Evidenceに基づいた前十字靭帯断裂の診断 - Update

私、前十字靭帯断裂の診断に関しての論文は、Benjaminse氏ら(2006)のmeta-analysisが今でも秀逸だと思っていますが(本当に美しくてうっとり…内容は以前にまとめたとおり)、この論文がそろそろ発表されてから10年になるのも事実。そんなわけで、ここ1年で発表されたACL tear診断に関するsystematic reviewをふたつ、良い機会なので読んでみました。自分勝手にまとめます。あくまで自分メモなので、個人的な解釈を足しております。ご了承下さい。

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Lange et al (2014)1のこのsystematic reviewは、ACL診断によく使われるスペシャルテストのreliabilityを調べた研究のみ、7つ集めてreview。意外にすくなっ。

●Intrarater Reliability
更に驚くことに、intrarater reliabilityが研究されてるのはLachman'sだけなんですね。
その結果をまとめてみると…(記事中のTable 3を参考に作りなおしました)
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Lange et alは「Lachmanのintrarater reliabilityはmoderateである」と結論付けています。

●Interrater Reliability
オリジナルのTable 4にはProportion of Positive Agreement(Ppos)というvalueが入っていたんですが(Peeler et al, 2010)、この数値の価値をイマイチ私自身理解できなかったので、勝手にこの表では外しています。これが知りたい方は元記事を読んで下さいませ。そんなわけで、下の表(↓)はKappaとICCに絞って見ています。
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Prone LachmanとAnterior Drawerは研究の絶対数が足りないですよねぇ…。QARELを見る限りではProne Lachmanのinterrater値は非常に優秀と言えそうだけど、これはsensitivity/specificity等のdiagnostic valuesがまだ伴わないから私にとってclinical relevanceに欠けるのです。普段使うテストじゃないんで…。
Lachmanの数値はかなりバラつきがあり、Lange et alはLachmanのinterrater reliabilityに関しては「現時点で結論を導き出すのは難しい」としています。

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で、肝心のスペシャルテストの診断力なんですけど、
このSystematic review2は、1) QUADAS-2を使っている、2) SensitivityやSpecificityではなく、LRのみに重点を置いてまとめている、という点でなかなかユニークです。こういうreviewは初めて見ますが、もしやこういうのがこれからの診断のsystematic review/meta-analysisのnormになっていくのかしらん?それともこれは異端児?QUADAS-2はともかく、Sn/Spは無視してLRのみ、というのはなかなか冒険的だと思うのだけれど…。+/-predictive valuesは実用性が無さ過ぎると思うので私も無視しているけど(授業でも教えておりません)、Sn/Spってやっぱり大事じゃないかな?この論文でも、せっかく各研究から2x2 tableを抽出しているのだからSn/Spはついでに書いておいてくれればよかったのに…と私は思ってしまいます。

…おっと、話が反れました。
個人的な希望を述べても仕方ありませんよね。

で、このsystematic reviewがreviewした14の研究結果の詳細がこちら。
私が勝手にpoint valueと95%CIに基いて、positive but non-conclusiveは黄色に、positive and definitiveな結果は赤で色を付けてみました。
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どうでしょうかね、私は結局これを見てみても、Benjaminese et al (2006)の結果と変わらないかな、と思います。やはり順位をつけるならLachman。Ant DrawerとPivot Shiftは陽性が出ればrule inにはいいけれど、acuteならまぁ陽性が出る可能性そのものが低いと考えたほうが妥当。そもそもPivot Shiftをして患者の信頼を失うほうがよっぽど大打撃、私にとってはこれは非現実的なので論外。
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それから、将来的にClinical Prediction Ruleを作ろうという試みなのか、
Wagemakers et al (2010)の研究を引用して、何か効果的なコンビネーションはないか、という模索・議論もあったのですが、結果が「2 Positive History Findingsと(+) Anterior Drawerがrule inに有効なのではないか」というちょっと緩い感じのもので(ちなみにここのHistoryというのは、popping sensation, giving way, effusion, immediate pain at trauma and inability to continue activityの5つのうちどれかを指すもののことだそうです)、その根拠が+LR = 4.8 (2.3-10.2)という数字…。この試みとstatement、私は将来への可能性は感じますが、差し迫った現実性を伴う実用性は感じないのです。4.8って高い数字じゃないし、95%CIの幅も広い。だったら単独Special Testとそれほど変わらないんじゃないですかね…。現時点でClinical Prediction Ruleと呼ぶには程遠いかな。

