Split Positionのホンネ。

ちょっと宣伝になりますが、
月刊トレーニングジャーナル、という雑誌の編集者さんからご連絡頂き、
先日まとめた、Ottawa Ankle Rulesの記事について書いてくれとご依頼を受けまして、
生意気にも3ページ半に渡って記事にさせていただきました。きょ、恐縮です!
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日本時間の明日、2月10日に発売の、
Book House HD社発行、月刊トレーニングジャーナル3月号に載っています。
『捻挫のあと、どうするか』という特集の一番最初が私の記事です。
一般書店では扱っていないらしいのですが、全国で取り扱いのある書店の一覧はこちら、もしくはオンラインでこちらから購入可能です。
興味のある方は是非!

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今回は私の仕事についてちょっと書こうと思います。
あと数ヶ月で徐々に就職活動の季節にもなりますし、私のようなSplit positionでの就職を希望・可能性を考えている人にそのpros & consを知っておいていただけたら、と思うので。
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私の現在の職場でのポジションはSplit positionと言いまして、
split = 分割する、という意味どおり、仕事の50%はアカデミック、もう50%はアスレチック、
という、二つの全く異なる職種を兼ねています。

アカデミックの仕事としては:
- アスレチックトレーニング・スポーツ医学の授業を一学期辺り6単位分受け持つ。
- クリニカルコーディネーターとしてATEPを総轄する。
  学生とACI/CIの間に立ち、コミュニケーションが円滑に行われるように常に微調整。
  問題が起こればお掃除に参ります。ちなみに毎月のニュースレターもここから派生。

アスレチックの仕事としては:
- 女子バスケットボールと女子ゴルフのチームの担当アスレチックトレーナーとして働く。
- 選手の怪我の診断、治療、リハビリ、予防を行う。

更に、Additional workとして:
- Approved Clinical Instructor(ACI)として、日々アスレチックトレーニング専攻の学生と
  実技能力チェックを重ね、彼らのProficiencyをチェックする。例えば学生が足首テーピングの
  技術を披露して、ACIが「よし、合格!」と言って書類にサインして初めて、
  彼らは選手に足首のテーピングを巻けるようになる。

基本的に、毎日の仕事はこの3種類が混ざりに混ざっている感じです。
例えば、私の基本的な一日の流れ。たとえば、火曜日。
- 朝7時過ぎに出勤。静かな時間を利用して、アカデミックの仕事を片付ける。
 授業で使うパワーポイントを作ったり、小テストを作ったり、宿題を採点したり。
- 朝8時半頃に、膝の具合がよろしくないアスリートとの治療のアポ。マニュアルでがしがし。
- 朝9時半になって、一つ目の授業の時間。下肢の怪我の評価についてAT2年生を教える。
- 1時間15分の授業を終え、15分休憩の後、二つ目の授業へ。
 今度はAT1年生に「スポーツ外傷の予防とケア」という授業を教える。
 この授業はAT専攻でない他の学生も多く履修している総勢40+人のマンモスクラス。
- 授業が終わって昼の12時半。お昼ごはんをかっこむ。
- 昼の1時、練習1時間前。オフィスから別の建物に歩いて移動し、練習の準備&治療開始。
- 午後の2時、アスリートをAthletic Training Roomから全て送りだし、練習へ。
 練習中にも怪我をチェックしたり、水分補給手伝ったり、喘息持ちの子を確認したり、
 もしくはアスレチックトレーニング専攻の学生に色々クイズを出してぷち講義をしたり、色々。
- 午後4時、練習を終えてまた治療開始。リハビリもいくつか。
- 全て終わって午後の5時過ぎ。選手を見送り、アスレチックトレーニング専攻の学生も
 本日の現場実習を終えて送り帰す。やっとまたひとりの時間。
- おおっと、今日はチームドクターが学内での検診をやってくれる日だった!
 診察に来る予定の選手のメディカルレコードを並べ、準備準備。
- 夕方6時、ドクターが到着。選手を一人ひとり診るのに同行し、必要があれば処方箋の処理や、
 支払いの手続き(奨学金つきのアスリートの支払いは大学持ちなので)をしたりする。
- 夕方7時過ぎ、全ての選手の診察が終了。ドクターにお礼を言って見送る。
- 溜まっていたアカデミックの仕事やeメールを処置。
- 夜8時、帰宅。
- 夕食を食べつつパワーポイントの準備。全然はかどらん。
- お風呂に入って就寝。

