TFCC Injuryの評価基準とは その2。

昨日の続きです。

そんなわけで、TFCCの診断のテストは数多くあるものの(見つけた分だけ昨日紹介しましたが、
恐らくもっと色々とあることでしょう)、効果的なものは今のところ無し。
それじゃーどれを使えばいいんだよ?と思われている方もいるでしょう、実はとても優良なものをひとつだけ見つけました!それは何と以外にも、シンプルな触診なのです。

b0112009_234437.jpg- Ulnar Fovea Sign
Volar aspectで、Ulnar styloid processとFCU tendonの間にある"Soft spot"を親指で押し、そこにTendernessが無いか見るのみ。ここはTFCCでもFoveaと言われるDeep radioulnar ligamentがUlnaにattachしているtearの集中しやすい部位。この特定の場所での圧痛はTFCC Foveal disruptionかUT ligamentの損傷をindicateします。
統計を見ても、rule in & outに有効で非常に優秀な数字です。
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他の文献にはFovea signの触診の場所をVolarというかUlnar aspectと見なして紹介している(→写真右)ものもあったのですが(Sachar 2012)、上の統計を発表したオリジナルのarticle(Tay SC, Tomita K, Berger RA. The "ulnar fovea sign" for defining ulnar wrist pain: an analysis of sensitivity and specificity. J Hand Surg 2007;32A:438-444)ではvolar aspectと明記されている(↑写真上)ので、正式なものはvolar aspectなんだと勝手に思うことにしました。Sacharさんの記事もTayさんのOriginal articleを引用しているんでね。上の写真のほうが「完全オリジナル」ですね。ま、不安な方はどっちも触りゃーいいかもとも思うのですが。

ちなみに、(前回)冒頭の「手首の痛みとclickling」を訴えてきたという選手は、
触診ではvolarもulnar (medial)sideでも触診で痛みが無く、Tendernessはdorsal側のTFCCにのみ確認されたので、このUlnar fovea signは陰性。このテストはご覧の通り、特にrule outに優れていることから、私はこの患者のTFCCの可能性はほとんど無いと現在は考えています。
治療しつつ経過観察中。徐々に回復しつつあるので良かった。


Diagnostic Imaging
診断画像の観点から言うと、
一番に入手されるべきはPlan PA X-rayなんじゃないかな、と思いますね。
- X-Ray
レントゲンって、骨しか見えないんでしょ?骨折をrule outするという目的ならともかく、軟骨や靭帯の損傷を見るには全くもって非効率では?と思う方もいるかも知れませんが、ええ、もちろんTFCCそのものの損傷を見ようと思ってるわけじゃありません。でも、TFCC損傷のもうひとつのindicatorであるUlnar varianceの有無を確認するにはもってこいなんです!
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(↑)上の画像、イラストとレントゲン両方とも、左が通常(= Negative Ulnar Variance)、右がPositive Ulnar Varianceの状態を表しています。つまりDRUJにおいてUlnar HeadはRadiusに比べて少し下方に位置していなければいけない(= TFCCたちがゆったり座っていられるスペースが十分にある)のに対し、Positive Ulnar Varianceの患者ではUlnarの頭がぴょこりとRadiusから飛び出すように顔を出しており、そのためにTFCCが常に圧迫されやすく、故に損傷が起こりやすい、という状態が出来ていることを示します。

- In an ulnar neutral wrist, the ulnar carpus absorbs 18% of axial load. This increases to 42% when ulnar length is increased 2.5mm, and decreases to 4.3% when ulnar variance is decreased 2.5mm.

たった2.5mmで、手首の中でものすごいbiomechanical changesが起こることが分かりますね。
…で、故に、

- Wrist with ulnar (+) variance had a wider TFCC perforation as well as a higher incidence than those with ulnar zero or (-) variance.

なんだそうです。Ulnar varianceはforearm rotationによって変化するので(Pronationと共に増え、Supinationと共に減少します)、X-ray撮影時にはNeutralで撮ることが大切です。ちなみに、「PA X-rayでUlnar VarianceがPositiveだった場合、TFCC Perforationを予期できる可能性」を統計にすると、
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そして、「PA X-rayでUlnar Wrist Bonesにdegenerative changesが見られた場合、TFCC Perforationを予期できる可能性」は、
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なんだそうです。決して悪すぎる数字ではありませんね。結果的に、Plan PA X-rayは実用的で手っ取り早く、そして何より安いコストでTFCC Integrityを評価するのに効果があると言えます。

b0112009_23534858.png- Arthrography
Triple injection arthrographyは一時は有効とされていたのですが、accuracyが50%以下と数字が良くなく、近年ではトレンドから外されつつあります。Contrast液を関節に直接注射器で注入するのですが、例えば怪我に伴い関節包がthickeningを起こしていた場合などで、注射器の針が関節包を突き抜けることができずContract液が周りに漏れてしまい良い画像が得られなかった、等の失敗談が報告されています。
ちなみに、ちゃんと撮れた画像はこんな感じ(↑)。関節包内に注入された液が
損傷のある箇所から漏れることで、tearの存在を確認できます。

