In Conway, AR ~ Tulsa, OK。股関節唇損傷について。

さて。
つい一昨日、ピッペンの出身校であるUniversity of Central Arkansasでの試合を終え、
昨日、朝6時のフライトでオクラホマはタルサ入り。さむいです。
シーズンも架橋、といった感じですが、チームはというと、今日こそ前半の差が響いて負けてしまいましたが、そこまでのここ2戦、1-2点差の接戦での勝利をモノにし、二連勝!
毎試合成長してる、というのをこの時期に実感できるのは嬉しいことです。
レギュラーシーズンも残すところあと5試合。頑張ります!
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…で。今回はちょっと珍しい股関節の怪我の話をしたいと思います。
自分のスポーツではなかったのですが、最近見る機会のあった、比較的珍しい怪我。
股関節唇損傷、英語ではAcetabular labral tearという怪我です。
最近だと、ダウンタウンの松本人志氏なんかがコレで手術されてましたよね。
報道されたとき、(あまりに珍しい怪我だったので)何で彼が??と思ったのを覚えています。
FAI持ちだったのかしらん?
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簡単に言うと、股関節の臼状関節部の凹部にある軟骨が、何らかのチカラがかかって損傷(↑)を起こしてしまい、手術で縫い付けるか切り取ってしまうかしかない、というまぁ扱いの難しい怪我。これがどうしてそんなに珍しいかというと、股関節というのがそもそも身体の中で一番、と言って良いほど安定性があり、強靭に作られている部位なので、変なチカラがかかった場合、足首とか膝とかSIとか、他の部位がまず損傷を起こすことが多い。股関節を怪我する、というのはよっぽどです。サッカー選手で股関節をよほど酷使しているか、先天的構造の問題があるか(i.e. FAI)、あるいはよほど運が悪いんでもない限りはね。
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●診断への道のり
まず強調しておきたいのは、股関節周りの怪我の診断は本当に難しい、ということ。
Acetabular labral tearは特にspecific MOIなしに「気がついたら」痛みが始まるケースが多く、その痛みも、ここがピンポイントで痛い、というよりは、太ももの辺りや内股、臀部等が「うずくように痛い」場合がほとんど。英語ではこれらをreferred painと言いますが、ぼやっとした痛み(↓)であることが多いんですよね。だからこそ、痛みがどこから来ているか判断しにくい。
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特にspecific forceが掛かったわけでもない、痛みは、腿周りにぼんやりと出る。
こういった症状を伴う怪我の可能性はあまりにも広く、例えば股関節のOA、Sciatica, Lumbar spine pathology, ITB pathology, Femoral stress fracture, SI joint dysfunctionなども同じようなsigns & symptomsを起こすんですよね。長い「possible injuries」のリストがあって、そこからひとつひとつrule outしていくしかない。
実際、Burnett et al1の研究でも、
「股関節唇損傷の患者が正しい診断に辿り着けるまでに平均3.3人の医療従事者の手を渡り、平均21ヶ月という時間がかかる」という統計が出ています。21ヶ月、約2年間というのはひどい数字です。医者にかかっても「soft tissue injuryですかね」と言われ、数ヶ月様子をみるも改善が見られず、別な医者にかかり、そこでもまた誤診され…の繰り返し。あまりにお粗末です。この分野でのHealth care provider達の知識や技術の向上が必要不可欠性が浮き彫りになってきます。
では、効率よく診断するにはどうすればいいのか?

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●Diagnostic Gold Standard
手っ取り早いのは、内視鏡突っ込んで損傷が無いか確認しちゃう(↑)ことですよね。
Acetabuler labral tearのGold StandardがHip Arthroscopyであるのはもはや常識ですが、
 1.Invasive
 2.時間がかかる
 3.お値段が高い
 4.そもそも技術者の数が絶対的に少ない
という観点から、疑わしき患者全てにこれをするのは非現実的です。

●Diagnostic Imaging (画像診断)
では、画像なんてどうでしょう?
画像診断の統計を、表にまとめてみました(↓)。2-4
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MRIはSensitivity 8-97%, Specificity 33-100%, Accuracy 21-95%
MRAはSensitivity 24-100%, Specificity 44-100%, Accuracy 46-94%
と、データに幅はあるものの総じてMRAの方が優れているというのは間違い無さそうです。
Ziegert et al5によればoblique viewの画像がいいそうな。ただ、数字のバラつきから見て、
MRAがGold Standardに迫る勢い、と言う表現はあまりに誇張が過ぎるかと。
使えるけど完璧でない、という感じかな。
(↓左:Normal Hip MRI, 中央 & 右:Hip MRA showing Acetabular Labral Tear)
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他には、CTUltrasoundも、限りある研究ではあるけれどもなかなかの結果。
MRAができない患者の場合(i.e. metal implantのある患者や、閉所恐怖症等)は、
こういうものを選択肢として持っておくのもいいかも。お値段も安いし、手早いし。
(↓左:Hip CT Arthrography、右:Hip Ultrasound Imaging, both showing a labral tear)
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さて。まとめたいことはまだあるのですが、
長くなりそう&そろそろ就寝せねばなので、続きはまた今度!

1. Burnett RSJ, Rocca GJD, Prather H, et al. Clinical presentation of patients with tears of the acetabular labrum. J Bone Joint Surg Am. 2006;88(7):1448-57.
2. Burgess RM, Rushton A, Wright C, et al. The validity and accuracy of clinical diagnostic tests used to detect labral pathology of the hip: a systematic review. Man Ther. 2011;16:318-26.
3. Gustaaf R, Sebastiaan JPL, Jasper BM, et al. Reliability and validity of diagnostic acetabular labral lesions with magnetic resonance arthrography. J Bone Joint Surg Am. 2012;94(18):1643-8.
4. Troelsen A, Mechlenburg I, Gelineck J, et al. What is the role of clinical tests and ultrasound in acetabular labral tear diagnostics? Acta Orthopaedica. 2009;80(3):314-8.
5. Ziegert A, Blankenbaker D, De Smet A, et al. Comparison of the standard hip MR Arthrographic imaging planes and sequances for detection of arthroscopically proven labral tears. Am J Roentgenol. 2009;192:1397-400.

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  by supersy | 2013-02-16 22:00 | Athletic Training | Comments(0)

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