CTEについて追記。と色々。

すいません、前回のリンク更新時に、消す気がないものまで削除していました。
…というか、正確に言うと、リンクしていたトップページが無くなっていたのでホームページを辞めたのだと思ったのですが、ブログだけに絞って続けてらしたようなので、そちらに新たにリンク貼りました。いやはや、早とちり申し訳ありません。

そして、今回また新たにリンクを追加させていただきました。
この道の大先輩であるM氏こと藤橋正幸氏のブログ、cross-overです。
このブログではまささん、として度々登場していただいていたりします。
The University of Illinois at ChicagoでAssistant Athletic Trainerとして勤務し、
DN (Doctor of Naprapathy)というアメリカでも非常に珍しい学位を取得されています。
その知識の広さ、深さもさることながら、何より人としてとっても魅力のある方です。
是非一度足を運んでみてください!

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さて。
夏の間は一応パートタイムという扱いで、一日に4時間の労働さえしていればいいはずなのですが、なんだかんだ8am-6pmで働いていて、結局労働時間は10時間超、というのが現状です。
能率よく仕事をしなければと思うんですが、細かいことで色々やることが多いんですよねぇ。女子バスケの新しい選手もsummer schoolからこちらに来ていたりするから、Physicalもあるし、リハビリにもちょこちょこ来るし。でも、職場にいることが別に気にならない、というのが一番の問題かな。いや、良いことでもあるんだけど。。。

そしてこの時期には非常にMeetingが多いです。
昨日はふたつ。今日もふたつ。AcademicsとAthletics両方で。
どこも予算が思うように下りずにカツカツなので、正直言って聞きたくない話を聞かされることが多いですが、それに上司や同僚がむきー!となっているのを横目に、無いもんは無いんだからまーしょうがないじゃないスか、となだめ役になるのがここ一週間の通例になってきています(苦笑)。ぶーぶー言ってるだけの不毛な会議はキライ!せっかくやるなら建設的なものがいい。皆が工夫してそれでもなんとかやっていかなきゃいけないんだからさ。しかし改めて思いますが、AthleticsってものすごいPoliticsが面倒。私は良くも悪くもそこらへんは無頓着なところもあるので、とりあえず思いっきり自分のできる最高の仕事をしよう!と思っています。
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Danおじちゃんが旅行中なので、彼のネコと植物の面倒もここんとこ毎日見ています。
Louie(♂)とSammie(♀)の兄妹ネコですが、Louieは甘えん坊、Sammieは人見知り。
兄妹なのにサイズは全く違う。カラダが二周りくらい大きいLouieはよく膝の上にやってきて(↑左)のびてます。警戒心が強く、「シラナイヒト…あなたは誰?」となかなか近づいてきてくれなかったSammie(↑右)もついになついて、ころころニャーニャー甘えてくれるようになりました。
むむっ、ツンデレっ。

ちなみに今日からヒューストン入りです。水曜~土曜までの滞在になります。
SWATA (Southwest Athletic Trainer's Association)のConferenceで。
お昼過ぎに出発→車で5時間移動なので、女子サッカーの試合が見られないよー。わーん。
ここ5ヶ月くらいでカンファレンス3つって、何だかAcademiaっぽい(←自己満足)!(*´∀`*)
面白いことを学んだらまた更新していきます!

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そんなこんなで、バタバタしている日常に平行して、
やれるだけの勉強を夏のうちにしておきたいので、暇があればArticle等を読むようにしています。
このあいだトピックに挙げたChronic Traumatic EncephalopathyについてのArticleも4つほど読んだのですが、まだまだデータが少ないですね!NATAのFeatured Presentationで聞いた以上の最新の/細かい情報というのはこれといって見つけられませんでした。でも過去のCase ReportやCase Seriesをじっくり読んだり、Gross/Microscopic Pathological Changesについて理解を深めたりすることができました。…といっても、あーんまりプロテインがどうこうとかGenetypeがふんたらとか書かれてもわかんないんですけど(←目に見えないサイズの小さいものの話になると途端についていけなくなる私)。

●名前の変化の流れ
CTEという名前は比較的新しく、
古く(1920年代あたり)はボクシング界を中心にPunch Drunkerと称され、
“The tendency for experienced boxers to become unsteady on their feet and to move and think more slowly"をdescribeする言葉として使われていました。
つまるところ、ベテランボクサーのお酒に酔ったような、ふらふらふわふわとバランスと思考能力が低下している状態のことを指します。Punch Drunk Syndromeという呼び名もあったそうな。

パンチドランカーというのは医学的な名称というよりはむしろ一般的な通り名だったわけですが、
その後、1940年頃になって、引退したボクサー達の間で、アルツハイマー病に近いProgressive Neurodegenerationが確認され始めたことから、正式な医学用語としてDementia Pugilistica(ボクサー痴呆)という名前が徐々に使われるようになりました。あれれ、思ったより深刻ですよ、ちゃんと名前をつけましょ、というトレンドだったわけです。

その後、更に研究が進み、1970年代までにはこのConditionがどういったものなのか、という理解が深まったことから、①このボクサーにだけ起こるものではない(=アメフト、サッカー、プロレスでも確認され始めた)というuniversalityを考慮して、且つ②アルツハイマーやその他の脳障害とは似て非なるもの(=脳に対する直接的&物理的衝撃が原因で起こる、というユニークさと、実際に脳内で起こっている変化の違い)である、という認識から、現在はChronic Traumatic Encephalopathy (CTE)という名前に落ち着いたそう。昔の文献を読んでいてPunch DrunkやDementia Pugilisticaという名前を目にすることがあったら、ああ、昔の名前だな、つまるところCTEのことなんだな、と思っていただければいいと思います。


