医者に「シンスプリントですね」と言われたら その1。

例によって今回も遠征でHuntsville, TXへ来ています。
今日の試合は2点差で落としてしまいましたが、
試合後、ウェブサイトを見てみたら久しぶりにアクションフォトがありました(苦笑)。
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明日はBeaumont, TXへ移動です。つーかーれーたー。

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走ったり跳んだりすると脛が痛い。
お医者さんに行ったら色々検査されて、「シンスプリントですね」と言われた…
なんて方、居ませんか?
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シンスプリント(shin splints)の医学名称はMedial Tibial Stress Syndrome (MTSS)と言いますが、これがなかなかどうしてアスリートには多い怪我です。特に長距離ランナーがそうですが、私も現在働いている女子バスケットボールのチームで年に1-2名は必ず出ている気がします。

面白いことに、と言うか何と言うか、ここ40年ほどの研究でMTSSの様々な治療法を数多くの研究者が調べているのに、未だに「prolonged rest (長期間の休息)」以上の有効な治療法は分かっていません。「prolonged (長期間の)」というのが中でも厄介で、最近のRTCでは十分に回復するまで平均で102.1-117.6日という、本当に長い期間がかかることが明らかになっています。1 アスリートには、なかなか非現実的な数字です。
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もしこの怪我がそこまで治療するのが難しいものなんだとしたら、
一番良いのはどうやら『予防』ということになってきます。
予防した怪我は、治療する必要もないですもんね!

では、MTSSの危険因子にはどういったものが挙げられるのか?
2013年に発表されたsystematic review/meta-analysisによれば(10つの研究を併せて、合計1924人もの被験者を対象にしたもの),2 以下の項目が"Significant contributing factors for MTSS"として確認されています:
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1) Navidular Drop: 体重負荷時に(免荷時と比べて)、舟状骨の降下が大きければ、
 MTSSのリスクも高まる。しかし、MTSS groupとnon-MTSS groupの降下度平均の差は
 ほんの0.85mmであり、誤差が1.1-3.0mmあることを考えればほとんど計測不可能
 と言っても良いほどの微々たる値。別の角度からの分析だと、Navicular drop testが
 陽性(> 10mm)の場合、MTSSのリスクは1.99倍に上がる、という統計が出たので、
 こちらのcutoff pointを覚えておいたほうが実用性があるかも.
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2) Body Mass Index (BMI): 一歩一歩の衝撃が大きくなるからでしょうか?
 それともBMIが高い→deconditioning?理由は不明です。
3) Poor Running Experience:競技経験の欠如。
 どのくらいの経験が『十分』といえるのか、というA clear cutoff valueはまだ
 存在しないのですが(研究から分かっていることは、4週間のトレーニングでは
 不十分だということのみ)、3神経血管性・骨の順応性がそれなりに高くないと
 疾患につながりやすい、というのは明白です.
4) Previous history of MTSS: これは、説明いりませんよね。
5) Female gender: 単純に女性だからというだけで、
 危険性は1.71倍に跳ね上がります。ヒールストライク時のincreased knee valgue,
 decreased knee flexion, increased peak hip IRが関係しているのか、何なのか…
6) Increased hip external rotation ROM (Male ONLY): ipsilateralなのか
 contralateralなのかは言及されてなくて残念だったのですが、男性に限り、
 股関節の外旋があればあるほどMTSSに結びつきやすいそうです。へぇー!

興味深いことに、Dorsiflexion ROM (increased or decreased)はMTSSのリスクに直結しないという結果でした。MTSSになるのはふくらはぎが硬いからだ、治療にはとにかくストレッチをしなければ、という昔からの考えを覆す結果になります。

最も研究されている危険因子のひとつに土踏まずの構造上の異常があります。
Barnes氏ら4が行った、足の型とMTSSとの関係性を調べたsystematic reviewによれば、とにかく極端な足のタイプ(pronation=偏平足とsupination=高アーチの両方)であれば、普通の土踏まずのある足に比べてMTSSになり易い、という結論が弾き出されました。その中でも特に偏平足に関するエビデンスはとにかく数が多い。総合してみても回内のある人はそうでない人に比べてMTSSの危険性が約二倍上がる5-13という結果が出ています。足の回内によってdeep planar flexors & invertorsにeccentric loadがかかり、(それらの筋肉が起始・停止する)Medial aspect of tibiaにストレスがかかるのが原因では、という仮説が今の所一番有名です。14

歩行時の回内の度合い(amount)に関する文献は多くある中、目を引いたのが歩行時に回内がどのくらいの速さ(rate)で起こるのかもひょっとしたら重要なんではないか、という提言でした。15
Griebert氏らの行ったclinical trial15によれば、MTSSの病歴がある人は、健康な人に比べて歩行時にeccentric loadのかかるrateが高い→速いのだとか。つまるところ、これらの人の土踏まずは、歩行時の体重不可の際にあっという間にcollapseする、ということになります。

