Lelli's Test―ACL断裂のための新しいスペシャルテスト!?

今遠征から帰ってきて、深夜一時を回ったトコロです。
遠征の移動のバスで書いていたブログをアップしますー。
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急性の前十字靭帯断裂って、思うより診断が難しいんですよね。
患者が痛みでとにかく膝を触られるのを嫌がったり、guardingやspasmがあったり、
併発する怪我(半月板損傷とか)があったりで、意外と複雑なのです。
実は、前十字靭帯断裂の全体の76%が一番最初に診たphysicianによって誤診される、
という統計1もあります。76%ってば、なかなかな数字ですよね。私も、ここ4年で一回、
完全に前十字じゃないだろうと思っていたものが前十字断裂で、MRI結果を聞いて腰を抜かしそうになったことがありました(私は完全にrule outしたつもりだった)。
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ACL断裂の診断に関しては、何と言ってもBenjaminse氏らの書いたmeta-analysis(↑)2が秀逸。この論文、少し古くなってしまっているけど(2006年)本当に詳細に20ページにわたって
まとめられていて、素晴らしいの一言!
全てのAthletic Trainerに読んでもらいたい論文であります。

このmeta-analysisの内容を話す前に、まず、前提として、
ACLの診断に使われる代表的なテスト3つをさらっとおさらいしたいと思います。
Anterior Drawer Test
患者の膝を90°に屈曲し、患者の足の上に座った状態で、
脛骨を両手でつかみ、前方に引き出す。

Lachman Test
患者の膝を20~30°に屈曲した状態で片手で大腿骨を固定し、
もう片方の手で脛骨を掴み、前方に引き出す。



Pivot Shift Test
患者の膝を伸展させた状態から脛骨を内旋させる。
(= 脛骨がanterolateral方向に亜脱臼する)
この状態で膝にvalgus forceをかけながら、膝をゆっくりと屈曲させていく。
30-40°の屈曲をしたあたりで、膝がカクンという感覚とともに本来あるべき位置に
戻れ(= 亜脱臼が整復)ば陽性。

…これを踏まえて。
Benjaminse氏らの細かな分析を、
最もシンプルにひとつのチャートにまとめるとこんな感じ。
それぞれのテストを、患者が(普通に)起きている状態と全身麻酔をかけた状態で
applyした場合のdiagnostic valueは以下の通りです。
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ひとつひとつ見ていくと、
1) Anterior Drawer: Good to rule in chronic tear ONLY (理由は後述します)
2) Lachman: Good to rule in AND out acute AND chronic tear
3) Pivot Shift: Good to rule in acute AND chronic tear
Pivot shiftに関しては、麻酔をかけた状態だとrule outの価値もそこそこありそうですね。

しかし、この3つのテストのどれも、問題点というかデメリットというか、そういうのがあるんです。クリニシャンとして、これらを把握しておくことは、後々の診断にかなりの影響を及ぼすことになります。

Anterior Drawer: ChronicのACL deficiencyならいいが、AcuteのACL tearとなると一気に価値がガタ落ちに(sensitivity 49%, specificity 58%)。その要因として考えられるのは1) 急性の場合、腫れや痛みでそもそも膝を90°に屈曲できないことも多い。2) ハムストリングのspasmを併発している場合があり、これが丁度前方引き出しのcounter-forceになってしまう。3) 内側半月板のposterior hornに損傷がある場合、損傷部位がMedial femoral condyleに引っかかってfalse endを産んでしまう。これらのうちどれかが当てはまると、false negativeになってしまうわけです。…なので、これ、私現場ではもうほとんど使わなくなりました。

Lachman: 少しテクニックが要るテスト。練習を積まないと効果的に出来ない。特に、クリニシャンの手のサイズに比べて患者の足が大きい場合、難易度が格段に上がり、reliabilityが下がってしまう。更に、膝の屈曲角度を間違えて10°程にしてしまうと、関節がcloseになり始め、false end pointを産んでしまうかも。

Pivot Shift: とにかく、膝関節を亜脱臼させるわけだから、患者さんはたまったもんじゃない。Consciousの場合、痛みや違和感でguardしてまずfalse negativeになると思った方が良い。麻酔をかけないと使えないテストというのは、現場では実用性はかなり低いですよね。

そんなわけで、どれも長所短所あるんです。色々まとめた結果Lachmanが今の所ベストなのに代わりはないけれど、例えば私が370 lbsのアメフトのラインマンにやるとなったら正確にできる自信はちと無いし、contextにもよりますが、なかなかお手軽で完璧なテストってありません。