そんなわけで、最新のsystematic reviewを読み込んでみましたが、
私の中でのACL Ruptureの診断アプローチをそれほど変えるものではありませんでした。
敢えて言うなら、一番有効性があるLachmanをする場合、
Interrater reliabilityにバラつきがあったのにIntrarater reliabilityは比較的一貫性があり高かった、ということは、やっぱりLachmanは練習して上手くなるより他ないってことじゃないですかね。練習して、経験を積めばより一貫性のある結果が出せるようになる。Lachmanに関してSwain et al (2014)でLR値の幅が出てしまっているのもこの要素が大きいかも知れない可能性は否めませぬ。

1. Lange T, Freiberg A, Dröge P, Lützner J, Schmitt J, Kopkow C. The reliability of physical examination tests for the diagnosis of anterior cruciate ligament rupture - A systematic review. Man Ther. 2014. pii: S1356-689X(14)00223-9. doi: 10.1016/j.math.2014.11.003
2. Swain MS, Henschke N, Kamper SJ, Downie AS, Koes BW, Maher CG. Accuracy of clinical tests in the diagnosis of anterior cruciate ligament injury: a systematic review. Chiropr Man Therap. 2014;22:25. doi: 10.1186/s12998-014-0025-8. eCollection 2014.

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  by supersy | 2015-03-27 23:59 | Athletic Training | Comments(3)

Commented by tsune at 2015-04-18 00:37 x
日本で理学療法士として働いております、tsuneと申します。以前もブログを拝見しコメントさせて頂きましたが、今回も宜しくお願いします。
ACL再建に関して、日本では2重束2ルートがメジャーですが、3重束というケースも見受けられます。シンプルに多ければいいというわけでもないでしょうし、もともとのサイズ等に合わせて選択されているという話を聞きます。また、ルートも解剖学的にはAMBとPLBだけでなく、IMBというのも昔から線維束として認識されており、より生体本来の再建をと考えるなら3ルートが良いのでしょうか?上記点について海外と日本の違いはあるのでしょうか?
また、臨床的なテストに関して。ADTはメジャーな徒手テストでしょうが、どう捉えるのか判断に困ります。自分の調べたところ、多くの著書では6mmを超えると陽性になっているかと思います。日本人と海外では違うかと思いますし、そもそも、6mmを超えて陽性だから必ずしも「悪」と捉えるのではなく、自分はあくまでも身体特性の一要素であるとしか捉えません。いかが思いますか?
Commented by さゆり at 2015-04-18 04:39 x
tsuneさん、コメント有難うございます。今回まとめたのはあくまでATが現場で行うACL診断ですから、手術医が行う再建手術で、どのグラフトをどういう風に使うのがいいのかというのは私がATとして進言できる範疇を越えております。興味のあるトピックはご自分で納得いくまで調べてみてはいかがでしょうか。今年になってからも多くのsystematic review/meta-analysisが発表されていますよ、ご参考までに。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25749530
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25854496
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25595691

ADLの陽性は絶対値でなくあくまでend-feelも含めた左右差で区別すべきかと個人的には思います。6mm of ant tibial translation等のclinician-based measureは最近アメリカでは嫌われつつあり、patient-based outcome assessmentを「手術成功」の指針にすることが増えてきていますね。要は、(再建した)ACLがACLとして機能してるかってとこかと。
Commented by tsune at 2015-04-21 12:59 x
日本の理学療法士の端くれ、tsuneです。
ご返答ありがとうございます。Opeの話はそうですね。でも整形外科医とよく話をする機会が多いので、そんな話によくなります。Paperの紹介もありがとうございます。
最後の意見は自分も賛成です。だからこそ自分も必ずしも「悪」とは捉えていません。医療的には安全でも対象者がそれを持った上でスポーツ、日常生活にベストパフォーマンスが出来なければ話にならないわけで…。
ことついでに半月板の話も拝見しました。またひとつ勉強させてもらいました。半月板は不思議な組織です。あんなに小さな組織でありながら膝関節の中でかなり重要な役割を担っている。愛着すら覚えます。運動療法の中で半月板の動きがもっと手に取るように分からないものかといろいろ模索をしております。ACL術後のケースであれ、膝OAのケースであれ、この部分の半月板を考慮したAccessory movementはかなり重要と認識しております。全体の動きもかなり変わりますし。最近はACLだ、MCLだ、半月板だ、脂肪体だと分けて考えるのでなく、膝関節関連構造としてトータルでのサポートが重要であると痛感しております。
取り留めのない話になりました。またコメントさせていただきます。

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