不要な筋抑制を取り除け!最新エビデンスの示す最も有効なAMI治療、Disinhibitory Interventionとは?

AMIの知識をアップデートしようと思って下のSystematic Review1を読んでました。面白かったのでめもめも。ちなみにこの記事は無料公開されているので誰でも全文読めます。下の参考文献にリンクをぺたりと貼っておきますので興味のある方はどうぞ。
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1965年から2012年までに発表された大腿四頭筋の活性化に関する論文をまとめたこのReview、条件を満たした10件の論文を最終的にincludeしていますが、実験対象は健康な被験者からKnee OA、膝の人工関節手術後にPFPS、Meniscusまで様々です。比較対象(control)としてAMI患者との対比目的で健康な被験者を使っているならともかく、AMIのない健康な被験者のみを使った研究も含まれているのは個人的には少し納得が行きません。あくまで大腿四頭筋に抑制がかかっていることを前提とした研究のみをreviewすべきと思うのですが(じゃないとdisinhibitoryという言葉そのものが成り立たなくなりやしませんか?)…私がこのReviewを行ったわけではないので、まあここは仕方ないですね。

さて、読み進めてみると知らないことがいっぱいだったので驚きました!私の知識は2002年発表のHopkins氏らの論文2あたりで止まっていたようで、今日の今日まで1) AMIに最適な物理療法はCryotherapy。20分のアイシングでdisinhibitory効果が40分は持続する。2) 30分のTENSも同様のdisinhibitory効果が見られるが、電流を流し終えたとたんにその効果も消えてしまう。TENSをしたまま運動をさせることは現実的に考えて簡単ではなく、故にDisinhibitory InterventionとしてのTENSは実用性に欠ける…と理解していました。前回ブログにまとめた内容そのままですね。しかしよくこのReviewと、それからReviewに含まれる個々の論文も読んでみると、どうやらこの論文(↓Pietrosimone et al, 20093)あたりで「TENSのほうがCryotherapyよりも効果が高いのではないか」という研究結果が出始めて、結論がひっくり返った様子ですね。知らんかった!
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Pietrosimone氏らのこの研究2では33人の膝OA患者をランダムに 1) 20分間座っているだけ(Control); 2) 20分間の膝周りのアイシング (Cryotherapy); 3) 45分間のTENS治療 (TENS)の3組に分け、それぞれの治療を施した後に大腿四頭筋の活性度を検証。結果だけざっと紹介してしまうと、こんな感じ(↓)。
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この研究で大腿四頭筋の活性度を示すのに使われたのがCentral Activation Ratio (CAR)というコンセプトですが、このCARのベースラインからの変化をパーセンテージで表したものが上のグラフです(+の変化が改善、-が悪化を意味します)。見ての通り、より+の、高い数値をたたき出したのはTENS。著者らの「CryotherapyのほうがTENSよりも効果が高いだろう」という仮説に反して、「Disinhibitory効果はTENSのほうがより長く強く続いた」という結果が出たのです。Controlと比較して、TENSは20、30、45分後全てのタイムポイントで、Cryotherapyは20分後のみに統計的に有意な差が認められました。Effect sizeはTENSは3つ全てのタイムポイントで"strong"だったのに対し、Cryotherapyは20分後と45分後が"strong," で30分後は"moderate"。つまるところ、膝OA患者により程度の高い大腿四頭筋の活性化を促したいならば何もしないよりも、アイシングを20分するよりも、TENSを45分使った方が効果が高い、という結論が出たわけです。

これを踏まえて一番最初のSystematic Review1に戻りますが、こちらでも最終的な結論は:

●20分間のCryotherapyをしたのちのdisinhibitory効果は最低でも45分間は持続するようである。Effect sizeは時間と共に増加する傾向にあり、30分後でCohen d=0.46 (moderate)ほどなのが45分後にはCohen d=0.76 (large), 95%CI -0.13 ~ 1.59まで上がる。しかし、見ての通り95%CI幅は広くゼロを挟んでいる

●45分間のTENSは、治療後20分後は小さな(small)効果しか認められないが(Cohen d=0.38, 95%CI -0.52 ~ 1.25)、30分後には"moderate"(0.63, 95%CI -0.30 ~ 1.50)、45分後には"large" (1.03, 95%CI 0.06 ~ 1.92)になり、最終的に95%はゼロを挟まない生の数のみになる。つまり、統計的に良い効果が保証される。