…とまぁ、こんな感じです。
座ってぽけっとしている時間もなく、慌しく仕事をしていたら一日が終わる、という感じです。
これに加えて、例えば大きめな怪我が起こったら医者に連絡を取ってアポを作ったり(必要があれば選手を病院に連れて行くことも)、テストが近くなればテスト問題を作らなきゃー、とか、ニュースレターをそろそろ出さなきゃー!とか、おおっと、この学生とcheck-offやらなきゃ!とか、クリニカルコーディネーターとして、うちと提携してくれている高校や理学療法のクリニック等にsite visit(訪問して、ちゃんと規定に沿った活動をしているかチェックする)したりと、色々とランダムに仕事が増えたりします。

まぁぶっちゃけ、今の私は“Overload”という状態で、数字に直すと、
「授業を2単位分過剰に教えているくらいのoverworkっぷり」ということになっています。
(それに関しては一応金銭的にはcompensateしてもらえています)
私以外のスタッフも、ほとんどが1単位分のoverloadしています。

Split positionをやっていてこれはいかんと思うこと、
まずひとつは、とにかく休みがないということです。
アスレチックの仕事に朝も夜もありませんし、週末働くこともシーズン中なら当たり前です。
空いた時間を使って授業の準備をしたり、採点をしたり、生徒からのクレーム処置したり。
それだけでは当然足りないので、家に帰ってからも仕事を続け、睡眠時間を削ることも。
学期末の採点が架橋を迎える頃や、遠征続きで連日飛び回っている時期は
(朝の5時に遠征から帰ってきて、仕事場で2時間仮眠を取り、むっくり起きて授業の準備をし
そのままクラスを教えに行ったりとか…)
意識が朦朧とすることも多く、本当に修羅場といった感じです。

もうひとつは、アカデミック⇔アスレチック間のコミュニケーションが少なく、
どちらからも「向こうに時間を割きすぎではないか、もっとこっちの仕事をすべきだ」
という要求ばかり喰うことです。アカデミック側からは、「どうせ遠征続きで授業休講にしまくっているんだろう(←全くの言いがかり)、これくらい当然の義務だ、やれやー」と一般学生30人分のアドバイジングを今学期から担当するように言われましたし(これ本当に無理だと思う。不安…)、アスレチック側からも「今週末テニスのトーナメント人手が無くてカバーできないんだよね。女バスの練習無いなら一日手伝いに来てくれる?」と、担当外のスポーツでもよくお声がかかります。
ATスタッフの人数が少ないので困ったときの助け合いは当然ですが、
せっかく授業の準備に使おうと思っていた日曜日が潰れるのは痛い。

それでも働いて働いて解決できればまだいいのですが、完全にふたつの予定がカブり、どちらかを断らないといけない状況も出てきます。そんなとき、「ふたつの場所に同時にいることはできません。今回はこっちをやらなければならないので、こっちは行けません」と頭を下げてもその理論が分かってもらえないことが多く、何だか結構悪者扱いされている気がします。
いや、サボってるわけじゃないのよー。
こういうときはちょっと悲しい。ちょっとだけね。


でも、良いこともあるんです。
実はかなりあるんです。

まずは、教えるということは単純に楽しい!
苦手な内容も教えることでしっかり私自身の頭に入るし、そこからクリニシャンとして成長させてもらったりしています。例えば、Therapeutic Modalities(物理療法)の授業を教えていく中でHigh-voltやJoint Mobilization、Muscle Energy等、不慣れだった療法にもより詳しくなって、実際の治療にそういったテクニックを実践してみたり。そして、効果があったり、ね。
クリニシャン一筋でやっていると、ついつい勉強をさぼってしまってold schoolになりがち、ってこともあるかと思うのですが、教師として文献もあれこれ読むので、AT界のトレンドや動向にも詳しくなりましたし、新しい研究や発表にも比較的敏感でいられています。

そして、教師の観点からは、教室で教えているだけじゃなく、
ちゃんと現場で動いている自分も学生に見てもらえる、という利点もあります。
前にも書きましたが、ただのセンセーから授業で教わるより、現場で実際に目で見て教わるほうが、学生にとっては強烈に印象に残るんです。学生は、クリニシャンの背中を見て育ちます。
私がただ授業で、「EBPをやるんじゃー」「Patient-centeredのケアを実践するんじゃー」とぎゃーぎゃー言ったって、私が現場を離れて久しければ、ただの教師の戯言と取られても仕方ありません。でも、実際に私がそれらを選手相手に実践しているのを横で日々見ていることで、なるほど!こうやってやるのか!こういう利益があるのか!と感じてもらえれば、私が教室で発する言葉にもかなり重みがでてきます。机上の空論にならない。現場の視点を保ちつつ、この職業の将来を理想に近づけていく。そういった意味では、自分はなかなか理想的ポジションにいるなぁと思います。

