シンスプリントおまけ。2つの新しいスペシャルテスト?

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昨日の試合、Roadで久しぶりに勝ちました!
今日は、San Antonioから移動してきてAbiliene, TXに来ています。
アメリカを寒波が襲っていて、ここ、テキサス北部でも昨晩は雪が振り、
外にはあちこちにまだ雪が残っています。移動、結構長かった。6時間…。

さて、シンスプリントのおまけです。
こないだはACLの画期的でシンプルな、新しいスペシャルテストについて書きましたが、
実はシンスプリントにも似たようなのがあるんです。しかも、ふたつも。
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これらは、Shin Palpation TestとShin Edema Testという名前がついています。
(原文ではオーストラリアの研究者によるものなのでoedemaの名前が使われていますが、
ここではアメリカ英語でedemaと表記させていただきます)

前述した通り、MTSSは一度発症してしまうと繰り返し起こりやすい、そして非常に治療が難しいというのは一般的に研究者も現場のクリニシャン達もコンセンサスするところでした。
それを受けて、「それではpre-symptomatic stage(まだ痛みなどの出る前の、極早期)のMTSSをどうにか発見できるような、スクリーニングに使えるテストがあればいいんじゃないか?」と考えたのがNewman氏ら(↑)。1

まずは、彼らの考えたスクリーニングテストの紹介から。
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Shin Palpation Test (スネ触診テスト↑)
脛骨の後方内側縁、そしてその周辺の筋肉を含めた、脚(lower leg)の遠方1/3後方内側面を触診。イメージとしては、「濡れたスポンジを絞るようなチカラで」ぎゅっと圧迫するように。
(写真では指が食い込むくらいしっかり触診してますね。モデルさんの脚もデカイっすけど)
圧痛があれば、陽性。

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Shin Edema Test (スネ浮腫テスト↑)
脛骨の内側、遠方2/3を5秒間軽く圧迫し、Pitting edemaが見られれば陽性。
Pitting edemaはこのよう(↓)に圧迫するとそのまま沈んで跡が残るような浮腫のこと。
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これらを用いて、実際にNewman氏らが行った実験のデザインは以下のとおり。

384人のオーストラリアの新米ソルジャー達(96 female, 288 males)を対象に
このふたつのスクリーニングテストを行い、その後、16ヶ月のトレーニング期間に起こった怪我をテストの結果に関わらず平等に監視・追跡。結果、その16ヶ月間に合計58人 (26 female, 32 males)、64件のMTSS診断が下されました(MTSSを期間内に2回発症したのが4人、3回発症したのが1人いたため)。これらを統計に取り、分析してみると…

Finding: Both Shin Palpation Test and Shin Edema Test are the significant predictors of future onset of MTSS symptoms.

Shin Edema Testが陽性なのにasymptomaticなの?と思うかも知れませんが(少なくとも私は思った)、平均のスクリーニングテストを実地してから、実際の発症までの平均日数は147.3 days (range 0-490, median 181)あるというのでなるほど、"predict"という表現は妥当なのかも知れません。

Shin Palpation Testが陽性の場合、MTSSをその後発症する確率はそうでない人と比べて4.63倍に増える。同様に、Shin Edema Testが陽性の場合、確率は76.1倍に跳ね上がる。
両方が陽性だった場合の確率は計算できず。…というのも、両方陽性でMTSSを発症しなかった対象者がいなかったため。逆に言うと、この研究に限って言えば、Shin Palpation & Edema Testの両方が要請の場合、MTSSがその後100%の確率で起こった、と言える。
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Newman氏らの研究結果(Table 1↑)を元に、このShin Palpation & Edema Testのdiagnostic valuesを計算して出してみた(↑)のですが、これがどうして、研究本文の結果(Table 2↓)と数字(LR+, LR-)が食い違うんですよね。この研究では、同じ患者に何回か起こったMTSSも別件として数えているのかな?原文には、"A negative shin [o]edema test virtually rules out the chance that a patient will develop MTSS symptoms with activity (Negative Likelihood Ratio All 0.095)"(p.864)と言う表現があるけど、これは同意しかねる…。Rule inはほぼ完璧だけど、rule outはかなり数字的に不自然がありませんか?どういう計算してるんだろ?私の計算のほうがおかしい?
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Newman氏らの数字にイマイチ信憑性を感じられないので、
このまま私が出した数字を元に話を続けると、
どちらのテストもr/oには弱いが、rule inには―特に、Shin Edema Testはほぼ完璧に―有効であるということが言えるかと思います。現実的に考えると、これらのテストが陽性が出た患者は、例えMTSSの症状が無くても、Foot Biomechanics Evaluationをしたり、Orthosisを作ったり、K-Tapeをしたり、という早期のinterventionから利益を得られるかも知れません。実際に有効な予防プログラムを作るにはまだまだデータが足りませんが、なんとなくそういうイメージは見えてきますよね。

