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NATA Clinical Symposia in Baltimore その2。

NATA Symposium 二日目です!

#1: The Mind Matters: Psychosocial Factors of Injury
これはちょっと想像していたのと違ったけど、唯一面白いなぁと思ったのは『Physical Predictors of Perceived Susceptibility of Sport Injury Among Collegiate Athletes: An Exploratory investigation』の、アスリート本人が自分を「怪我しやすい」と認識しているかどうかはFMSのスコアやY-Balance Test、Landing Error Scoring Systemの点数とも関係なく、『過去の受傷歴』のみ(7.3% of perceived susceptibility can be explained by previous injury)という結果かなぁ。アスリートが『自分は怪我をしやすいほうだ』という認識は、過去に怪我をしたときに「アスリート」から「怪我したアスリート」にカテゴリーが変わるあの感じを体験してしまうことがきっかけになることが多いのでは…、という考察でした。リハビリを通じて自信を育て、競技復帰時に彼らの自己カテゴリーも「怪我したアスリート」から「健康なアスリート」にしっかり切り替えられるような、何かうまい意識改革の方法が必要かもしれませんね。

#2: Neuroplasticity After Musculoskeletal Injury
40分x3の講義、これは面白かった!目玉が飛び出るような新情報はなかったけど、逆に私が以前にまとめたことがあるような記事の引用も多く(例えばこれの#1とかこれの#4とか)、あー、私が読んできていた論文は正解(?)だったんだ、と妙に安心できました。
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『Neural Origins of Dysfunction Following Joint Injury』ではAMIの話もたくさん出てきましたが、中でもTMS(Transcranial Magnetic Stimulation↑)という実験方法は知らなかったので面白かった!磁場を生み出す特殊な器具を用い、脳の中でもピンポイントで特定の部位を活性化させることができるんだって。それで例えば、無理矢理患者の右大腿四頭筋を活性化させて(膝がびよんと伸展する)、で、大腿四頭筋にもEMGを取り付けておけば、どの程度の脳の刺激がどういうmotor responseを生んだかわかるんだそうですよ。へぇー!なんかサイエンス漫画みたい!最後、『Targeting the Brain during Rehabilitation』では「一時間のBalance Trainingで(脳機能だけでなく)脳のニューロン構造そのものが変わることが分かっている」としたうえで、「僕は研究を始めた当初はACL損傷をした患者の脳機能が、健康な人の脳機能と全く同じになればいいものなんだと思っていたけれど、そういうわけじゃないと気が付いた。実際、怪我をしても身体機能がフルに回復している患者ほど、脳の変化の量は大きいんだ」と言っていてなるほどー!と思いました。そうですよね、脳は常に体の状況に合わせて変化している。体が変わってしまったら(=怪我をしてしまったら)それに合わせて脳が変化していくことは至極当然なわけで、それをひっくり返して元に戻そう、なんて考えなくてもいいんです。変わらないで!元のままでいて!というのはそういう観点から見ると意味が通らない。脳が変化していく中で、一番局所に負担がかからない、バランスの取れた変化へと導いてやれればいいってことですね。「我々がリハビリ中に患者に与えるフィードバックも、言葉遣いや内容に変化をつけることで患者の脳の異なる部分を活性化させられる。我々は本当に患者の脳にがっつり影響を与えられる存在なんです」と彼も言っていたように、どういうフィードバックを与えるかはもっと我々臨床家も慎重になって考えるべきところですね。例えばInternal feedbackばかりでなくExternal feedbackも作ってあげる、VisualばかりでなくてAuditory feedbackもしっかり増やす…など、競技環境に近い状態でのFeedbackも意識して(例えば、前も書きましたが、Visualに頼りすぎた患者が片足で立つたびに足元を見なきゃいけないという衝動に駆られるのは、スポーツをする上ではマイナスにしかなりませんよね?本来はボールや相手の動きを見ていなければいけないところ、下を向いてばかりいると、それが将来の怪我につながる危険性もあります)患者とコミュニケーションを取る必要があるかと思います。

