医者に「シンスプリントですね」と言われたら その2。

前回は危険因子と治療について少し書きましたが、
ここからが本題です。診断に焦点を当てていきたいと思います。

…つーかそもそも、シンスプリントが何なのか、について私まだ説明してませんよね。

●Shin splints are symptoms, not a diagnosis
そもそもシンスプリントとは、「脛の痛み」という意味しかありません。
つまりこれらの用語は、あくまで「脛が痛い」という症状を描写したものであって、
実際にどの組織に影響が出ているのか、という病理を説明するものではありません。
…そう、つまり、『診断』ですらないのです。
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走ったり跳んだりすると脛が痛い。
お医者さんに行ったら検査の末「シンスプリントですね(=脛が痛いんですね)」と言われた…
これってばつまり、、脛が痛くて来た人に、なるほど、脛が痛いことが分かりました、と言っているだけです。…そんな時は、「それは知っています。だから来たんです。…で、実際の痛みの原因は何なのでしょうか?」と、ビシっと言ってやりましょう。
少なくとも、私の学生には「こんな診断でもない診断を投げつけないで、
もっと細いところまで見て、きちんと回復につながるような診断を責任持って出しなさい」
と指導しています。

●では、どんな組織が関わっている場合があるのか
Lower Legの痛みは、大きく分けて以下のように分類されることが多いです。
Stress Fracture (疲労骨折)
 脛骨の疲労骨折。

Chronic Exertional Compartment Syndrome (ECS)
 慢性的な負荷により、コンパートメント内の腫れやmetabolic wasteが蓄積、
 コンパートメント内の組織を圧迫し始める。
 
Nerve Entrapment
 common peroneal, superficial peroneal, saphenous nerveが
 トラウマ、repetitive exercise, 外的圧迫(i.e. キャストとかサポーター等)によって
 圧迫され、痛みや痺れを起こす。
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Popliteal Artery Entrapment Syndrome (PAES)
 これは先天的のanatomical variation(↑ クリックで拡大)によるもので、
 動脈の走り方が原因で頻繁に圧迫されてしまうことから起こる。 

Medial Tibial Stress Syndrome (MTSS)
 それ以外の脛の痛み。原因は、更に以下のように分類が可能。
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 - Periostitis
 名前の通り、骨膜炎(↑)。
 脛骨に様々な筋肉が付着していることから、これらの筋肉を走ったり跳んだりで
 酷使することによって膜に緊張がかかり、結果炎症を起こすのでは、というこの説は
 以前は有名だったですが…。細胞学の観点からすると、inflammatory markerが確認
 できた、という研究は、総じて30年ほど前のほんのごく一部のもののみ。1-4
 Literaure reviewでは合計75件のバイオプシーの結果、4件からしか骨膜の
 炎症が確認できなかったそうな。5 証明がイマイチきちんとされていないため、
 最近は「無いとは言わないけど、思ったほどcommonじゃないのかもね」
 という考えが一般的です。

 - Myofascia
 ならば筋膜は?という説もあります…が、
 これも解剖学的にはイマイチ一貫性のないものになっています。
 とある大規模(50の脚)な解剖実験6では、所謂脛の内側、MTSSの典型的痛みが見られる
 箇所には筋膜が存在しないことが証明されています。

 - Muscular Overuse and chronic fatigue 
 筋肉・腱から痛みが来ているのでは、という説はそれなりに説得力があります。
 関わっているとされる筋肉は、Tibialis Postetior,1 Soleus,2,7
 Flexor Hallucis/Digitorum Longs。8 

 - Bone Stress Reaction
 最近では痛みが膜ではなく骨そのものから来ているのではないか、という説が有力です。
 CTスキャンやMRI、Bone Scanの精度が上がってきている近年、骨のmarrowが腫れを
 起こし、内側から骨膜を押し上げているという報告が増えています。9-14

