Patellar Tendinopathyのリハビリテーション・アプローチ その2。

さて、前回はEccentric Exercise (EE)がどうやら効果があるらしいというのは分かったけど、それがチカラを発揮するには、その他の運動・トレーニングを中止しなければいけない?
…というところまでお話しました。
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●Is Withdrawal from Sports Participation Necessary?
実はこれに関しては、別途でSystematic Reviewが発表されています(↑)。1
このReviewでは過去に発表された7つのRCTを検証しているのですが、その結果は:
 - 選手を実際「トレーニング禁止」(その期間は6週間から12週間と様々だが)にさせた
  3つの研究のうち、3つ全て(100%)がEEによる良い効果が得られた、とされている。
 - 選手に「(通常通りの)トレーニング許可」をしたままEEを実践した4つの研究で、
  そのうち3つはEEの効果が同様に確認された。確認できなかったのは、前回言及した
  シーズン中のバレーボール選手を検証したVisnes et al2の研究のみ。
このVisnes et al2の研究には、ちょっと内容に問題があったのでは?という疑問も拭えず。例えば他の研究に比べてcompliance rateが58%と低いことや(他は92, 72, 89%)、エクササイズ前の機能スコア(VISA score)も71とかなり高かった(他は53, 61と機能低め=そもそもVisnes et al2の被験者は研究の始めからPatellar tendinopathyが他に比べて軽度だったのでは?)こともあって、必ずしも「トレーニング継続」していたことが「EEの効果が見られなかった」ことに直接結びつくとは言えそうもないんですよね。
「トレーニング禁止」で実践された研究でも、総合的には「効果アリ」となったものの、個人個人で見てみると効果が出なかった被験者もいた。トレーニングを一切禁止してもEEの効果は100%保証されたものではないということになります。加えて、選手やチーム関係者にとって「トレーニング禁止」というのはかなり重い言葉。精神的(i.e. 鬱や不安の原因になったり、self-esteemが下がったり)、運動生理学的(i.e. deconditioning)、そして経済的にも多大な悪影響を及ぼしかねません。…であれば、Visnes et al2の発表のみに基いて「絶対トレーニング禁止!!」と断言してしまうよりは、出来る限り通常のトレーニングも混ぜながら、選手の痛みや機能制限の程度と相談しながら臨機応変に、というほうが現実的じゃないかと思うんですよね。実際、このReviewを書いたSaithma et al1も「不必要なトレーニング禁止を強制すると、利益よりも不利益のほうが上回る」と結論付けています。

●膝の屈曲角度
あともうひとつ掘り下げると面白いのが、エクササイズ時の膝の屈曲角度です。
Stanish & CurwinとAlfredson、どちらのモデルも膝を90°程まで曲げる、という風に元々描写されていましたが、「もうちょっと浅くてもいいのでは」という声もあります。3
…というのも、膝の屈曲度が60-90°まで達すると、Posterior fibers(後方繊維)により負荷がかかる。そもそも腱症・腱炎が最も頻繁に起こりやすいのはこのPosterior fibersであるから、ここにより多くの負担を掛けてのエクササイズとなると危険が伴う。なので、現在は
 - 90°のままでいい
 - 最大屈曲を60-70°に制限する
 - 最大屈曲を60°以下に設定しておいて、機能回復と共に徐々に90°近くまで増やす
という、大きくわけて3つの派閥に分かれているように見えます。まぁ、派閥なんてそんな大層なもんじゃないですけども。(ちなみに私がAlfredsonをやってみたらChondromalacia Patellaeがあるので屈曲を上げると共に「みしみし」という膝蓋軟骨が大腿骨に潰されているイヤな音がします。これを同時発症している患者さんには角度は減らし気味のほうがいいかも)
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さて、ここで変化球です!
比較的最近proposeされた、もうひとつのエクササイズ案をご紹介します。
その名も…
●Heavy Slow Resistance Training (HSR)
これらはたったふたつの研究でしか検証されていませんが、4,5そのどちらもかなり「high quality」と評されているのでその存在を無視できないんですよ。
これがどういうエクササイズかというと、見ての通り。Leg Press、Squat、Hack Squatをそれぞれ4セット、週に3回こなす、というもの。回数・重量は、
 Week 1: 15RM
 Week 2-3: 12 RM
 Week 4-5: 10 RM
 Week 6-8: 8 RM
 Week 9-12: 6RM
という風に週別に徐々に重たくなるように決まっています。両足をしっかり荷重して、エクササイズはとにかくゆっくり膝を屈曲していき、90°まで達したところで元に戻るというもの。"Light discomfort"くらいはOKだけど痛みという痛みまではいかない感じです。
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●3つのモデルを比較すると?6
Strong Evidence:
 - HSRをするとneuromuscular functionが向上する

