月刊トレーニングジャーナル3月号発売 & KTテープ文献レビュ―その2。

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月刊トレーニング・ジャーナル3月号が発売になっています!連載10回目の今回は「より長く、生き生きとしたアスレティックトレーナーであり続けるために」というタイトルで、献身さの度が過ぎるあまり、自らブラック職場環境を作り出しがちな我々AT業界の文化について書いています。仕事のために生きるのではなく、仕事と共に生きていく―恐れながら、こうしたらより長く、楽しみながら仕事ができるんじゃないでしょうか?という提案をしてみたりなどしています。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。



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さて、ここからは前回の続きです。
#4: Thelen, Dauber, & Stoneman, 2008
やっとでてきました、アメリカの文献。

研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled
被験者: 軍の病院施設に肩の痛みを訴えて来院した、SIS/RC腱炎の患者(軍の訓練生で現役の大学生、18-24歳)42人 (軍隊系の論文はvariableのコントロールが行き届いていることが多いのでいいですよね、というのは勝手な私見かな)が対象。Random-number generatorを用い、被験者にもグループアサイメントが分からない状態(= blinded)を作った。Power Analysisによれば各グループ26人の被験者が必要だったようだが、被験者数はそれには満たず。KT Groupに所属した被験者は21人 (21.3±1.7歳、男性19名、女性2名)、Sham KT Groupも21人 (19.8±1.5歳、男性17名、女性5名) 。総じて男性が多く(85.7%)、女性患者にこの研究結果がそのままapplyできるかは不明。年齢、男女比、肩の状態などのグループ差はbaselineでは見られなかったと文中記述があるが、p値がレポートされていないため、真偽は不明。個人的には肩の痛みの期間のグループ差(KT Group 19日 vs Sham KT Group 8日)はかなりしっかりと大きい、つまりKT組の肩の状態のほうがbaseline時点でより深刻だったのではないかと思ってしまうが…。
Inclusion Criteria: 運動面を問わず、150°のelevation前に出る肩の痛み(<70°くらいでもよかったのでは?Face validityに欠けているような?); (+) Empty Can; (+) Hawkins-Kennedy; ADLのdifficulty; 18-50歳 (くどいが、これらの診断基準の根拠は?4人の、最低5年は臨床経験のあるPTがスクリーニングしたとあるが、一貫性が無かった可能性も)
Exclusion Criteria: 肩帯骨折; 肩関節脱臼・亜脱臼; AC Sprain; 頸椎障害疑い; 過去12週間以内の肩の手術歴 (12週間は短くないか?); 6ヶ月以上続く肩の痛み (既往歴に関してはrecall biasや嘘の可能性あり。AC sprainなどの除外法は説明がなく、再現性に欠ける)
**つまるところKaya et alの研究のinclusion/exclusion criteriaと酷似。時間軸から言ってあちらがこちらを真似したというのが正確か。唯一の違いは、こちらの研究では1) 年齢制限が20歳狭い、18-50歳 vs 18-70歳; 2) steroid injectionがExclusion Criteriaに含まれていない、の二点。
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テーピングは一人のKTテープ有資格者が一貫しておこなった(良いことである反面、これは同時に資格を持たない一般的なmajorityのセラピストには使えないテーピング術ということにもなる?)。スタンダードな5cm幅のKinetio Tex Tapeを使い、Kase氏の推奨するSIS/RC腱炎のテープを施された ― Yストリップをsupraspinatusに(肩上後部)、Yストリップをdeltoldに、そして20cmのIストリップをcoracoid processからposterior deltoidを包むように横に貼る、というもの。Sham KTテープは10cmの長さのふたつのIストリップを上部と下部に張り付けるのみ。何故このテーピング法をshamとして使うことにしたのか丁寧な説明があるが、その選択経緯には主観的な部分が多いように思う。最後の「実験後に被験者が全員自分のグループアサイメントが分からなかったと証言している」ことから、blindingが守られたところを確認した点は評価できる(これは別にこの論文に限った批判ではないけど、SIS患者という共通の疾患のためのテープなのに、各研究で施しているテープの詳細が異なるのはなぜ?Kase氏がスタンダード化したプロトコルを使っているという割には一貫性に欠ける)。

