アスレティックトレーナーの自己犠牲の精神を問う。

今回は個人的な意見を多く含む、
重い話になりますので苦手な方はここでタブを閉じちゃって下さい。
ATという仕事に夢を描いている若者たちは、読まない方が良いかも知れません。








●崖っぷち
さて。ものすっごく私情ですが、私は今就職活動で思った以上に苦戦しています。
最終面接まで行った2つの仕事が実らず、正直どちらかは上手く行くだろうと思っていたのでショック大。実力不足だったのか、やはりビザ・グリーンカードがネックになっているのか…どちらにしても縁がなかったのですから仕方ありません。うぅぅむ。しかし、他に魅力的と思える仕事も無く、残り時間も少ない。崖っぷちです。

●残留?
そんな中、現職場から熱烈ラブコールを受けており、
女子バスケのコーチと、運動整理学科学部長からそれぞれ、「アスレティックトレーナーとして」「助教授として」『残ってくれないか』と打診・交渉されています。
そうなんです。やっと私のsplit positionをそれぞれふたつのフルタイムの仕事として独立させる案が通り、それぞれ条件こそ違えど椅子を開けて、どちらも「Syがyesと言ってくれるよう出来るだけのことはする」と言ってもらえているのです。11月に辞意を表明した職員に対して「勝手にしやがれ」というのは簡単なはずなのに、義理人情厚く良くして下さって本当に有難いことです。
どうすべきか色々悩んでいますが、自分自身、諸事情あってアスレティックトレーナーとしてここに残ることは100%有り得ないなと思ったので、今日「ブースタークラブや手元にある資産から、有り金はたいて全てSyの給料に費やしてもいい。どうにか考え直してくれないか」と熱心に説得してくれるヘッドコーチに「本当にありがとうございます。そんなお言葉を頂けるなんてに幸せ者だなと思います。でも、その熱意にお応えすることは残念ながらできません。申し訳ありません」と誠心誠意お断りの意思をハッキリと示してきました。そして、こんなことも伝えました。
「お断りする立場でこんなことを言うのは失礼と承知で申し上げます。この大学には優秀なATも過去に何人もいました。しかし、こんなにひどい労働環境で、体育局が『気に入らないなら出て行けば。別に代わりなどすぐ見つけるし』とふんぞり返っている現状では優秀なATは数年で出て行ってしまう。彼らがプロとして根を伸ばし、育ち、のびのびやる環境がないのです。コーチ、あなたはここに来てからずっとATはチームにとってとても重要な存在であると明言して下さっている。もし出来るなら、それを体育局の管理職の人たちに、そして世間に声を大にして伝えては下さいませんか。あなたが言うからこそ耳を傾ける人たちもいる。そしてそれが長い目で見て、チームの為にもなると思うのです」
それを聞いてコーチは、「…良いATというのは、僕にとってADを持つことよりもずっと大事なことなんだ。そうだね、もっとそういう面からもSyのサポートをすべきだった。これからもっと意識して実践していくよ」と言ってくれました。
お世話になったコーチのしょんぼりした顔を見るのはこちらも心苦しいですが、
私も私にとって何かに向かう一歩を踏み出さなくてはなりません。
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●ATとは
我々の仕事ってなんなんでしょう。
プロになって丸7年経った今、改めて問いたい。
若い頃は倒れるまで仕事をするのも格好良いことなんだと思ってた。
自分の健康など気にせずともすぐに失っても取り戻せるものだったし、
プライベートを「犠牲」にしてる実感もなかった。楽しかったし、ATが全てだったから。
30歳になった今、シーズンの中盤には毎日頭痛と腹痛と目眩と吐き気に襲われ、
血尿と血便を繰り返し指の皮がボロボロに剥ける日常に徐々に疑問を感じるようになって、
純粋に「何をやっているんだろう、私は?」と思い始めるようになりました。
シーズン中は休日も週末も返上して休みなく働いて、給料など時給換算すれば最低賃金にも達さない。マクドナルドでバイトでもしたほうがよっぽど稼げます。労働時間以外でも深夜遅くに選手から電話やメールがあれば24時間対応を求められるし、急な練習時間の変更にも予定を合わせられるよう、私的なスケジュールも全く立てられない。

