Patellofemoral Chondral Lesionとそのバイオメカニクスについて。

日本で生活していると、地味にありがたいのが「電車での移動時間」ですね。
今住んでいるところから東京に出ると電車に一時間以上揺られる、ちょいとした旅行的なことになるので、その時間に論文や本を読むとかなりはかどるのです。今学期は特にヨミモノが多いので移動時間をこうして使えるのは助かります。しかーし、かなりのペースで読まなきゃいけないので、記憶力のない私は読んだハシから忘れていく…。そんなわけで記憶と記録用に、私が面白いと思ったことだけ自分本位にまとめておきたいと思います。

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●Patellofemoral Chondral Lesionとバイオメカニクス
Patellofemoral (PF) chondral injuriesというのはそもそも多要素的な傷害であり、様々な要因が複雑に絡み合って起こるものと考えられていますが、中でもPF malalignmentとPFバイオメカニクスは大事よね!という考えは根強いです。例えば、high grade PF chondral lesion (Grade III or IV)のある患者は、ACL断裂(= non-chondral)患者と比べてpatella alta, trochlear dysplasia, a flat and shallow trochlearといったようなPF geometry abnormalitiesがあることが分かっています。6
Staticな解剖学的異常もそうですが、動的要因も大いに影響を及ぼしそうです。例えば、5年間以上の長期的PF instabilityを抱えている患者はtrochlear chondral lesionの頻度も程度も上がる、1という研究結果からはPFバイオメカニクスが変わってくると、じわじわとゆっくりPF cartilageもやられてきてしまうのではないか…ということが言えそうですし、あと面白かったのは被験者の動作解析からデータを得、それを下にコンピューターシュミレーションをした研究。7 同じスクワットのモーションでも、大腿骨をたった5°、10°内旋させるたけでPFのhydrostatic pressure とshear forceが跳ね上がるんだそう。この論文の著者は 『Patellofemoral Pain Syndrome (PFPS)の患者はリハビリで股関節の外転筋を積極的に鍛えることで症状改善するのではないか』と結論付けていました。7
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…となると疑問に思えてくるのが、「患者の膝をConservativeな治療を通して"realign"することって可能なのかな?」ということです。先天的なものとその殆どを諦めるべきなのか、それとも時間を費やすメリットはあるのか?論文を色々読んでみた結果、『ある程度は修正可』というのが答えかな、という印象です。
PFPS患者のリハビリにとOpenとClosed Kinetic Chain (OKC, CKC) exercise programを比較した研究2では、 3週間エクササイズを続けた結果、どちらのグループも痛み、クレピテーションに加えてQ-angleまでが(OKC: 0.7 ± 0.3° vs CKC: 1.6 ± 0.4°)減少。CKCの平均1.6°って結構すごくないですか?びっくり。しかしこの研究、OKCはSLRを、CKCは片足セミスクワットをそれぞれやったんですけど、結論の『総じてCKCグループの方がより大きいoutcomeの向上が見られた』→『OKCよりCKCエクササイズのほうが効果アリ!』というのはどうも…、そもそもそれってchain云々以前に運動としての負荷が違い過ぎませんか(= 片足スクワットのほうがどう考えてもキツイでしょ)…?と私は思うんですけども。単純にOKC vs CKCの効果として結論付けるのは早いかなぁと。あと、似たものだと8週間のエクササイズプログラム(マシーンを使ったleg press and knee extension)はPFの接地面を広げ、『局所的な負荷』を避ける事が確認できた他、痛みや機能回復にも有効だったというのもありました。3 つまるところ、より膝蓋骨がfemoral grooveに綺麗にfitして、ストンと座るようになった、ということですね。下の写真(↓)だと下の状態から、より上に近くなった、と。
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画像はイメージです


