Spine Boardingを考える。

Athletic Trainerとしてpracticeする上で、スポーツ関係の怪我の評価と治療だけしていればいいってもんじゃありません。Gen Med(風邪や病気等の一般医療)の知識も無いといけませんし、Emergency Care(救急医療)の技術も必要です。ATって、常にスポーツの現場にいる分、ありとあらゆるものに出くわす可能性がありますから、オールラウンドじゃないといけないんです。

で。
例えば、選手が練習中に喘息の発作を起こしたら?熱中症で倒れたら?
重度の脳震盪で選手が意識を完全に失ったら?
このとき、どういう対応をするかでプロの真価が問われますし、
もし処置を間違えば訴えられたり、最悪の場合アスリートの命に関わることにもなります。
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落雷、喘息、糖尿病に脳震盪、脊髄損傷、heat illnessに低体温症など、
(日本だとカミナリが鳴っていても普通に屋外のスポーツは練習してますが、
アメリカでは厳しい制限があります。毎年何人かの高校生が落雷で亡くなったりしてますからね)
命に関わる可能性が大いにあるものに関して、我らの母体であるNATAは、それぞれのケースに“こうするべき”と対処の指針を示しています。それらは全てPosition Statementと呼ばれ、プロである我々ATCの行動はこれに基づいたものであるという責任と義務があります。
(NATAの推進する全Position Statementのリンクはこちらから)

うちの大学のATEPでは、in-serviceという
現在プログラムに所属する学生&スタッフを対象とした強化研修を学期に2回ほど行っていますが、つい先日の金曜日にも、“Emergency Care Workshop”を開催しました。
今回の内容はC-spineのPosition Statementを中心とした、
   1) CPR / AED
   2) Face Mask Removal
   3) Spine Boarding
という3部構成で実施されました。
学生たちはそれぞれを一時間みっちり実習、合計3時間のworkshopです。
それぞれのステーションの指導役を担当するのはSeniorの学生たちですが、
私はSpine Boardingのステーションに常駐して、怪我人&ご意見番役を勤めることになりました。
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さて、スパインボードを日本語でどう呼ぶのか
ちょっと調べても分からなかったのでこのまま英語で行きますが、
   1. 脳・脊髄損傷の可能性があるとき、引いては
   2. 患者の意識がなかった場合
は自動的に脊髄が関わっている可能性があるとして、患者をSpine boardに固定します。
このとき、いかに脊髄に余計な負担をかけず、手早く患者を移動させるか、というところが重要。

Position Statementによれば、
- 患者がSupine(仰向け)の場合はlift-and-slide techniqueが望ましい
- Prone(うつ伏せ)の場合はlog-roll methodを用いる。

というのが今のところのconsensusみたいです。

Supine
lift-and-slide techniqueには2つのオプションがあり、
 ①. 6-plus-person lift…合計8人(頚椎固定が1人、liftが6人、ボード担当が1人)
 ②. Straddle lift-and-slide…合計5人(頚椎固定が1人、liftが3人、ボードが1人)
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6-plus-person lift(↑左)は、肩・腰・膝の両側に人が座り、それぞれの部位をよいしょで持ち上げて、その間にボードを下からするりと滑り込ませるやり方。これはコマンドさえしっかりしていればかなり安定感が在るという印象を怪我人役を勤めて受けました。問題は、必要な人数が8人と多いので、高校等のsettingでは現実的でないかも知れないという点。そして、持ち上げる際に「1, 2, 3」とコマンダーが声をかけるのですが、絶対に2.5くらいでフライングして上げちゃう子がいるんですよね。人数が多い分、タイミングがばらばらにもなりやすい。コミュニケーションが難しいかな、というのはありました。

今回初めて耳にしたStraddle method(↑右)も練習してみたのですが(straddle = またがるという意味どおり、肩・腰・膝にそれぞれひとりずつ、患者をまたいで、よいしょで上に持ち上げます)、これは当然ひとりひとりのlifterにかかる負担が大きいという欠点があります。ボードのスライドも難しく、かなり皆が大またになって立っていないと、足にガンガンぶつかってスムーズにいかないこともありました。手間取っていると、その分lifterへの負担も増え、掴んでいる洋服がずれてくることもあります。あらかじめ服をぎゅっと引っ張ってかなりしっかりgripしておかないと、もしくは患者がかなり大きくて重たい場合(200kg近いラインマンとか)、冗談抜きで患者を落とす可能性があると思いました。私の場合腰痛もあるので(ひどいときは足まで痛みが走って力が抜けて倒れることもある)、lift中に痛みがこないことを祈るばかり…というところかな。あとは、lifter同士の顔とおしりがものすごく近くなるので、女の子はイヤそうにしていました(苦笑)。


