落ちこぼれとはなにか、教師の観点から考える。

こんなことをハッキリ書くのもなんですが。。。
毎年うちのAT学生の実習場所を決めるときに、プログラムディレクターと1on1の話し合いをするのですが、「この子は勉強/現場でこういった課題がある」→「しっかりしたSupervisorに見てもらって、鍛えて欲しいから、Syお願いね」となるパターンは結構多いのです。つまり、私の下にやってくる生徒は「問題児」が多い。頑張り屋さんなんだけどお勉強で所謂落ちこぼれだったりとか、頭だけは異様にいいけど、人間性に難があったりとか(苦笑…去年の今頃にもとある四年生の話を書きましたっけ)。うちのプログラムの実習期間は一年ローテーションと長期。だからこそ、どういったニンゲンとこういう学生を組ませるかは非常に大事。こんなこと、日本語だから書けるんだけど。
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まぁでも私の身にも少しなってみてください。
毎年毎年、クセのある学生ばかり来る。苦労が多いったらありゃしない。個性が豊かだから、学生同士の衝突もあったりする。本当にまぁ、幼稚園児の遠足みたいなもんです。
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でもね、実は思うほど大変でもないの。
うーん、何と言うかな、大変なのは最初だけ。

ウチではこういう風にやっていこうと思ってる。最低限こういうルールは守ってほしい。でも、君たちが一緒に仕事をやってみて、これはこうしたほうがいいんじゃないかな?とか、何でこうしてるんだろ?と思うことがあったらいつでも遠慮無く聞いてほしい。必要があれば皆で話しあおう。一年間皆がいる場所だから、居心地よくしたいし、お互いにとってベストになるようにしたい。そのためには、お互いから学ぶ姿勢が必要不可欠!どんな意見にもオープンだから、イチクリニシャンとして同じ目線でモノを見て、考えあっていこう。

こういう話をちゃんと最初にして、それから、自分の言葉に忠実に仕事をしてみせる。
(あなたのこと尊敬しますよ!と口先だけで言っても行動が伴わなければそんなの嘘だとすぐバレるでしょ?ちゃんと有言実行するのが大事。そして「ああ、言ってるだけじゃなくこの人本当にやるんだ」と学生が感じてもらうことに意味がある。独りよがりは現場ではタブー)
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どうやって?と思われる方もいるでしょうか。
私がやることなんてシンプルなのです。
1. 相手の意見、言い分は時間を作ってでもじっくり聞く。挟む言葉は少なめに、でも「それはどうして?」ともっと言葉を引き出しつつ、彼女・彼ら自身の言葉で説明してもらう。
2. 良いことをしたら、とことん褒める。人前で褒める。私自身が学ぶことがあれば、「キミのこういうところからこういうことを教わった、ありがとう!」と礼も言う。
3. 間違えた時、失敗した時、しっかりそれが間違いだったと気づかせてやる。その上で、次はどうしたらいいんだろうか、話し合ったり提案したりする。
4. 学生にやれということは、自分もやる。掃除洗濯もしっかりと協力。

1は、良いクリニシャンになるための準備でもある。「自分の判断の理由や根拠を説明できるようになる」というのはATにとって必要不可欠な技術。
2は、誰だって褒められたら嬉しいでしょ。本人は「頑張ったらこんなに褒めてもらえるんだ!」と思うし、周りは「私も頑張ればああして褒めてもらえるんだ!」と感じる。こういうことを繰り返していると、学生同士がお互いを褒め合い始めたりする。オープンに褒めることがアタリマエになる。自信もつくし、笑顔も増えるし、良いことばかり。
3は、学生だからたまに間違えても間違いと本人が認識していないことがあるので、それを指摘することが大事。ここはあえて感情を混ぜず、何がまずかったかを客観的に説明する。例えば、学生がテーピングをきつく巻きすぎて選手が痛みを訴えたり、水ぶくれが出来てしまうことがある。そういう場合、選手はこっそり私に言ってきたり、「次からはSyがやって」と言ってきたりするのだけれど、「それ、いい成長のきっかけになるから、言い難いかもしれないけど、ちょっとキツすぎたって本人に伝えてくれるかな?」と選手にお願いしてみる。そして、「私も失敗たくさんして上手くなったんだ。本人もあれがマズかったと理解できれば工夫できるはず。もう一回だけ付き合ってもらえないかな?」とも頼んでみる(「いや!絶対Sy!」と言われればそれまでだけど)。失敗した子に、改善する機会を与えるのも教育者の役目。良いイメージを持って次へ。
4は、単に自分がふんぞり返って学生に命令ばかりするようなニンゲンにはなりたくないから(苦笑)。掃除するゾーイ、と先頭切って行くくらいで。