●どこまで耐えるべきか
若い頃は、これも下積みの一部なんだと言い聞かせた。
徐々に良くなるんだと思っていた。
でも、毎年毎年少しずつキツくなっているのです。
仕事が徐々に増えていっているのだから当たり前です。
上手くこなせばこなすほど、次の年に与えられる仕事は増えるのです。

あれっ、これはやりすぎたか。もうちょっと労働環境を良くしよう、
と思ってもらうためには私は失敗をして見せなきゃいけないの?
そうしないとわかってもらえないの?
…と、気づいてからがキツかった。
失敗をわざとするほど器用でもないんでね。

最近の若い子は、なんて言いたくはないけれど、
このところの選手とのコミュニケーションも年々難しくなっている気がします。
新しく入ってきた転入生や新入生に限って猛烈に反発してきたり、
「あんたより私のほうが知っている」と躊躇なく怒鳴る子がいたり。
親御さんもそんな人が徐々に増えていている。
こちらも言い返したくなる所をぐっと堪えて、選手が一番と思って出来る限り真摯な対応をしようと務めているけど、こっちもカミサマではありません。人として出来る限界があります。

●我々は本当に必要とされているのか?
そうこうするうちに、
選手がその価値を認めてくれないなら、それでも精一杯意味のある仕事を提供しよう、
というのはもはやこちらのエゴなんではないかと思うようになってきました。
選手がいらないと言ったり価値が無いと思うサービスをこちらが身を削ってまで提供する意味などないのです。だったら、提供しなければいい。彼らには、ATなど必要ないのかも知れない。どちらにしても、私はこの職業を離れるべきなのです。

私と仲の良い友人は、「その環境がおかしい!」「さゆりさんはそこを離れるべき!全部が全部そうじゃありません!」と言ってくれますが、ここがおかしいのか、私がおかしいのか、それともどこもこうなのかは私にはもうわかりません。

必要とされていないのならここにいるべきではない。
単純にそう思います。

もちろん、こういう振る舞いをする選手はチーム15人いるうちのほんの数人だし、
コーチも「Syにそんな態度の選手はチームから追い出す!」と言ってくれますが、割合の問題ではないのです。入れ替えたって、第二や第三の困ったちゃんがいずれ入ってくるのです。
仕事に行って彼らと顔を合せ、それでも笑顔で仕事をしなきゃいけない。
そう考えるだけで疲れてしまうのです。

●我々自身が、自分たちの首を絞めている?
これから中堅にさしかかろうという若いプロたちには是非伝えておきたい。
本当に駆け出しの頃は「若いころの苦労は買ってでもしろ」という時期もありますが、
そしてそれは私も賛成ですが、自己犠牲の精神はある程度経ったら捨てるべきです。

ツイッターで、ワールドカップでウルグアイのスレアス選手が得点を決めてリハビリを担当していたキネシオロジストのフェレイラさんに一番に駆け寄ってハグ。フェレイラさんは何と癌治療を中断してまで、一刻も早く選手を復帰させるためチームに帯同していた―というエピソード(*この発信源であるジャーナリストさんはそんな『美談』仕立てあげるつもりではなかったと思うのですが)が出回っているのを見かけましたが、そこで「自己犠牲カッコイイ!」「やっぱりそこまでしてこそAT!」「私もいつかは!」と我々プロが自分自身を照らしあわせて自己陶酔しているようではダメだと思うのです。細かい事情を把握しないで敢えて言わせてもらえば、「まず治療してしっかり治せやコラ!」でしょ?
それが少数派なんだとしたら、それは絶対におかしい!
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換えのないアンパンをちぎってあげているばかりではダメです。
周りにだってあなたのアンパンが小さくなっていっているのは一目瞭然。
皆あなたの為にハラハラしてる。意外と気がついてないのはあなた自身くらいなもの。
気づこうとすれば気づけるのにね。鏡、ちゃんと見てる?