そこで待った!をかけたのがスペインの整形外科医、Dr. Alessandro Lelli氏。3
このビデオを見てもらえば分かるのですが、 彼の提案する新しいACL断裂のテスト、Lelli's Testは、まるで今までの葛藤が嘘だったかのような、驚くほどシンプルなテストになっています。
彼がこのビデオで紹介しているやり方をここでも解説すると、
1) 患者の脛の後方(tibial tuberosityから指三本分下)に拳を置く。
  *これがdistalすぎるとfalse negativeになるようなので注意!(参考動画)
2) Distal femurの辺りにDownward pressureを軽く数回かける。
3) もしFootがテーブルの上でぴょんぴょんと跳ねれば(=踵が浮けば)陰性。
 もし足がテーブルについたまま動かなければ陽性。
 Impaired functionality of the ACLを示唆する…ということなんだそうです。
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もちろん、これだけは大声で言わせて下さい。
このテストはDr. Lelliのclinical experienceのみに基づくもので、これを正当化するエビデンスはまだありません。Reliabilityも、SensitivityもSpecificityもなーんにも分かっていません。全くの嘘っぱちな可能性は十分にあります。

しかし!もしこのテストが本当に価値があるものだと今後認められるようなことがあれば、クリニシャンの技術レベル、患者の体型に関わらず万能に使えるテストになりそうです。拳をおいて、ぴよんぴよん。それこそ、学生にだって簡単に出来そうでしょ?

…そんなわけで、とにかくチェックしてみる可能性はあるテストだと思います。そして、もし機会があれば皆さん、使ってみた感想などを教えてもらえると幸いです。うちのAT ProgramのPreceptorさんたちにも、こんなものがーと紹介してみたら、「面白い!早速月曜に使うから報告待ってて!」と皆喜び勇んで返事くれました。これがどんなテストなのか、もっともっと深く学んでみたい!楽しい。いずれ文献でも見かけることがあるかもしれませんね!

**追記**
エビデンス出たのでこのトピックについては書き足してます!下のリンクからどうぞ。
 Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその1。
 Lelli Test、改め『Lever Sign Test』は結局のところ使えるの?最新エビデンスまとめその2。

1. Kay S. The knee joint - an introduction to assessment and diagnosis. SportEx Medicine. 2010;(45):7-12.
2. Benjaminse A, Gokeler A, van der Schans CP. Clinical diagnosis of an anterior cruciate ligament rupture: a meta-analysis. J Orthop Sports Phys Ther. 2006;36(5):267-288.
3. Lelli A. Lelli’s test for ACL lesion [Video]. YouTube. http://www.youtube.com/watch?v=eEhpwTU3KXg&feature=youtu.be. Published September 20, 2013. Accessed January 31, 2014.

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  by supersy | 2014-02-02 01:00 | Athletic Training | Comments(5)

Commented by カサイカズユキ at 2014-02-05 17:59 x
女子の小柄な方にも使えそうです^^
Commented by さゆり at 2014-02-06 09:26 x
600超のFBでのシェアやlikeありがとうございます。学生や同僚とも色々試してみたのですが、アプリケーションは非常に簡単です。しかし、逆にセラピストの身体が大きく患者が小さい場合、拳をおいただけで脚が浮いてしまい、安定しないケースもありました。私が色々な人(全員ACLアリ)に試した中で、唯一陽性が出たのはACL再建を2度経験した選手。グラフトがゆるいのか?たまにbuckling/giving way (1/mo)があるそうです。これはどう解釈したらよいものか。
Commented by さゆり at 2014-02-06 09:30 x
また、元同僚の報告によれば、「俺の膝(ACL-D)にやらせたら偽陰性(false negative)が出た」そうです。この元同僚というのは200kgはあろう巨漢なので、やはりコントロールがしにくいのでしょうか。高校で働く同僚は、やはり同僚のATCを相手に試したところ、正確な結果(ACL-Dには陽性、ACL-Rには陰性)が出たそうです。
Commented by ジデン at 2014-02-08 12:56 x
最近うちの高校生がACLを損傷した時に(supine position+no spasmで)使ったら、正確な結果が出たで。ただ、上半身がおきあがってる状態やSpasm状態やとFalse negativeが出た。
Commented by さゆり at 2014-03-01 12:18 x
なるほど上半身を起こしている時はだめとは面白い。私もあれからいろいろ試してみたけど、拳を置く位置がほんとにポイントだね。少しずれるとすぐに陽生が出ちゃうかなという印象です。

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