こういうことを現場で数週間、数ヶ月やってると、あとは学生にスイッチが入って、勝手にどんどん成長してくれる。そこらへんで私もひとりひとりの能力を見極められるので、時に「彼らのcomfortable zoneをちょっと超えた」レベルの仕事を敢えて課してみたりする。この選手さ、こういう怪我で今こういう症状なんだけど、どういう治療したらいいかな?プロとしての意見を聞きたいんだけど、と聞いてみたり。最初は「え、私がそれを決めるの?」とタジタジな学生も(いや、実際は学生に決定権が全てあるわけじゃないけど、あると思わせたほうが良かったりする)、「こないだ授業でこんな話をやったところだよね、それの応用だ。この選手はこういう状況だから…」とほんのちょっとだけ手助け。「じゃあ○○とか△△とか?」と言葉が出てきたら儲けもの。「おおっ、それいいじゃん!採用!じゃあ、ついでに治療もやってみて!」と、学生に「全部自分で決め、自分で実行した」達成感を与える。そうすると、こういった私のミニテストみたいな意地悪も、なんだか楽しくなってくる。成長を学生自身が感じてくれるというかさ。

勉強もそう。落ちこぼれな子って、「何が分からないのかも分からない」状態の子が多い。
テストが迫ってるけど、何から勉強していいのか分からない、とか。
別に勉強自体ができないわけじゃないんだよね、
単に、ものすごく効率の悪いことをしている子が多い。

全部を知ってもらうようには出来ない、というのは私自身もよく理解しているので(だって私だって教えてるけど全部暗記しているわけじゃないもーん)、授業中は「ここんとこは最悪忘れてくれてもいいけど、これだけは覚えといて!」とか「私この説明をもう3回くらいしているよね。…ってことは、きっと小テストや試験にも出るってことカモネ!」とか「今めんどくさいと思ったでしょ。でもこれは将来違うクラスでも出てくる項目だよ、いずれ覚えるなら今にしなさい」とか、情報に軽く順位をつけてやる。逆に「ここは敢えて時間使って覚えてくれなくてもいいけど」とか「ここまで知ってるとマニアだけど、面白いよね」みたいなことも言うからこそ、奮起して覚えてくるやつもいる(苦笑)。これを私は情報の色塗り、という風に感じているんだけど(黄色とか赤とか青とかで塗り分けてやるイメージ)、これだけで学生が復習するときのアクセントになる。
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あと、これは以前に書いたことにもなんとなくつながるんだけど、「これを知っていると、こういうことが出来るようになる」というのを具体的に見せてやる。教室で習う知識と、現場での技術がイマイチ結びついてないんじゃないか、と学生が疑いだすと、「これをやるのは時間の無駄」と結論付けかねない。そう思われるのは悲しいし、教師としても避けたいところ。だから、「超音波がどう身体に影響を及ぼすのかってさ、複雑だけど、患者さんに『これどういう効果があるの?』なんて聞かれることはしょっちゅうなのね。その時に、この機械にはね、水晶が入っていて、それに電気をかけることで水晶が伸び縮みして振動が生まれて…なんてサラッと答えられたらカッコイイし、何より、患者さんが『この人すごい!』と思ってくれたりするでしょ。そしたら尊敬してもらえちゃうよね!」なんて、clinical valueを付け加えてみる。
「この勉強つまんない…」と思っているかもしれない子に「そうか、でもこれを知ってたら・出来たら現場でこういう風に役立つんだ!」と気づいてもらえるのは大きなステップ。教室での勉強と、現場の技術をつなげてやる。こういうところ、想像力がイマイチ乏しい学生は先生の手助けがいるんじゃないかと思うのです。
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まー長くなってしまいましたが、結局のところ、
本当の落ちこぼれなんて私は今まで見たことありません。
情熱とかやる気って教えられないというけれど、私らは身近にいるからこそ、その源を突っついて刺激してやることはできる。一度火がついてしまえば、後はそれとなく方向修正してやるだけで、自分で勝手に好きなことをドンドン勉強していくし、自主的な動機だからこそ、それらが自分のものになる。教師って、意外と楽な仕事なのです。

