音叉と聴診器で骨折判別?

春学期もいよいよ残すところあと一週間、そして期末試験期間となりました!
私が授業を教えるのは春学期が最後なので(夏の間もいるけど授業は教えないことにしました)、
教師としてはここではこれが最後です。嬉しいんだか悲しいんだか。
最後までがんばろーっと。
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さて。
音楽家の皆さんにとっては音叉(tuning fork↑)は楽器を調音するための無くてはならない道具かも知れませんが、同じくらいアスレティックトレーナーにも欠かせないツールのひとつです。我々のSports Medicineカタログにも載ってますし(↓)、AT Facilityにも必ず幾つかは常に置いてあり、遠征バッグにも必ず忍び込ませる一品。
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む。
調音をするわけでもないのに何でかって?
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これ、実は骨折判別の道具として使われるのです。
Tuning Forkをコーンと靴で打って鳴らせて、それで骨折を疑っている骨に触れる。
振動が骨に伝わることで、『痛みが出るか出ないか』で『骨折があるかどうか』を見極めることができるというわけ。骨がintactならば振動こそ感じられても痛みは出ないはずですからね。1

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これ、AT界では常識といっても良いほど良く使う道具ですが、
実際のところの実用性はどうなのか?例えば、Ottawa Ankle Rulesが陽性だった患者に、
もうひとつの鑑別基準としてTuning Forkを使うという二段階のスクリーニングを試した場合、2
Ottawaのみをシンプルに使用した場合3に比べて、
Specificity及びPositive Likelihood Ratioが格段に改善されるのが見て取れます。
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ちなみに、Dissmann & Han氏のこの研究2はDistal fibulaの骨折に限ったもので、
面白いのがTuning Forkをどこに置くかでもかなり数字が変わってくる、という点。
ハッキリと優れていたのは、Tuning ForkをTip of the Lateral Malleolus (Figure 1)に置いた時ではなく、最も圧通がある箇所から5-10cm近位(proximal)のdistal mid-shaft (Figure 2)に置いた場合でした。Figure 1だと損傷しているであろう靱帯に近すぎて、False positiveが出やすいのでは?だろうとこのこと。
なるほど、ちょっと骨折箇所から距離を置くぐらいがいいんですね。
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Dissmann & Han (2006)2より


…で、今回それに加えたいのが、Tuning Forkで痛みの有無を見るだけではなく、
聴診器も用いて、『骨を通じて聞く音の変化』でも骨折が判別できるんじゃないか?
という研究たちです。これは正直言って私も最近までちゃんと読んだことありませんでした。
なかなか面白かったので、是非ここでもお話したいなーと。
ええ、聴診器です。キキマチガイではありませぬ。
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この件に関して最初に実験を行ったのはBache & Cross氏ら。4
Femoral neckの骨折診断に、
  Tuning Fork - over medial condyle of the femur or patella
  Stethoscope - over pubic symphysis
この(↑)ように道具をそれぞれ置き、骨を伝わってくる振動を聴診器で聞くことで、
『健側と比べて音が小さかったり聞こえない場合』を陽性と判断します。
(ちなみにこの研究では、この方法をBarford Testと名づけています)
結果はSensitivity = 91.1%、Specificity = 81.8%と、なかなかの数字。
触診が難しい箇所であることを考えると、なかなか実用性があると言えそうです。

*ちなみに、私もつい先日、うちの選手や生徒を実験台に、
健康な骨ばかりでしたが片っ端からこれを試してみました。
振動音が、かなりハッキリと遠くでも(i.e.Olecranon ProcessにTuning Forkを置いて、
StethoscopeはScapulaとか)聞こえるのにびっくり!面白いですね。

もうひとつ紹介しましょう。同様に、Misurya氏ら5は50人の患者を対象に、
このBarford Testの正確さを、別の骨折箇所でも検証。
Femoral Neckに加えて、Femoral ShaftとTibiaでも、同じように聴診器と音叉を用いて
音で骨折の判別を試みました。その結果は…
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ちなみに、それぞれのツールをどう置いたのかと言うと、
  大腿骨に骨折が疑われる場合 (Figure 1↓)
  Stethoscope - over ASIS or pubic symphysis
  (肥満患者の場合はこれは難しく、ASISのほうが簡単だと論文内では記述が)
  Tuning Fork - over patella
*骨折がneckにあるのかshaftなのか区別したい場合は、同じテストをStethoscopeを
Greater trochanterに置いた状態で繰り返す(=shaftならこれも陽性、neckなら陰性になるはず)。

  脛骨に骨折が疑われる場合(Figure 2↓)
  Stethoscope - over tibial tuberosity
  Tuning Fork - over medial malleolus
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クォリティーが悪いですが、Misurya et al 19875からの抜粋

