ごろごろ骨折関係文献まとめ。

ちょっと前に読んで面白いと思った文献、忘れないように書き留めておきます。
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疲労骨折は診断も難しいですが、「競技復帰までどれくらいかかる?」というRTP estimationを出すのもなかなか難しい。じわじわ起こった骨折は、得てして回復にも時間がかかるものだったりするからです。この文献では、治りに時間のかかる、肝を据えて治療すべき厄介な疲労骨折と、比較的早く治るものとをどう見極める?という方法について論じています。

この研究では、疲労骨折と診断された、様々なスポーツに参加する大学・オリンピック・プロレベルのアスリート(陸上、長距離、ハンドボール、サッカー、水泳etc)52人をretrospectiveに調査。で、RTP estimateの診断に使われたのは下の2つの基準。
 1. 診断時に撮られた画像診断 - MRIかBone Scan
  その結果により、high-gradelow-gradeの疲労骨折に分類。
  MRIの場合:
   low-grade: STIRか、T2-weightedの画像にbone marrow edemaが確認できる
   high-grade: Fx lineの有無に関わらずT1とT2の両方でbone edema edemaが
          確認できる
  Bone Scanの場合:
   low-grade: 健側と比較して、irregular uptakeか、ぼんやりとした輪郭の
   increased activityが確認できる
   high-grade: くっきりとした輪郭のincreased activity(局所的で紡錘形を
   していることが多い)が確認できる
    
 2. 骨折箇所
  ひいてはその部位にかかりやすいストレスの種類と血流の量による分類(↓)。
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…で、結果なんですけど、2のみだと良いhigh-riskのほうが復帰まで長くかかるというトレンドはあったものの (平均132 days vs 119 days)、その差は統計学的に重要ではない、故にpredictorとしては使えない(p = 0.19)。んで、1のみだとhigh-gradeのほうが復帰までハッキリと長くかかり (平均143 days vs 95 days)、その差は統計学的に重要であった (p = 0.01) とのこと。

しかし!一番面白い発見は、このふたつを合わせた場合にあります。
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上の表にあるように、Low-risk, Low-gradeの場合は他の3つの場合に比べて明確にRTPまでにかかる時間が短い(半分以下、p <0.02)ということが分かります。どうせ画像診断をするなら、それを単独で使って判断するよりも、追加料金も時間もかからない、もうひとつの「骨折箇所」という情報を追加して、ふたつのcriteriaを併用して判断する価値は充分にあるのでは?という内容でした。


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2つ目はアスリートに起こったProximal 5th metatarsal (MT) fracture = 第5中足骨近位骨折には、どんな手術が良いのか?という論文。NBA選手のKevin Durantもこの怪我からの復帰に時間かかっていますよね…。骨折受傷したのが2014年10月で、6-8週で復帰する予定が2015年3月に『3度目の手術をするので2014-2015シーズンは絶望です』と発表がありましたから。
この箇所の骨折は、一つ前の論文でも『high-risk』に分類される部位であるように、血流に限りがあり、治癒が思うように望めないという厄介な点があります。下の図にもあるように、近位1.5cmあたりなんですよね、丁度metaphyseal/diaphyseal junctionのあたり。下写真左の赤い部分。血流が悪いんです。
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なので、若い子だったりすると血の巡りが良いので「自然治癒しましょうか」と様子を見ることもあるのですが、オトナだと回復がイマイチ望めそうもない = 手術になってしまうケースが多いです。
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じゃあ手術って何をするの?と言いますと、これは『可能な限りぶっといスクリューをざっくりねじ込む』なんです。骨髄にスクリューをがっつり入れて固定と治癒を促し、6-8週間後には競技復帰…みたいなタイムラインが一般的です(だから、Kevin Durantの最初の『6-8週間で復帰』も、このあたりから来ていたのではないかと)。

しかし!この手術をしても骨折部が思うように結合しない・少しの力で再骨折してしまった、という失敗例もまだまだ多いわけで。手術の失敗率は40%なんて言われることもあります。Kevin Durantも恐らくそうだったのでしょう。なので、この論文では、『スクリューにbone graftを足したら成功率は上がるのか?』ということを検証しています。結果、15人の第5中足骨折患者全員が競技復帰に成功 ― 時間軸的には、平均で8.4週間後に骨折箇所の結合・完治が確認され、8.8週目にランニング開始、12.1週目には完全競技復帰、という感じでした。詳しい内訳は下のテーブルをどうぞ(↓)。
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Complicationのレポートは3件あって、そのうち2件はスクリューによる新たな疲労骨折。このうちの一件は自覚症状がなく、特に治療することもなく自然治癒し、もう一件は再手術をしてもう少しサイズの小さいスクリューに入れ替え、そこから8週間で競技復帰。最後の一件はスクリューの位置を決めるpre-drillingという作業中に起きた熱で皮膚が火傷→壊死してしまったケース。これがあってから手術を受けた患者には、「皮膚を冷やす」という工程を加えた結果、同じような壊死は誰一人として起こらなかったようなので、よほどレアなのか、もしくは皮膚を冷やすことにだけ気をつけていれば避けられるcomplicationなのか…。

