion Criteria: 1) 筋骨格系障害に関連したoutcomeを報告している(i.e. pain, ROM, proprioception); 2) 比較グループがある(i.e. KT without tension, placebo taping, no taping); 3) 英語でfull textが入手可能…に当てはまる、10の文献を分析。

10つ全ての文献で1) control groupがあるか(これはinclusion criteriaに入っているのでyes前提)、2) random allocationが行われていたか、3) 被験者のblindingが行われていたか、4) 試験者のblindingが行われていたか、に基づき、それぞれ人項目当てはまる=1点加点、という要領で研究の質を1-4点でランク付けした。これも沿って紹介することとする(研究の質を推し測るにはかなりsimplifyされすぎという気もするが…PEDroをなぜ使わなかったのだろう)。

痛み: 意外なことに、痛みに関して統計的に有意な差が認められたのはGonzalez-Iglesias et alのひとつの研究(Quality 4点)のみ。それでも、変化の度合いはテープ直後で0.9 ±0.2、24時間後には1.1 ± 0.3と、MCID (=2)に満たなかった。もうひとつの研究、Thelen et al(4点)でも痛みに関しては統計的に有意な変化は報告されず。つまり、痛み軽減の効果はtrivialであると言える。

ROM: 10の文献のうち、4つがROMに関しては統計的に有意な改善が見られたと報告。Thelen et al(4点)は9つ図ったROM measuresのうちのたったひとつ、肩のpain-free abductionが1日後に19.1 ± 10.8°増加(MCID = 15°)したと報告されており、これをlikelihoodに換算すると「74%の確率で臨床的に小さな利益がある」と言える。統計的に有意な差はなかったものの、3日後には「58%」、6日後には「30%」の効果がある可能性があるそうな。つまり、pain-free肩外転を即座に増やすのには有効か、しかし、長期的な効果は期待できないかも?という結論が出せる
Gonzalez-Iglesias et al(4点)の研究ではテープ直後と24時間後の頸椎の動き全6方向を測定、その全てで統計学的に有意な改善が見られている。一方で、MCIDは方向によって屈曲9.6°、伸展7.0°、右側屈5.9°、左側屈9.1°、右回旋7.6°、左回旋6.7°と既存の研究によって示されており、それと比較すると12Measures中8の増加がtrivialでしかないことが見えてくる。つまるところ、KTテープで頸椎のROMはテープ施術直後、24時間後共にほとんど臨床的意味がない程度しか増加しない、と言える。
Hsu et al (3点)の研究ではSIS患者の野球選手においてKTテープがScapular orientationに及ぼす影響を調査。Scaption @30°と60°でPosterior tiltに関してのみ統計的に有意な変化が認められた。MCIDが過去にestablishされていないので、Baseline段階での0.2の差をそれと仮定すると、Posterior tiltに関しては臨床的に有益な効果があると言える。しかし、他の動き(残りの19 measurements)に関してはtrivialな変化というだけでなく、うち8 measurementsに関しては有害な変化がある可能性も…総じて、KTテープのScapular orientationへの効果はtrivialかpossibly harmfulであり、お勧めはできない
Yoshida et al (2点)の研究では、健康な被験者でKTテープの胴体の屈曲、伸展、側屈ROMを検証。屈曲に関しては90%の確率でsmall effects (平均17.8cm、MCID 6.4cm)が起こると言える(6.4cmがMCIDで17.8cmってかなり大きくないか?)。伸展と側屈は統計学的に有意な変化なし。
さて、全てを総合して考えると、「ROMへの効果はまだよくわからない(unclear)」としか言えなさそうである。小さく、短期的な効果が認められるものもあれば、効果は無視できるほど微々たるもの、場合によっては有害という恐れもある。現段階で、筆者たちはROMの改善にKTテープの使用を推薦していない

