これって足首の捻挫?骨折?― the Ottawa Ankle Rules。

急な更新なのに、マニアックな内容ですみません。
ちゃんと生きていますよ。

1月分のニュースレターを一週間ほど前に刊行しました!
今回の自分の中の目玉は、Ottawa Ankle Rulesの特集。
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これ、意外と知らないATCが多い…というか、私自身もUndergradでは教わった覚えがありません。
たぶん、文献でも読んでいて見つけたのが最初かな?
今回の記事を書くにあたり、新たに色々と文献をひっぱりだしていたら、
知らない発見もあって私自身とても勉強になりました。なので、ここでさくっとまとめておきます。

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皆さんはER(救急外来)に来る患者さんの10%が足首の捻挫だってご存知でしたか?

足首や足に痛みを抱えてERに来る患者さんの80-98%が病院でレントゲンを撮ることになります。
そのうち、実際に骨折を発見するケースは15%以下のみ。
つまり、85%の患者さんは、「ただの捻挫でした、大したコトありません」と医者に言ってもらうためだけに5-6時間という長い待ち時間をERで過ごし、高い値段をふっかけられてレントゲンを撮り…
ものすごい時間とお金を浪費しているわけです。

これはもっと効率良くならないもんだろうか?
医療の質を高く保ちつつ、かつ無駄なMedical referralを省く、
無駄なX-rayを撮らなくてもいいようにする。そんなガイドラインはできないもんだろうか?
そういう思いから生まれたのが、Ottawa Ankle Rules(OAR)なんです。
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まずは、
1、図解にあるようにA・B・C・Dの4つのbony landmarkを触診し、
  Bone tendernessが無いことを確認する。
  (→どれかひとつでも痛みがあればこの時点でX-ray)
  ちなみに、このdistal med/lat malleoliと、base of the 5th MT & navicularというのは
  traumatic fractureが非常に起こり易い部位なんですよね。
2、「怪我をした直後、歩くことはできた?」か聞く。
  この時、「歩くことができた」の定義は
  「他人の力を借りず、一人で4歩続けて歩けたか」ということ。足を引きずっていたりしてもOK。
  (→もし答えがYesならば、この時点でX-rayは必要ないと断定)
3、患者さんに、今目の前で歩いてもらう。
  同様に、「他人の力を借りず、一人で4歩続けて歩け」ているならばX-rayは必要無し
  前述の通り、足を引きずっていたりしてもOK。

このOAR※、統計的にはものすごい数字で、ほぼ100%のsensitivityがあり、
つまるところ、「この条件をどれも満たさなかった(4箇所のどこにも痛み無し&歩くことが出来る)場合、骨折はほぼ無い= no false negatives」と言っても良い、ということになります。
条件反射的にX-rayを撮る前に、OARをさささっとやることで、無駄なX-rayをかなり省ける、と。

しかし、唯一の欠点はspecificityが26.3-39.8%とわりかし低いこと。
つまり、「条件をひとつでも満たしたからといってX-rayを撮っても、やっぱり骨折を発見できない可能性は結構ある= still the high rate of false positives」という事実がつきまとうわけです。うーむー、だいぶ減らせてるけど、まだ無駄があるということですなぁ。

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これを改善するために、Leddy氏が考案した改定版がこちら(↑)、The Buffalo Rule (BR)。
何がそんなに変ったの?というと、OARのBony palpation A&Bであった、
「6cm Posterior edge or tip of medial & lateral malleoli」を、
「6cm posterior edge or tip」→「6cm mid-lines of med/lat malleoli」に変更したのみ。
CとDについては何も変更はありませんし、4歩歩けた/るか?という基準等もそのままです。
触診の位置が一部変った、というだけ。

これだけで、specificityが跳ね上がるんだから面白い!
26.3-39.8%から、45-59%まで上昇しました。まだまだ完璧ではありませんが、
ほんの少し触診の位置を変えるだけで、かなりfalse positiveの改善が見られたのです。
ちなみに、この変更のrationaleは、
「posterior edgeにはposterior ligamentsが色々attachしているんだし、
それらをsprainすればtendernessも出るだろう。それだけで判断するのはむつかしい。
骨折していれば、必ず骨折面はmid-lineをcrossするはず。だったら、mid-lineだけで十分なのではないか」ということだそうです。言われてみれば、非常に理に適っています。合理的!

