Evidenceに基づいた半月板損傷の診断 - Update

せっかく昨日はACL(前十字靭帯)の怪我の最新エビデンスまとめをしたので、
今日はMeniscal tears(半月板損傷)で同じことをしたいと思います。
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まずまとめたいのは、Snoeker et al (2013)1が発表した18歳以上の被験者を対象にした、半月板損傷の危険因子について行われたsystematic review/meta-analysis。本論文では過去にrisk factorについて検証した11件の研究を読み込んで分析しています。

危険因子を怪我別にまとめたものが以下の表です(論文中のTable 4を参考にしました)。
怪我は上から、Degenerative tears, Acute tears, Tears secondary to Laxity。
この表のORというのはOdds Ratioのことで、つまるところ、「このfactorがpresentだった場合、半月板損傷のリスクが○倍になる」という数値を示しています。この数字が1以下の場合は、その要素は半月板損傷のリスクを減らす要素である、ということが言えます(ひとつしかありませんが)。
例によって、私が重要だと思う項目には色がついています。
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Degenerative tearは私が診ているpatient populationでは年齢的にまず見ることはないんですけど(言い換えれば、危険因子のひとつである『60歳以上である』というのは私にはそれほど関係のあるfindingではありません)、『男性である』ということが一番の危険因子であるというのは意外でした。『日常的に膝をついたり、スクワットをするような体制になることが多い仕事をしている』となりやすいというのは納得ですし、数字も性別についで二番目に高くなっています。『階段を一日に30段以上登る』のもそこそこ。
この表には含まれていませんが、喫煙歴の有無(『今も吸っている』、『昔吸っていた』、と『吸ったことがない』被験者を比べた場合)は半月板のDegenerative損傷に全く因果関係が見られなかったそうな。アルコールも無関係。これはちょっと意外。…あ、でも血流は関係ない部位だからかな?

Acute tearは、スポーツの種目に関してしかコメントできないデータですが、サッカーとラグビーは半月板損傷の危険性が他に比べて高め、ということは言えそうです。やはり、半月板損傷には「load & twist」というMOIが一番多いからか、loadしないスポーツ(i.e. swimming)やtwistしないスポーツ(i.e. running)だと、その両方が在るスポーツに比べて危険性は落ちるようです。

結構面白いのが最後の「前十字靭帯を断裂した患者に起こる、instabilityからの二次的半月板損傷」というカテゴリー。ここでは、「前十字靭帯を断裂してから、その再建手術までの間が一年以上空いた場合medial meniscusが損傷する可能性は一年以内に手術する患者に比べて3.5(2.09-5.88)倍」という発見がありました。Lateral meniscusに関してはそれほど(OR = 1.49; 95%CI 0.94-2.38)でもないから不思議です。

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半月板損傷診断に関しては以前こんな緩めのまとめ(知ってるようで知らない、McMurray's Testのあれこれ)はしたことがありますが、今回はBenhamin et al (2015)2がまとめた最新のsystematic review/meta-analysisをご紹介します。16歳以上を被験者とした9つの研究(被験者総数1234)を再集計して分析した結果です。論文から、その9つの研究の質(QUADAS-2)とそれぞれのSpecial Testsの統計を引き抜いたものをひとつの表にまとめてみました。
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そこから更に、全ての結果をpoolしてmeta-analysisにしたものがこちらです。
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2x2 Tableがあったりなかったりでmeta-analysisに含まれたのはこの3つのテストのみですが、それなりに価値が見受けられるように思います。このmeta-analysisは手厳しく「heterogeneity高すぎ、オススメできるテストは現時点ではありません」と結論付けていますが、それでも現場のATは何らかのテストをしないわけにはいきませんから、私が思うところをまとめると…
1. Rule outに一番有効なのはJoint Line Tenderness?
2. Rule inに最も有効なのはThessaly 20°?
 しかし、McMurray's, JLT, Apley's, Thessaly 5°もそれなりの数値。よって、
 これら複数のテストを組み合わせ、複数個の陽性が出れば信憑性がより高まる、
 と考えてもいいのでは?

…なんて私は解釈しています。

そんなわけで、今回も前回に引き続き、私のroutineである、
JLT→McMurray's→Apley's→Thessalyを変えるものではありませんでしたが、
Absence of JLTでrule outの可能性が高まるというのは頭に留めておく価値があるかと。
しかし、この論文では論じられていませんでしたが、それぞれのテストに
 McMurray's - ほぼ最大屈曲を要する為、腫れや痛みで可動域の制限があると
       テストそのものが不可
 Apley's - 同様に、McMurray程ではないものの、90度の屈曲ができないと不可
 Thessaly - 片足でWBする能力が無ければ不可
というlimitationがあります(これらは、特にacute tearの診断の場合、致命的になる可能性があります)。そういう意味ではJLTは非常にお手軽、いつでも使える、且つ有効なテスト(…というか、S/Sのひとつですが)と言えますねぇ。

Meniscal tearこそ、そろそろClinical Prediction Ruleがどどーんと出てもよさそうな怪我ですよねぇ。JLTとかclickingとかTwisting MOIとかそういう条件も足して…。あと数年で出来そうなので指を加えて待っていることにしましょう。

1. Snoeker BA, Bakker EW, Kegel CA, Lucas C. Risk factors for meniscal tears: a systematic review including meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2013;43(6):352-367. doi: 10.2519/jospt.2013.4295.
2. Smith BE, Thacker D, Crewesmith A, Hall M. Special tests for assessing meniscal tears within the knee: a systematic review and meta-analysis. Evid Based Med. 2015 ;pii: ebmed-2014-110160. doi: 10.1136/ebmed-2014-110160.

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  by supersy | 2015-03-28 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

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