Football Helmetの種類とConcussion Rate。

先日、うちのATEPの実習先のひとつである高校のATCの人から、
“Sy、フットボールのヘルメットメーカー別の脳震盪率の統計とかって出てるのかなぁ?”
と質問されました。
どうも、彼の高校ではRiddellSchuttの(↓アメリカの2大フットボールヘルメットメーカー)
両方のヘルメットを使用しているらしいのですが、
過去数年の脳震盪のほとんどがRiddellのヘルメットを装着していた選手に起こっているのだとか。
これは偶然なのか?はたまたヘルメットの性能の違いなのか?気になったそうなんです。
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ふーむなるほど、そういうのは聞いたことが無いなぁ、面白そう。
高校のATCは大学と異なり、文献等のResourceへのアクセスが限られていて、
できる限り彼らの知識のupdateを助けるというのもClinical Coordinatorとしての役目かな、
と思っていますので、「ちょっとfamiliarじゃないっすね…調べます!」と即お返事。
この週末の連休を利用して、今回色々と調べてみました。
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まず近年のヘルメット/脳震盪の研究を語る上で外せないのが、
The Head Impact Telemetry System (HITS)という最新技術!
ハードウェアがヘルメットに内臓(↑写真左)されている、ワイヤレスのモニタリングシステムで、
これを装着した状態でフットボールをプレーして、タックル時、頭部に強い衝撃が加わったとき、
ヘルメットの、 ①どこに ②どれだけのスピードで ③どれだけの力が加わったのか
という情報を保存しておくことができます。
ヘルメットひとつで、一度に100回のHead Impactを記録可能。
で、後にコンピューター(写真中央)にダウンロードして、解析する(写真右)、という。

ちなみにヘルメットひとつで$999、the HITS receiverは$299という、
とても値の張るものなんですけどね。

あ、それからちなみに、脳震盪を起こすに満たない微々たる衝撃(15g以下)や、
手に持っていたヘルメットを落としたり、装着していない地面に置いてある状態で足が当たったりしたような衝撃はidentifyして、統計から外すことができます。念の為。

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このthe HITSを用いた研究で、最初に目に付いたのがこちら(↑)。2010年のArticle。
この研究では、NCAA D-Iの大学3つのフットボールチームでのシーズン丸々の練習と試合でこのヘルメットを装着。そして、それをチーム別・ポジション別にHead Impactがどれくらいの頻度で起こるのか、ヘルメットのどこに受ける場合が多いのか、という点に注目してまとめられています。

これによって明らかになった点を並べると、
- フットボール選手は、シーズンあたり、最大で1444回のHead Impactを受けている。
- 平均すると、練習一回あたり6.3回、一試合あたり14.3回。(→試合のIntensityは高い!)
- 頻度・場所とも、ポジションによってかなり違いがある。
頻度Linemenが一番受けるHead Impact数が多い。故に頻度も多い。
    そしてそれは過去の数々の研究とも一致する。
    →75% of the total impactsはLinemenによるもの、という研究まで過去には出ている。
    (オフェンスとディフェンスだと、ディフェンスのほうが多く出ていました、これでは)
場所:ヘルメット前方に受ける衝撃がダントツで多かった、が、QBのみは例外で、
    後方から受ける衝撃が全体の3割以上。
- チームによって練習構成が異なるためか、
  シーズンを通したHead Impact総合計数には、チームによってかなり差が出ていた。
  が、試合中に起こるHead Impactの数にのみ着目した場合、ほぼ差は無い、という結果に。

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そしてこちら(↑)が高校生を対象にした研究。
で、面白いことに大学生とはちょっと結果が違うんですよね。

- 高校における脳震盪の怪我件数は、QBとRBが一番多い。
  (大学のOffensive linemenが一番多い、というのとは異なる)
これに関しては、高校生ではチーム内の対格差にかなり差があり、
身体の出来ている子(=大きい子)は必然的にlinemenのポジションを任される場合が多く、
Head mass/首の筋肉の強さがある分、ぶつかっても耐えられるのかも、という考察が。
そして、この研究では更に頭部にかかる加速度も計測されていたのですが、
- 大学生よりも高校生のほうが総じて加速度がぐんと高い(=頭に強い衝撃を受けている)。
- 部位別で言うと、ヘルメット上部に衝撃がかかったときの加速度が最も高い(=最も危険)。
  →正しいタックルの技術があれば、ヘルメット前方を使ってのcontactがセオリー。
  高校の研究においてヘルメット上部のhit絶対数が多いことから、
  高校の選手は大学の選手ほどスキルがない、ということと同時に、
  高校レベルでのコーチによる正しい技術指導が非常に大切である、ということが言える。
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(ちなみに左が正しいtackle=ヘルメット前部、右が危険なtackle=ヘルメット上部)
あとは、高校で働いた経験のある皆さんはご存知かと思いますが、
高校だと(しかも小さな高校であればあるほど)、選手の数が足らず、
多くの子供がオフェンスとディフェンスの両方をプレーしなければならないとう現状もあり、
結果、脳震盪を含めた怪我の確率が高まる、ということは十分に考えられると思います。
単純にプレータイムが増える→Impact Exposureが増える、ということもありますし、
肉体的精神的に疲れてきて集中力が欠けると、より怪我も多くなる、という研究もありますしね。
こういった、高校にしかないユニークな特色と傾向をまじまじと見せ付けられると、
脳震盪の対策は、高校レベルでは大学・プロと同じように実践していてはいけないのかな、
と考えさせられます。


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それで、ようやく本題です!メーカーでいうと、ヘルメットはどこのものが一番いいのか?