私に任された勉強面で「落ちこぼれ」な学生たち、今までに本当に手こずった子は中でも実に一握り。逆に言うと、周りに「落ちこぼれ」と思われていた子で、本人も勉強は苦手という自覚があったけれども勉強に目覚め、むくむくと成長していく、なんて学生は少なくなく、そういった脱皮のような豹変を見られるのは至高の幸せでもあります。学年のどんけつから一番に踊り出る、なんて、別に珍しくもない話。今年見ていた中で、頑張り屋さんなのに成績は全く伸びず、その学業の不出来から「次の学期で改善が見られなければプログラムから強制退出(kickout)」という宣言を受けていた崖っぷちな子がいました。しかし、この一年で彼は一変。私に最後の実習評価で「一年間でこんなに成長した子は見たことない」と言わしめるほどの学年トップ優良児に。自主的にarticleを読み色々なevidenceを勉強したり、暇があれば私の授業のパワーポイントを眺めて予習・復習したり、授業中質問をすると答えるのは必ず彼だったり…という、本当に見違えるような逞しい二年生に成長しました。彼の成長は他のPreceptorや他学年の学生の目から見ても顕著で、「あの子あんなに出来る子だったっけ」「いつも頑張っているよね」というコメントを数多く耳しました。彼の授業を一年半担当し、彼の実習supervisorとして一年過ごした自分としては、本当に嬉しい限りです。
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そんなわけで、実習最後の日に彼にサプライズプレゼントを用意。「こんなことしたことないんだけどさ、キミの頑張りは何かの賞に値する!と思ったので、賞を作っちゃいました。(指導者としてでもClinical Education Coordinatorとしてでもない)Sy個人からの、特別賞ってことで!」と、お手製のミニプラーク(↑写真はイメージです)を用意して贈呈。この彼というのは190cm、150kgはあろうかという大巨漢なのだけど、これをあげたら彼は言葉が詰まって、ふぐ…と涙ぐむもんだから、こっちまで…。。。「(うらやましがるから)他の子に言っちゃだめだよ」と言うと、「ありがとう、これは僕にとって表現できない価値があります」と。

別に特別な何かをするわけじゃない、根気強く、そして真摯に接すること。
それさえしてくれれば学生は勝手に自らを磨いていくんじゃないかと思いますね。
教えることより、教わることのほうが多い。その証拠に、ここ数年の私自身の成長ったら結構目醒しいんじゃないかと思うもの!それもこれも学生たちのお陰です。
話はちょっと変わりますが、この週末はとある講習に参加するので、完全に教わる側、学生になります。こういうのは久しぶりなのでかなり楽しみ!良き師に出会えて、思いっ切り学べたらいいな。
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  by supersy | 2013-05-15 19:20 | Athletic Training | Comments(5)

Commented by kohira at 2013-05-16 11:55 x
先生!!!
やっぱり実感は大切だと日々感じます。
達成感もそうだし、実は身近なところにもあるという距離感も。
そしてわからないという挫折感みたいのも。
それが許容される環境では伸びていくんじゃないかと思ってます。
もちろん期限もあるし、踏ん張らなきゃいけない場面はあるわけですが。

さゆりちゃんの持ってる適度な隙間(いい意味で)や、
他の先生との関係性から生まれてくるもんなんでしょうね。
Commented by さゆり at 2013-05-17 07:02 x
そうですね、逆に言うと勉強の出来る子は「実感上手」で、だからこそgood self-motivatorなのかも。分からなかったものが分かるようになる感覚が楽しくて勉強がやめられない、というモードに自分で持っていける。勉強や実習でイマイチ伸びない子は、そこの実感力に欠けている分、私達が現場や教室でお手伝いできればいいのかなと思いますね。ま、そんなこといって、学生にがっくり脱力・絶望させられたことも一度や二度じゃないんですけど(苦笑)。
Commented by kohira at 2013-05-17 10:52 x

それも含めて、なんでしょう。
質問とか意見出せる空気。

先日、別な資格持ってる生徒さんにバシッと指摘してもらいました笑
Commented by gotoguy at 2013-05-31 21:33 x

こんにちは。
通りすがりの者ですが興味深く読ませていただきました。
共感する面も多くあります。手順をしっかりして手をかければ落ちこぼれと言われる子でも何とかなる、勝手にスイッチが入る、と言った点に特に共感するし、あなたが今まで順調にやってきた成果でもありますね。

ただ、(1センテンスを取り上げてしまうので、揚げ足取りに思うかもしれませんがご容赦)
>本当の落ちこぼれなんて私は今まで見たことありません。
この文章を見る限り、本当に困難な子に出会っていないだけだと思います。
まあその時も、あなたなら解決して行くかとも思いますし、それを期待しますが、若いうちの成功・失敗は自分の力以外の要素があるってことも覚えておいた方がいいと思います。つまり、今のところ対処できる対象に恵まれているからうまく行ってる、と。

最初に書いたとおり、通りすがりの戯言です。気分を害されたらご容赦ください。
Commented by さゆり at 2013-06-01 08:02 x
ははは、そうですか。順風満帆と思って頂けるのは幸いなことです。しかし、土地柄貧困層が多く教育の水準が低いこの街で、大学生にもなってfriendという単語もスペルできない、sartoriusを発音できない、なんて子を初めて見たときは正直サジを投げたくなりましたし、ADD/ADHD等の学習障害を持つ学生も少なくありません。それでも根気強く接した子達は皆力強い成長を見せてくれました。ただ、私の手元を離れた途端にリズムを見失い、学業で結果を出せなくなってプログラムを強制退出になった子は今までに数人います。「継続」を教えられなかった。どうせダメならもっと早く引導を渡せばよかった。それが私の失敗です。

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