EAHおまけ。そしてキャンプ終わり!

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Shun氏が紹介してくれたArticleも読んでみました。
こっちの意見はやはりどちらかと言うとInternational Consensus寄りで、
 - Thirst is stimulated with decrease in body water of approximately 1.7-3.5%.
  「飲みたいだけ飲む」という手法の水分補給だと、ヒトは失った分の56%ほどしか補給しない
  という研究結果が出ている。
…ということは認めつつも、
 - しかし、カラダは水分そのものの喪失よりも浸透圧のバランスに敏感なので、
  それに合わせて喉の渇きが起こる。つまり、喉の渇きは立派なFluid balanceのバロメーター
  といえるのではないか。そもそも、そうした進化の中で遺伝子に組み込まれた生まれた
  メカニズムなのだから、種の生き残りに有効であることは明白である。
という議論を展開しています。
さらに、
 - 失った水分を完全に補給する(運動前と運動後の体重が全く同じになるよう水分を摂る)と、
  軽度のナトリウム濃度低下が見られる。
 - 完全補給したからといってパフォーマンスに利益があるとは思われない。
とのたもうております。

 - 1%でも水分を失ったら心肺機能に影響が、と訴えるヒトたちもいるが、
  それは運動に伴う体温の上昇から起こるのであって、必ずしも水分が原因ではない。
 - 4%の水分が失われるとパフォーマンスが確実に落ちる、というのは研究でも実証されて
  いるが、ここまで脱水が進めば喉の渇きも感じるハズ(=故に喉の渇きを待ってからで十分)。

唯一認めているのが、
 - 喉の渇きメーターが効果を発揮しないかもしれないのは、
  選手が65歳以上の場合、Extreme cold (<5℃)conditions、そして、
  extreme heat conditions (>38℃)で、選手本人がacclimitizedされてない場合。
というところで、
その場合はthirsty thresholdが上がっているので、多めの水分補給が必要、なんだそう。
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私が個人的に今回のIMMDAと、前回のInternational Consensusを読んでちょっとびっくりしているのが、どちらも体温の上昇を全く無視して話を進めているところ。今回の記事でも、運動に伴うCore tempの上昇がパフォーマンスに支障をきたす、と認めているのならば、冷たい水分をしっかり取って、水分補給と同時に体温の上昇を抑えるのも非常に大切なはず。

そして、くどいように、私のように、何も飲まなくっても一日平気でいられる。12時間以上トイレに行かなくても別に平気、みたいな万年脱水症・故に喉の渇きの感じ方が鈍感になってるニンゲンもいるわけで。喉の渇きが、種の生き残りに今までは有効なバロメーターの役割と果たしてきたかもしれないけど、フルマラソンで5-6時間ぶっつけで走る、なんて、そもそも現代のニンゲンは動物学的にムダ以外のナニモノでもないことをしようとしているのだから、そのバロメーターで覆いきれないこともあるのでは?

生き残るためには十分なバロメーター、とそもそも言ったって、私達ATCにとって、患者が死なないのは大前提。最高のパフォーマンスができるのがやっぱり最善なわけで。生き残るギリギリのバロメーターが出てきてしまってる時点でそもそもまずいんじゃないかということも考えられますね。

…というわけで、この記事を読んでみても、やっぱり私は改めて、
喉が渇いたら水分を採るので十分。と言い切ってしまうのはoverstatementだと思います。
喉が潤されたと思っても、あと一口だけ飲んでみるくらいが最適だと個人的には思うのです。
だって、これを私自身で実践するとしたら、私、毎日恐らく何も飲まずに過ごします。
冗談でも誇張でもなく。でもだって、そんなのが健康にいいわけないもの。
アスリートで、余分に汗をかいてエネルギーを使っているなら尚の事。
しかも、練習や試合に非常に集中してしまうと、喉の渇きを感じないこともある。
水分補給は、臨機応変に、しかしあくまで「習慣的」であるべきだと私は思うのです。

