月刊トレーニングジャーナル1月号発売 & Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその3。

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月刊トレーニング・ジャーナル1月号が発売になっています!連載8回目の今回は「脳震盪シリーズ」第三弾です。今回は脳震盪からの回復、というところに焦点を置き、現行のガイドラインで推奨されている「休息」について掘り下げたのち、最新エビデンスに基づく「休息」とは逆の発想の治療法についても言及しています。私はものすごく近い将来こっちがスタンダードになると思っているのですが…。興味のある方はこちらからどうぞ。一部書店で販売していますがオンラインでも購入可能で、送料は無料だそうです。これで脳震盪シリーズは一区切りで、次回からはまた別のトピックに移ります。



思いっきり私事ですが、2016年秋学期が無事に終了いたしました!学生としても、教授としても、です。明日、日本に帰ります。EBP、PRI、EBP、PRIと講習が立て続けにあるので楽しみです!もう一仕事して12月を無事に終えたら、少し年始はゆっくりしたいなぁと思っちょります。

さて。今回のブログは本当に脈絡がないのですが、以前に何度か書いたことのあるLever Sign Testについて、新しい論文を見つけたのでまとめておきます。なので、最新エビデンスまとめその3ということにしておきますね。以前の記事へのリンクも下に貼っておきます。

Lelli's Test―ACL断裂のための新しいスペシャルテスト!?
Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその1。
Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその2。

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2015年12月発表らしいこの論文1…どうして前回のまとめのとき(2016年3月)に見つけなかったんだろう。見落としていたのかな?ちなみにこれはPMCなので、誰でもフリーアクセスで読めますよ。興味のある方はこちらから。

今回のこの研究で評価できるのは1) 麻酔有りと無しの場合を比較したのち、2) 被験者全員がDiagnostic Gold StandardであるArthroscopy(内視鏡)をしてACL断裂の有無を確認している、というところですね。例えばDr. Lelliの以前の研究2なんかは診断基準としては甘いMRIを使ってましたからね。

ただ、inclusion criteriaはちょっと不可解です。「内視鏡によってACL断裂が認められた患者117人 (男96人、女21人、平均25.8 ± 5.9歳)」ということなんですけど、もし前述の「実験の手順」の記述が正しいとしたら、この実験で検証された患者が被験者になれる資格(eligibility)があったかどうかは一番最後に判明したことになります。被験者になれるかどうかわからないまま、とりあえず実験に参加させて最後にふるい落とす…そういう実験デザインは聞いたことがありません。そういう意味ではこれはRetrospective Studyってことになるのでは?Prospectiveでそんな後付けのinclusion criteriaってありますか?どうしてinclusion criteriaを「Physical Examの結果、(Lachman、Anterior Drawer、Pivot Shiftのいずれかが陽性などで)ACL断裂の疑いが濃厚な患者」にしなかったのか?それで診断研究の一環として最後に内視鏡をして、実際にACL断裂の有無で2x2 Tableを作ればよかったのに…。 「ACL断裂があるかないかわからない」患者を使うからSensitivityもSpecificityも実際の臨床状況に近い数値が出るんです。「ACL断裂があることがもうわかっている」患者しか使わなければ、Sensitivity(除外力)しか求めることができませんし、Specificity(確定力)は未知のままです。確定力と除外力のバランスが取れていることが確認できなければ、「触れただけで全ての者にぼこぼこ陽性を出してしまうようなやたら敏感なだけのテスト」ではないという保証がないではありませんか。これは比較的致命的なデザインミスかも。

