医療に何を求めますか: 患者が聞きたくない3つのこと。

貴方は医療に何を求めますか。
風邪を引いたとき、病気や怪我をしたときに、何を思い何を欲して、その重いカラダを引きずってまで貴方はその足を病院に向かわせるのですか。
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もちろん、忙しい生活の中でそれでもなんとか時間を作り、病院で何時間も待ってやっと会うお医者さんです。即座に『診断名』を出してもらって、一刻も早い『治療方針』の確立と実践を、と多くの患者が願うことでしょう。

無理もありません。世の中には『この症状があれば貴方は絶対この病気!』『これをすれば絶対に○○は治る!』『絶対に○○には××するな!』という絶対的宣伝文句に溢れていますし、それらは診断も治療も単純明快であるに違いないという印象を貴方の頭に焼き付けていることかと思います。こういった言葉遣いや態度を許してしまっている我々医療従事者も大いに責任を感じるべきところです。

しかし、診断・治療の真の『答え』に辿り着くにはもう少しの努力を要します。私が医療従事者として、患者さんに知っていて欲しい(でも恐らく患者さんは聞きたくないであろう)ことが3つあります。

1. 医者は病気を治してくれない
これは別に医者を卑下しているわけではなくて、『医者』を(私の専門である)『アスレティックトレーナー』に言い換えてもらっても構いません。共通しているのは、どんな医療従事者も超人的な能力があるわけではない、彼らもただのヒト、ということです。
貴方に処方されたインフルエンザの薬は、症状を抑制する効果はあってもウィルスを殺す能力までは兼ね備えていません。薬でウィルスの猛威を抑えているうちに、そのウィルスをやっつけるのは他でもない、貴方自身の免疫組織です。怪我も同様です。どんなアイシングも、電気治療も、マッサージも、部分断裂したその靱帯そのものをくっつけてくれるわけではありません。貴方の身体の中で起こる自然治癒のプロセスが、それを可能にするのです。

医療従事者ができるのは治癒の妨げになる要素を取り除き、貴方の自己治癒力を最大限に引き出す環境を作る手助けをすること。貴方の病気や怪我を治す本当の原動力は貴方自身の身体です。

2. 自分の身体の状態の責任を受け止める
貴方は何時就寝し、何時起床していますか?一日どのくらいの時間を座って過ごしていますか?座っているとき、首や腰、腕はどう休めていますか?朝食には何を食べましたか?歯を一日に何回磨きますか?夜はぐっすり眠れていますか?昼寝は取りますか?ストレスを感じた時、何をしますか?
これらの全てが『貴方の身体』を形成する重要な要素になります。問診時に我々が聞く沢山の質問をどうかお許しください。貴方という一人の人間について学ぼうとしているだけなのです。そしてそれらにどうか可能な限り正直に答えてください。一見関係が無いと感じられるような質問も、我々にとって非常に大切な意味を持っていたりするのです。
同時に、これらの質問の『答え』が、貴方の選んだ人生の選択肢の積み重ねであるということも是非理解してください。もし答えるのが憚られるような質問があったとしたら、その『答え』を変えることができるのは、貴方だけです。

少し大げさで強い言い方をすれば、貴方が今日、こうして医療機関にかからなければいけなくなった身体を作ってしまったのも貴方自身です。そして、それを治していくような選択をこれからしていくのも、貴方自身に他ならないということになります。

3. 医療従事者を『使』って、自分の身体を学び導く
それじゃあ医師(もしくはアスレティックトレーナー、カイロプラクター、理学療法士、作業療法士…何でも構いません)に会いに行く価値などないじゃないか!と憤慨するヒトもいるかも知れませんが、もちろんそんなことはありません。我々の専門性を利用する価値は、患者一人ひとりに大いにあると思うのです。
我々は、貴方の身体で今どういうことが起こっているかを貴方に分かる言葉で説明する柔軟な知識があります。必要であれば絵を描いたり、人体モデルを引っ張り出したり、本を見せたりしてでも根気強く説明する意欲があります。そして、最新の研究データを踏まえたうえで、今どういった選択肢が存在するのか、それぞれの利益不利益は何か、という選択肢を提示する専門性を持っています。そして何より、貴方が大事にしているものを一緒に守りながら、貴方にとって最善の選択肢を選ぶのをお手伝いするプロとしての自覚があります。患者さんにこれらを惜しみなく『使』ってもらえれば、医療従事者としてこんなに嬉しいことはありません。

貴方の身体が良くなるために何を選ぶか、最終的な決定権は貴方自身にあります。そして最善の医療は大概の場合、残念ながら『ベッドに横たわって至れり尽くせりの治療をしてもらう』よりもうすこし能動的な要素を含むことになります。

例えば私の専門はスポーツ整形ですが、足首の捻挫をした患者に電気治療してマッサージしてアイシングしてハイサヨウナラ、という100%受動的な治療はまず提供したことがありません。壊れた車のパーツを交換するだけなら整備士が全て動けば済むことですが、この人間の体という『車』は『貴方』という運転手がいて、その運転手が正しい車の使い方を学ばなければ車はいくら直しても壊れ続けるばかりだからです。怪我から回復し、貴方の機能を最大限に引き出すには、貴方自身が起き上がって体の使い方を学ぶ、能動的なリハビリテーションが必要不可欠です。慢性疾患なども同じで、一時的に治療や投薬で症状を抑えられても、根本の解決を求めるには生活習慣の改善が必要です(通風などが良い例です)。
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医療において、患者は『タクシーのお客様』でなく『運転手』そのもの。我々医療従事者はさながら患者が行きたいところへ行くための方法を指し示す『カーナビ』です。我々は貴方が目的地へ付くまでの様々な方法や手段を提案できますが、患者さん自身が「良くなりたい」と思い、その為に少しずつ、できることから変えて前へ前へ進んでいくという積極的な姿勢こそが治療の大事な芯になるのです。

貴方の運転する車は、今日はどこに向かっていますか?
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  by supersy | 2016-01-19 20:00 | Way of Thinking | Comments(2)

Commented at 2016-01-20 22:52 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by さゆり at 2016-01-21 14:22 x
ご丁寧にご指摘ありがとうございます!そういったプロセスも含めて「猛威を抑え」、故に「症状を抑制」すると広い意味で使った表現でした。気になる方がいたら申し訳ないですが、言いたかったことに影響はないのでこのまま直さずにおきます。適当気質で申し訳ありません。お気遣い感謝です。

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