The Ottawa Ankle Rulesより優れたものは出てきたか?骨折鑑別・最新エビデンスのReview。

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これって足首の捻挫?骨折?― the Ottawa Ankle Rules。
…という記事をここで書いたのはもう4年も前になりますね。ここ数年でこのThe Ottawa Ankle Rules (OAR↑)はすっかり有名になってアメリカAT界でもPosition Statementに「ATが行うべき骨折鑑別のスタンダード」として書かれるようになりましたけれども、この記事を書いてから4年という月日が経った、ということもまた事実。それではこの4年間の間に、我々がアップデートしておくべき知識、最新エビデンスっつーものは果たして出てきたのでしょうか。

●我々がここまで知っていること
2003年発表のSystematic Review1によれば、39の論文を合わせたOARの診断力の統計は、下のようになっています。要約すると、OARが陰性の場合はほぼ確実にレントゲンは必要無い→骨折でないと言えるけれども、陽性だったからと言ってレントゲンが必要である→骨折であるということは必ずしも言えない、ということになります。Rule outには有効でも、Rule inはできませんよ、と。
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なので、いかにSpecificity及びPositive Likelihood Ratioが上げられるか、というのが次の課題で、OARの修正版であるBuffalo Rule (BR)を使うと45-59%くらいにまではSpecificityが上昇しますよ、2,3 なんて話を前回まとめたんでした。

●最新Systematic Review
何か新しいニュースはないのかしら?
ってわけでつい先月発表されたSystematic review4を読んでみました。
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この論文は、16歳以上の患者を対象にした研究のみに対象を絞り、前述のSystematic review (2003)1 に加えて21のOriginal studyをreview、その内容をまとめたもの。
 - どうやら試験者の経験によってSpecificityが多少左右される?
 - いつOARを使うべきかは(i.e. 受傷後すぐvs数日待つ?)はこれらの研究から
  結論付けることはできない。受傷後48時間以内に使うのがいい、とBashmann氏ら1
  は言ったけれども、最近の研究でそれが裏付けられているわけでもなさそう。
…ということと、あと面白かったことが3つありまして。

●その1: 陽性時にTuning Fork Testを足す
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そういえばこの論文読んだことあったなー。Systematic review4で触れられていたのはこの記事(↑)5で、『OARが陽性になった時に、二次的スクリーニングとしてTuning Fork Testするといいんじゃない』というやつ。最近流行りのちょい足しですね。ちょっと古い論文なんですけど(2006年発表)、内容はかなり面白いので詳しめにまとめます。
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Dissmann & Han5は、1)12歳以上で、2)足首の内反が受傷メカニズムで、3) OARが陽性になった患者49人を対象に、振動させたTuning forkをそれぞれ上写真のA(外果)とB(遠位腓骨幹、最も圧痛が激しい部位から5-10cm近位)の位置に置き、痛みや不快感があるかどうかを陽性診断基準として、これを加える事で診断価値がどう変化するかという実験を行いました。 …で、結果がコレ(↓)なんですけど…
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Specificityと+LRを上げる、という目的には遠位腓骨幹に置いた場合の数字はかなり優秀ですよね。95%CIを考えてもこれはかなり確定的と言ってもいい数字。つまり、
 - OARが陽性の患者に振動させたTuning fork testを遠位腓骨幹(最も圧痛が
  激しい部分から5-10cm近位)に置き、痛みや不快感を患者が訴えた場合は
  レントゲンがほぼ確実に必要→骨折の疑いがかなり濃厚になる
…というわけ。判断が難しいのが、OARが陽性でこのTuning fork testが陰性だった場合ですね。骨折である可能性が在るとも無いともこの段階では限定できない。この研究、外果『と』遠位腓骨幹『両方』で痛みがあった場合も計算して出しておいてくれればよかったのにー。もったいない!

●その2: OARより優秀とは言えなそうな新ルール
オランダ発祥のThe Leiden Ankle Rule6-8 というのと、the Utrecht Ankle Rules8 というのは、数字としては残念ながらイマイチのようです。
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骨折に関してはfalse negative(本当は骨折している患者をしていないものと見逃してしまう)が一番害があると思うので、保守性を失うわけにはいかないのです。だから、Sensitivityを犠牲にSpecificityを上げるようなテストは現場に不向きだと思うんですよね。そういう視点からはこれらはどちらもOARに取って代わる!と言えるような出来には仕上がっていないかなぁという印象です。ちなみに、それぞれのルールの詳細はこんな感じ(↓)。患者に当てはまる項目があれば加点していくタイプのClinical Prediction Ruleです。で、それぞれ何点以上だったら陽性、というやつ。
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なんつーか…個人的にはこれは暗記できそうもないので無理です(私は診断時には紙とかわざわざ持ってくるのしゃらくせー、テストは全部頭に入れておきたいぜー、というタイプ)。これを覚えるくらいならさっきのTuning fork test足すやつでいいかと。

●その3: OARより優秀な可能性のある新ルール
The Bernese Ankle Rules (BAR)というテストは面白そうです!このSystematic review1 では「BARに関して発表されたオリジナルの研究9 によればSensitivityは100%、Specificityは91%と可能性は感じる。今後の研究に期待」くらいにしか書かれていないので、このReviewに含まれなかった、新たに発表された論文3件10-12 を加えてまとめてみたいと思います。