この回内のrateを遅くするために効果的なのでは、とされているのがキネシオテープ。面白いことに、40人の被験者を対象にした実験15によればこのシンプルなキネシオテープ(↓)が体重のlateralization及びrate of loadingを、健康な被験者と全く同じレベルまで改善するというのだから驚き。この効果はテープを張った直後に始まり、時間とともに少しずつ無くなっていく模様。現時点では、これらの効果がproprioceptive effectsによるものなのか、the tape’s mechanical propertiesによるものなのかははっきりしていません。
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靴の中底は?と思う方は多いかも知れません。
この分野は意外と意見が別れるところなのです。
Newman氏ら2が行ったmeta-analysisによれば、なんとOrthoticsを使っている人は今まで使ったことない人に比べてMTSSのリスクが上がるとしているのに対し、Thacker氏ら16の行ったsystematic review、及びCollins氏ら17のもうひとつのsystematic review/meta-analysisでは衝撃吸収方&回内矯正の中底は(カスタムメイドでも既製のものでも)予防には非常に効果的である、という結論を出しています。Richter氏ら18 「害のリスクは低く、利益は大きいかもしれないことを考えれば、アスレティックトレーナーはインソールの使用を前向きに考えるべきなのではないか」と提言しています。もちろん、間違ったタイプの中底を選んでしまったり、矯正しすぎて逆に問題になってしまうようなことは避けなければ、ですけどね。今の所、ガイドラインというものはまだ存在しません。

…さて、長くなってしまいました。
次回に続きます!

1.Moen MH, Holtslag L, Bakker E, et al. The treatment of medial tibial stress syndrome in athletes: a randomized clinical trial. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2012;4:12.
2.Newman P, Witchalls J, Waddington G, et al. Risk factors associated with medial tibial stress syndrome in runners: a systematic review and meta-analysis. Open Access J Sports Med. 2013;4:229-241.
3.Bredeweg SW, Zijlstra S, Bessem B, et al. The effectiveness of a preconditioning programme on preventing running-related injuries in novice runners: a randomised controlled trial. Br J Sports Med. 2012;46(12):865-870.
4.Barnes A, Wheat J, Milner C. Association between foot type and tibial stress injuries: a systematic review. Br J Sports Med. 2008;42:93-98.
5.Moen MH, Tol JL, Weir A, et al. Medial tibia stress syndrome: a critical review. Sports Med. 2009;39(7):523-546.
6.Yates B, White S. The incidence and risk factors in the development of medial tibial stress syndrome among naval recruits. Am J Sports Med. 2004;32(3):772-780.
7.Busseuil C, Freychat P, Guedj EB, et al. Rearfoot-forefoot orientation and traumatic risk of runners. Foot Ankle Int. 1998;19:32-37.
8.Tweed JL, Campbell JA, Avil SJ. Biomechanical risk factors in the development of medial tibial stress syndrome in distance runners. J Am Podiatr Med Assoc. 2008;98(6):436-444.
9.Willems TM, Witvrouw E, DeCock A, et al. Gait-related risk factors for exercise-related lower-leg pain during shod running. Med Sci Sports Exerc. 2007;39(2):330-339.
10.Sommer HM, Valentyne SW. Effect of foot pressure on the incidence of medial tibial stress syndrome. Med Sci Sports Exerc. 1995;27(6):800-804.
11.Hubbard TJ, Carpenter EM, Cordova ML. Contributing factors to medial tibial stress syndrome: a prospective investigation. Med Sci Sports Exerc. 2009;41(3):490-496.
12.Reinking MF. Exercise-related leg pain in female collegiate athletes: the influence of intrinsic and extrinsic factors. Am J Sports Med. 2006;34(9):1500-1507.
13.Bennett JE, Reinking MF, Pleumer B, et al. Factors contributing to the development of medial tibial stress syndrome in high school runners. J Orthop Sports Ther. 2001;31(9):504-510.
14.Beck BR. Tibial stress injuries. An aetiological review for the purposes of guiding management. Sports Med. 1998;26(4):265-279.
15.Griebert MC, Needle AR, McConnell J et al. Lower-leg kinesio tape reduces rate of loading in participants with medial tibial stress syndrome. Phys Ther Sports. 2014 (In Press – doi:10.1016/j.ptsp2014.01.001.)
16.Thacker SB, Gilchrist J, Stroup DF, et al. The prevention of shin splints in sports: a systematic review of literature. Med Sci Sports Exerc. 2002;34(1):32-40
17.Collins N, Bisset L, McPoil T, et al. Foot orthoses in lower limb overuse conditions: a systematic review and meta-analysis. Foot Ankle Int. 2007;28(3):396-412.
18.Richter RR, Austin TM, Reinking MF. Foot orthoses in lower limb overuse conditions: a systematic review and meta-analysis – critical appraisal and commentary. J Athl Train. 2011;46(1)103-106.

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  by supersy | 2014-01-30 23:00 | Athletic Training | Comments(0)

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