アスリートの心電図―Understanding the Normal Variants

今年からうちのTeam Physicianとして、新しいお医者さんが加わってくれることになりました。
このドクター、めちゃめちゃ面白い!専門はFamily Practitionerで『幅広い』practiceをしてますが、どうやら興味はアスリートのCardiac Screening、ひいてはHCM患者の発見に尽力すること、のようなんです。とてもエネルギー溢れるドクターで、私たちも巻き込んで、新たなプロジェクトを始動中です!
b0112009_122137.jpg
彼がまず私たちに紹介してくれたのがCardeaScreen(↑)という心電図を撮るポータブルマシーン。
これは、従来のカートに乗せて運ばなければいけないECGマシーンとは異なり、
その特徴をいくつか並べると…
 - Approved by FDA
 - 14歳以上のYoung Athleteに最適。
 - 持ち運び可能。AT Centerでもすぐに出来ちゃう。
 - 専用のソフトウェアをインストールしてあるノートパソコンと
  CardeaScreen本体をワイヤレスでBluetoothでつなげるだけでECGが撮れる。
  そして、フツーのプリンターで即時プリントアウト可能。
 - お値段が安い!従来のECGは$3,000-10,000くらいするものの、CardeaScreenは$1,495。
b0112009_119654.png
    (↑写真は従来のECGマシーン)

そして、CardeaScreen一番の売りは、
 - 従来のECGだと、アスリート特有の心臓に起こる変化も『異常』と診断されてしまい、
  そこからエコーだMRIだと不必要な精密検査をすることになり、医療費の無駄が大きい。
  CardeaScreenは「アスリートの心臓にはこういう変化が見られても普通=異常なし」
  というパターンがプログラムに組み込まれている
ので、対アスリートに関して
  False positiveが劇的に少ない。従来のECG = 13-15% false positiveなのに対して、
  CardeaScreenは2-3%なんだそうだ。

そんなわけで、この夏から、希望するアスリート対象にECG画像診断を組み込むことにして、
私たちも実際に患者相手に色々とやっているのであります。
…そう。Cardiologyの知識が大して無い私たちも、ドクターによる20分足らずのレクチャーを受け、「さ、それじゃあ患者さんにもやってみてね(ニコニコ)」と言われ、
目を白黒させながら必死で自習して、つい昨日の本番を迎えたわけです。
b0112009_128522.png
さて。まず知らなければいけないのは、
胸に6つ、手足に4つつけなければいけないLeads(電極)の装着位置。
胸に装着するChest LeadsはV1-V6まで番号がついていて、特にV1, V2, V4の位置が非常に大事!これらが狂うと全て狂ってしまいます。
   V1 - 4th intercostal space, just to the right of the sternum
   V2 - 4th intercostal space, just to the left to the sternum
   V4 - Mid-clavicular lineと5th intercostal spaceが交わるところ
ん、これらをどう正しく装着するのかって?触診しながら数えるしかありません。
鎖骨のすぐ下が1st rib、その下の窪みが1st intercostal space...とひとつずつ数えていって、4thをlocate。アルコールパッドで患部を拭き取り、電極を装着。V4も同様に。
(患者の胸部に体毛が多い場合は、解析に影響が出るので剃ることもあります)
正しく装着できれば、V1 & V2はNipple lineより上、V4はNipple lineより下に来るはずです。
   V3 - V2とV4のちょうど中心
   V5 - Anterior Axillary Line, V4と同じHorizontal level
   V6 - Mid-axillary line, V4 & V5と同じHorizontal level
V3-V6はV1-2, V4の位置から相対的に決めるので、そこさえしっかりしていれば大丈夫。

手足は簡単!
腕は肘から手首の間のinner aspect、どこでもいいので体毛が出来る限り少ない部位を選び、
同じ高さになるように左右で電極を取り付けます。
足も同様に、膝から足首ならどこでも。inner calfのあたりで体毛の少ないところを。
(詳しい場所を動画で確認したい方はこちら)

これで準備は完了!パソコンでソフトウェアを立ち上げ、
Bluetoothのコネクションが確立されていることを確認して、解析を開始します。
*この時、解析を始める前に携帯電話等の電子機器がCardeaScreen、パソコンの近くにないことを確認しましょう。
 Bluetoothで飛ばすため、干渉して微妙なブレが生まれてしまう場合があります。
b0112009_1462482.jpg
ちなみにこれ(↑)は昨日の解析風景。
どきどき、ちゃんとLeads正しい位置に置けたかしら…デター!ちゃんと読めてる!よかったよかった。同僚と、「すごい…私たちECG撮ってる!めっちゃ賢くなった気分!」ときゃっきゃしつつ、徐々に慣れてきてさくさくと患者さんをさばいていくことができました。しかし女性患者はむつかしい。胸がやっぱり邪魔なのよね、触診しにくいし、凹凸があるもんだから電極もつけにくい。これはもうちょっと練習がいるなー。
b0112009_20377.gif
さて、心電図が取れたらいよいよそれをしっかり「読んで」、解釈しなければいけません。
もちろん、我々ATはそういう専門職ではないし、ここはドクターの力を借りるわけですが、
私と同僚もドクターから教わって勉強している真っ最中です。これがなかなかムズカシイヨー。
b0112009_22427.png
何が一番ややこしいって、まずは最もスタンダードな心電図と、その波形のそれぞれの名前(↑図左)を知ること。その上で、「アスリートなら起こっていてもおかしくない、normal variantと考えられるべき変化形パターン(↑図右)」を把握すること。
典型的なのがEarly Repolarisation。QRS派のあとに波がゼロに戻らず、elevatedしている状態からT波が始まる状態のこと。ST Elevationが顕著で、J波という波が生まれることもある。
Sinus Bradycardia (心拍数が一分間に30-60)もwell-trained athletesなら珍しいことではないし、もっと面白いのが呼吸を吸う・吐くことによって心拍のタイミングが微妙に速くなったり遅くなったりすることもあるという。この現象はSinus Arrhythmia(↓)と呼ばれ、心電図の波の間隔が一定でなく、長くなったり短くなったりを繰り返すのが特徴的です。アスリートは、呼吸を吸うときに間隔が短くなり、吐くときに長くなるのだそう。「運動時は一定間隔になるんだけどね。休憩時だけね」とは、ドクターの弁。
b0112009_220440.png
もっとすごいのが、心拍をスキップしちゃうこともあるんですって。
これは、Wenckebach Phenomenon(↓)と呼ばれ、PR intervalがじわじわと長くなり、pulseひとつぶんskipするのが特徴的。正式名称はMobiz type I 2nd degree AV block。これも休憩時特有の現象。しかし、ビート飛ばしてもこれが普通だっていうんだから、アスリートの心臓ってよっぽど特殊なのね、やっぱり。
b0112009_226860.png


この他にも"Normal variants in athletes"のリストはまだまだ続きます。
いやー、本当にこれはむつかしい…。撮れてもまだまだ読めないや。
ドクターに根気強く教えてもらいつつ、自分でも細々と勉強中。
そんなわけで、今はCardeaScreenのサイトに「資料」として載っている、
「Abnormal ECG」の保管庫から色々と見て研究しています。
[PR]

  by supersy | 2013-06-04 14:30 | Athletic Training | Comments(0)

<< つながる。 ひらめきと直感の違い。「Bec... >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE

AX