Outcome Measures: Shoulder Pain and Disability Index (SPADI、13項目の質問、0-100点で評価し、点数が高いほうが機能制限も高い、validity & reliabilityは過去の研究によってestablishされているMCID 10点), 痛みのないROM (flexion, abduction, scapular plane evelationの3点をgoniometerで計測、この研究ではMCIDは15°と設定 根拠は?15°って多くない?)、痛みのないROMのエンドポイントでのVAS(100mm、20-mmがMCID)という3つのアウトカムを、第二著者がグループアサイメントを知らない状態(= blinded)でoutcomeを測定。測定が行われたのはbaseline、テーピング直後、3日後、6日後の4回。Day 6で来院しなかった(lost to f/u)が合計7名(KT3名、14.3% dropout; Sham 4名、19.0% dropout)いたが、これは全員症状が順調に改善し、クラスが忙しくて来院できなかったのが理由だそうで(真実であれば、dropoutの理由としてdataをskewするようなものではない)、取得できなかったデータはITT分析を使って補った
Confounding Variables: NSAIDsを処方されていた患者は指示通りに薬を摂取し続けるように、一方で処方されていない患者には痛み止めを取らないよう指導していたのは、人道的に考えて仕方がなかったのかもしれないが、研究のデザインとしてはバイアスを生む要素になり得る。Activityに関しては「limited-duty」状態に被験者を全員指定し、上肢の運動は(研究期間中の)一週間は"excuse"させた、とあるが、現場の指揮官にその指示は徹底させられたのかは疑問が残る。被験者はテープを48-72日間つけたままにして、各自テープを取った12-24時間以内に再来院(Day 3)して二度目のテープ施術を受けるように指導されたようだが (x 2、Day 6も同様)、施術後その日のうちにすぐに勝手にテープを取ってしまわなかったかなどはself-reportでしか確認しておらず(確認によればして維持か前にテープを外した被験者数はゼロだそうだが)、真偽は不明
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Results: ROMは両グループ共にFlexion, Abduction, Scaption全てにおいて6日間で統計的・臨床的に著しく(>15°)改善したが、グループ間の差が見られたのはDay 1のAbductionのみ (↑平均差 19.1°, 99%CI 1.7-36.5°, p = 0.005)。これはただの想像だけど、95%CIにしてたらDay 3 AbductionとDay 3 Scaptionでも決定的な差は出たのでは?Power Analysisによる「十分な被験者数」も満たしていないのに99%CIというのは少しambitiousすぎるのでは?
VASも両グループ等しく6日間で著しく改善(> 20mm)、SPADIも両グループでDay 3で等しく臨床的に有意な改善 (>-10 decrease)、Day 6でも更なる改善が見られた。
Adverse effectは、2人の被験者に見られたという肌の赤みと痒み(rash)だが、これは深刻なものではなく、テープを取った1-2日後には消失した(Adverse effectを報告している研究は常に評価できる)。
テーピングで改善が見られなかった7人の患者(3 KT, 4 Sham)のうち、6人がその後のMRIでLabral tearであると診断されたのは特筆すべきではないかと思う。そもそもこれらの患者は単なるSIS/RC腱炎患者ではなかったわけで、screening processの信憑性が問われるべき。

結論: この研究によれば、KTテープは「直後に肩外転ROMを平均16.9°向上させるにはいいが、それ以外(その他ROM、痛み、機能)はshamと変わらない」ということが言える。あまりKTテープの臨床的使用価値を感じさせない内容。
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#5: Simsek et al., 2013
この研究はトルコですね。トルコアイス食べたい。

研究タイプ: RCT, double-blinded, placebo-controlled
被験者: 38人のSIS患者(平均年齢51歳、男性13名、女性25名― 平均年齢はアスリートと比較するには高め、女性被験者25/38 = 65.8%)が対象。一人のorthopedic surgeonがレントゲンとMRI診断を使いつつ、SISという最終診断を下した(画像診断も用い、labral tearなど他のconditionをr/oしたのは評価できる)。KT Group (n = 19, 男性8名、女性11名、平均48歳)とSham Group (n = 19, 男性5名、女性14名、平均53歳)にランダムに分けられた。Power Analysisの結果、各グループ最低17人の被験者が必要とわかっており、この人数はそれを満たしている
Inclusion Criteria: 18-70歳; ADLのdifficulty; 症状が>一ヶ月続いている; (+) Neer; (+) Hawkin's (これだけでSISと診断するに足るのか?)
Exclusion Criteria: Calcific tendinitis, degenerative arthritis, abnormal MRI; 肩、手首、胸部の手術; 肩の脱臼・亜脱臼の既往歴; 頸椎間板損傷疑い; inflammatory joint disease; 過去3ヶ月以内のリハビリ経験(今までのExclusion Criteriaに比べて、画像診断内容も含まれてreasonableのように感じるが…)
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テーピングは一人のcertified physiotherapistによって施された。その手法はひとつ前の研究(Thelen et al)と全く同じ。敢えて言うなら、写真を見るだけだと最後のIストリップが少し高めな気がするが?
エクササイズ: 両グループ共通して処方されたエクササイズはHughstonによってデザインされたRC強化目的の6 Exercisesと、Riivaldによってデザインされた、赤いセラバンドを用いたDynamic Scapular Stabilization(それ以上の記述は無し、一応スタンダード化されたもののようであるが)の大別してふたつ。それぞれ5 reps (許容できれば最大15 repsまで増やす)、一日一回、平日ならば1セットもしくは週末2セット、合計2週間繰り返した。記述がわかりにくいが、恐らく平日の5日間はセラピストの監視のもと、週末の2日間は各自自宅で(Compliance?)行ったものと思われる。