●Lumbopelvic manipulationやPROM、Active Releaseなどの徒手療法は総じてイマイチ。治療直後は効果が少し見られるものの(Cohen d=0.38, 95%CI -0.35 ~ 1.09)、時間と共に効果は薄れ、60分後には消えている(0.18, 95%CI -0.54 ~ 0.89)。95%CI幅はやはり広くゼロを挟んでいる

●4-5人を対象にしたCase Seriesによれば、4 NMESは長期的に使えばそこそこ効果があるようである。 3週間継続して使えばCohen d=1.66 (95%CI 0.10-2.90)、6週間で1.65 (95%CI 0.09-2.89)、3ヶ月で1.71 (95%CI 0.13-2.96)に6ヶ月で1.87 (95%CI 0.24-3.13)とどのタイムポイントでも非常に大きく、決定的な効果が得られるという報告がされている4一方で、効果が無いどころか悪影響(5週間NMES使用で -0.25, 95%CI -0.94 ~ 0.45; 16週間使用で -0.50, 95%CI -1.19 ~ 0.22)があったというRCT研究もあり、矛盾が見られる。長期に渡って使用した場合のみの数字であることを踏まえ、さらにエビデンスのレベルとして信用すべきはRCTのほうと判断すれば、現場で使う臨床的価値には今のところ欠けるか。


…といった感じで、Systematic Review1 の結論としては "The current literature finds TENS to be the most effective intervention in increasing voluntary quadriceps activation because it produced positive homogeneous findings and CIs that did not cross zero (p.418)" ということになるようです。ふぅむー、まだまだ研究が足りないのは考慮するにしても、現時点でのこの結論は納得です。Cryotherapyより今はTENS、なんですね!

しかしこの結果は真摯に受け止めた上で、私はそれでも個人的にCryotherapyをこれからもAMI治療目的で使う可能性は大いに残しておきたいと思います。なぜか?CI幅が広いのはまだ研究が少ないのでこれから狭めていくとして、Cryotherapyのdisinhibitory効果を否定するエビデンスは現時点で存在しないこと、そして今まで出ている研究結果は総じて「効果アリ」であるから、ということと、あとはやっぱり効果の早さですかね。20分のアイシングで得られる効果 vs 45分のTENSで得られる効果、となると、Cryotherapy < TENSだったとしても、その20分という足の速さが魅力的に思える現場の症例も多くあるんじゃないかと思うからです。例えば、患者がリハビリできる時間が45分しかない場合、その45分全てをTENSに使うだけで終わらせてしまうのか、20分Cryotherapy使って、残り25分思いっきり運動させるのかではだいぶ、こう、なんというか、実用性が異なると思いませんか?逆に時間が無限にある場合、Cryotherapyを45分使ったとして、もしかしたらTENS45分を凌ぐほどのDisinhibitory効果が出る可能性もあるのでは?そっちの研究も是非見てみたい…という欲求もムクムク沸いてきますね。TENSが必ず45分でなければいけないのか(もっと短くても同様の効果は認められないのか?)という疑問も生まれます。現時点ではどうやらTENSがベスト、ということを学べたのはとても良かったですが、理想のprotocolを是非これからも皆様に突き詰めて研究し続けていってほしいです。私は数年したらまたこのトピックに戻ってくることにしましょうー。

1. Harkey MS, Gribble PA, Pietrosimone BG. Disinhibitory interventions and voluntary quadriceps activation: a systematic review. J Athl Train. 2014;49(3):411-421. doi: 10.4085/1062-6050-49.1.04.
2. Hopkins J, Ingersoll CD, Edwards J, Klootwyk TE. Cryotherapy and transcutaneous electric neuromuscular stimulation decrease arthrogenic muscle inhibition of the vastus medialis after knee joint effusion. J Athl Train. 2002;37(1):25-31.
3. Pietrosimone BG, Hart JM, Saliba SA, Hertel J, Ingersoll CD. Immediate effects of transcutaneous electrical nerve stimulation and focal knee joint cooling on quadriceps activation. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(6):1175-1181. doi: 10.1249/MSS.0b013e3181982557.
4. Stevens JE, Mizner RL, Snyder-Mackler L. Neuromuscular electrical stimulation for quadriceps muscle strengthening after bilateral total knee arthroplasty: a case series. J Orthop Sports Phys Ther. 2004;34(1):21-29.
5. Palmieri-Smith RM, Thomas AC, Karvonen-Gutierrez C, Sowers M. A clinical trial of neuromuscular electrical stimulation in improving quadriceps muscle strength and activation among women with mild and moderate osteoarthritis. Phys Ther. 2010;90(10):1441-1452. doi: 10.2522/ptj.20090330.

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  by supersy | 2016-08-30 21:30 | Athletic Training | Comments(0)

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