Scapular Wingingのイロイロ。綱引きの勝ち負け。

Scapular Dyskinesisについて学生を対象にしたin-serviceをしようと思い、
色々調べていたら、Scapular Wingingについてのこんな記事(↓)を見つけました。
こんなこと言うのもなんですが…scapulaについては大学院時代のボス(UFのDr. TrippはScapular Dyskinesisの専門家です)に叩き込まれたのでそれなりに自信があったんですが、色々知らないことが書かれていてびっくり&面白くて。いやー、まだまだ勉強不足っすね!
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まず、Scapular Wingingとは何か?という基本的なところから。
Medial border of the ScapulaがThoracic wallから起き上がるように顔を出し、異常に突起した状態のことを指します。まるで翼が出てきそうに持ち上がることからWingingと呼ばれるようです。
説明するよりも見たほうが早いと思うんで、以下ビデオです。

腕を上げようとすると、肩甲骨が飛び出て、
動きを制限しているのが良く分かります。右肩ですね。


この冒頭のデモもすごいです。ほんとに翼出てきそう。


日本語では翼状肩甲と言うらしいこの症状、prevalenceは比較的稀で、
種類は大まかに2つ、原因は大まかに3つに分類されます。

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1. Medial Winging
caused by Serratus Anterior Palsy due to an injury to the Long Thoracic Nerve
Accentuated by: Flexing the arm, or performing wall push-ups
Medial and inferior borderが脊椎に引っ張られるように寄っており、肩甲骨全体が上方に上がっているのが特徴です(↑)。burning painをcomplainするのも『strong diagnostic clue』と考えている著者もおり、Historyを取る際の質問に加えてみる価値はあるかも。

この症状はSerratus Anterior (SA) Muscleが通常通り機能しなくなっていることから起こります。
Serratus Anteriorという筋肉の一番の機能は、英語で言うと「to anchor the scapula against the rib cage」、日本語で言うと「碇のように肩甲骨を肋骨に向かって沈め、固定する役割」があるという点です。碇が碇として機能しなければ船は浮き上がってしまい、ふわふわと波に流され、勝手に移動を始めてしまうことでしょう。これがまさにSA PalsyによるScapular Wingingなのです。
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ではそもそも何でSAが機能しなくなってしまうのか?その答えは神経にあります。
SAはLong Thoracic Nerveという神経に支配されており、この神経はC5-6からひょっこり顔を出した後、肋骨に沿うように下へ下へとクネクネ伸びていきます。この神経の全長は平均で約24cmと非常に長く、文字通りLong (長い) Thoracic (胸部の)神経なのです。この神経の通る道筋、そしてその長さからmechanical injuryが起こりやすい、と考えられるのが一般的です。
私が知らなかった&面白いと思ったのは、「Long Thoracic Nerve損傷後、Scapular Wingingが顕著に確認できるようになるまで数週間かかる。Trapezius (僧帽筋)が時間をかけて伸びて徐々に緩くなるからである」というところ。怪我をしたから、突如始まるというものでもないんですね。

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2. Lateral Winging
caused by Trapezius Palsy due to an injury to the Spinal Accessory Nerve (CN XI)
Accentuated by: Abduction of the arm
もしくは
caused by Rhomboid Palsy due to an injury to the Dorsal Scapular Nerve
Accentuated by: Extending the arm from the fully flexed position
同様に、CN IXの神経損傷→Trapeziusの麻痺、Dorsal scapular nerveの損傷→Rhomboidの麻痺、ということも考えられます。この場合、ScapulaをAbduct (protract)する力のほうがAdduct (retract)する力よりも強くなるため、肩甲骨全体は外側に引っ張られ、Trapeziusの場合にはDownward rotationを、Rhomboidの場合にはUpward rotationを伴います。Rotary compnentが入るので、Rotary Wingingと呼ばれることも稀ながらあるそう(Maggieにはそんな記述がありました)。
Lateral WingingはMedial Wingingに比べて比較的Subtleで、気がつきにくいというのが現状のようです。Diagnosisもなかなか大変そう、誤診も多いんだそうな。

…というわけで、まとめです(↓)。
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Medial Winging → Serratus Anterior (Long Thoracic N.) Paralysis
Lateral Winging → Trapezius (Spinal Accessory N.) or Rhomboid (Dorsal Scapular N.) Paralysis

ちなみにScapular Wingingは授業で教えてビデオを見せると、うぎゃーと生徒は毎回大騒ぎ。
インパクトに残るみたいで今でもたまに話題に上る、彼らのお気に入りトピックのひとつです。
私はどうせ翼が生えるなら飛べる翼がいいなー、なんて思うけれど、それはそれで寝るときにゴツゴツしそうだし、服も新たに買えそろえなきゃいけないしだしやっぱり今のままでいいや。
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今回つくづく思ったのは、肩甲骨のイメージって、綱引きの真ん中のコブ、なんですよね。
肩甲骨周りの筋肉が一人一からでバランスを取り合い、程よい緊張を生み、引っ張り合っているから、安定力のあるベースとしての力を発揮するのであって、筋肉のうちひとつが群を抜いて弱かったり強かったりすると均衡が崩れ、勝ち負けが決まってしまう。
もちろんそれが本当の綱引きだったら勝負がついたって良いのだけれど、
人体となると、どれかの筋肉が「負けた」状態になるのは好ましくない。
筋肉のバランスは崩れ、障害が生まれてしまう。
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うーむ。なんかそういうコンセプトも含めて、学生に上手く伝えられたらなと思ってます。
In-service、来学期になりそうだけど。
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  by supersy | 2012-11-09 09:39 | Athletic Training | Comments(2)

Commented by かや at 2012-11-09 22:20 x
翼状肩甲は,前鋸筋・・・のイメージでしたが,
確かにそれ以外の関与もいろいろありますよね。

よく考えたらわかる事かもしれませんが,一つのイメージが強くなると他への思考が弱くなりますね。
勉強になりました。
視野,思考をひろげます!!
Commented by さゆり at 2012-11-30 14:17 x
私も学生の頃習ったのはSAのみでした。学校で習う内容なんて、現実に起こりうることのほんの一部なんだなと身にしみて感じます。それ以外は、こうしてアンテナ伸ばして自分で学んでいくほかないですね!

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