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NATA Convention in New Orleans その1。

毎年開催されるNATAのコンベンションのためにNew Orleansに来ています!
昨日がスケジュール上は初日でしたが、ミーティング等がほとんどで、講義も特になかったため、
現地入りした後に知り合いと一緒にRiverwalk Marketで遅いお昼ご飯を食べ、
そのあとはBourbon Street(↓)で皆と飲んでわいわい過ごしました。
Bourbon StreetはFrench Quarterの一角にある有名な飲み屋街。
レストランやらバーやらクラブやらストリップやらが連立しています。
歌舞伎町みたいなところといえば分かりやすいかな?
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さて、今年は就職活動もない!プレッシャーもない!とにかくコンベンションを満喫しよう!
ということで、思い切り講義に行くことに。二日目の今日、最初に向かったのは“Emerging Position Statements”というレクチャー。今までならこういうタイプの講義に行こうとすら考えなかったのでしょうけれど、教育者の立場になってこういったトピックに俄然興味が出てきたので足を運んでみました。これが意外と、非常に面白かった!

断っておくと、Position Statementを書き換えるのは3年がかりのプロセス。何人ものオトナが話し合い、幾つもの会議を重ね審議を通して、実際に形になり最終的にpublishされるわけです。今回コンベンションでshareされた内容は決定稿ではなく、“今どういったことが話し合われているか” “どういった要素を新たに取り入れよう(または削ろう)としているか”ということ。これがofficialではない、という前提でお読みください。

最初のスピーカーはDr. Katie Walsh、議題はLightning(落雷)について。彼女が冒頭で言った“There has to be a chain of command…the person (who commands) must be recognized by others, and must have the unchallengeable authority”というフレーズが耳に残りましたが…実際このトピックに関してはこれが一番難しいのかも知れない。高校で仕事してたときに、本当にカミナリの怖さをコーチ達に伝えるのに苦労したなぁ…なんて色々思い出しました。
さて。彼女の話の中から面白いと思った点を幾つか紹介します。

①If a thunder is heard or a lightning is seen, stop activities immediately and leave. (NO MORE FLASH-TO-BANG THEORY!!!!)
カミナリが見えたり聞こえたりしたら、とにかくすぐに屋外での練習を辞めて避難すること。今までは秒数を数えて距離を測り、一定の距離以内であれば避難を、というのが主流でしたが、次に出るPosition Statementではそれはもう無くなっているそうです。なななななんと!これを聞いたとき、常識が覆る思いでした!もう見える(聞こえる)距離になるのなら十分に近い、だそうです。うぉー、生徒たちに教え込んできたことがー!
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②The amount of time that takes to all the personals to evacuate MUST BE included in EAP.
避難が必要になった場合、どこに避難するのか、という場所をidentifyするのはもちろん、どれくらいの時間がかかるのか、ということも明記しておかなければいけない。これは、Large venue planningも含みます。例えば、60,000人が集まるようなフットボールスタジアムで、カミナリを伴う嵐がやってきたら?(↑)もしそんなことになるのが分かっていたら本来は事前に試合を中止するなり延期するなりしなければいけないものだが、と前置きした上で、Dr. Walsh氏は、“これだけの人数がスタジアムから全て退去するのに、コンピューターのシュミレーションによると約20分かかる。でもこれはあくまで退去する時間なのであって、必ずしも避難を完了した、というわけではない。これだけの施設を擁する大学やプロ等は、それなりの備えと訓練が必要”と強調していました。

③You MUST wait for 30 minutes till resuming all the activities after the last thunder/lightning is heard/seen.
これは何も真新しいことはないのですが、改めてaddressされるべきは、ちゃんとこの30分を守る、ということ。アメリカでは毎年落雷による死者が出るのですが(特に私たちのconcernは高校の部活動中のそれ)、その多くは、嵐の去り際、つまり、30分待たずに外に出て練習を再開してしまうことから起こるそうです。しっかり30分待ち、嵐が去ったのを確認してからresumeすべし、とのことでした。

次のトピックはFluid Replacement
このプレゼンをしてくれたDr. McDermott氏のbiggest take-home messageは、“Every athlete should know their sweat rate – it can vary from 1-4 L•h¯¹”ということでした。Sweat rate(発汗率)というのは一時間あたりに汗として体から排出される水分の体積のこと。これを量るには、『30分間水分補給無しで運動をさせ、運動前と後の体重を比べて、それを2倍する』という実にシンプルな計算方法で良いのだそう。そしてそれが一時間あたり1リットルから4リットルまで個人差があるというのだから驚き!一時間に4リットルの汗をかく人が、1リットルの人と同じ分の水分補給をしていたんでは、明らかにパフォーマンスにも影響が出るわけで。ATとしてこれを知っておくべきはもちろんですが、アスリート本人も「自分は汗をかきやすい = 意識して水分を他人より特に多めに取らないといけない」という自覚を持たせる必要があるわけです。
その他に面白かった点は…