まぁとりあえず読み進めます。2人の"臨床家"が、手術前の患者の麻酔が無い時とあるときに健側と患側の両膝にLever Sign、Lachman、Anterior Drawer、Pivot Shift Testを使って結果を記録。この際、2名の臨床家はお互い、もうひとりの臨床家がどういう判断を下したのかを知らない状態(=independently assessed, blinded to the other clinician's results)で陽性・陰性の判断を行います。しかし、この臨床家(clinician)という緩い表現もあまり文献では見かけませんね、整形外科の医師なんでしょうか?PA?AT?臨床経験はどのくらい?Lever Sign Testのトレーニングをどのくらい積んでいるの?これもここらへんが分からなければ、再現性の高さが保証されませんね。
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で、結果です(↑)。麻酔前と後での数字を比べると、1) Pivot Shift TestとAnterior Drawerは患者が意識がある状態では除外力に限界がある。そして、2) Lachman TestとLever Sign Testは麻酔の影響が比較的少ない、つまり、意識がある患者に行っても有効、ということが言えそうです。Muscle spasmやGuardingの影響を最も受けにくい、と言い換えてもいいですね。4つ全て比較しても、Lever Sign Testが一番優秀ですね!94%、98%とは非常に高い数値。前回紹介したThapa氏らの研究3の85.71%より高いです。

ちなみに2人の臨床家のテスト結果を比較したInter-rater Reliabilityも計算されているんですけど、ICCがLever Sign Testで0.89と0.96、Lachman Testで0.85と0.91、Pivot Shift Testで0.82と0.88に、Anterior Drawer Testで0.84と0.93と、いずれもかなり優秀でした。これも4つ比較するとLever Sign Testが一番高いんですね。Lever Sign TestのReliabilityが報告されたのはこれが初めてじゃないかな?「どんな経験を持つ臨床家がテストしたのか明記されていないので、再現性は保証されない」ということはくどいくらいに強調しておきたいですが、それ以外はencouragingな結果です。

さて、著者らはLever Sign Testのシンプルさと実用性の高さ、そしてACL断裂という傷害の解剖学的な観点から「tibiaではなくfemurをmanipulateすることは理に適っている」と論じています。その上で、他の一般的なACLテストよりもLever Sign Testのほうがsensitivityとreliabilityの高い、有効なテストである、というのがこの論文の結論です。私は個人的に、以前にも論じたようにLever Sign Testのそういった利点を踏まえたうえで、
1. 95%CIは分析含まれておらず、決定性のある統計かは不明
2. この研究の前述したinclusion criteriaでは、研究に多大なバイアスが生じている可能性がある
3. Exclusion criteriaに、medial meniscus posterior root tear, bilateral ACL tear, multiple ligament injuries or previous arthroscopic surgeryが含まれていることから、こういった患者に対するLever Sign Testの有効性は全く分かっていない
4. 試験者の素性(といういい方もアレですけど)もわからないので、私のするLever Sign Testと彼らのするそれがどれだけ一致するか不明…
という大きな制限がこの研究には存在するのだ、ということも噛みしめておきたいと思います。この論文も読めてよかったけれど、研究の質や読みごたえとしてはThapa氏らの研究3のほうが面白かったなぁ。

個人的には、次は被験者対象をもっと拡大して、半月板損傷付随やACL再断裂の患者にどれほどLever Sign Testが有効なのかということについて学んでみたいです。そんな研究出ないですかね、楽しみにしてます。しかし、これだけ名実ともに大きくなってくると、いよいよ下肢の傷害診断の授業でLever Sign Testも教えなきゃいかんな。来学期、少し膝のところ内容を入れ替えてみるか…。

1. Deveci A, Cankaya D, Yilmaz S, Özdemir G, Arslantaş E, Bozkurt M. The arthroscopical and radiological corelation of lever sign test for the diagnosis of anterior cruciate ligament rupture. Springerplus. 2015;4:830. doi: 10.1186/s40064-015-1628-9.
2. Lelli A, Di Turi RP, Spenciner DB, Dòmini M. The "Lever Sign": a new clinical test for the diagnosis of anterior cruciate ligament rupture. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2014. doi:10.1007/s00167-014-3490-7.
3. Thapa SS, Lamichhane AP, Mahara DP. Accuracy of Lelli test for anterior cruciate ligament tear. J Inst Med. 2015;37(2):91-94.

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  by supersy | 2016-12-14 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

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