Misurya氏ら曰く、128Hzの周波数が理想的―聞き取りやすく長く続く。それ以上だとkinetic energyが強く、多少の骨のダメージも乗り越えてfalse negativeにつながりやすいんだそうな。
とても簡単に、手軽に行えて正確さもあり、仮に患者が痛みを表現できない状態でも(意識を消失していたりuncooperativeでも)使えるテストで、実用性は高い、と結論付けています。

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…で、最後。
Moore氏6による、
下肢に限らず、様々な骨折患者を対象にした研究(下の表参照)なんですが、
ツールを置く箇所のルールとして彼が設けたのが、
1) Tuning Forkは骨折の疑いのある骨の遠位に、Stethoscopeは同じ骨の近位に置く(↓図A)。
2) 大きな腫れ(substantial swelling)が見られる場合Tuning forkを骨の近位に、
  Stethoscope腫れの上に置くものとする(↓図B)。
…というものでした。面白いですね。
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*この研究では、骨折を受傷して7日以上が経過してしまうと、治癒が始まってしまい、骨折で生まれたギャップが閉じ始めてしまう、という推測から被験者を受傷7日未満の患者に限っています。

結果はこちら。全体的なAccuracyは81%となかなかな数字です(↓)。
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更に、置き方ルール#1を用いた場合と#2を用いた場合(適切な場合に限り、ですが)を比べると、
Moore氏が考案したModified placementのほうが格段に診断価値が上がっていることが分かります。考察では、『Transverse fractureには最も有効で、AvulsionやBuckleのようなタイプだと繋がっている部分が振動を伝えられてしまうため、診断には向かない』ということも書かれていました。うーむ、面白い!
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そんなわけで、骨折判別のための道具として、Tuning Forkは痛みを生む診断ツールとしても、また、聴診器と組み合わせて音の変化を生み出す診断ツールとしても、二重の可能性があるんじゃないかな、というお話でした。
ちなみに個人的な意見ですが、weightのあるTuning Forkでないと使い勝手が悪すぎる。振動がすぐに止んでしまうので、多少お高くても(…といっても$2-3の違いですが)weight付きのものが絶対におススメです!

1. Kazemi M. Tuning fork test utilization in detection of fractures: a review of the literature. J Can Chiropr Assoc. 1999;43(2):120-124.
2. Dissmann PD, Han KH. The tuning fork test - a useful tool for improving specificity in "Ottawa positive" patients after ankle inversion injury. Emerg Med. 2006;23:788-790.
3. Bachmann LM, Kolb E, Koller MT, et al. Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: systematic review. Br Med J. 2003;326:417-419.
4. Bache JB, Cross AB. The barford test: useful diagnostic sign in fractures of the femoral neck. Practitioner. 1984;228(1839):305-308.
5. Misurya RK, Khare A, Mallick A, et al. Use of tuning fork in diagnostic auscultation of fractures. Injury. 1987;18(1):63-64.
6. Moore MB. The use of a tuning fork and stethoscope to identify fracture. J Athl Train. 2009;44(3):272-274.

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  by supersy | 2014-04-30 21:30 | Athletic Training | Comments(6)

Commented by りゅうじ at 2014-05-01 12:02 x
今回も面白い!

音叉テストは、ATCでは当たり前てますが、意外と日本のATは知らないんだよねー
セミナーとかで紹介すると、はじめて聞いたという人がほとんど。

それより、日本の音叉はたか過ぎる!!
安くて良いものをなかなか手に入らない…

またBarfordテストは知らなかった…
特に置場所、勉強になるねー


Commented by 貴史 at 2014-05-01 12:15 x
突然の書き込み失礼いたします。現在North Dakota StateでGAをやっています。同時期に全く同じ文献を読んでいた方がいたので驚きのあまりコメントさせていただきました。
Commented by tomendo at 2014-05-02 16:34 x
はじめまして ミラノでマッサージ師をやっているものです。icingの項目を探していてこのサイトにたどり着きました。これイタリアでは、昔から使っていますが、理論を知りませんでした。ありがとうございます。
Commented by さゆり at 2014-05-03 07:49 x
りゅうじさん、いつもありがとうございます!少しの置き場所の変化で正確さが変わったり、骨折のタイプによってテストに向き不向きがあるとか、小さいけれど重要な情報って意外と論文ではさらりとしか書かれていないんですよね。見落としがちですが、大事で実用性のあるtipだなと思います。

貴史さん、tomendoさん、コメントありがとうございます。tomendoさん、ミラノでマッサージ師って、素敵な響きですね…(うっとり)!
Commented at 2014-05-28 15:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by さゆり at 2014-05-28 23:52 x
ご丁寧にありがとうございます。申し訳ありませんが当方日本で医療活動をしたことがございませんので、こういった医療器具がどういった経路で売られているかは私の知識が及ばないところであります。実際にこのテストを使う機会がありましたら是非感想を教えて下さい。

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