あとは、過去の経験から申しまして、現場一筋だと、AT学生の扱いもぞんざいになりがちで「お荷物」として見てしまうことがある、特にCheck-offなんて面倒くさいこと極まりない!適当にやっちゃえ!なんてことがあるのも珍しくないのですが、教師を兼ねているお陰で、彼らを育てるために現場でどんなことをしたらいいのだろう、と考える癖がつきました。
昔は、学生がトロトロやっているのがまどろっこしくて、自分でがーー、とやったりしてたんですけどね。現場での効率を優先せず、あえて自分で全てをやらずに根気強く学生にチャレンジさせ、ほうほうなかなかいいじゃないか!とか、ここはね、こういうこともできるよ!と指導のきっかけとして使う。そうすることで選手もAT学生の成長をrecognizeして、そこに信頼関係が生まれる。信頼されれば学生ももっと頑張る。もっと伸びる。もっと信頼する。AT学生がどんどん積極的になっていく。それに使うはずだった時間は、私は他の選手を診たり治療したりすることに使えるので、結果、能率が上がる。こんな風に、win-win situationを生み出せることが発覚!
今では、現場ではだいぶ楽させてもらってます。学生たちが優秀なんでね!

まーなんでしょうね。
教師だけ、クリニシャンだけしかやってないと、結局mindsetがものすごく偏ってしまうのが、
両方やっているからバランスが取れて、それがとても上手い方向に向いてる、
と実感しています。まさに中庸の徳?

就職活動をする・しようとしている人に、Split positionはお勧めしますか?と聞かれたら、
私は「もんのすごく体力的・精神的にはきついですが、
とても楽しんでいますし、大いに成長させてもらっています」と答えます。
これが正直なホンネです。誰にでも勧められる仕事ではありませんが、私は好きです。
この時期に出会うべくして出会った仕事だったんだろうな、と思います。
もうちょっと年齢取っちゃったら、続けるのはきついかもだけど(笑)。

もし、日本人だから英語で授業するのはちょっと不安…という人がいれば、
そんなことは全然心配しなくていいよ!と言いたいです。頑張れば、何とでもなります(断言)。
最終的には、言葉の壁がどうこうではなくて、アナタが学生時代にどんな授業が楽しかったか考え、それを実践するセンスがあるか、ってとこなんじゃないでしょうか。
日本語で授業するも、英語で授業するも、私の中ではそんなに変りません。

クリニカルコーディネーターというポジションについてはこれから大きく変革があると思います。今のCAATEの流れから言うと、そういう名前のポジション自体が近々存在しなくなるかも知れません。でもクリニカルコーディネーターって仕事をやってみてどうですか?と聞かれると、様々なモノゴトの調整と、全生徒&全CI/ACIとのコミュニケーションを回せる能力に長けているヒト、あとはトラブルが生まれたときのお掃除係…ってことなんではないかな、という印象です。細かくて地味な仕事です。学生がACIと上手くいかず、泣きながらもしくは怒り狂いながら私のオフィスに来ることは、そう珍しいことではありません。そういうときは、学生とスタッフの間に立ち、何が問題なのか、どう解決すべきかを導く指導者的役目がかなり大きいかと思います。クリニカルコーディネーターなんて言うと偉そうに聞こえるかも知れませんが、結構「何でも屋さん」「トラブル解決屋さん」という感じですかね(笑)。

これが誰かの手助けになるのかは分かりませんが、
あまり日本人で教育界に顔を突っ込んでるATも少ないかなと思ったので、
一応自分の仕事内容等を記録させていただきました。
何か質問等あれば、個人的にでもブログにコメントででも頂ければお答えします!
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  by supersy | 2012-02-08 22:30 | Athletic Training | Comments(2)

Commented by かや at 2012-02-10 10:15 x
フィールドと教育(or ラボ)の両方を持っているのってホントに良いですね。かなり忙しくはなるけれど,まわりへの説得力も強いし自分の向上心へとつなげやすいし。
これからもガンバ!です。
Commented by さゆり at 2012-02-11 12:32 x
ありがとうございます!あと一年は最低でも頑張りきろうと思っています。しかし、そろそろ年齢の波も感じるなぁ…(苦笑)。

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