手首がパキパキ…。TFCC Injuryの評価基準とは。

怪我の評価をするにあたって、苦手意識がある部位とか種類、というものが、
だいぶ無くなってきたと思っていたんですけどねぇ…。

つい最近目にする機会があったもので、
Ulnar-side wrist pain + clickingという内容のcomplainがありました。
一番最初にTFCC!と頭に浮かんだのですが、
はて、TFCCのDiagnostic criteriaってどんなんだろ?
Tendinitis, tenosynovitis, bone contusionによるscar tissue、
capsuleのthickening諸々と区別するにはどうすんだろ??と思ってしまって。
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振り返ってみれば、TFCC Injuryを診断した経験がないんですよね。
授業でも上肢の評価を受け持っていないこともあり、きちんと調べたことがなかった。
てなわけで、良い機会なんで、文献を漁って調べまくりましたよう!以下がまとめです。

ちなみにTFCC = Triangular Fibrocartilage Complex、
日本語では三角線維軟骨複合体というそうです。ふくごうたいって、カッコいい!

History & Observation:
- 手首を親指側、小指側に真っ二つに分けたとして、どちらが痛い?と聞かれると、
 こっちが痛い、とすぐに小指側を指差す。
これはちょっと馬鹿みたいにも思えますが、「明らかなulna-sided pain」ということですね。うーん、どっちかっていうとこっち(小指側)、というのではなく、はっきりと区別のつく小指側。

- 手首のPronation/Supinationに伴う痛み、もしくはclicking(パキパキと音が鳴る)。
ここ、私が勘違いしてました。TFCCのCommon MOIは他の多くの手首の怪我と同じFOOSHと記憶していたので、
痛みやclickingもFlexion/Extensionで出るのかと思っていたんです。でも、Pronation/Supinationなんですね!
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↑この図を見ると意外と一目瞭然。手首をpronate/supinateすることによって、Distal palmar & dorsal (superficial) radioulnar ligamentsが派手に弛んだり引っ張られたり。tearがどこにあるのかにもよりますが、最も一般的であるClass 1Aの損傷が起こった場合、diskそのものがこれらの力によってかなり変形しそう→症状が出そうなことは、容易に想像がつきますよね。


- 腫れは一般的に見られないことが多い。
慢性的なケースではたまに腫れが出ることもあるようですが、まず無いと思ってよさそうです。
もちろん、骨折など付随している場合は別ですが。


Special Tests:
TFCCの診断に用いられるSpecial Test、調べたらボロボロ出てきましたよ。
- Ballottement Test / Reagan's Test

b0112009_22364621.jpgLunateとTriquetrumをそれぞれ掴み、Triquetrumを固定しつつLunateをAnt/Posteriorに動かしてlaxity, crepitus, painの有無と見る、というもの。
これはTFCCの軟骨部分というよりはLunotriquetral Ligament Integrityを診断するテストで、スタッツはこんな感じ(↓)。うーん、イマイチっすね。

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あとですね、追記をするならば多くの文献がこれらふたつのテストを「同一のもの」と扱っているのですが、中にはBallottement TestとRegan "Shuck" Testを区別して表記している論文もありました(i.e. Sachar K. Ulnar-sided wrist pain: evaluation and treatment of triangular fibrocartilage complex tears, ulnocarpal impaction syndrome, and lunotriquetral ligament tears. J Hand Surg 2012;37A:1489-1500)。これらの論文によれば、Ballottement Testは「TriquetrumをLunateにcompressする」テストであり、Regan "Shuck"は「Lunateをvolar/dorsalに動かしつつ、それ以外を逆方向に動かす」というテストなんだそう。固定をしないあたりとか、微妙に違うんですよね。

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- Kleinman "Shear" Test

このテストはReaganに比べてもっと「subtleな力を、よりどんぴしゃにLT jointにかける」テストなんだそう。親指をPisiformに置き、もう片方の手でLunate/Radiusを固定。Pisiformに対してvolar/dorsalのtransulationをする、と。このテストに関しては、ビデオも統計も見つからず。Positive testはLaxityとPain。


- Ulnomeniscotriquetral Dorsal Glide/ Piano Key Test

これも本や文献によって描写が色々異なる。…ううう。一番多かったものを元に書くと、Dorsal ulna (4cm proximal to DRUJあたり)に親指もしくは人差し指を置き、ピアノの鍵盤を叩くように下に押す。DRUJレベルでの痛みや、ピアノの鍵盤さながらのびよよよん、と大きく上に戻ってくる感覚(↓写真参照)があれば陽性。
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分かりやすいテストなんですけど、これまた統計はイマイチ。陽性テストの解釈に関しても、DRUJ Instabilityというものから、もっと直接的にTFCC tearだ、Triquetral Instabilityだ、というものから、様々。まず定義をもうちょっとはっきりさせてからstudyしないとわからんですね。

- Ulnocarpal Stress Test

このテストと、次のUlnar (TFCC) Grind Testはかなり似ているのでご注意。
Elbow 90° flexion, max ulnar deviationからAxial load + Supination/Pronation。
痛みが出れば陽性。痛みを伴わないclickingのみの場合は陰性とみなします。Nakamura氏(1997)の研究によれば、このテストはあくまでUlnocarpal pathologyをindentisyするのみで、TFCCからLT ligament tear、更にはWrist arthritisでもCartilaginous free bodyでも陽性が出るので、実情は「sensitive but not specific」。実用性はあんまり無さそうです。

b0112009_034243.jpg- Ulnar Grind Test / TFCC Grind Test
Wrist dorsiflexed (=extended?), axial load, ulnar deviationで、rotationをする、というのがこのテスト。Extensionが加わっている所が上のテストと異なるのと、最後の「rotation」には色々な解釈があるようで、Supination/Pronationをしたり、Figure-8をしていたりと幾つかのバリエーションを目にしました。Positive testはPainで、TFCC InjuryとDRUJ Instabilityの診断に有効。統計は無し。

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- DRUJ Stress Test
こちらは言ってしまえばシンプルなDistal Ulna/RadiusのJoint play。痛みを伴うlaxityがあれば、DRUJ Instability有り。
統計は無し。よって、効果は不明。



- Supination Lift Test

こちらは非常にシンプルなテスト。手のひらで机・もしくはExaminerの手を押し上げ、localized ulnar side pain or difficulty liftingが見られれば陽性。TFCC Injuryの可能性高し。

b0112009_02027.jpg- Press Test
最後に紹介するのが、Press test。肘掛のあるイスや、平らなベンチ等に患者を座らせ、両手を使って身体を押し上げ、立ち上がってもらう。Push off時に手首に痛みが出れば陽性、TFCC Injuryを示唆する。と。統計は限られてはいますが、こんな感じ(↓)。
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そんなわけで、色々なSpecial Testがありますが、上記のものは全てnot useful/needs more studyと言えるかと。果たして、TFCCに有効な診断基準は存在しないのか?長くなってしまったので、残りは次回に持ち越します!続く。
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  by supersy | 2012-09-08 08:00 | Athletic Training | Comments(0)

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