●Prevalence UNKNOWN
研究が進んでいるとはいえ、まだまだこのCTEに関しては私たちの知らないことばかり。
現時点でCTEのRandomized Neuropathologic Studyの報告数はゼロ。診断には、死後に脳を取り出してスライスして、薬品で染めてTau-Proteinを確認して…というプロセスが必要ですから、将来的にも相当難しいでしょうね。そんなわけで、具体的な患者数の数もよく分かっていないというのが現状です。

かなり限定的ではありますが、私たちが現時点で把握している限界は、
- 2008年2月~2010年10月までに死亡した現・元NFL選手の数は321
- そのうち、12人の脳がBrain Bankで検査され、そのうち全てがCTEであると確認された。
- つまり、どんなに少なくても321人中12人=3.7%のNFL選手がCTEを患っていた、
  ということが言える。
3.7%という数字は全くたいした数字ではありませんが、検視された12人中全員がCTEだった、という事実は怖い。恐らくこれは、氷山の一角なのではないでしょうか。実際のprevalenceは間違いなく研究が進めば跳ね上がるでしょうね。

●Cannot get it mixed with midlife crisis
英語にはmidlife crisisという単語があります。
(midlife=人生の半ば、crisis=危機。中年の危機?と訳したら良いのかな?)
30代後半から40代に入ってくると、人は仕事では中間管理職を任されて/窓際族に追いやられて/リストラに遭って不安定、私生活でも子供の将来の心配や、両親の介護、はたまた夫婦間の不仲・離婚など、新たなストレス要因が増えてくるオトシゴロになるのです。
このくらいの年齢に差し掛かって、人生の階段を一気に転げ落ち、うつ病を患ったり自殺する事例も少なくありません。日本でも確か自殺者って中年が一番多かったですよね?このような現象は万国共通らしく、英語ではmidlife crisisと呼ばれています。

さて。思い出して欲しいのが、CTEは進行が非常に遅いのが特徴で、人格の変化やうつ病的症状等の初期症状が出始めるのは引退してから平均して8-13年後、ということ。
例えば具体的に22歳から30歳くらいまでNFLで8年間現役の後、引退したとして、
それから8-13年後というと、38-43歳くらいで障害が出てくるわけです。
つまるところ、症状と年齢の観点から言ってmidlife crisisと混同されることが非常に多く、
周囲はもちろん、本人もまさかNFL現役時代の後遺症とは思わずに、
医者に相談しにいこうとは思いつかなかったりするのが現状、ということです。

そんなわけで、周りも本人も「どうせmidlife crisisでしょ」とか「華のあるキャリアから“普通の人生”への順応が出来てないんだ」と言ったり思ったりせずに、Medical Problemと認識して、適切なプロの助けを求めることが重要です。逆に、これからそういった患者が(Sport-relatedと思わずにmidlife crisisの被害者として)、一般精神科医にかかったりすることもあるだろうから、そういった分野の専門家がCTEの事例・可能性を十分に把握しておくことも適切な診断につながるかと思います。

結局のところ、
CTEというものがあるよ、ということを少しでも多くの人に知ってもらうこと。
そして、CTEへの理解をさらに深めるために、研究の手を止めないこと。
という2点に今は尽きるのでしょうか。

加えて、そういう危険性を理解した上でプロとしてプレーしたいのかどうか、
というところも選手がこれから考えていかなければいけない要素になると思います。
現役NFL選手はもちろん、プロを目指す大学や高校の選手たちにも。
だって一般市民はプロスポーツを単なる「ビールの最高のつまみになるエンターテイメント」ぐらいにしか思っていないかも知れないし、経営側にしてみれば選手はMoney Making Toolかも知れない。選手が怪我等で現役を続けられなくなったら代わりはいくらでもいるし、ましてや引退後の彼らの人生など興味はあまり無いでしょう。しかし、選手にとっては、他でもない彼ら自身の人生。引退してからも、まだまだ人生半ば。それから20年30年40年と生きていこうと思ったら、ちゃんと前もってこういう危険性があるということを“知る権利”はあるし、私たちSports Medicine Staffには“知らせる義務”があるんじゃないかと思いますね。




結局、今回色々と読んだ文献の中で、CTEに関して一番重要だと思った一文はこれかな。
Take Home Message、ということで。
“An increasing realization is that brain injury is not only an all-or-nothing phenomenon (eg, concussion) but may also result from accumulated subconcussive impacts”

つまり、一発がーんと頭に衝撃がかかって、それが白か黒か、ではなくて、ちょっとの灰色が少しずつ少しずつ混ざっていって、最終的に黒になることもある、みたいなイメージ…と言ったら良いのでしょうか。

おまけになりますが。
以前にも書いたように、脳震盪は頭を打つこと(hitting the head)によって起こるのではありません。脳が突発的に動いて(sudden movement of the brain)起こるのです。分かりやすい例はロックンロール等でよく見られる、Head Banging。これは頭をガンガン打っているわけじゃありませんが、脳はぐるんぐるん揺れています。これでも十分脳に負担になりかねない、ということなのでご注意!あっ、歌舞伎のぐるぐるも良くないのかな?
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  by supersy | 2011-07-13 20:30 | Athletic Training | Comments(0)

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