考えていますか?Differential Diagnosis。

前にも書いたように、今学期は私の大好きな授業、下肢評価(lower eval)を教えています。
学期が始まって一週間。教えている内容は基本的な評価の流れ、それこそHOPSとは、とか、SOAP noteとは、とか、そういうところからです。評価の予備知識や経験がほとんどない学生ばかりなので、本当に基礎の基礎から叩き込んでおります。

基礎の基礎として学生に何度も強調することは幾つかあるのですが、
1. 問診、問診、問診!
『最終診断に必要な情報の85%はHistory takingで得るものだ』 - Sy
 (数字は実はテキトウ。でも85%ってあながち外れてもいないと思う)
評価を習い始めたばかりの学生がよくするミスで、「足首が痛いです」と患者が来ると、「足首!」って飛びついてすぐ触りたがっちゃうっていうのがある。でもさ、HOPSの順番からすると、触診(palpation)は三番目だよね。順番を飛ばしちゃいけない。始めたばかりの頃は、自分でこんなルールを作るといい。手を後ろに組んで、まずは5分間、考えうるだけの質問をとにかく聞いてごらん。痛みの程度は?痛みの種類は?どういうときに痛みが楽になったり、痛みが増したりする?この部位は以前に怪我したことある?あるとしたら、どんな怪我?どんな靴を履いているの?この靴を履き始めたのはいつ?何か薬は飲んでる?喘息や貧血や、持病みたいなものはある?このスポーツを始めてどれくらい?どのポジションをプレーしているの?趣味でしているactivityは?
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できるかぎりyes/noで答えられない、open-endedな質問をすること。患者さんに目いっぱいおしゃべりしてもらおう(もちろん好きなミュージシャンなんかは聞かなくてもいいかもしれない、でも、飼っているペットくらいは聞いてみる価値はある)。十分な数の質問をここでしっかり聞ければ、触診を始める前にもうほとんど怪我が何か分かってくる場合も多い。

2. 触診のスキルを持とう。
『残りの15%のうち10%は触診だ。これが終われば、もう診断はほぼ終わったも同然』 - Sy
あなたに透視の能力があって、ヒトの身体の中が見えたら評価なんてとっても簡単だろうけれど、もちろんそういうわけにはいかない。Deep tissueは目で見えない分、第二の目である手の感覚を駆使するしかない。それが、触診。
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撫でるように表面のみをさらさら触っていたって分からないし、むぎゅー!と強すぎてもダメ。患者さんに合わせて丁度良い力をかけながら、それぞれの組織のテクスチャーを確認していく。ただ何となく患者が痛いという部位を触るのではなく、指に意志を持つこと。目的を持って患者を触る。指を明確に動かす。
上手くなれば、本当に指は第二の目として活躍してくれる。そのためには、練習。練習。

3. Special Testは、おまけのようなもの。
『Special Testは最後の5%くらいになるわけだけど、これは診断をconfirmするため、
 もしくは他の可能性をrule outするために補足情報として使う、くらいの感覚で』
- Sy
もちろんSpecial Testを馬鹿にしてはいけないし、エビデンスに基づいたcluster/clinical prediction ruleもとっても大事。このブログでも何度もまとめているし。ただ、診断でこれらに頼りっきり、すがっているようではいかんと思う。診断=Special Testを覚えなきゃいけないと考えがちな学生には、単純なスキル(=問診や触診)ほど大事なんだと教えるようにしています。

…さて。
前置きが長くなりました。

評価(HOPS)を終え、最終診断(SOAPのA, Assessment)を下す際に、
私が毎年学生に見せるトリックがあります。

まずは、これ(↓ 音のみ、映像無し)を聞かせて、
「これ、何だと思う?」と尋ねます。


学生は、声をそろえて、「うまーー!!!!」

「馬か。馬かな?馬だと思う?」
こくこく頷く学生たち。
「こんな簡単なの、バカにすんなよ、って感じ?」
こくこく頷く学生たち。
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「でもさぁ、じゃ、こういう可能性は?」
…と言ってこの写真(↓)を見せると、学生たちはあっと言葉を失います。
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「そう。シマウマじゃない可能性は無い…よね?」

「これはね、良くあることだからまず皆に言っておく。b0112009_124283.png
選手があなたの目の前で足首を捻ったとしよう(→)。
典型的な内反のメカニズム。Lateral aspectの腫れもある、ATFの圧痛もある。
捻挫だ!と、誰もが思うよね。もう、めっちゃ簡単じゃーん!って。

…そういうのに限ってさ、後で実は『骨折でした』なんてことがある。
あなたが『捻挫だ!間違いない!』と思い込んで、
他の症状や微々たるサインを見ようとせず、
安易な最終診断に飛びついてしまっただけでさ」
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「全てのfindingがひとつの怪我を指しているように見えるときほど、
踏み込む前に、一歩下がってもう一度患者を見つめなおしてみよう。
人は、時に見たいものしか見ない。本当にその怪我の全体像を掴めているかい?」
(このビデオもたまに使います。『白い服を来ているチームは、何回パスをするか?』
これは元々車の運転中、自転車に乗っている人に気をつけよう!というコマーシャルなんだけど、
『見ようとしないものは見逃しやすい』というメッセージは見事にここに当てはまっていると思う)


「柔らかい頭を持ちなさい。自分の思い込みで視野を狭めてはいけない。
自分で作ってしまった壁は思い切って壊して、自らに問うてみよう。
他にはどんな可能性が有り得るかな?と謙虚に考えるようでありなさい。
あなたが間違っていることはある。十分に有り得る。だからこそ、
『もしこれ(最終診断)じゃないとしたら、他にどんな事が有り得るのかな?』
と考えるクセをつけなさい。馬の足音を聞いて、シマウマを思い浮かべる力を持ちなさい。
それが、Differential Diagnosisの重要さだ」

診断を始めたばかりの学生は、
「自分の最終診断が当たっていたかどうか」を非常に気にしてしまう傾向があると思います。
当たったか、当たってないか。100%か、0%か。ピーカンの晴れか、土砂降りの雨か。
私自身も駆け出しの頃、そうでした。
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しかし、それなりに経験を積んで、そして更に教える立場になって、
診断に対するイメージががらっと変わったんですよね。
上手く言えないけど、診断の最中に色んな可能性が大きくなったり小さくなったりしながら形を変えて、最終的にそれぞれの大きさを比べた上で、contextに合った決断(i.e. refer? treat?)を下す。当たることもなければ、外れることもない。逆に言うと、最終的に正しい診断に辿り着いても、途中で可能性Aや可能性Bに出会っていなければそれは間違った診断だと思うし。なんだろ、伝わるかなー。
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つまるところ、最終的に正しい名前を挙げられたか、ではなくて、やっぱりそこに辿り着くまでにどういう情報を集め、どういう可能性を探り、その上でこれを選んだのか、というプロセス、そしてそれを説明できる力が大事だと思うし、これらのことを学生に一学期間みっちり尋ね続けていこうと思います。

What is your differential diagnosis?
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  by supersy | 2014-01-28 17:30 | Athletic Training | Comments(0)

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