Valgus Stress Testの適切な角度。

さて。長かったシーズンがようやく終わり、
今週はSpring Break(春休み)ということもあって、出勤時間を短めにして一息ついています。
(つーか本当は出勤義務はないのだけど…ついつい行かなきゃいけない気がして行ってしまう)
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そんなわけで、今週は「教育者」として授業の準備・採点をしたり、
「Clinical Education Coordinator」として色々とプログラムの細かい修正・フォローをしたりと、
わりかしのんびり過ごしています。せっかくなので気になっていた文献も読み進め、
まとめたいことができたのでブログも更新です。
今日のテーマはスペシャルテストのOriginal Description vs Now、
特に膝について手短にまとめたいと思います。

授業準備のために色々調べていて、「あれ、このスペシャルテスト、私が学生の頃に習ったのと手の置き方・関節の角度が少し違う」、「どっちが正しいんだ?」となることが結構あります。
例えば、最近気がついたものだとPatellar Apprehension Test
私が習ったのは「Apply lateral force to the patella while the knee is fully extended(↓写真左)」なのですが(そして、これは屈曲させるとPatellaがTrochlear Grooveに深く座ってしまい、安定性が出てしまうからイカンと説明された)、このテストを最初に提唱したFairbank氏1は実は膝の角度は指定していないんです。彼が言ったのって言葉にすると、「何か膝蓋骨を外に押したら患者嫌がること多くね?」くらいのもんで、単純に傾向を客観的に述べただけなんですね。それをテストとして確立させたのはかの有名なHughston氏。2 彼が正式に発表したテストのやり方は「試験者の太ももを患者の足の下に置き、膝を30°屈曲させた状態で、親指を使って膝蓋骨をlateralに押す(↓写真右)」と、「患者は不安を覚え、大腿四等筋を緊張させ膝を伸展することで膝蓋骨を戻そうとする」のが陽性のサインであるということ。えーー、膝曲げちゃうの?腿の上に置いて、という指定があるということは、テーブルの角を使った30°では股関節の角度が異なるからダメなんだろうか(↓写真中央)?はてはて。
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ここから派生して、「30°で始めて、lateral forceをかけながら伸展に持っていく」や、「いやいや、さらに屈曲させ70-80°に持っていく」などと、調べてくうちに様々な『やりながら動かす』バージョンも出てきてもう何がなんだか。内視鏡による実験では、70-80°の屈曲におけるgross lateral laxityが最も顕著だった3というから、実はこっちのほうが信憑性があるのか…。にゃむにゃむ。あまり角度別の実験もしっかり行われていないようなので、学生たちには申し訳ないけど「スタンダード」と、「派生系」をまとめて教えないとダメかな。様々なバージョンがある、というのは知っておいて損はないから。

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…で、本題です。
今回のメイントピックは実は膝のValgus/Varus Stress Testなのです。
え、これは違うtissueを試すのに、30°でやるんじゃないの?アタリマエじゃん!
…と思う方も多いかも知れません。ええ、そうです、非常に単純なテストです。
違う角度で二回繰り返すんです。そのとき、痛みの出方と関節がどれだけ開くかによって
(そしてend-feelの種類によって)、どの組織が関わっているのか、
そして、Grade 1~3に靱帯の損傷が分類できるんですよね。
そうですそうです。

しかし、ここで恥を承知でひとつ大きな指摘をさせていただきたいっ!
30°の屈曲を保ちながら、Valgus forceをかけるのって、難しくないですか?
Hipがどうしても一緒にrotateしちゃうんだ、なんてことありません?
純粋なValgus forceになってない気がするんですよねっ!

実はこのことは文献でも指摘されていて、
屈曲の角度は少なければ少ないほど、チカラを正しくかける、という概念からは好ましい
=角度が増えれば増えるほど難しくなる
というのが研究者・クリニシャン共通の意見になっています。

ここで改めて尋ねたいのが、MCLをisolateするために、本当に30°の屈曲をしなければいけないのか?という点です。もしもっと少ない角度でもMCLのみをstressできているんだとしたら、上の共通概念からすれば、less is better。より少ない角度でテストを行ったほうが、やりやすいしお得!ということになりますよね。
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これを実際に実験で試したのが上の文献。4
簡単にまとめると:
●屈曲の角度が増えると、Posterior joint structures, medial joint structuresも次々とslackになり、除外されてゆく。
●最終的に、MCLのなかでもSuperficialなAnterior portionが残る(こいつは唯一taut throughout ROM)。

