ACL断裂と月経周期の関連性はあるのか?

いきなりですけどお知らせです!
お待たせ致しました、12月のPRIマイオキネマティック・リストレーション講習の開催詳細が正式決定しました!詳細はPRI Japanのウェブサイトから。前回、あっという間に席が埋まって批判の声を多く頂きましたので、今回は事前に参加申し込み開始日を予告した上での募集、という形を取っています。日本時間の10月5日、朝の8時にPRI日本語版ウェブサイトを通じてのお申込一斉受付を開始しますので、ご希望の方はお早めに。

 12月19-20日(土・日) 東京 新宿区 人間総合科学大学鍼灸医療専門学校
 12月26-27日(土・日) 大阪 大阪市 大阪リゾート&スポーツ専門学校

多くの方々に会えるのを楽しみにしています。12月は個人でも講習会を東京・大阪でやろうかと計画中で、そちらも決まったらまたお知らせしますねー。

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さて、本題です。
前十字靭帯(ACL)断裂といえば、復帰まで6ヶ月はかかる、アスリートにとっての大怪我。長いリハビリをしたにも関わらず機能が完全に回復せず引退を余儀なくされるケースや、再断裂、引いてはOAなどで日常生活にまで支障が出てしまうこともどうしてもあります。
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この怪我、一般的に男性より女性の受傷率が高く、女性の受傷頻度は男性の4-6倍と言われていますが、1,2 meta-analysis3による、もっと細かいスポーツ別の統計を見てみると、レスリング4.05倍、バスケットボール3.5倍、インドアサッカー2.77倍、アウトドアサッカー2.67倍、ラグビー1.94倍…と、いずれもなかなか高い数字です。

●何故「女子」に多いのか?
ACL断裂の危険因子はかなり研究されている分野ではありますが、「これ!というひとつの絶対的な要素があるわけではなく、様々な要素が複雑に絡みあっている」という考えが広く受け入れられており、危険因子は大きく別けて1) Anatomical、2) Neuromuscular, そして3) Hormonalなどと分類、議論されることが多いです。例えば、解剖学的なものなんかで言うと、2011年に発表されたLiterature review4 ではfemoral notch (大腿顆間窩) geometryは唯一ハッキリと「かなり確信の持てる危険因子」と結論付けられていますね。この幅が狭ければ狭いほどACL損傷の危険が上がり、加えて一般的に女性のほうが男性よりもここんとこの幅が狭い場合が多いというわけ。だから、女性のACL断裂が多いのでは、と。
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残念ながらanatomicalな危険因子はnon-modifiable(修正のしようがない)と言われることが多いですが(骨を無理矢理削ってnotchを広げるわけにもいかないですもんね)、その逆で「modifiable = 修正可能」、つまりは「これを取り除いたり、最小限に抑えられれば、怪我の予防にもつながる」と言われることの多いのが、4,5 neuromuscularに分類される危険因子。Dynamic knee valgus、もしくはvalgus knee collapseが中でも非常に代表的ですが、これらは様々な予防プログラムでもスクワットや着地の動作訓練で「これはやったらアカン!」と強調されることの多い動作のひとつです。6 膝がカクっと中に入っちゃう…こういう膝の使い方、やはり女子に多いんですよね。まさにACL断裂の怪我のメカニズムですからね、Valgus + Femoral IRって。
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●では、ホルモンは?
じゃあ、ホルモン的危険因子ってどういうこと?実は、ヒトのACLにはエストロゲン受容体がある7 というのはもう20年くらい前から分かっていて、更に、エストロゲンがコラーゲン生産の低下を招く8 ということを繋げて考えれば、エストロゲン分泌の多い女性のほうが男性よりも前十字靭帯が弱い状態にある→損傷も起きやすい?という説はとりあえず筋が通っているように聞こえます。

それだけではありません。
ヒトクチに女性といっても、女性の体内のエストロゲン分泌は常に一定なわけではありません。そのホルモンレベルは月経周期と密接な関係があるんですよね。
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例えばこの上の表(↑)。個人差はあるとは言え、基本月経周期(平均28日間)中の各ホルモンの分泌を目で見て分かりやすくまとめたものです。これによれば、エストロゲンの分泌はovulatory phase(10-14日目、所謂『危険日』のあたりですね)中に急上昇するので、先の説に則れば、この時に女性アスリートは最もACLの靭帯繊維が弱くなる→損傷する可能性が高くなると言えるのでは?9 果たしてこの仮説は、エビデンスによって実証されているのでしょうか?次回に続きます!

.1. Hewett T, Zazulak B, Myer G. Effects of the menstrual cycle on anterior cruciate ligament injury risk: a systemic review. Am J Sports Med. 2007;35(4):659-668.
2. Hewett T, Myer G, Ford K. Anterior cruciate ligament injuries in female athletes: Part, mechanics and risk factors. Am J Sports Med. 2006;34(2):299-311.
3. Prodromos CC, Han Y, Rogowski J, Joyce B, Shi K. A meta-analysis of the incidence of anterior cruciate ligament tears as a function of gender, sport, and a knee injury-reduction regimen. Arthroscopy. 2007;23(12):1320-1325.e6.
4. Posthumus M, Collins M, September AV, Schwellnus MP. The intrinsic risk factors for ACL ruptures: an evidence-based review. Phys Sportsmed. 2011;39(1):62-73. doi: 10.3810/psm.2011.02.1863.
5. Utturkar GM, Irribarra LA, Taylor KA, Spritzer CE, Taylor DC, Garrett WE, Defrate LE. The effects of a valgus collapse knee position on in vivo ACL elongation. Ann Biomed Eng. 2013;41(1):123-30. doi: 10.1007/s10439-012-0629-x.
6. Myer GD, Sugimoto D, Thomas S, Hewett TE. The influence of age on the effectiveness of neuromuscular training to reduce anterior cruciate ligament injury in female athletes: a meta-analysis. Am J Sports Med. 2013;41(1):203-215. doi:10.1177/0363546512460637.
7. Liu SH, al-Shaikh R, Panossian V, Yang RS, Nelson SD, Soleiman N, Finerman GA, Lane JM. Primary immunolocalization of estrogen and progesterone target cells in the human anterior cruciate ligament. J Orthop Res. 1996;14(4):526-533.
8. Liu SH, Al-Shaikh RA, Panossian V, Finerman GA, Lane JM. Estrogen affects the cellular metabolism of the anterior cruciate ligament. A potential explanation for female athletic injury. Am J Sports Med. 1997;25(5):704-709.
9. Wojtys EM, Huston LJ, Boynton MD, Spindler KP, Lindenfeld TN. The effect of the menstrual cycle on anterior cruciate ligament injuries in women as determined by hormone levels. Am J Sports Med. 2002;30(2):182-188.

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  by supersy | 2015-09-17 23:45 | Athletic Training | Comments(0)

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