Moderate Evidence:
 - 機能的な向上はHSRもEEも等しいが、患者の満足度はHSRの方がEEに比べて高い
  これは、週に3回運動すればイイvs毎日、一日2回という運動頻度が関わっている
  のかも知れないし、もしかしたら「痛みはほとんど無い状態で」というHSRと、
  「痛みが出るまで引き上げてやるぜ」というEE(the Alfredson Model)の
  Pain levelの違いからくるものやも知れません。
 - Cross-sectional area(つまるところ腱肥大)の増加はEEのほうが著しく見られる
  ものの、HSRのほうがcollagen turnoverの上昇と腱繊維の正常化を促進する
  効果が見られる
 
Limited Evidence:
 - これは前回も書きましたが、EEの中ではAlfredson ModelのほうがStanish & Curwin
  Modelよりちょっとばかり効果が高いかも知れない、そして、
 - 痛み、そしてRTPを早めるためにはStanish & Curwin Modelのほうが
  isotonic exercises(leg curl, leg ext)よりも効果アリ、
ということがlow-qualityの研究によって分かっています。

●Evidence-Based Conclusion
結論として、我々はどういう理解をするべきか?
たった2つの研究しか発表されていないとはいえ、HSRがかなり効果がある6のは認めざるを得ないところかなと。
 Function: HSR ≒ EE
 Tendon Adaptation: HSR > EE
 Patient Satisfaction: HSR > EE
なので、全部混ぜるとこんな感じですかね。
 HSR > Alfredson Model > Stanish & Curwin Model

それに「トレーニング継続の是非」「膝の屈曲角度」という要素の結論も加えると、
 - 「トレーニング禁止」を推奨する充分なエビデンスが存在しない以上、
  「症状にもよるが、出来る限り通常通りのトレーニングを継続させながら
   エクササイズをやらせる
」という結論が最も現実的
 - 膝の屈曲度は、「リハビリ初期は60-70°までに制限し、回復とともに、
  症状の悪化が見られなければ90°まで増加
」という風に臨機応変に
というのが、色々読んだ私の中の現在のオトシドコロです。
あと、改めて強調されるべきだと思ったのが、
 - こういったタイプのリハビリで、正しくエクササイズをやった結果伴う痛みを
  容認することはあるが「痛くなるまでやる!」「痛くないとダメ!」のように
  痛み自体がリハビリの目的になってしまわないよう注意6
…という文章でした。Deep tissueの徒手療法やIASTM系のテクニックを使う施術師さんで、「痛みこそ神!」みたいに突っ走って患者をグリグリグリグリ痛めつけて恍惚感を得るタイプの方を数名見たことがありますが、あくまで我々の目的は患者さんの機能向上であり、痛みを生むこと、ましてや我々セラピストが満足感を得ることではありません。きちんと患者さんひとりひとりと向かいあいたいですねー。

以上、Patellar Tendinopathyのリハビリ勉強記録でした。

1. Saithna A, Gogna R, Baraza N, Modi C, Spencer S. Eccentric exercise protocols for patella tendinopathy: should we really be withdrawing athletes from sport? A systematic review. Open Orthop J. 2012;6:553-557. doi: 10.2174/1874325001206010553.
2. Loppini M, Maffulli N. Conservative management of tendinopathy: an evidence-based approach. Muscles Ligaments Tendons J. 2012;1(4):134-137.
3. Pearson SJ, Hussain SR. Region-specific tendon properties and patellar tendinopathy: a wider understanding. Sports Med. 2014;44(8):1101-1112. doi: 10.1007/s40279-014-0201-y.
4. Kongsgaard M, Kovanen V, Aagaard P, Doessing S, Hansen P, Laursen AH, Kaldau NC, Kjaer M, Magnusson SP. Corticosteroid injections, eccentric decline squat training and heavy slow resistance training in patellar tendinopathy. Scand J Med Sci Sports. 2009;19(6):790-802. doi: 10.1111/j.1600-0838.2009.00949.x.
5. Kongsgaard M, Qvortrup K, Larsen J, Aagaard P, Doessing S, Hansen P, Kjaer M, Magnusson SP. Fibril morphology and tendon mechanical properties in patellar tendinopathy: effects of heavy slow resistance training. Am J Sports Med. 2010;38(4):749-756. doi: 10.1177/0363546509350915.
6. Malliaras P, Barton CJ, Reeves ND, Langberg H. Achilles and patellar tendinopathy loading programmes : a systematic review comparing clinical outcomes and identifying potential mechanisms for effectiveness. Sports Med. 2013;43(4):267-286. doi: 10.1007/s40279-013-0019-z.

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  by supersy | 2015-08-05 11:00 | Athletic Training | Comments(0)

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