Epidemiology Basic: Q-angleは怪我と関係性があるのか?

この研究、1 よく書かれていて、発見も面白かったのでまとめておきます。
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b0112009_7574458.png題材はQ-angleとRunning Injuryの関係性はあるのか?という、まぁよくありそうなテーマなんですけど、著者らは
 - 今までの研究結果はバラバラ
  (怪我との関連性があったりなかったり)
 - この原因は、1) Q-angleの計測ポジションが一貫性が
  ない (背臥位vs立位)、2) Q-angleのNormal/Abnormal
  valueの定義も文献によってマチマチ、そして、3) 片方
  のみ測定して、『その人の値』としていることも多く、
  左右差がある場合を考慮していないことも…という
  design flawに起因するのでは
…と指摘した上で、
 - 393人(222 male and 171 female)の高校生
  長距離ランナー(Cross Country Runner)を対称に、
  シーズン前に左右のQ-angle(左右それぞれ)を測定
 - シーズンを通して起こった怪我をコーチに毎週報告
  してもらい、その数とその怪我によって
  「何日競技に参加できなかったか」を集計
…で、統計学的分析を行った、という内容です。

よく出来てるなぁ、と思うのは、
 - 被験者の多さ (但しpower analysisは無し)
 - Q-angle計測は独りの『経験のある』研究者によって行われた
 - intra-rater reliabilityはpilot studyにてICC 0.89 (SEM 1.3°)と
  establish済み
 - 計測は一環して靴無し、立位で。これは背臥位よりrelevantであるということと、
  更に、立位Q-angleのほうが背臥位より大きくなる、という研究結果にも基づく。2-51
 - コーチの『毎週怪我報告』はDaily Injury Report (DIR)というシステムを採用。
  事前に個々のコーチに記入の仕方を指導しており、
  1回の記入に5分以下くらいしかかからない。
  報告内容は1) 競技中に起き、且つ2) 競技参加に影響の出た怪我の部位と、
  競技に参加できなかった/競技参加に制限があった日数。
 - 95% CIも報告されている。

…で、結果なんですが
女子のQ-angleのほうが、左右ともに男子よりも数値が高い(p < 0.001)
 右平均 女子 15.8 ± 4.1°   男子 12.7 ± 3.7°
 左平均 女子 15.0 ± 3.8°   男子 12.1 ± 3.5°
 まぁこれは、いいですよね。女性のほうが骨盤が広いためと一般的に言われますが、
 原因はエビデンスではっきりと特定できているわけではありません。
 でもま、女子のほうがQ-angleは一般的に高めですよ、と。

Q-angleの値と怪我(Injury Incidence)
これは結果を数値で見たほうが早いので、コレを(↓)。
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総合すると、Q-angleの値が20°以上の場合、怪我のリスクが1.7倍に増す
ということが言えそうです。男子はそもそものQ-angle平均値が低めなので、
20°と言わず、15°以上でも怪我のリスクは1.5倍に増すようです。

Q-angleの左右差と怪我(Injury Incidence)
これも結果を。
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右と左の左右差を比較した場合、その差が4°以上の場合に怪我のリスクが
1.8倍に上昇する
という結果が。こちらは、比較的男女間での差は見られません。

部位別では?
では次に、1) Q-angleの値が高かった(≧20°)場合、2) 左右差が大きかった(≧4°)場合、どの部位の怪我に最も繋がりやすいのか?
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まずは1) Q-angleの値が高かった(≧20°)場合から。ハッキリとリスクの上昇が見られたのは膝の怪我で、全体の倍率は5.7倍。男女で少し差があって、女子は≧20°だと怪我のリスクが5倍に高まるのに対して、男子は15°以上20°未満だと3.2倍、≧20°だと7.6倍と、怪我のリスク上昇ウィンドウが女子に比べて広いというのが興味深いです。
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2) 左右差が大きかった(≧4°)場合 は、女子は脛やふくらはぎの怪我が2.4倍だったのに比べ、男子は足首・足のリスクが3.7倍と、異なる結果に!面白いですね。

…なわけで、さっくりまとめると、1) Q-angleの絶対値が≧20°の場合、怪我のリスクは上昇、特に膝の怪我を受傷する可能性が上がる。男子は平均値が女子より低いこともあり、≧15°からでもリスク上昇。2) Q-angleの左右差が≧4°の場合も怪我のリスクが上がる。女子は脛やふくらはぎ、男子は足首・足部の怪我の可能性が上昇する。
…ということが言えます。

もちろん、この研究が完璧なわけではなくて、例えば怪我の報告はあくまて素人が行ったものなので、underreport/overreportしているのでは?コーチに選手が痛みを訴えなかったら?など、limitationがないわけではありませんが、『左右差が怪我のリスクを高める(= 計測時には毎回左右別々に測る必要がある)』というstatementと、絶対値が多いことvs左右差で、怪我の出る部位が異なることを指摘した、という意味ではなかなか重みのある研究かなと思います。
この研究ではあくまで『傾向』に留まりましたが、Q-angleが低い場合はどのような影響が見られるのか、他の研究も見てみたいですね。あとは、もうちょっと上の年齢層でも同じような結果が出るのかとか。

そんなわけでさっぱり系まとめでしたー。さて、宿題に戻ります。

1. Rauh MJ, Koepsell TD, Rivara FP, Rice SG, Margherita AJ. Quadriceps angle and risk of injury among high school cross-country runners. J Orthop Sports Phys Ther. 2007;37(12):725-733. doi: 10.2519/jospt.2007.2453.
2. Di Brezzo R, Fort IL, Hall K. Q angle: the relationship with selected dynamic performance variables in women. Clin Kines. 1996;50:66-70.
3. Guerra JP, Arnold MJ, Gajdosik RL. Q angle: effects of isometric quadriceps contraction and body position. J Orthop Sports Phys Ther. 1994;19:200-204.
4. Shultz SJ, Nguyen AD, Windley TC, Kulas AS, Botic TL, Beynnon BD. Intratester and intertester reliability of clinical measures of lower extremity anatomic characteristics: implications for multicenter studies. Clin J Sport Med. 2006;16:155-161.
5. Woodland LH, Francis RS. Parameters and comparisons of the quadriceps angle of college-aged men and women in the supine and standing positions. Am J Sports Med. 1992;20:208-211.

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  by supersy | 2015-09-12 18:00 | Athletic Training | Comments(0)

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