Outcome Measures: VAS at rest, sleepとduring activity、トルコ語版のDASHとConstant Score、AROM・PROM(Goniometerを用いて)とShoulder Isometric Strength (flex, ext, abd, ER, IR; Isometricの筋力はどれほど患者にとって機能的な意味合いがあるのか?)が測定された。計測はテーピング直後、5日後、12日後の合計3回、グループアサイメントを知らない(blinded)研究者によって測定された(なぜ直後も計測しなかったのか?テーピングの「直後」の効果が今まで報告されているのに、これは見合わない)。

Results: 性別、年齢、左右の肩、症状のdurationなど、baselineで両グループ間に差は無し(詳細、p値はprovideされず)。
両グループ共に痛み、ROM、機能と筋力の改善が見られた。グループ間差では、特にpassive flexionとpassive abduction ROMに関してはKT groupは著しく改善したものの、Sham groupは改善が見られないという違いが確認された。全体的にKT groupはSham groupを上回る結果を出しており、1) VAS during activity at Day 5 (4.87 ± 2.29 vs 6.71 ± 1.68, p = 0.01) & Day 12 (4.32 ± 2.64 vs 6.28 ± 1.93, p = 0.009); 2) VAS at night at Day 12 (2.37 ± 3.19 vs 4.82 ± 2.95, p = 0.018); 3) DASH at Day 5 (30.14 ± 17.77 vs 48.05 ± 18.59, p = 0.004) & Day 12 (25.14 ± 17.35 vs 47.10 ± 17.87, p = 0.001); 4) Painless ROM-Abduction at Day 12 (128.53 ± 30.94 vs 103.42 ± 21.67, p = 0.004); 5) Flexion Strength at Day 1 (8.74 ± 2.62 vs 7.53 ± 3.15, p = 0.032), Day 5 (10.21 ± 3.11 vs 8.42 ± 3.09, p = 0.050), & Day 12 (11.21 ± 3.37 vs 8.42 ± 3.15, p = 0.005)…これに関しては、スタート地点でそもそもKT組が有利な位置におり、Day 5で追いつかれそうになってDay 12で最後突き放した感じ; 6) ER Strength at Day 12 (8.16 ± 3.35 vs 5.95 ± 2.30, p = 0.030)ではグループ間に統計的に有意な差が確認された。
統計的に有意な差があったもののなかで、臨床的に有意な差がありそうなのがVAS at night (MCID = 2), DASH (MCID = 10), painless ROM-Abduction (15°?)か。筋力のMCIDが私にはよくわからない…。
逆にShamのほうが数値が秀でていた項目が2つある。1) AROM-Flexion at Day 1 (143.42 ± 29.63 vs 166.68 ± 20.23, p = 0.002), Day 5 (157.63 ± 22.01 vs 171.58 ± 15.88, p = 0.002) & Day 12 (165.68 ± 19.45 vs 172.89 ± 12.72)…これに関しては、スタート地点でShamが有利な位置いて、その差が縮まらなかったイメージ; 2) PROM-Flexion at Day 5 (173.47 ± 11.44 vs 178.16 ± 4.77, p = 0.03)。ただし、5°の差は臨床的に有意と言えるか疑問

結論: リハビリにKTテープを併用した場合、痛み、機能、painless ROM、muscle strengthが2週間に渡ってより大きく改善されることが見込める。多少項目別にばらつきはあったものの、総じてKT tape outperformed Sham tapeと言ってよさそう。