●仕事に生きるのではなく、仕事と共に、生きる。
我々が、我々自身を使い捨てのコマに仕立て上げてしまったところがあると思うのです。
以前にも書いたけど、そんな仕事のしかたで長続きしないのならば、
あなたの人生も不幸になるし、この職業自体も入れ替えばかり早く発展していかない。
選手を大切に思う気持ちのその数割を、自分の健康、家族、友人、趣味に使うことは
ちっとも悪いことでも、ワガママでもない。
英語だと、「This is a marathon, not a sprint 」という表現がよくありますが、
人生を上手くペース配分してる、それだけなんです。
全て犠牲にして早々に燃え尽きることが美しいんではない。
それは盲目的に走って飛ばして失速して、ペース配分失敗しただけです。
まずは我々が、自分たちをちゃんと幸せにすることを上手になりましょ。

アメリカ人は、全員とは言わないけどここらへんのやりくりがうまい人は時々いて、
見習わなければなぁと思います。メリハリをつけて、仕事しない時は絶対に仕事しない。
今日はここで終わり!明日は家族と過ごす日!と明確な線を引く。サボり上手とは違うんです。
見合わない仕事を要求されたら、条件を出し合って歩み寄り、ここまではやりましょう、ここからはこうしてもらわないと、と意見を述べる。交渉力!AT一人ひとりが磨かなければいけないスキルです。
(もちろん、職場のリーダーがこういうのを促進する空気を作らなきゃいけない、という
リーダーシップの取り方っていうのもあるんですが…これはキリがないのでまた今度)

まーこんな生き迷ってるやつの戯言聞きたかねーよ!
と思われたらそれまでですが、ここまで仕事一筋で生きてきて気がついたことを今のうちに書き留めておきたくて、それから願わくば私が犯した過ちや失敗から一人でも多く学んで、回避できることがあったりよりスムーズにモノゴトが進んでくれるようなことがあれば、と思いまして。私も私で道を見つけて前に進んでいくことにします。一度しか無い人生、楽しく生きましょう!
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  by supersy | 2014-06-20 23:59 | Athletic Training | Comments(7)

Commented at 2014-06-22 07:53 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by さゆり at 2014-06-23 23:01 x
コメント有難うございます。30歳あたりで不器用に生真面目にやってきているほどぶつかる壁なのかもなんて思います。私らのような人種はもうちょっと肩の力を抜くか、仕事の形態を思い切って変えてみるのがいいのかも知れませんね。
学生時代の記憶を辿っているのですがどんな状況でしたっけ…(汗)。。。次にお会いする時に是非詳しく聞かせてください。その時にはお互い笑顔で生活が送れていますよう!
Commented by matagi at 2014-07-01 18:17 x
日本の東北地方で、鍼灸師・柔道整復師としてやっている者です。アメリカの現状を調べているうちにたどり着きました(笑)
非常に興味深く読ませていただきました。
いろいろと大変でしょうが、がんばってください。更なるご活躍を期待しています!
Commented by さゆり at 2014-07-02 09:59 x
motagiさん、コメントと温かいお言葉有難うございます。今後アメリカに残るのか日本に帰るのかまだ分かりませんが、ちょっとペースを落として楽しみながら行きたいなと思います。
Commented by tsune at 2014-07-10 19:12 x
初めまして。
日本で理学療法士として働いている者です。
いろいろ見させていただいて改めて勉強をさせて頂いている次第です。ありがとうございます。
医療人というのはその点に関して必ず悩まされる時期が来ると思います。割り切ることも大事ですが、及ばずながら、自分は相手の人生の半分を背負うプロという自負があると信じているので無理してしまうのです。親戚や友人からは確かにもっと自分の時間を持つよう言われますが、なかなか上手くいかないものですね。
何だかよくわからないコメントになってしまいましたが、頑張って下さい。また折を見てコメントしてみます。
Commented at 2014-07-16 21:43 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by さゆり at 2014-07-16 22:46 x
tsuneさんと非公開さん、コメントありがとうございます。他人の人生に関わる仕事をしているとつい、忙しくて自分を見失えば見失うほど「他人の人生に同化できている、影響できているからこそ」みたいな妙な使命感と達成感に摩り替えてしまうところがありますよね。私は個人的に、理想的な仕事って、教職であろうと医療従事者としてであろうと、「自分がいなくても成り立つ環境を作ること」なんだと思うようになりました。○○さんがいないと回らない、と周りに思わせているようでは依存を助長しているだけ。患者、生徒、同僚や若いプロを教育して「なんだ、自分でも出来るね」「○○さんがいなくても大丈夫なんだ」と分かってもらうことこそが理想の仕事の仕方かなと。そしてだからこそ、本当にあなたでなくてはいけない友人や家族、そして自分自身との時間を大切に。皆さん楽しく生きていきましょー!

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