①カフェインもアルコールもOK!?
特別なケースを除いて、水分補給に最も適切といわれているのはplain water (ただの水)、というのはATCの皆さんならご存知かと思いますが、今回のプレゼンでは彼は「カフェインもアルコールも悪というわけではない」とこれまたびっくりするstatementを述べていました。
“Caffeine in moderation should not be discouraged.” カフェインは利尿作用のみでなく、心拍数を上げたりする効果もあるため、そこらへんが運動に与える影響はなんとも言えないが、と前置きした上で、水分補給の観点のみから言えば、ほどほど(in moderation)のカフェイン摂取は利尿作用がそれほどあるわけではない = Rehydrationは実現可能。さらには、アルコール含有量が2%以下の飲み物ならば、これまたRehydration可能、という研究結果も出ているとのこと。ビールに含まれるアルコールが一般に4-5%くらいですから、「(私たちが普段飲むようなお酒の場合)かなり水で薄めるなり何なりしないといけないわけだけれども…」ではありますが(4%を超えると利尿作用が大きく、水分補給の飲み物としては不適切、だそう)。

まー、caffeine in moderationのmoderationの定義って何よ?
…と個人的には疑問が残ったんですけどね。数字が欲しいですよね。

②IVよりも、ちゃんと口から水分補給をすべし!
水分補給に一番手っ取り早いのはIV(いわゆる点滴)、と思われがちですが、
やはりIVと、口から水分を摂取するのとでは効果が違うそうです。もちろん、望ましいのはより自然なOral rehydrationのほう。何度も強調されていたのは、Oral rehydration should be attempted first→もしcrampやvomittingのせいでIVが必要不可欠な場合、IVをして症状が収まった後に、facilitate recovery with oral rehydration、だそうです。

最後のトピックはSudden Death by Dr. Doug Casa。
これについては特に目新しいことはあまりなかったですが、
彼女が「Heat strokeの患者をtreatする場合、とにかくCool down first, then transport」という順番を強調していたのが一番印象的でした。命に関わる怪我や病気が発生した場合、私たちは病院に一刻も早く送ることを考えがちですが、もちろん適切な処置をした上で、という前提があります。
Heat Stroke等の深刻なHeat-related conditionの場合、最も重要なのは一刻も早く患者の体温を下げること、それから水分補給を…となるわけですが、ここでもし病院に搬送することを優先してしまった場合、
  ・ESMに電話…5分
  ・救急車が現場につくまで…10分
  ・その場で救急隊員が患者を評価する…10分
  ・病院まで患者を搬送…10分
  ・病院に到着してから医者が患者を診て、coolingの判断を下すまで…10分
実際にcoolingを始められるまで、約45分の時間がかかるだろう、という推定でした。
45分患者の体温が下がっていないというのは確かに大問題。Heat strokeの患者が出た場合の私たちの最大の目標は「30分以内に体温を104℉以下に下げる」ということですから、transportを優先する判断を下した時点でこのGoalは自動的に達成されないことになります。Aggressive coolingを10分以内に始めればかなり生存率は良いそうなので、電話して救急車を待つのが私たちの義務、と思い込まず、積極的に動けるかどうかでプロとしての真価が問われそうですね。
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あと、Rectal temperatureは本当にCore tempを計る上でGold Standardだそうで…。
Rectal temp = 直腸温、つまり肛門から計る体温のこと。えぇ、体温計を突っ込んで(↑)。
こういうのって、検死とかで使うんじゃないの?習ったことはあるけど実戦したことは全く無い!
…という方が多いんじゃないかと思います。私ももれなくそういうニンゲンの一人です。
これがつい先日CAATEが発表したCompetenciesに含まれている、とご存知の方がどれだけいるかわかりませんが、実はこれ、新しく教育プログラムに組み込まれなければいけない事項に指定されているのですよ。つまり、これからのATCにはRectal tempを取る技術が求められるということ。研究上非常に成果が出ているのはわかる。私たちもそれに対してreactしなければいけないのも分かる。でも正直これは教えにくいし実践しにくい!まさか生徒同士で練習させるわけにもいかないし…。どう実現していけばいいのか…上司と今話し合っています。トレーニング器具(練習用の人形もあるらしい…けど高価)も色々と購入しなければいけなくなるなぁ。

…まぁそんなわけで、ひとつの講義でがっつり勉強になりました!これらが実際にPosition Statementにどう組み込まれていくかは、皆さん自身の目で確認してください。
そのあとAC Joint Mechanicsのレクチャーにも行って、これについても色々書きたいのだけれど、長くなってしまったので今日はこのへんで!続きはまた書きまーす。

  by supersy | 2011-06-20 23:58 | Athletic Training

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