まず、BARとはなんぞや?
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これは、2005年にスイスの医師らによって発表された、比較的新しいルールです。9 前述の2つの新ルールに比べればだいぶシンプルで、BARは『3つのことをした時に、1回でも痛みが出るか』どうかでレントゲン必要性の有無を判断します。a) Indirect fibular stress: 外果の端から10cmのところを腓骨・脛骨を圧迫しあうように押す; b) Direct medial malleolar stress: 内果を直接親指で押す; c) Compression stress of midfoot and hindfoot: 踵と中足骨頭を持ち、矢状面上で中足と後足を圧迫する…上の写真の通りですね。
で、過去にBARについて発表された論文は私が見つけた限りでは4件あったので、それらの統計を全て下に書き出してみました。
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これを見た正直な感想は、『初期の研究ふたつではメッチャ数字いいのに、最近のふたつは全然だめじゃーん!』という混乱ですかね…。ちょっとここまで数字がバラけちゃうと、現場で使うのは躊躇われるなぁ。特に、最後の研究12 は昨年3月に発表された最新のもので、OARとBARを直接比較したRCT研究。内容もDouble randomizedにsingle-blindedで、被験者の数も203人と、なかなかいいデザインなんですよ。救急病棟の医師が使った場合とトリアージ担当の看護師が使った場合での数字を比べているところも面白い。このSensitivity、Specificityの職業間差はp = 0.13; 0.17とそれぞれ統計学的に有意ではなかったものの、私としてはSensitivityの69%と86%という差は(人的エラー、誤差を加味しても)臨床的に有意といってもいい差かと思います。著者らの結論は『BARのSpecificityは確かにOARより優秀だったが、そうはいってもEggli氏らの研究9 で出た数値ほどではないし、このSensitivityは実践に使うには低すぎる』というものでした。これは私も賛成せざるを得ません。

そんなわけで、アレですね。個人的にまとめると、
 - やっぱりOARのSensitivityの高さ、安定性は抜群!
 - OARのSpecificityの低さを補うには、陽性時、さらに遠位腓骨幹にTuning fork test
  を使い、痛みや不快感があるか見ると確定に有効
 - 新たなルールが複数提案されており、中ではThe Bernese Ankle Rulesについては
  これからも研究をチェックしていきたいとは思うものの、現段階でOARよりも優秀
  と言えるものはなし
…という感じです。骨折鑑別はヨーロッパ諸国の研究が盛んですね!これからも色々論文が出てきそうなので楽しみです。

1. Bachmann LM, Kolb E, Koller MT, Steurer J, ter Riet G. Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: systematic review. BMJ. 2003;326(7386):417.
2. Northup RL, Ragan BG, Bell, GW. The ottawa ankle rules and the "buffalo' rule, part 1. Athl Ther Today. 2005;10(1):56-9.
3. Northup RL, Ragan BG, Bell, GW. The ottawa ankle rules and the "buffalo' rule, part 2. Athl Ther Today. 2005;10(2):68-71.
4. Jonckheer P, Willems T, De Ridder R, Paulus D, Holdt Henningsen K, San Miguel L, De Sutter A, Roosen P. Evaluating fracture risk in acute ankle sprains: Any news since the Ottawa Ankle Rules? A systematic review. Eur J Gen Pract. 2015:1-11.
5. Dissmann PD, Han KH. The tuning fork test--a useful tool for improving specificity in "Ottawa positive" patients after ankle inversion injury. Emerg Med J. 2006;23(10):788-790.
6. Glas AS, Pijnenburg BA, Lijmer JG, Bogaard K, de RM, Keeman JN, Butzelaar RM, Bossuyt PM. Comparison of diagnostic decision rules and structured data collection in assessment of acute ankle injury. CMAJ. 2002;166(6):727-733.
7. van Riet YE, van der Schouw YT, van der Werken C. Fewer x-rays while maintaining quality of clinical care using clinical protocols for physical diagnosis of ankle injuries. Ned Tijdschr Geneeskd. 2000;144(5):224-228.
8. Pijnenburg AC, Glas AS, De Roos MA, Bogaard K, Lijmer JG, Bossuyt PM, Butzelaar RM, Keeman JN. Radiography in acute ankle injuries: the Ottawa Ankle Rules versus local diagnostic decision rules. Ann Emerg Med. 2002;39(6):599-604.
9. Eggli S, Sclabas GM, Eggli S, Zimmermann H, Exadaktylos AK. The Bernese ankle rules: a fast, reliable test after low-energy, supination-type malleolar and midfoot trauma. J Trauma. 2005;59(5):1268-1271.
10. Kose O, Gokhan S, Ozhansenekler A, Celiktas M, Yigit S, Gurcan S. Comparison of Ottawa ankle rules and Bernese ankle rules in acute ankle and midfoot injuries. Turk J Emerg Med. 2010;10:101.
11. Beceren GN, Yolcu S, Tomruk O, Atay T, Baykal YB. Ottawa versus Bernese: which is better?. Eur J Trauma Emerg Surg. 2013;39:147.
12. Derksen RJ, Knijnenberg LM, Fransen G, Breederveld RS, Heymans MW, Schipper IB. Diagnostic performance of the Bernese versus Ottawa ankle rules: Results of a randomised controlled trial. Injury. 2015;46(8):1645-1649. doi: 10.1016/j.injury.2015.03.038.

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  by supersy | 2016-01-25 01:26 | Athletic Training | Comments(0)

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