#3: An Evidence-Based Approach for the Treatment of SLAP Lesions
Thrower's Ten/Advanced Thrower's Tenプログラムを作ったことで有名なWilk氏が第一スピーカーでした。豪華!さすがにご自分の分野で今までに発表された研究は全部把握しているんだなー、というような文献の宝庫で、Tampa Bay Rays選手の90%/Toronto Blue Jays選手の79%/バレーボール・水泳選手の80%超が、痛みが無い状態でもMRIを取ればLabrumに異常が確認できる、その多くはNormal varianceだ、やはり近年SLAPは過剰診断されすぎだ、という数字には改めてびっくりしました。それを踏まえたうえで、SLAP手術を受けた野球選手でピッチャーだけを見ると競技復帰できたのはうち40%、そして、(痛みやdysfunction無く)元のパフォーマンスレベルまで戻れた選手はたった7%という統計をシェアしてもらったので、うわー、手術の成功率は非常に低いものなんだなーと実感。野手ならともかく、やはり投手は完璧な競技復帰は相当難しい模様。あとば、脈絡はありませんが、「Labrumの上半分はmeniscus-like (poor blood supply)、下半分はcapsule-like (highly vascular)」という説明は初めて聞いた!知らなかった。肩の怪我とhip strengthの関わりや、lumbopelvic controlの関わりの文献もいくつか挙げられていたので、そっちも調べてみようっと。Pulse trainingという種類のリハビリも初めて耳にしました。これも調べる!

#4: Seasonal Effects on Concussion Assessment Performance
最後はこれ!友人の発表があったのでわくわく向かいました。面白かったのは彼の研究だけ(『Cumulative Change in Ocular Near Point of Convergence in Response to Football Sub-concussive Head Impact』)だったのでそれをまとめます。昨日も書いたようにNear Point of Convergence (NPC)というのは、被験者の鼻先に物体をどんどん近づけていって、被験者が焦点を合わせられなくなる(物体がふたつに見える)ようになった時点での鼻先から物体の距離のことを指します。
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現在は例えば脳震盪の診断のほとんどは患者のself-reported symptomsやBalance testなどに基づいて行われていますが、本当に患者が素直に感じている症状を我々に隠さず教えてくれるのか、そして、バランステストは足首や膝の怪我など、脳震盪以外の影響も大きいのでは、ということから、このNPCテストがこれから有益な診断テストになりえるのでは、という話なのです。ちなみにこの発表ではふたつの研究を紹介していたのですが、一つ目は1) Laboratory Setting: 被験者に10回軽くサッカーボールのヘディングをしてもらい(平均14.5g)、その前後のConvergence Test結果を比較をする。二つ目は2) Field Setting: NCAA D-1のフットボール選手の受けるHead impactをマウスガードを使って計測し、その平均別に被験者をlow-impactとhigh-impactグループに分ける。そして、シーズン中の練習前と後のNPCを計測し、変化を記録、というもの。1)では、ヘディングという軽い頭部への衝撃で、もちろん被験者の誰も脳震盪を起こさなかったにも関わらずヘディングの直後も24時間後もNPCに統計的に有意な差が認められた(=NPCの距離が長くなった)。つまり、脳震盪を起こすほどではない軽い衝撃でも、oculomotor機能に与える悪影響がはっきりと見て取れる、という結果があったのに加え、2)ではhigh-impactの選手たちは練習を重ねるにつれ、徐々にNPCにはっきりとした差が出始め(high-impactの選手たちのNPCが上昇、low-impactは変わらず)、上昇してしまったNPCはpost-seasonにならないとbaseline値まで戻らなった。つまり、1)と同様に、脳震盪を起こすほどではない軽い衝撃でもoculomotorへのダメージは蓄積されるようで、もしかしたら他の脳震盪テストには表れないような微々たる変化でもNPCはそれを感知することができる、且つ、完全に復活するまで時間を要す、ということですかね。後で個人的に質問してみたら、実際に脳震盪と診断された選手はこの研究内で3人いたそうで、『sub-concussiveによる上昇値と、脳震盪と診断された選手に確認されたNPCの上昇幅はかなり差がありました』とのこと。今後の研究で『この程度の上昇はsub-concussive(願わくばreversibleで、いつくらいの期間休息すれば良し、等も治療アプローチもわかると尚よいですね)』とか、『この上昇は脳震盪と言ってよい(=診断ツールとして使用可能)』みたいな明確な数値化がされると尚使い勝手が良いですね!診断ツールとしてのNPC…簡単だし、お金もかからないし、全然アリだなー。最近の脳震盪診断界隈ではNPCとdual-taskがトレンドのようです。もうちょっと学んでみよう!
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  by supersy | 2016-06-24 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

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