Ligamentization(靭帯化)という現象を理解する。

ところであけましておめでとうございます…って、もう、1月も8日ですが。
(前回は1月3日の更新だったのにそれらしい挨拶無しでしたね)
大学バスケで働く宿命か、休みらしい休みは一日もないまま秋学期終了→冬休み突入で、
大晦日も元旦も仕事でした。大晦日には選手が練習中に意識を失い倒れて、
病院に付き添い&待ち時間4時間という素敵なエピソード付き。
うちの選手たち、私に毎年学ぶ機会をくれるのはこちらも成長できて有難いけれど、
何も大晦日にやってくれなくってもいいのよ、おほほほほ。
b0112009_824263.jpg
今年も選手の安全と生徒の良き学び場作りに尽力していきたいと思います。
そしてそれを利用(?)しつつ自分も学び、試し、成長していけたらと。
今年は色々と自分の中で隠れプロジェクト等があるのですよ。楽しみです。
今年はところでナニドシにあたるんでしょうか。
もはやそんなことも分からなくなっています。
今年で自分が三十路になることはかろうじて把握しています…実感は沸かないけど。

せっかくなので、2012年に書いた全投稿の中から、
最も反響の多かったベスト5をまとまめてみたいと思います。
1. Second Impact Syndromeは本当に存在するのか(6月24日)
2. 足首を捻ったら、治療すべきは本当に靱帯?―Distal Tibfib Joint Mobilizationsについて考える(11月6日)
3. 「AT離れ」が進む現状と向き合う(5月9日)
4. 痛み止め薬の代償(12月19日)
5. これって足首の捻挫?骨折?―The Ottawa Ankle Rules(1月13日)

ちなみに、私のブログで反響の多かった歴代1位は
AEDを知っていますか、という2011年8月4日のエントリーです。
TwitterやFacebookがあると、具体的に数になって見えるので良いですね。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
b0112009_1224818.png
さて。
結構有名なコンセプトだと思っていたのですが、周りに知らない人が意外と多かったので、
今日は上のArticleを中心に「Ligamentizationとは」というお話をしたいと思います。

●靭帯と腱の違い
靭帯を伸ばした、腱を痛めた…こんな表現はよく使われますが、
医学用語の観点からいうと、靭帯(ligament)と腱(tendon)は似て全く非なるものです。
Ligamentは骨と骨を、Tendonは骨と筋肉をつなげるもの、という、
所謂解剖学的教科書情報ももちろんですが、細胞学的にもその構成がかなり違うのです。
(詳しく言うと、腱にはhydroxy-lysinonorleucine (HLNL)というコラーゲンのcross linkが多く含まれ、dihydroxy-lysinonorleucine (DHLNL)は少量しか含まれていません。靭帯は逆にDHLNLが多く含まれ、HLNLは少ない。まぁこんな知識は無くても良いと思うのですが)
まぁ、機能が違うのですから当たり前ですよね。
靭帯は関節における(過度な)動きを制限するもの。腱は(適度な)動きを促進するもの。
b0112009_11311014.png
●再建手術において…
靭帯と腱が違うのなんか当たり前じゃん、知ってるよ!
と思う方もいるでしょう。でもそうなるとですよ、例えば、ACLの再建手術なんかで、
断裂してしまった前十字靭帯(ACL)の代わりに膝蓋腱(Patellar tendon = BPTB ↑写真上)や半腱様筋腱&薄股筋腱(Semitendinosus & Gracilis tendon = StG)を使ったりしますよね。
断裂した靭帯の代わりに、を使っているわけです。
これって、よくよく考えてみれば、まずくありませんか?

みかんがダメになったからリンゴを使えばいいってもんじゃないでしょ?
そもそもが違うんだから。
b0112009_1110316.jpg


●リンゴが、みかんになる
しかし、人体というのは本当に神秘的で、よくできています。
「腱」を「新しい靭帯」として身体に入れると、人体は徐々に「む、どうやらこれが新しい靭帯ってことなのかな?」ということに気がつき始めます。そして移植組織は徐々に靭帯化していくのです。いうなれば、リンゴがみかんに変わっていくのです。
これを、英語でLigamentizationと言います。
b0112009_1138462.jpg
"Ligamentization = transition of the biochemical and histologic parameters of the graft from tendinous to ligamentous in appearance."

