夏の甲子園は本当に危険なのか、気象データを元に検証する。

ちょっと理由があって夏の甲子園とHeat illnessの危険性、
それからそれらを改善するにはどういった選択肢があるのか、調べながら模索中です。
ふーむ。

まずは現状の把握から、と思い、高野連のウェブサイトや過去の新聞を参考に夏の甲子園の日程を過去10年間にさかのぼって調べ、それぞれの日付で気象庁の過去の気象データから1) 平均気温、 2) 最高気温、 3) 最低気温、4) 平均相対湿度、を抽出してみました。 さらにこれらの情報を元に、5) 平均気温に基づいた体感温度(ヒートインデックス)、 6) 最高気温に基づいた体感温度(ヒートインデックス)を計算して追加したものを、年別にまとめたものがこちらです。
*黄色でハイライトされている部分は、書き出してはみたものの何らかの理由(天候や休養日など、説明参照)で試合が行われなかった日なので、これらは統計には含んでおりません。
*甲子園球場の在る西宮市の気象データは気象庁が保存していなかったので(降水量のみしか見つからず)、入手できるデータで地理的に最も近かった神戸市の数値を扱っています。
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こうして見ると、去年はバカに涼しかったんだなぁという印象ですねぇ。10年に一度の冷夏!
台風が来た影響もありそうです。
ちなみにこれを元にここ3年間、5年間、10年間の統計をそれぞれ取ると…
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ほぼこれらの数字に幅はなく、総じて、
夏の甲子園期間中の平均気温は29.3℃、平均最高気温は32.8℃、平均最低気温は27.0℃、
平均相対湿度は約70%ほどで、平均体感温度は33.7℃、平均最高体感温度は43.3℃
ということになります。
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ヒートインデックス表と統計を比べると、夏の甲子園では平均的(水色の輪)に『特に注意 - Heat cramp, exhaustion等の可能性有』、一日の中でも特に暑い時間帯(青の輪)は毎日『危険 - Heat cramp, exhaustionの危険高』ゾーンにまで突入、特に暑い日には(最も高かったHIが54.8℃なので)『非常に危険 - Heat Strokeの危険高』にまで達することもあるということが分かります。

別の観点から分析するとどうでしょう。
Wet-Bulb Globe Temperature (WBGT - 湿球黒球温度: 気温と湿度に加え、風速や放射熱を考慮しており、より正確とされている)とそれに基づいた運動指針によれば…
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甲子園期間の平均気温・湿度(水色)で『厳重警戒』域、最高気温になる時間帯(青)には『危険』域に届くまでになり、これは、日本体育協会のガイドブックによれば、その危険の高さから『運動は原則禁止』と決められているゾーンであるということになります。これはあくまで『最高気温の平均』に基づく数値ですから、『例年よりとくに暑い』夏の場合は更にこれを超える数字が出ることも有り得るわけです。ふーむ、日常的に『運動禁止』ラインに達していながらそれを無視し続けているというのはなかなか怖いですね。ここまで死人が出ていないのはラッキーなんじゃないかな、やっぱり。

(日本生気象学会の『日常生活における熱中症予防指針 Ver.3(PDF)』へのリンクはこちら、日本体育協会の『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック Part 3, 熱中症予防のための運動指針(PDF)』へのリンクはこちら)


そうなってくると、いくら甲子園で48試合という長い日程をこなさなければいけないにしても、『一日で気温が上がる時間』は試合をするのを避けたほうが懸命なのではないかと、これらの気象データを見る限りでは思うのです。では、一日で一番気温が上がる時間帯というのは一体いつなのか?
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今年の神戸の8月(1~31日)の気温の一時間ごとの推移をグラフ化するとこう(↑)なるのですが、もうちょっと分かりやすく、8月の気温を時間軸にして平均値を出す(↓)と、ハッキリと、日の出前に一度ぐっと下がった気温が、太陽の上昇と共にグングン上がり、正午から3時くらいまでにかけての気温が一日の中で一番高いのが分かります。
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それでは、この時間帯に甲子園の試合が行われているのか?
答えは、残念ながら、yesなのです。
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甲子園の試合日程は流れが事前に決まっており、トーナメント○日目は○試合をこなす。第一試合開始はこの時間で、その後は前の試合が終わり次第、30分間隔で次の試合を始める、というように試合をキチキチに詰めています。これを、2014年の夏の甲子園の平均試合時間124分と併せて考えると(↓下記参照)、
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一日4試合ある日は第三試合が、一日3試合ある場合は二試合目がそれぞれ一日で一番暑い時間にカチ割る可能性が最も高い、ということになります。それから、一日に1-2試合しかない日でも(準々決勝から決勝までの最後の4日間)、まるで最も暑い時間を狙って試合を行っているかのようなスケジュールになっています。準々決勝~準決勝なんか、一試合目を8:30am-11:30amくらいにして、もうひとつを数時間あけて3-5pmくらいでやればいいのにね。決勝も11amじゃなく、9amくらいに始めてさ。そんで甲子園開始最初の数日は、第一試合: 8:30am-10:30am, 第二試合; 11am-1pm, 休憩、第三試合: 2:30pm-4:30pm, 第四試合: 5pm-7pmくらいにするの。一番暑い時間は少し外す。もしくは思い切って、一日最大3試合にして(8am-10am, 10:30am-12:30pm, 休憩、3pm-5pmとか)、日程を2日ほど延ばす。運営費がその分かかるにしても、死亡ケースが出てしまうよりずっと確実だし簡単だし、価値がある変化だと思うんだけどなぁ。

さて、ここから気象以外のデータも混ぜて少しまたまとめたかったのだけど、
時間もないのでまた今度。さぁて、寝なければ。

続きの、完結編はこちら

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  by supersy | 2014-10-24 23:30 | Athletic Training | Comments(4)

Commented at 2014-10-25 16:01 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by さゆり at 2014-10-26 02:36 x
元々このブログも一般に公開していますし、FBやTwitterでのシェアやRTはお好きな様にして頂いて結構です。データや内容をコピーペーストして出処が分からないように使われたり、自分の言葉のように書かれると困りますが、そうでなければご自由に、許可申請頂かなくても結構です。ご丁寧にありがとうございます!
Commented by kaze-chiro2 at 2014-10-26 15:20
夏の甲子園危険ではないのでは、野球って基本そんなにハードなスポーツではないのでは、炎天下でずっと立ってるわけでもないし。
Commented by さゆり at 2014-10-26 17:13 x
それは面白い意見ですね。しかし意味を見出せない方がいても、スポーツ中の死亡事故を限りなくゼロにするため日々尽力するのが我々ATの役目であると感じています。この気象データから危険は無いとは私はとても言えないです。室内で亡くなる方も増えているくらいですし。

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