●これらを効果的に振り分けるには
これらの一見似通った診断たちを見極めるには、アルゴリズムを用いることが有効なのではないか、と唱える研究者が増えてきています。つまるところ、フローチャートのようなものです。基本形は同じで幾つか派生系があるこのアルゴリズム、独断と偏見でEdwards氏ら15が紹介しているものを元に紹介させていただきます。
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これ、結構シンプルで分かりやすいと思いませんか?
まず、休息時の痛みがあるかどうか、そして、圧痛箇所があるかで大まかに3種類に分類でき、
そこから、圧痛の箇所や痺れの有無、末端の脈拍が正常かどうかで
一応全てのchronic leg painを分類することが可能です。

もちろん、例えば実際にはMTSSとStress fractureを併発している場合もあるので
診断はこんなに簡単に行かないことも多いと思います。
しかし、カギになる症状を把握しておくと、情報の整理がし易いのも事実。
授業でもこのアルゴリズムは紹介したいと思います。イメージはつきやすいかなと思うのよね。

さて、それではそろそろ試合に出発です。行ってきます!

1. Mubarak SJ, Gould RN, Lee YF, et al. The medial tibial stress syndrome a cause of shin splints. Am J Sports Med. 1982;10(4):201-205.
2. Michael RH, Holder LE. The soleus syndrome. A cause of medial tibial stress (shin splints). Am J Sports Med. 1985;13(2):87-94.
3. Bhatt R, Lauder I, Finlay DB, et al. Correlation of bone scintigraphy and histological findings in medial tibial syndrome. Br J Sports Med. 2000;34(1):49-53.
4. Johnell O, Rausing A, Wendeberg B, et al. Morphological changes in shin splints. Clin Prthop Relat Res. 1982;167:180-184.
5. Kortebein PM, Kaufman KR, Basford JR, et al. Medial tibial stress syndrome. Med Sci Sports Exerc. 2000;32:S27-S33.
6. Beck BR, Osternig LR. Medial tibial stress syndrome. The location of muscles in the leg in relation to symptoms. J Bone Joint Surg Am. 1994;76(7):1057-1061.
7. Detmer DE. Chronic shin splints: classification and management of medial tibial stress syndrome. Sports Med. 1986;3:436-446.
8. Garth WP, Milller ST. Evaluation of claw toe deformity, weakness of the foot intrinsics and posteromedial shin pain. Am J Sports Med. 1989;17:821-827.
9. Beck BR. Tibial stress injuries: an aetiological review for the purposes of guiding management. Sports Med. 1998;26(4):265-279.
10. Magnusson HI, Ahlborg HG, Karlsson C, et al. Low regional tibial bone density in athletes with medial tibial stress syndrome normalizes after recovery from symptoms. Am J Sports Med. 2003;31(4):596-600.
11. Magnusson HI, Westin NE, Nyqvist F, et al. Abnormally decreased regional bone density in athletes with medial tibial stress syndrome. Am J Sports Med. 2001;29(6):712-715.
12. Batt ME, Ugalde V, Anderson MW, et al. A prospective controlled study of diagnostic imagign for acute shin splints. Med Sci Sports Exerc. 1998;30(11):1564-1571.
13. Frederickson M, Bergman AG, Hoffman KL, et al. Tibial stress reaction in runners correlation of clinical symptoms and scintigraphy with a new magnetic resonance imaging grading system. Am J Sports Med. 1995;23(4):472-481.
14. Gaeta M, Minutoli F, Scribano E, et al. CT and MR imaging findings in athletes with early tibial stress injuries: comparison with bone scintigraphy findings and emphasis on cortical abnormalities. Radiology. 2005;235(2):553-561.
15. Edwards PH, Wright ML, Hartmen JF, et al. A practical approach for the differential diagnosis of chronic leg pain in the athlete. Am J Sports Med. 2005;33(8):1241-1249.

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  by supersy | 2014-02-01 14:30 | Athletic Training | Comments(0)

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