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あと言及すべきは膝蓋骨の安定性の向上を目的とした膝のサポーターの使用や、McConnell Tapingを使ってのinterventionでしょうか(↑)。ここらへん、どちらもかなり現場で使う方多いんじゃないですかね。Selfe氏ら5の報告によれば、サポーターorテープを着用した状態で『階段を降りる』(= a control, eccentric taskで、膝痛持ちにはなかなか難しい動作)と、代償運動が装着直後から減るそうな。特に、サポーターを付けるとCoronal (冠状面)とTransverse (横断面) planeでのsway (グラつき)が減り、動きのeconomyが向上するのだそう。装着している間この効果が継続するのか、一定時間経つと失われるのか興味が出ますね。あと、すっげく面白かったのはコレですね!Mechanical supportのみではなくて、もっと神経学的に、proprioceptionという観点からの効果は?ということを探った研究なんですけども、膝にテーピングをした状態としない状態で「膝を0°に伸展⇔リラックスして40°に屈曲」と繰り返す『簡単タスク』と、「膝を20°に伸展⇔リラックスして40°に屈曲」を繰り返す『難しめタスク』をさせ、その時の脳の活動をfMRIで調べると、テーピングが脳に及ぼしている影響というのが結構如実に出たんだそうですよ!4 同じ被験者でもテーピングをした状態のほうが『難しめタスク』をしているときに脳の活動が低かった、つまり、テーピングをしている状態のほうが被験者がこの運動を「より簡単」と感じ、あんまり脳をがっつり使わなくとも、より余裕を持ってタスクを終えることが出来たということを示しているのではないか…という結論でした。

まとめると、Static/Dynamic PF alignmentの原因も、そのアプローチも色々可能性がありそうだなぁってことで。これからClinical Prediction Ruleのような、軟骨に損傷が見られる患者にも『アナタはconservativeで改善できるかも』『アナタは結構重度だから手術かな…』という適切なinterventionを効率よく選べるscreening systemが出来るといいですね。

あれっ、本当はもっと他のトピックについてもまとめようと思っていたんですけど、長くなっちゃったから今回はこれくらいでいいや。また他の論文についても書きまーす。

1. Franzone JM, Vitale MA, Shubin Stein BE, Ahmad CS. Is there an association between chronicity of patellar instability and patellofemoral cartilage lesions? An arthroscopic assessment of chondral injury. J Knee Surg. 2012;25(5):411-416. doi: 10.1055/s-0032-1313747.
2. Bakhtiary AH, Fatemi E. Open versus closed kinetic chain exercises for patellar chondromalacia. Br J Sports Med. 2008;42(2):99-102.
3. Chiu JK, Wong YM, Yung PS, Ng GY. The effects of quadriceps strengthening on pain, function, and patellofemoral joint contact area in persons with patellofemoral pain. Am J Phys Med Rehabil. 2012;91(2):98-106. doi: 10.1097/PHM.0b013e318228c505.
4. Callaghan MJ, McKie S, Richardson P, Oldham JA. Effects of patellar taping on brain activity during knee joint proprioception tests using functional magnetic resonance imaging. Phys Ther. 2012;92(6):821-830. doi: 10.2522/ptj.20110209.
5. Selfe J, Thewlis D, Hill S, Whitaker J, Sutton C, Richards J. A clinical study of the biomechanics of step descent using different treatment modalities for patellofemoral pain. Gait Posture. 2011;34(1):92-96. doi: 10.1016/j.gaitpost.2011.03.019.
6. Mehl J, Feucht MJ, Bode G, Dovi-Akue D, Südkamp NP, Niemeyer P. Association between patellar cartilage defects and patellofemoral geometry: a matched-pair MRI comparison of patients with and without isolated patellar cartilage defects. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2014. In press.
7. Liao TC, Yang N, Ho KY, Farrokhi S, Powers CM. Femur rotation increases patella cartilage stress in females with patellofemoral pain. Med Sci Sports Exerc. 2015. In press.

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  by supersy | 2015-06-11 17:00 | Athletic Training | Comments(0)

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