※しかし、一方でこういった記述もあります。
"....the strength and stiffness of the grafted tissues never reach those of the native ACL."
"In other words, although morphologically resembling normal ligaments, the grafts may not function exactly alike."
なので、元々のACLほどの強度はどうしても出ず、完全に機能回復するわけではないということはご了承下さい。

この研究では、ACLの再建手術が成功した50人の患者を対象に、
(内訳は30人がBPTB、20人がStG…ちょっとSelectにバイアスがありますが)
術後のgraftの細胞・コラーゲンの変化を追ったものです。
b0112009_1282968.png
下の結果だけ見てみても、コラーゲンの全体の率は術後半年ではまだ従来のACLレベルまでは回復しないものの、BPTB・StG Graft患者共に一年経つと83%を軽く超え92~95%にまで上昇(Table 1)。更にDHLNL/HLNL率も同様に術後徐々に上がっていき、最終的には一年後にNative ACLの3.11を超えて3.43~3.59にまで上昇します(Table 3)。
この変化は顕微鏡で見ても明らか。下の写真で細胞の構造を比べてみても、A(StGの患者のGraft、術後5ヶ月)よりもB(同様の患者、術後12ヶ月)のほうがC(Native ACL)に近いですよね。Collagen matrixが徐々に平行にalignしていき、bifroblast nuclearの全体数が低下していく様子がはっきりと捉えられています。
b0112009_1214329.png


そんなわけで、この研究では、
「術後約一年でGraftにはLigamentizationが起こる」という結論がなされています。
この研究のみでBPTBとStGのどちらがより優れているか、という比較はなされていませんし、
Ligamentizationが一年間で完了(complete)するのかどうかも分かりませんが、
(まだまだ続くのかも?この研究の考察でも、コラーゲンの合成はここから徐々に低下して、最終的にはNative ACLの数値よりも低くなるのかもしれない、という仮説が立てられています)
手術に使われた腱が徐々に靭帯化してゆく、という事実が面白いと思いませんか?
人体がGraftと「新しい靭帯」と認識し、その機能に合った構造に変化していく、
というその神秘がすごいなぁと思うんですよねぇ。
どういう器官がどういう命令を出してるんでしょう。

その他の研究では、Platelet-rich Plasma Preparation Rich in Growth Factors (PRGF)を用いたほうがLigamentizationが早まる・効果的に起こる、という結果も出ています。1 また、Aggressive rehabは再建したACLを徐々にdegenerationさせてしまう、つまりLigamentizationが効果的に起こらない、という研究結果もあるそうです。
…のでこういったAdditional procedureや、どういったリハビリがLigamentizationをoptimizeするのか、というのはこれからATCやPTも理解を深めて行かなければいけないところかも知れません。

1. Sanchez M, et al. Ligamentization of tendon grafts treated with an endogenous preparation rich in growth factors: gross morphology and histology. Arthrosco: J Arthroscopic Related Surg. 2010;26(4):470-80.
[PR]

  by supersy | 2013-01-08 22:00 | Athletic Training | Comments(2)

Commented by sh at 2013-01-10 00:44 x
明けましておめでとうございます。
新年初コメントさせていただきます。

consensusは得られていないと思いますが、以前biologyに関するお仕事を手伝わせていただいたときに読んだpaperではBTB graftと骨孔のhealingの方がSTと比較して若干有利では?みたいに書いてありました。恐らくBTBと骨孔の関係がはbone to boneなので結合がいわゆるdirect typeになるからだと思います。
ただこの辺の研究はlimitationが多いようですが、
確実に言えることはearly aggressiveなリハビリテーションは本当に特別なcaseを除いてはリスクが先行し、危険であるというところでしょうか。
Commented by さゆり at 2013-01-11 07:01 x
>shさん
今回のarticleの内容はあくまで「ligamentizationに関してはBPTBもStGも大差なく同様に起こる」ということであり、clinical outcomeという意味ではBPTBがStGよりも平均して少しばかり優れている、というのはもはやconsensusの域かと(少なくとも個人的には)思っています。StGやallograftを使う医師もまだいますし、それを批判するつもりは全くありませんが。患者の希望・医師の経験etcによりますからね、細かいところは。

<< In Lake Charles... 足首のテーピングとサポーター、... >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE

AX