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Prone
 ①. Log-roll pull…lifter全員が患者の片側に回る(写真上↑)。
   自分より遠いほうの腕&足に手を伸ばし、手前に引く要領で患者をぐるっと回転させる。
   ボード担当者はボードをlifterとathleteの間に滑り込ませる。
 ②. Log-roll push…pullと逆に、自分に近いほうの腕や足を掴み、
   それをaway from yourselfにぐるりと持ち上げる要領で回転させる。
   ボード担当者は逆側に控え、選手を受け取るように斜めに倒して待つ。
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練習した感想では、Log-rollはpullもpushもどちらもかなり痛い(腕や背中がボードの縁に乗っかる)し、一度で確実に乗ることが少なく、微調整をしなければいけない分、脊髄に動きがどうしても出てしまうなぁとは思いました。Pullの問題点はSpine boardをlifterとathleteの間に入れなければいけないというところ。どうしても腕にぶつかって動きの原因になってしまったりという危険点が今までに指摘されています。でもPushも患者を押し離すように回す分、患者と自分の距離が開き、カラダが不安定になり固定が難しい。どっちもどっちかなー…。
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Full-body vacuum splint(↑)もかなり有効で、しかもcomfortableだ、という記述があり、
上司と購入を相談しています(見た目は相当マヌケですが)。$500くらいするみたい。うーむ。
今回3時間、Spine Boardに乗せられたり固定されたりして思ったのは、
Spine Boardというのは腰痛持ちにかなり不親切なガチガチな造りである、ということ(苦笑)。
実習を終えてしばらくは、腰が痛くてまっすぐ歩けませんでした。
でも相当面白かったー、勉強になったー。3時間、あっという間でした。
学生たちも同じように思ってくれたみたい。大成功です。わいわい。

ちなみにPosition Statementを読んだことが無い/興味のある方はこちらから。
“National Athletic Trainers' Association Position Statement: Acute Management of the Cervical Spine-Injured Athlete”というアーティクルで、最新版は2009年のもの。昔御世話になったDr. Horodyskiも著者の一人です。ATCなら必ず一度は読んでおきたい文献、長いですが流石によくまとめられています。この夏あたりにまた新しいnew editionが出るとも聞きました。研究の分野は一日一日確実に進んでいますね。こういった非常に重要なトピック(Position Statementならば尚更)に関しては、最新の知識を常に入れておく、というのは現場のクリニシャンたちの義務でもあると思います!

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おまけ。

ところで話がものすごく変わりますが、
mixiで、デート中の男女の食事のペースについてのコラムがありましたが、
まずこれがニュースになることをびっくりし、それから、日本人男性の多くが、
“納得できない、合わせられない”と拒絶思考を抱いていることに再度びっくりしました。
まぁたしかに日本は昔から亭主関白。一家で夕ご飯を食べるときも、一家の大黒柱のお父さんが箸を付けるまでみんなが待ち、食事後もお父さんが一番風呂…という習慣の国ですもんね。男尊女卑が当たり前で、レディーファーストというコンセプトが存在しなかったわけですから、こういうことに男性はものすごく抵抗を感じるのかも知れませんね。
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でもちょっと感じたことを書いておくと、
欧米なんかではデート中に食事のペースを合わせるのは最低限のマナーです。
別に、ニュースに書いてあるように「相手の食べ具合を見て一口、また確認してもう一口」とやるのでも、「一口残して待っておく」(つーかこれは合わせないより嫌味でイヤだ)わけでもなくて、食事中、会話を楽しみながら自然に合わせていくわけで、そんなに気を遣うようなことでもない、時間を共有しているんだから当たり前、という認識なんじゃないでしょうかね…。

私は女性が男性に対して“私のために待ちなさい!”とも思うのもおかしな話だと思いますし、それがそんなに男性側の神経をすり減らす作業ならしてもらわなくて構いませんし、ましてや“友人として”のお食事ならもう食べたいように食べてくださいな、とは思いますが、お互いが相手に“ああしろこうしろ”“俺は私はこんなことはしたくない”と一方的なやり取りをするんじゃなくて、お互いがちょっとだけ相手のことを思い遣れてれば素敵ですよね。楽しい食事にしたいなって、だから私はこうしよう、って、ふたりともが思っていれば。
大体食事ってかき込むものでもありませんから(特にデート時なんて)、
ゆっくり食べるのは男性にとっても良いことだと思いますよ。
あまりに牛のように極端に食事のペースが遅い女性もどうかとは思いますけれども。
(顎弱いんすかね、もそもそゆっくり食べる人って。masseterかな)
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まぁでも、相手がさっさと食べ終わって手持ち無沙汰そうに待たれて、自分だけがまだ食事をしている…というシチュエーションはかなり居心地悪いでしょう(苦笑)。アメリカなら"to-go boxください(お持ち帰りをする容器)"と言えますが、日本だと、食べたくても“もう良いです”と泣く泣く残して席を立つしかないですからね。
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  by supersy | 2011-04-09 23:59 | Athletic Training | Comments(0)

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