そもそも、(NATAの推奨する)運動前と運動後の体重が同じになるよう完全補給したからといって、ナトリウム濃度が少し落ちてasymptomatic hyponatremiaになっても、
どこにも支障はでないわけですよね…?パフォーマンスは保たれる、ちょっとナトリウムは通常より低いけど、症状が出るほどではなく、すぐに回復が見込まれる。Risk managementで言ったら、こっちのほうが安全じゃないですか?何故反対派がそんなにやっきになって反対するのか、私はちょっと疑問。

有名マラソン等のMass eventをホストするならoverhydrationを予防するもっと厳しい指針を設けたほうが良いでしょうが、顔なじみばかりのアスリートの毎日面倒を診るATCとしては、普段からのPatient educationが大事なわけで、それぞれに水分補給の指針を立てて(例えばうちにはUTI & Kidney infectionのmultiple-hxがある選手がいるのですが、彼女は普段から水分を少量ずつこまめに補給する習慣を話し合って数年前からつけている。こうすることで水分が常にカラダの中で循環し、古いものがすぐに出ていくようなサイクルを作っている)、本人がcomfortableな範囲で実践していけばそれが一番だとどうしても思うのです。で、練習外でも一日を通じて水分を摂るクセ、食事も出来る範囲でhealthier food choiceを選ぶクセをつける。まー彼らもまだ学生だし、本人の出来る範囲で、ね。アスリート自身も納得してないと、しょうがないし。でも、ATCという、アスリートと毎日とんでもない時間を共にしている仲だからこそ、医者にすらできないこういった基本的生活の見直しができると思うんです。私は、医者とATCのFluid replacement position statementの違いはこういう立場の違いからも来ていると思う。

…そんなわけで、今回は水分補給に関して色々考える良い機会になりました。
恐らくもう少しでUpdated NATA Fluid Replacement Position Statementも新たに出版されると思うのですが、ここ5年ほどで高まったEAHのawarenessがどれほど反映されるのか、他の問題(高体温症・脱水)と比べてどれにどれほど重きを置くのがATCとして相応しいのか等、組織としてNATAがどういう判断をするのかとても楽しみになってきました。それがどんなものであれ、ATCとして私たちはそれをしっかり読み、理解し、考え、自分たちのPracticeにアプライしていく事が大事ですね!

…というわけなんで、とりあえずEAHの話題はここで一旦終了にしますー。
自分なりの結論は出たので良しとします!

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今日で、ようやく女子バスケの中・高校生対象のキャンプが終わりました!
全部で2週間。な、長かった~…。
お昼ごはんのピザともオサラバです。

実は来週末には高校生対象のAT day campをATEPとしてホストしたり、
再来週にはNATA Conventionのためにセントルイスに行くし、
その翌翌週末にはConcussion Workshopがあったりと、なかなか落ち着く暇がありません。
できることから、一日一日、頑張っていこうと思います。

ふぅ~…(ちょっと疲れた)。
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  by supersy | 2012-06-14 19:00 | Athletic Training | Comments(3)

Commented by Shun at 2012-06-15 10:26 x
アップありがとうございます。実は来週チームドクターとクロスカントリーのコーチ陣とミーティングがあるので今日チームドクターと事前に話し合いをしました。水分補給のタイミングは喉の乾きではなく定期的に時間をつくって飲ませるようにすると再確認しました。Physician ExtenderとしてIVを使えるようにトレーニングを夏休み中にチームドクターから受ける予定です。
Commented by sh at 2012-06-15 13:28 x
以前、お世話になっていたS&Cコーチの方は学生のときに「お腹が空かないよう、ポケットに常にチーズを入れていた」とおっしゃっていました。
そういう意味では発汗の多い選手等には練習外の時間でも「喉が渇く」ということを感じないくらい、こまめな水分摂取を日頃から教育していく必要性は感じます。
Commented by さゆり at 2012-06-17 10:52 x
>Shunさん
お陰様で勉強になりました。ありがとうございました!Ultra-long eventをホストするときは本当に「何事も無く」皆無事に終えられるのが一番の目標ですね。

>shさん
ポケットにチーズ…ですか、溶けないのでしょうか(笑)。個人的には喉が渇いてからすぐに水を飲めない環境があることを考えれば(競技中・練習中等)、早め早めの先回りの水分補給が大事だと思います。あとは、普段の食事も含めた教育ですね。

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