SWATA Annual Conference in Houston その2。

さて。前回の続き、初日の話になりますが、次に向かった講義は、
“Education Update: Teaching the New Acute Care Skills”というもの。
タイトルだけだと現場で働く人には退屈に聞こえるかもしれませんが、教育界の人間にとっては非常に大事なもので、スケジュールの都合上今回のカンファレンスに参加できなかった上司(Program Director)からも、この講義だけは必ず行ってくれ!そして内容を報告するように!と言われていました。講義だけでなく、実際に自らの手を使って練習したり指導を受けたり、という有難い機会もありました!

ちょっとだけBackgroundを説明させてもらうと、以前にも少し触れましたが、
CAATEが5th Edition of the NATA Athletic Training Education Competencies(PDF)を発表したのが今年2月。この新しいEditionは今までのCompetenciesとは全く異なるもので、新しい知識や技術がふんだんに盛り込まれており(そしてもちろん、削除された内容も多々あり)、根底を覆す、と言っても過言ではないようなAT教育界に激震をもたらす変化でした。
そんな大袈裟な!と思うかも知れませんが、このCAATEの提示するCompetenciesというのは、つまるところCAATEに認められたATEPのカリキュラム内で絶対にカバーされなければいけない内容たちなのです。Competencies=学生があなたのプログラムを卒業するとき、学生はこれだけのことを知っている/技術を持っているものとして考えますよ、ということなのです。Competenciesが変われば、我々はシラバスから授業内容から教材まで、全てを変えなくてはならない。かなりなオオゴトなのです。もし変えなかったらどうなるのかって?CAATE Accreditedの看板を外されてしまい、実質そのATEPは生き残れない、ということになりますね。

もうちょっと具体的な話をすると、5th Editionに含まれている中で、Acute Careのカテゴリー内では多くの追加項目がありました。CAATEより抜粋すると:
The Acute Care (AC) content area has been substantially revised to reflect contemporary practice.
— The addition of skill in assessing rectal temperature, oxygen saturation, blood glucose levels, and use of a nebulizer and oropharyngeal and nasopharyngeal airways reflects recommendations of NATA position statements that are published or in development.
つまり、
- Rectal temperature (直腸温)
- Oxygen saturation (酸素飽和度)
- Blood glucose(血糖値)の測定ができること、そして

- Nebulizer (噴霧器)
- Oropharyngeal (口咽頭) and Nasopharyngeal airways (鼻咽頭気道確保)
を正しく使える/行えるようになることが、これからのATCに求められる大前提であるゆえ、
学生も当然学ぶべき→カリキュラムにも入れましょう、ということなのです。

これらの知識や技術は、私が学生の頃にはカリキュラムに含まれていなかったため、はっきり言って私も全く知りませんし出来ません。でも、これを急に教える立場になってしまうというわけ。
ありゃ大変! ε≡ヽ( ・∀・)ノ

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そんなわけで能書きはいいとして、これらのAcute Care Skill達を学んで、
教えられるように必要な教材等を買い、来るべき学期に備えなければ!
という必要性があったというわけ。今回のこれは、私と上司にとってMust-Goな講義でした。

●Oxygen saturation
Vital signと言えば体温・脈拍数・血圧・呼吸数の4つですが、
これからこのOxygen Saturationが第五のVital signに加わるかも、という傾向にあります。
つまるところ、Oxygen Saturationとは血液中に含まれる酸素の濃度なのですが、血液中のヘモグロビンの何パーセントが酸素と結びついているか、という数字で計測されます。
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Oxygen Saturationは、体のどこの血管(動脈vs静脈)で計測するかによって数値は変わるのですが(↑)、私達が普段計測に使う動脈においては、健康な成人の場合、通常値は95-100%。この値が85-90%になるとRespiration failureを起こしているとみなされます。90%でも、短時間であっという間に生死に関わる状態になるので、marginが非常に狭いということを心に刻んでおく必要があります。
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これを測定するにはPulse Oximetryという器具(↑)を使用します。やり方は簡単。指先にパチッと挟むだけ。むにゅ、と圧迫感がするだけで、痛くもありません。すると、機械が5秒ほどで自動的にOxygen Saturationを測定してくれます。挟まれている先端からInfrared lightが出ているのですが、酸素と結びついているヘモグロビンと、結びついていないものとでは、Infrared lightの吸収率が異なるので、結果的にoxy/deoxyhemoglobin ratioが出せるというわけ。で、それに基づいてOxygen Saturation Levelが出る、と。色んなメーカーからこの類の製品は出ていますが、$55~$300と、比較的値段はお安い感じです。注意すべきは、±2%の誤差があること。92%の数値が出たら90%とみなして、危ないと思ったほうが良いでしょう。