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#6: Smith et al., 2009
これはUKの文献。フィッシュアンドチップス食べたい。この研究では、肩甲骨周りの筋肉のimbalanceが症状に関連しているのか、そしてテープでそれが効果的に介入可能かを検証。具体的には、1) 健康な被験者とSIS患者のUpper vs Lower Trapの活性度を比較、そこにimbalanceがあるか、2) SIS患者にのみScapular tapingを使ってUpper vs Lower Trapの筋活性に変化が出るかを研究しました。今回検証されたテープはKTではなくて、Leukotape。

研究タイプ: Cross-sectional Study, with no randomization, no blinding, no placebo-control
被験者: 16人のsymptomatic patients (平均年齢 29.8 ± 8.3歳、男性7名、女性9名)と「比較役」として性別、年齢、BMIと利き手をmatchさせた32人の健康な被験者(平均 26.5 ±4.5歳、男性14名と女性17名は)が対象。Power Analysisに関しての記述は無し
Inclusion Criteria: Symptomatic被験者は1) has full shoulder AROM; 2) unilateral shoulder pain > 1mo; 3) それからスポーツをする人を集めたいということで、少なくとも一週間に一回は泳いでいる人を選んだそう。一週間泳いでいるからってスポーツをしていると言えるか?あまり例を見ない、浅はかにも受け取れるinclusion criteria"熟練の"physiotherapistひとりがそれぞれの患者のSIS診断を担当("熟練"の定義は?)。1) 肩の前外側面に症状がlocalizeされており、i) Neer & Walsh Test, ii) Hawkins-Kennedy Test, iii) Active Shoulder Elevation、iv) Supraspinatus腱の触診、v) Resisted Isometric Abduction、vi) Empty Can Test、vii) Painful Arcのうち最低でも2つが陽性(痛みあり)である患者をeligibleとする(7項目のうち最低2つ?5つ陰性だとすると、それは下手をするとSISでない可能性のほうが高いのでは?)。 Asymptomaticなほうの被験者は、大学の学生で 1) full AROM; 且つ 2) 肩の怪我、痛み、不安定症の既往歴無しが条件。
Exclusion Criteria: (+)ULTT1; 頸椎・胸椎損傷疑い; GH不安定症 (= Load and Shift TestもしくはSulcus Sign 陽性; Load and Shift Testは悪くないテストだとは思う、Sn, Sp, +LR, -LR共に優秀と記憶している); Gross RC weakness (これはどうやって確認されたのか?)
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テーピング: Coverrollを下地に、Leukotapeを使ってUpper Trapを抑制、Lower Trapを活性化する目的でデザインされたScapular Tapingを使用。1人の「このテープを熟知した」研究者が一貫してテーピングを担当(熟練の基準とは?熟練でないと、このテープは同じようにはapplyできない?)。
Outcome Measures: 分間60ビートを刻むように設定されたメトロノームに合わせて、被験者はScaptionを行う(4秒かけて上げ、4秒かけて下げる)。そのScaption中、EMGによるUpperとLowerの筋活動を測定し、Upper : Lowerの比率として記録した。
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Results: Upper/Lower Ratio―(Table 3)はテーピングの有無(テープなし、p = 0.007; テープあり、p = 0.035)にかかわらず、健康な被験者に比べてSIS患者のほうがUpper:Lower Trapの活性化のratioが高い、つまり、僧帽筋下部の活動が低下・僧帽筋上部が過活動を起こしていることが確認された(95%CIで見るとわずかなoverlapがあり、これは統計的に決定的ではない)。SIS患者のテープをする前と後では筋肉の活性バランスに大きな変化は見られなかった。個々の筋肉のEMGに目を移してみると平均してLowerの抑制がわずかに起こっている(p = 0.145、統計的に有意でない、被験者間のvariabilityは高い)のに対して、Upper Trapの抑制がテーピングによって著しく起こっている(-13.0%, 95% CI -8.6 to -17.3%、p = 0.000, 95%CI幅から見ても統計的にも決定的)ことがわかる。2人の被験者(2/16 = 12.5%)がテープを「キツい(restrictive)」と感じた。

結論: SIS患者が、健康な人に比べてUpper Trapの活性度が高く、Lower Trapに抑制が多くみられる。Scapular Tapeをすることで、Lower Trapの活性はかなりランダムに影響を受けるが、Upper Trapの活性を決定的に下げる(=効果的に抑制する)ことができる。
これらの筋活性・抑制の変化が実際のADLやスポーツパフォーマンスに及ぼす影響、そして効果の持続性は不明である。

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  by supersy | 2017-02-12 19:30 | Athletic Training | Comments(0)

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