ちなみに、統計としては、
OARを導入したことで、レントゲンにかかる費用が19-38%の削減が、BRでは54%もの削減が実現できたそうです!お金にして、毎年$18-90 millionというんだから大したもんです。
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私たちATCですらも、晴れ上がった足首を目の前にして、
これは、ただの捻挫だろうか、骨折も伴っているのか?うーん、可能性は否定できない…referするべきか…と悩んだ経験は誰もがあるはずです。
そんなときは是非BR(= also known as "the modified OAR")を実践してみてはいかがでしょうか?非常にシンプルで、2分もかからず済むはず。

これらの研究は、今学期のLower Evalの授業でも学生たちに教えようと思っています!
ちなみにメインで使ったResourceは、
1. Northup RL, Ragan BG, Bell, GW. The ottawa ankle rules and the "buffalo' rule, part 1.
  Athl Ther Today. 2005;10(1):56-9.
2. Northup RL, Ragan BG, Bell, GW. The ottawa ankle rules and the "buffalo' rule, part 2.
  Athl Ther Today. 2005;10(2):68-71.
特にPart 2のほうはお勧めです!短いし、読み易い!
現場で働くATCには一度は読んで頂きたいなぁと思います。


※ただし、1) 患者さんが妊娠している、2) 皮膚のみの怪我である、3) 他の医師から委託された患者である、4) 怪我から10日以上経っている、もしくは 5) 目に見えて変形している 場合は、OARは使ってはいけない、というexclusion criteriaがあります。
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  by supersy | 2012-01-13 23:30 | Athletic Training | Comments(5)

Commented by じでん at 2012-01-15 06:22 x
OARならびにBRは、俺も現場で使ってる。高校やと、特に重宝されるんちゃう。下記のsystematic reviewのfindingによれば, 5-18歳のpatientにOARを使ったら、レントゲンにかかる費用が24.8%も削減できるんやから、ほんまでかいでかい。

Dowling S, Spooner CH, Liang Y, Dryden DM, Friesen C, Klassen TP, Wright RB. Accuracy of Ottawa Ankle Rules to exclude fractures of the ankle and midfoot in children: a meta-analysis. Acad Emerg Med. 2009 Apr;16(4):277-87.
Commented by さゆり at 2012-01-15 13:58 x
じでんは反応してくれると思っていたぜぃ!
いや、これはかなりclinical importanceがあるよね。シンプルだし、一般の人も知っていたらどれだけ役が立つだろうか、と思うよ。なんでもっとちゃんと教えないんだろう?私はちゃんと時間を取って説明しよう!と今学期は決心してる。
Commented by かや at 2012-01-16 11:44 x
こういった判断方法が全体にも認知されてくるといろいろといいよね!
資格等の関係上(変な責任回避と言った方が適切かな)足首捻挫と分かってても病院に連れて行ってますが,「捻挫ですね。とりあえず仮固定しますのでしばらく様子を見てください・・」と予想通りの答えをもらって帰ることがほとんどで,念のためとはいえ費用と時間と体力を浪費している感がとてもつよいものですから・・・。
まあでもこれを怪我した学生への説明材料として使わせてもらいます。
Commented by じでん at 2012-01-16 12:19 x
ほんま、そん通りやわ。Competenciesにも、ちゃんと記述してあんのに, なんでちゃんと教えへんねやろね? 。もしかしたら、reimbursementとliabilityが影響しるんかな。
Commented by さゆり at 2012-01-16 16:42 x
>賀屋先生
そうなんです、liabilityという観点からもこれは非常に大事で、「医者に見てもらいに行ったのにレントゲンも撮ってくれなかった」と患者に言われたら医者はまずい、と思うから結局あまり必要ないと思いつつレントゲンを撮ってしまう。私たちも、たぶんただの捻挫だと思うけど、選手騒いでるし、一応…と、必要ないreferralをしてしまう。OARをちゃんと使えればこれらを減らせるだけでなく、患者さんに「何故レントゲンを撮る必要が無いか」をちゃんと説明できることと、万が一後でlegal troubleになったときにも、これだけ信頼性のあるテストをした上で、必要はないと判断した、という自分自身の意見をバックアップする大きな理由になる、んですよね。

>じでん
5th edになってから教育界は正直大混乱だよ。私は5th edを本気で実践させたいならOARみたいなのをバンバン教えて、それこそO'Brien'sなんかもう教えるの辞めたっていいと思う。EBP歌うなら私たちが教えることもそれにちゃんと倣っていないとね。

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