●Airway (気道確保)
気道確保には、新たにOropharyngeal(口咽頭)とNasopharyngeal(鼻咽頭)が追加されました。
まずは、さらっと気道確保について復習をすると…
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<Head-tilt/Chin-lift>
- 手早く簡単、確実
- しかし、頚椎損傷の疑いがある場合は使えない



<Jaw Thrust>
- ちょっと練習が必要
- 頚椎・脊髄損傷の場合に適切


<Bag Valve Mask>
- 上記いずれかのテクニックで気道確保した後の酸素供給法
- Supplemental O₂も使える、非常に優れもの
- しかし、underrated且つundermastered skill、意外に難しい
- これでCPRしようと思ったら3人必要になってしまうというdisadvantageも
  (Airway確保に一人、バルブに一人、そしてCPRに一人)

そんなわけで、これらの他にもこれから加わっていくのが、

<Oropharyngeal Airway (OPA)>
患者が意識を失った状態で倒れていると、舌が下に引きずり込まれて、それが気道を塞いでしまうケースがよく見られます。そういった場合に、このプラスチック製のゆるやかなカーブを描いた、Guedel modelsというチューブ状の器具(↓)を使って(J-tubeと呼ばれることもあるそうです)、舌をclearし、気道を確保することができるのです。
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まず重要なのは、正しいサイズを選ぶこと!
Guedel modelは様々な色・サイズをセットで販売しているケースが多く、ワンセット$7-20とこれまたかなりお求め安くなっています。幼児用から大人用まで色々な大きさがあるのですが、どうやって正しいものを選んだら良いのかというと、患者の顔の横にOPAを持ってきて、唇の中心部から顎のラインまでの長さにぴったりなものを選ぶのが良いそうです(↑右)。

正しいサイズを選んだ後は、左図(↓)の向きに患者の口にOPAを入れていきます。
(OPAの向きに注目して下さい: Jの字のカーブが患者の頭側を向いている状態で)
根元まで全て入ったら、180°くるりと回転させて(右回りでも左回りでも構いません)、お終い!
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私もマネキン相手に練習してみたのですが、意外と簡単でした。
サイズさえちゃんとしたものを選べれば、根元まで入ったときに、喉の奥にOPAがぶつかる感覚があるはず。そしたらくりっと回転させればいいだけなのです。
注意点は、くどいですが正しいサイズを選ぶこと。サイズが合わないものを選んでしまった場合、喉を怪我させて出血してしまう恐れもあります。最悪な場合、OPAそのものが気道を塞いでしまう危険性も。それから、Contraindicationとして上げられるのがGag reflex(喉の奥まで異物が入り、おえっとなってしまうこと)!もちろんこのOPAを使うのは意識のない患者に対してのみですが、それでも患者が意識を取り戻したりして、急にGag reflexがkick inしてしまうこともあります。その場合は、OPAが喉を傷つけかねないので、すぐに取り外し、患者が吐いても良いように横向きにしましょう。

<Nasopharyngeal Airway (NPA)>
Naso=鼻という言葉通り、OPAと形状の似たチューブを口からではなく、鼻から通します。
大きく異なるのは、こちらはプラスチックではなく、柔らかいラテックス(↓)で出来ている点。
Lubricantをつけて鼻から喉元までふにふに、と入れていきます。お値段は$20-25ほど。
場合によってはLubricantにAnesthetic gelを使うのも良いんだとか。
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やってみた感想としては、意外にこれがつるつるっとは入っていかないんですよ。く、とつっかえてしまうので、無理にぐいぐい入れようとしないで、くるくる回しながら、時には戻しながらやると比較的スムーズに入るかと思います。長さは、鼻先から耳たぶくらいまでのものを選びましょう。
面白いのが、様々な研究・本によれば、ヒトって、右の鼻の穴のほうが大きいんだそうなんです。えぇぇ、初めて聞いたけどそうなのかしら?なので、NPAを用いる場合、使うのは右の鼻の穴のほうが良いんですって!これにはびっくりしました。

Contraindiactionとしては、OPAほどではないけれどGag reflexの可能性があるのと、
顔や頭蓋骨を派手に骨折している場合は避けるように、とのことでした。なるほどね。

そんなわけで、OPAもしくはNPAを用いて気道を確保した上で、
(availableであれば)Bag Valve Maskを使って酸素をdeliverする、というのが
これからAcute Care時の選択肢に十分入ってくるのではないかと思います。
学生はもちろんですが、私達ATCも十分に練習を積まなければいけませんね!
それぞれの器具のコストはそれほどではないんですけれど、
Airway Management Trainerのマネキン(↓)が、良いお値段するのよな…。
ピンキリですが、$695-1895くらい。ううむ、これはうちの予算で買えるのだろうか。
き、教育ってお金がかかるぜ…。
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そんなわけで、この講義ではまだまだ他にも学んだことがあるのですが、
長くなってしまったので、続きは明日!
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  by supersy | 2011-07-15 23:30 | Athletic Training | Comments(0)

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