花屋に学ぶ職人魂。

所用があって花屋さんに行った。
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甘い香りが漂い、色とりどりの花が並んでいる。
あれもきれいだしこれもきれい、と目移りしてしまう。でも、私自身それほど花に詳しくないし、何よりセンスもない。お伺いしますー、と出てきたお店の人に潔くお願いする。
「ええっと、花束を作っていただきたいんですけど…祖母の80歳の誕生日のお祝い用です。特にこの色やこの花、というものはありませんが、派手じゃない感じにまとめて頂ければ。予算は8000円くらいを考えています」
と、簡潔にイメージを伝えると、花屋のおにーさんは、なるほどー、今の季節ですとこういう花がありますねー、こういうのも今綺麗ですよーと、ぐるっと一周して説明してくれる。ふんふんと聞く私。ベースとなる花を決めて、そのあとはおにーさんがちゃちゃちゃっと慣れた手つきで花を選んでいくのを見ていた。実に手際が良いんである。ふと手を止めて、尋ねられる。
「大き目の花を入れても大丈夫ですか?(ユリを指差して)」
「あ、はい!お願いします。ユリは良いと思います(さゆりだし…)」
あまりに、さささ、と花を加えていくので、目に入った花をランダムに選んでるのかしら、
ちゃんと考えてるのかな?と一瞬不安に思ったが、杞憂だった。
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(写真はイメージです)
「こんな感じでいかがでしょう?ここがグラデーションになるようにまとめて、
アクセントにこういうものも入れてみました。こちらですと、7700円になります」
おおっ、さすがプロの仕事。値段もばっちり決めてくる。
私が当初想像していたよりずっともっと綺麗なものが出来上がった。
ありがとうございます、これでお願いします、と伝えて、
花屋さんが余分な枝や葉を取り除き、花束にしてくれるのを見て待っていた。

横のカウンターの会話がちょっと耳に入ってくる。
隣のおばさんはどうやら私と対称的なお客さんのようである。
あの花を入れて、これは入れないで、茎の長さはこれくらい、包装紙はコレしかないの?
と、細かく指示を出している。
花に詳しい方なのかな。花屋さんは嫌な顔一つせず、笑顔でこれまた手際よく対応している。

ちょっと私たちの仕事と重なった。
色々な患者さんや選手がいる。私にはコレが効くの、コレをして!と指定してくる人もいれば、症状を詳しく話して、あとは完全にこっちに任せてくれる人も。どんな人でも気持ちよく対応して、プロとして適切な結果を出す。それは、症状の改善だったり、綺麗な花束を作ることだったり色々だけど、最終的には患者さん/お客さんに満足してもらうということが大前提。任せてもらったらもらったで、相手が期待していた以上の物をきちんとdeliverする。どの仕事も似たようなところがあるんだな。
むむ、こんなところで見つけた、皆持ってるじゃないか、職人魂!
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もうひとつ、花屋さんから学んだこと。
花屋さんって、こんな風に同じ種類の花がひとつの容器にどわっと入っていて、それが所狭しと並んでいる(↑)。お花たちもぎゅうぎゅう詰めで大変である。
そんなだから、花を一本取るときに、周りとひっかかってしまうことがよくある。
おにーさんが取ろうと持った花がくっとひっかかったので、あっ、そのまま引っ張ったらぷち、と切れちゃう、と反射的に思ったが、さすがにこれも手馴れたもの。花屋のおにーさんは花をくるっと上下に回転させて、するりと綺麗に出して見せた。枝にも葉っぱにも損傷なし。
おぉ、またも、さすがプロの仕事!
たったそれだけの一秒もかからないような動作だったが、私は甚く感動してしまった。

これが何でATにつながるのか、と思う人もいるかもしれない。
でもこれこそが、今私が読んでいる呼吸法の本に書かれている、
“If it doesn't work, don't force it.”
という一文の真髄のような気がしたのだ。
この一文は結構強烈に自分の中に残っていて、
ちょうど何度も反芻していた最中だった。
なので、おぉぉ、見つけた!ここにもあったか!という感じ。

花が取りたい、という意図にたいして、ひっかかる、という抵抗がかかる。
その抵抗に対して、真正面からぐいぐい勝負したんでは、花に傷がついてしまったり、
枝が折れてしまったりする。だから、上手くいかないこと(ぐいぐい引っ張る)ということをやめて、
別のやり方(上下をくるりと回転させる)でもって上手いこと出したわけなんである。
それを、いとも自然にやってのけた花屋さん。この精神が染み付いてるように感じた。

それなりに経験を積んでくると自分の好みに走りすぎてしまう時期というのがあって、
自分のやりたいことを、来た患者全てにやってしまったりする。治療の結果が思うように出なくても、抵抗を感じても、だってこれできっとなんとかなるはずだとforceしてしまうのだ。
しかしやっぱりそれはセラピストのエゴなんであって、
上手く行かないなら路線変更しなきゃいけない。
だからこそ引き出しの多さが重要にもなってくるのだが…またそれは別の話。

患者さんからの言葉や態度での抵抗、徒手療法をしていて自らの手で感じるかすかな身体からの抵抗、そういうものをきちんと感じて、あ、上手くいってない、と思ったら、“don't force it.”
あれ、これ上手くいってないんだな、と認めて、怖がらず路線変更する。
これが真のプロだと思うんだな。
だから、一本だけの技術で上まで登りつめる人はすごいと思うけど、
私は選択肢を多く持てるほうのセラピストに、どちらかというとなりたいと思っている。
うまくいかないときに、いくつも代わりの道があるもの。

Don't force itかー、実にうまいこと言うなぁ。と、また色々なことを考えていたら、
おにーさんが丁寧に花束を紙袋に入れて、そこまでお持ちします、と店の前まで出て渡してくれた。
ありがとうございました、と受け取って歩き出す。
その後、このおにーさんが作ってくれた花束は無事に祖母の手に渡ったわけであるが、綺麗ねぇ、と家族親類、祖母にも好評で、やっぱりプロの仕事はあっぱれである、と思ったのだった。
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  by supersy | 2011-06-05 23:50 | Athletic Training | Comments(0)

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