筋出力: 10の文献のうち、4つの研究がKTテープ使用によるStrengthの改善を示している。Hsu et al (3点)の研究ではKTテープの使用でLower Trapの筋出力の増加(1.2 ±1.0 kg)が認められ、これはCohen's d = 0.2 = ±0.7kgと比較しても「81%の確率で、最低でも小さな程度の臨床的有意さを伴う効果がある」ことが言えそう。
Lee at al (2点)の研究では、健康な被験者でのgrip strengthの変化を計測。屈曲筋群にKTテープを使用した場合、しなかった場合と比較して統計的に有意な筋力の増加が見られた。こちらも臨床的に有益なgrip strengthの増加が期待できると言えそう。
Vithoulka et al (2点)の研究ではKTを大腿四頭筋にapplyして"concentric isokinetic exercise," "eccentric exercise"と"eccentric isokinetic exercise"の3種類のpeak torqueを計測(eccentricとeccentric isokineticの違いってなに?)。"eccentric exercise"のpeak torqueが上がったと報告されたが、placeboとnon-tapingとも比較してみると、どうやらplaceboの効果が大きいようである。このメタ分析では「97%の確率でeccentric exerciseのpeak torqueにはtrivialな効果しか生まない」と結論付けられている。"eccentric isokinetic exercise"と"concentric isokinetic exercise"はというと、「eccentric isokinetic exerciseは64%の確率で最低でもsmall clinical benefitが、concentric kinetic exerciseは41%の確率でtrivialな効果がある」という統計が示されている。
Fu et al (2点)の研究では健康な大学生を対象に、KTテープを使って「79%の確率でテープを貼った12時間後にQuadsのconcentric contractionの筋出力増加に小さな効果がある」と示された。そのほかは特筆する有意さはなし。31.5%の確率でQuadsのeccentric contractionが上がるかも?というのがあったくらいで。
最後、Chang et al (3点)では健康な大学選手21を被験者としてKTテープあり、なし、placeboテープとで比較したが、grip strengthに関して統計学的に有意な変化はなし。
全ての研究を踏まえて、今のところKTテープが筋出力を小程度(small beneficial effect)上げるというエビデンスが多少(some evidence exists)存在するということが言えそうである。

Proprioception: Chang et al (3点)の研究ではGrip Strength Measureにおいて、KTテープを用いれば95%の確率でabsolute force sense errorが最低でも小程度減少、93%の確率で最低でも小程度、related force sense errorsが減少することが示されている。一方、Halseth at al (2点)の研究によれば、足首にKTテープをしてもPflex, inversionのposition senseに変化はなし。この項目に関しては、結論付けが難しい…

Muscle Activity: Hsu et al (3点)ではscaption時に「92%の確率で60-30°の腕の下降中にLower Trapの活動がi著しく上がり(MCID10%の変化に対して14 ± 12%)、80%の確率で90-120°の腕の上昇中にUpper Trapの活動が著しく下がる」という結果が。Slupik et al (1点)の研究ではVMの筋活動がテープ後24時間後に54%増加、この変化は72時間後にも22%保たれた(10分後、96時間後の変化はtrivial)。この研究はplaceboもない、crossoverもしていないということで結果が読み取りにくい。今のところ筋活動に関してはどうやら大きな効果がありそうだと言いたいところではあるが、まだまだ質の高い研究を見てみないとわからない。

結論:
1) KTは筋出力、force sense errorの減少、そして怪我部位のAROMの向上に小規模な利益が期待できる
2) KTは痛み、足首のproprioception、muscle activityなどの改善をサポートするのに十分なエビデンスはまだない

ふーむ…色々とKT関係の文献見てみましたけど、例え同じ部位、同じ障害の患者さんでもKTテープの貼り方が異なっていたりで、様々な研究同士を足すことすらもままならないのがもったいない。ありがちかもしれないけど、「より高い質の研究がもっと必要」の典型例ですね。ただ、私としては総合してもadverse effectは超短期間の肌の発疹やかゆみなどで、比較的軽度であるということと、他の治療法がとことん失敗したときにKTテープを貼ったら一気に痛みが取れた、機能が劇的に向上した、というケースも数件以上目にしてきているので、KTテープはこれからも私のツールボックスに残しておきたい道具のひとつ。それぞれの文献、もう一回読んでみようっと。

これでKTテープシリーズは終わり。次から別のテーマで10個文献レビュ―します。

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  by supersy | 2017-02-18 18:30 | Athletic Training | Comments(0)

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