- MRI
MRIの使用はなかなかcontroversialのようで。統計からもそれが読み取れるかもしれません。
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…というのも、私MRIについてそこまで詳しくないので詳細はアレなんですが、MRIを撮る際に、細かく設定を色々いじれるみたいじゃないですか。で、やっぱり手首のほんの一部の、小さな部位の画像を撮るわけなので、荒く撮ってしまうと全然ダメ。丁寧に細かく見えるような設定で撮ると正確性も一気に上がるみたいなんです。上の数字にかなりバラつきがあるのは、それぞれの設定が全く違うものだから、みたいですね。研究によると、より正確な画像を得るには「High resolution with a microscopy coil, small (1mm) slices, small field of view (8cm)」が良いのだそう。

それでも"may not be as useful in determining the location of the tear (Ahn et al 2006)"や、it also does "not give any information on chondromalacic, synovitic, and degenerative changes (Pederzini et al 1992)"という記述を見ていると、投資する時間をお金の割には満足する情報を得られないことも多いのかも?そんな場合は、こちら(↓)のほうが好まれるのかも知れません。

- MRA (MR Arthrography)
下はSachar(2012)のまとめた統計ですが、モノによって幅があるものの、なかなかの数字。基本的には「MRAはMRIよりも優れている」というのが現在のコンセンサスのようです。肩のLabralや、膝のmeniscusと同じですね。注射針に恐怖症でもあるか、コントラスト液にアレルギーでも無い場合はこちらのほうが好ましいと断言してよいと思います。
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別の研究でも良い数値が。
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- Arthroscopy (内視鏡)
内視鏡が現在はreference standardとされています。損傷の程度・箇所・種類等間違いなく認識するには、直接見るのが一番ですものね。コストと時間がかかる、そしてinvasiveであるという点以外はやはりこれに勝るDiagnostic toolは無いようです。

そんなわけで、個人的にイメージできる診断の流れは:
 ● 痛みの箇所の特定(ulnar-sided pain vs others)
 ● Sup/pronationに伴う痛みやclicking
 ● 腫れはまず無い
     ↓
   TFCCの可能性が高まる
 ● Ulnar Fovea Signで、TFCCのTendernessの有無を確認
     ↓
   痛みがあれば、可能性は更に高まる。
   症状の出方にもよるが、performanceに支障がある場合、専門医にrefer

 ● 理想としては、Plan PA X-rayを撮ってUlnar varianceやDegenerationの有無を確認
 ● その上で、必要があればMRAやArthroscopyへ
という感じかなぁ、と思っています。もちろん、実際はこんなにシンプルじゃありません。
他の怪我もr/oしなきゃいけないし、臨機応変に、他のこともしっかりやりつつ、ですが。

私が触れなかったもので、皆さんが診断基準にしているようなこと、
または良い情報源となるarticle等ご存知の方がいましたらシェアしていただければ幸いです!
いやー、しかし、時間はかかったけど苦手意識は克服。
これからはTFCCの評価はもうちょっと自信を持って臨めそうです。
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  by supersy | 2012-09-09 11:00 | Athletic Training | Comments(4)

Commented by sh at 2012-09-10 19:50 x
海外の事情はちょっと分かりませんが、日本の医療施設でPTとOTがいる施設ではPTはlower、OTがupperと分けている施設が多いです。今、実習に来ている施設もそんな感じです。ですので、悲しいことにあまりwrist、handに関わる機会が無いのです。ATとしてfieldに関わる場合、そんなこと絶対ありえませんよね・・・
TFCCの話とズレてしまってすみません
Commented by さゆり at 2012-09-12 08:55 x
クリニックなんかでは手のリハビリはHand specialistに、というのは良く見かけますけどね。患者さんはリハビリできる相手を選べるけど、ATは患者に起こる怪我を選べませんから、満遍無く知っておくことが大事かなと思います。得意不得意はどうしてもありますが、不得意だと認識しているからこそ自分で時間を費やして勉強して補わないといけませんよね。
Commented by sh at 2012-09-14 23:07 x
hand specialistというのはPTですか?それとも足病医のようなポジションが手の外科にもあるのでしょうか?
Commented by さゆり at 2012-09-23 10:51 x
CHT (certified hand therapist)という、OT/PTの中でも手に特化したセラピストさんたちがいまして。基本的(統計によれば86%は)にはOTですね。PT(=14%)もいるようですが。詳しくはURL(名前をクリック)を御覧ください。

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