さて、そんなわけで、これはこれでなかなか面白い研究ですね、という話でした。
Newman氏らの計算方法が分かった方、是非ご連絡下さい。

1. Newman P, Adams R, Waddington G. Two simple clinical tests for predicting onset of medial tibial stress syndrome: shin palpation test and shin oedema test. Br J Sports Med. 2012;46:861-864.
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  by supersy | 2014-02-07 17:00 | Athletic Training | Comments(7)

Commented by ジデン at 2014-02-08 12:46 x
LR+, LR-が食い違うんは、たぶん、著者陣がROC curveをもとに計算してるからやと思うで。

このArticleについて、だいぶ前にここで(→http://www.sportsmedres.org/2012/06/two-clinical-tests-for-predicting-onset.html)議論されてるで。
Commented by さゆり at 2014-03-01 12:15 x
そうか、統計学はジデンの方が格段に詳しいから解説助かります。しかしそれにしたって、こんなに数字に違いが出るかね。陰性でrule outほぼ確実にできるというのは、かなりoverstatementだと思うんだが。
Commented by ジデン at 2014-03-04 11:22 x
わかったよ。なんで、なんでLR+, LR-の数字がかなり食い違うんかが。ROCを使ってLR+, LR-計算したんやあらんかった。普通に2x2 Contigency Table analysisやった。さゆりが使ったSensitivityとSpecificityの計算式がちゃうで。正しいSensitivityとSpecificityの計算式は、Sen = True positive/(True positive+False positive)、Sp=True negative/(true negative+false negative). この計算式に当てはめるとTable2と同じ数字になるで。それでも、”陰性でrule outほぼ確実にできる”という表現は、俺もoverstatementやと思う。統計学的にRule out出来る確立がかなり高いってことが実証されただけでやらか。
Commented by さゆり at 2014-03-05 01:00 x
むー?sen = true positive/(true positive + false negative)とspe = true negative/(true negative + false positive)と思ってたけどそれが違う?手元の本でも確認してみたけどそうなってる。というか、edema testが陰性だった372人のうち、47人がその後MTSSと診断されたというのだから、それだけで「rule inがほぼ完璧」というstatementの重みは無くなるよね…と思う…。陰性患者全体の12.6%はfalse negativeだったってことでしょ?
Commented by さゆり at 2014-03-05 01:01 x
うーん、今更statsの授業取り直したい感じだわ。もっと分析が上手くならないと突っ込めることも突っ込めないなぁ。あくまでevidenceのconsumerとしてだけど。相変わらず研究をするほうに興味はさほどないので、ジデンはほんと、尊敬しているであります。
Commented by ジデン at 2014-03-05 05:26 x
ほんまごめん、俺が間違ってた。ちゃんと色々なとこを確認したけど、sen = true positive/(true positive + false negative)とspe = true negative/(true negative + false positive)で正しい。True positive/(True positive+False positive)は+Predictive value(PV)の計算式で、True negative/(true negative+false negative)は-PVのやね。ってことは、著者陣のLR+, LR-の計算の仕方が間違ってることになる。いちよう著者陣とEditorに確認のメールを入れてみた。また、メール返ってきたら報告するよ。間違った情報+混乱させて、ほんま申し訳けあらん。
Commented by さゆり at 2014-03-10 12:54 x
うっはー、だとしたら著者たちもreviewerも気づかなかったという、致命的なミスってことに…。行動が早いのはさすがジデンだわ。また違うexplanationがあったら是非教えてね。

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