肩の脱臼をしたら…

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NATAのとある講義で紹介されていたReview article、
気になったのでfull textを読んでみましたー。Level I & IIのみのEvidenceをまとめた、
良質なLiterature review & Meta-analysisです。以下まとめ。
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肩の脱臼、中でも前方脱臼はかなり頻繁に起こる怪我です。肩の構造上、仕方ないんですけどね。で、この怪我がとっても厄介なのは、一度脱臼すると「クセになりやすい」から。Chronic instabilityを併発して肩が外れやすくなり長期的な問題になるケースがとても多いため、immediate management(怪我が起こった直後の対処法)、そしてリハビリが非常に大事になってきます。
とりあえず、対処法としては、脱臼が発生→プロによるclosed reduction(素人は絶対にやってはいけません!ATもです)→immobilize(固定)、という流れが主流なんですけれども、じゃあそれをどういったポジションで、どれくらいの期間immobilizeすれば効果的なのか、というのに関してはConsensusが存在しないのが実情。ここまでの研究でどういったことが分かっており、どういった結論を導き出すことができるのか?というのをまとめたのがこの記事です。
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●期間 – 1 week vs 3 weeks
昔からあるslingとswathe(↑)を使って固定を行った場合、30歳未満の患者に限って言えば(それ以上の年齢の患者と対象とした研究が十分に集められなかったため、限定的な表現ですが)、1週間未満と3週間以上固定した患者を比べた場合、recurrence rate(怪我の再発率)は41%と37%という大差ない結果に。なので、結論としては、「一週間以上固定を続けてもadditional benefitは無し。一週間で十分」ということに。
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●ポジション – Internal rotation vs External rotation
前述したとおり、traditional shoulder immobilizationはこういった風に肘を曲げ(↑写真左)、前腕を身体の前に抱えるような形で行われます。これは、Immobilization in internal rotationと分類されます。しかし、最近になって、external rotationのポジション(↑写真右)で固定を行ったほうがよいのではないか、という意見が出てきました。このほうがbetter approximation of the anterior soft tissue to the glenoidがあるということが献体を使っての研究で実証されてきたからです。全体の結果として、Internal rotationで固定をして怪我が再発した人数は63人中25人、40%に上るのに対し、External rotationで固定をした場合の人数は88人中22人で25%。これはあくまでtrendで、Statistical significanceになるほどではなかったものの、ポジションをひとつ変えるだけで15%も怪我の再発が低くなるのであれば、clinical significanceはあると十分に言える数字であると思います。もちろんこれから更に研究を重ねていく必要性はありますが、現時点ではExternalのほうが優れた選択肢であると言えるでしょう。
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●初めて脱臼をしたときの年齢
これはちょっと内容がずれますが、そしてご存知の方も多いでしょうが、肩の脱臼って「初めてしたときに何歳だったか」が本当に本当に重要なんですよねぇ。単純に言うと、したのが若ければ若いほどchronic problemになりやすい、再発をしやすい、という統計が出ています。若いうちにしたほうが、まだまだ筋肉も強いし組織も若々しいからすぐ治るんじゃないの、と思ったら大間違い!
具体的に言うと、30歳がひとつの大きな区切りになります。このreviewを通じて集まったLevel I-IIの様々な研究を私が個人的に集計した結果、年齢別のoverall recurrence rateは30歳以下の場合501人中274人(54.7%)だったのに比べ、30歳以上の場合は345人中49人(14.2%)。もちろん、効果的なリハビリをすることでこの数が抑えられることもあるでしょうが、総じて「若いうちにした脱臼は厄介」というのがsports medicine界での常識です。

そんなわけで、これから私たちATはもちろん、一般の方もExternal rotationで固定をして歩いている人を見る機会が増えるかも知れませんね。個人的にはドアや棚なんかに手をぶつけそうで怖いのですが、意外にもcompliance rateは今のところERのほうがIRよりも高い、なんて研究結果も出ています。一日中していないといけないなら、こっちのポジションのほうが楽なんだろうか…私は肩を派手に怪我したことがないから分からないけども。経験者側からの意見も是非ぜひこれから聞いてみたいなぁなんて思っています。
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  by supersy | 2012-08-02 16:30 | Athletic Training | Comments(1)

Commented by ワカン at 2014-08-26 04:19 x
私も腹の前よりも真っ直ぐのほうが自然な形であると感じます

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