この論文の著者は、スクリューのみの手術の40%という高い失敗率に比べて、この方法はかなり優秀であるとし、『全ての近位第5中足骨折は(acute/chronicに関わらず)bone graft + screwすべきだ』と結論付けています。全体的に競技復帰にかかる時間は3ヶ月と決して短くありませんが、一度手術をして2ヶ月待って、失敗と判断してもう一回手術してそこからまた2ヶ月…とぐるぐる回ってしまうよりは、最初からより確実なこの手術を選択することもアリかと。フムフム。面白いですね。

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最後はこれです!Knee OAについての論文。OAは実はそんなに詳しくないので(現役選手にはそこまで起こらないタイプの怪我なので)、この論文は大いに勉強になりました。ちなみにこれを書いたのはうちの教授です。文章がとても美しいので皆さんにも読んでほしー。
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私Histologyが苦手なのでこの図解(↑)は助かりました!関節軟骨には大きくわけて4つの層があり、上から
 1. Superficial (Tangential) Zone - parallelに並んでおりshear forceに強い、metabolically inactive
 2. Transitional Zone - randomでひとつひとつのfiberが大きい。metabolically active
 3. Deep Zone - vertical orientationでfiberがもっと大きい。
  水分は少なく、compression forceに強い。
 4. Calcified Zone
…という風になっています。また、3と4の層を分けるtidemark(石灰化前線)を境に、そこから下の組織は血流が有り、それを通して栄養を受け取れる一方、それより上の組織は血流が無いため、栄養のsynovial fluidのdiffusionに頼らなければならなくなります。

Articular cartilageはbiphasic materialと呼ばれ、solidsとfluidsが混在する特殊な組織です。しかし、大きな力が急激にかかるとfluidsがそれに対処しきれず、solids = collagenがそのストレスを一手に引き受けねばならなくなります。ゆっくり力がかかれば組織のviscoelasticityさを存分に使い、上手いこと変形しながらぐんにょりと力を逃がすことができるんですけどね。急な着地などのストレスでがりっと軟骨組織の損傷を起こしやすいのはこのためです。急(rapid)なストレスには弱いのです。

OAの遺伝的要因は50%と言われていますが、他にも年齢、性別、職業、BMI、怪我歴やライフスタイル等も危険因子と考えられており、それらの改善が症状の改善に繋がるという見方が一般的です。例えば、私が今回この論文から学んだのが、長時間立ったままの状態(static loadng)だと軟骨にじわじわとかかる負荷により、組織が押しつぶされて水分を失い、creepと呼ばれる変形・損傷を起こしてしまう。逆に、理想的なのはloading/unloadingを繰り替えすdymanic loading。分かりやすい例で言うと、歩行ですかね。Dr. Loriはこれ(dynamic loading)を「栄養の循環に欠かせないもの」とし、「関節の呼吸」と表現しています。つまり、関節が『動く』ことによってこそ関節液の栄養が軟骨組織に行き渡るのだ、と。逆に、「突っ立ったまま」は「関節が息を止めている状態」なんだそう。関節軟骨には悪、なのです。なので、リハビリはもちろん、日常生活でもstatic loadは避け、loading/unloadingを繰り返すよう心がけるといいということですね。長時間経っているような職業の人(例えば警備員さんとか)は、勤務中その場で足踏みをしてみるだけでも一日の終りの膝の痛み、そして長期的な進行の程度が違うのかしら、なんて私は思いました。

リハビリだと、あとー、、、患者の軟骨損傷の層によってshearかcompressive、耐えられるloadの種類が変わってくるので、それに応じて運動の種類を選ぶ、ということ(例えば、superficial zoneが損傷している場合、shearよりもcompressionのほうが耐えられる)。SL balanceなどをする際は、一回のバランス時間は短めに→creepを起こさせないように、そして左右の足を交互にやると良し。走る場合は、着地時(foot strike)にきちんと膝を曲げるように指導すること(膝の屈曲角度が充分でないと、前述したような『急』で『過度』なcollagenに負担のかかるloadingになってしまう)。ここらへんが非常に勉強になりました。

ちょっと雑なまとめですが、他の宿題もやらなきゃいけないのでまたー!

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  by supersy | 2015-06-25 21:00 | Athletic Training | Comments(0)

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