先に結果を言ってしまうと、メーカー別をガチで比べた研究は見つけられなかったのですが、
ひとつそれに近いものを見つけました。
上の研究(↑)はRiddell社の“Revolution”という2002年に出た最新ヘルメットと、今までのスタンダードなNOCSAE-approvedヘルメットを比べた、という私が見つけた唯一のものです。

Revolution Helmetを装着した高校生の脳震盪発生率は5.3%で、
スタンダードなHelmet7.6%と比べてstatistically significant differenceが認められました。
これは"There was a 31% decreased relative risk for sustaining a concussion among athletes wearing the Revolution helmet."(Revolutionヘルメットは、それを装着しない選手に比べて、相対的脳震盪発生率は31%低くなる) ということになるんだそう。ふむふむ。

脳震盪は足首の捻挫等と同じで、一度やると二度・三度と起こし易い、という性質があるので、
過去に脳震盪をsustainしたことがある選手を除いて計算しなおすと、
Revolution Helmets= 3.7%Standard Helmets= 6.2%という数字になり、
"Wearing the Revolution helmet was associated with approximately a 41% decreased relative risk for sustaining a concussion in athletes who have never been concussed."
(約41%の脳震盪発生率の低下が認められる)
 という風に数字も更に上がるようです。

脳震盪をsustainした後のRecovery TimeもRevolutionを着用していた場合のほうが早い、
という結果が出ています。脳震盪を起こしてから、RTPするまでの平均日数を比べると:
Revolution Helmets= 10.9 daysStandard Helmets= 13.0 days
脳震盪を過去に一度も起こしたことの無い選手に関しては、同様に、
Revolution Helmets= 10.5 daysStandard Helmets= 12.2 daysだそう。
約2日ほど復帰が早い計算になりますね。

個人的な見解ですが、これ、3年間のcohort studyだから結構良いEvidenceになるんじゃないかと思います。サンプル数もトータルで2000を超えていて、かなり大きいし。
唯一文句をつけるとすれば、Revolution以外のヘルメットをOther standard NOCSAE-approved helmetsと一まとめにして、特に会社が指定されていないところ。つまり、Schuttも、旧デザインのRiddellも、色々なものが含まれているから、Riddell vs Schuttではなくて、Riddell Revolution vs the rest、みたいな構図だった、っていうところかな。

そんなわけで、この研究の結論は、Riddell社のRevolutionに用いた新デザインは、
脳震盪予防に他のスタンダードヘルメットよりも効果がある
、という、
冒頭の私の知り合いの見解とは全く逆のものになりました。
ま、彼のコドモたちがRevolutionを使っていたかは確認していませんがね。

今までメーカー同士の商品を比べた研究ってあまり読んだことがなかったので
(だってモロに利益に影響でそうですもんね、結果次第で)、今回はなかなか勉強になりました。
もし他に何か面白い情報・研究をご存知の方がいらっしゃいましたら是非ご一報ください!
Riddell、Schuttだけでなく、Xenithとかどうなんだろう???
もうちょっと調べてみます。
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  by supersy | 2011-09-04 21:30 | Athletic Training | Comments(2)

Commented by Jiden at 2011-09-05 13:46 x
この2つのStudiesが興味深いで。Viano DC, Pellman EJ, Withnall C, Shewchenko N.Concussion in professional football: performance of newer helmets in reconstructed game impacts--Part 13.Neurosurgery. 2006 Sep;59(3):591-606; discussion 591-606.

Ouckama R, Pearsall DJ. Evaluation of a flexible force sensor for measurement of helmet foam impact performance.J Biomech. 2011 Mar 15;44(5):904-9.

あとヘルメットとは関係あらんけど、これも興味深いで。Galetta KM, Brandes LE, Maki K, Dziemianowicz MS, Laudano E, Allen M, Lawler K, Sennett B, Wiebe D, Devick S, Messner LV, Galetta SL, Balcer LJ. The King-Devick Test and Sports-related Concussion: Study of a Rapid Visual Screening Tool in a Collegiate Cohort.J Neurol Sci. 2011 July 22
Commented by さゆり at 2011-09-05 22:20 x
さっすが現役博士課程!研究には私なんかよりとんでもなく精通してるな、ありがとう!最初のだけはどうしてもfull text見つからんかったわ。これからふたつ読む。っていうかneuro系もがっつり読んどんのな、すごいなー。尊敬するわ!

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