この前提を踏まえて:
Full extension、5°、10°の屈曲においてstressされる組織に大差はない。→Posterior & Medial Joint Structures (including deep posterior MCL)
15°と20°の屈曲時にstressされる組織に大差はない。→Superficial anterior MCLに力が集中
●つまり、Valgus Testは、30°でやるのではなく、15°でやっても同様に効果的、ということになる。

そんなわけで、どうやら境目は10°と15°の間にあるらしい!
これがどうしてそんなに素晴らしいのかって?
●前述したように、30°の屈曲と15°の屈曲でValgus stress testをやるのでは、効果は同じでも難易度が全然違う!15°のほうがよりisolated valgus forceを正しくかけ易い。
●また、逆にでも同様の効果があるのに注目して頂きたい。怪我の直後、患者はよく痛みや腫れで関節の稼動域が制限され、full extensionが欠如していることがよくある。「0°も5°も効果は同じ」という知識があれば、患者がfull extできなくても軽く曲げた状態で実施すれば問題無し。


Valgus testは0°と30°でやるもの、と思っていた皆さん、実は5°と15°でやっても同様の効果があり、しかも、実用的でやり易く、しかも正確だということが分かって頂けましたでしょうか。もちろん0°と30°でやられている方を非難しているわけでもありませんし、それが間違っているわけでもないのですが、現場の人間として、いかにラクして、且つ正確にspecial testを行うかって結構大事なところだと思うんです。これをきっかけに、皆さんの日々のpracticeが少しでも効率の良いものになりますように。

1. Fairback HA. Internal derangement of the knee in children and adolescents. Proc R Soc Med. 1936;30:427-32.
2. Hughston JC. Subluxation of the patella. J Bone Joint Surg Am. 1968;50:1003-26.
3. Sallay PI, Roggi J, Speer KP, et al. Acute dislocation of the patella. A corrective pathoanatomic study. Am J Sports Med. 1996;24:52-60.
4. Aronson PA, Gieck JH, Hertel J, et al. Tibiofemoral joint positioning for the valgus stress test. J Athl Train. 2010;45(4):357-363.

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  by supersy | 2013-03-15 13:00 | Athletic Training | Comments(4)

Commented by Jiden at 2013-03-16 13:21 x
シーズンお疲れ様。研究者にとって一番うれしいことは、現場の人々にちゃんと、こーやってEvidenceを買って役に立ててもらうこと。いつも、ええ記事に感謝!
Commented by さゆり at 2013-03-19 07:54 x
いやー、私はほんと研究者気質じゃないから(そんなに忍耐力無い)、こういう研究をひとつひとつデザインし、proposeして、予算とって…ってやっている人たちを本当に尊敬する。なんでPublishされちゃったんだろって研究もたまに見かけるけど、ほとんどの記事は何かしら学ぶことがあるからね。現場にいかにtransformして使うのかは現場の人間腕の見せ所!こちらこそ本当に感謝だよ。
Commented by りゅうじ at 2013-03-19 10:17 x
さゆりちゃん、この話は現場にとって(私にとって)ありがたい話だね!いつも30度の方は、やはりやり辛さから、20度くらいで妥協してやってたからねw
でそれでも十分に違いがわかるからいいやって感じだったよ。自分の場合は、リハビリの過程で治癒のどの段階にいるかで0度と30度(実際はたぶん15ー20度くらい)をチェックして今このくらいまで治癒してるなぁって感覚的なものだけど、使用しているね。
現場としては、こういうEvidenceがあると本当助かるし、自信もってやれるよね。
これをアップしてくれたさゆりちゃんにも感謝!
Commented by さゆり at 2013-03-20 12:58 x
りゅうじさん、ありがとうございます!個人的に、こういう「一見地味だけどよく読むと使える研究」を発掘できるとほっこり嬉しいです…が、実は今回のこの文献はうちの学生が論文を書くのに使っていた資料のひとつで、お、面白そう、と思って読んでみたのがきっかけでした。学生からもたっぷり学ばせてもらっています。ありがたい。

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