カラダの歪み、The Common Compensatory Pattern。

以前、肝臓が原因で横隔膜が左右非対称になり、体の歪みに繋がるのでは云々、
という議論(3/10付)がありましたが、これについて実は色々とあれからも調べていました。
結局、横隔膜と肝臓が互いに及ぼす関係については何も見つからなかったので、
個人的には直接的因果関係は非常に薄いのではないかと思っています。

しかーし。Mr. Master氏やhiroさんが仰っていた、右の骨盤の前傾が起こりやすい、
という件に関して、ちょっと面白いものを見つけたので紹介したいと思います。
結局私が行き着いたのはZink氏のCommon Compensatory Pattern(CCP)というセオリー。
結構有名なものなのでご存知の方も多いかも知れませんね。
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b0112009_21303354.gifまずこのセオリーの前提にあるのが、
人間のカラダの中には“Transitional Zones"と
呼ばれる箇所が四つ(↑)あり、それはSpinal columnの機能が
変化する箇所と同一である、ということ。
例えば頭蓋骨とアトラス(第一頚椎)がarticulateする部分、OA。
脳を包み守る頭蓋骨と、その重たい頭を支えつつ
かなりの可動域を持つ頚部。機能的には全く異なる二者が
関節として組み合わさっています。
Tissueのorientationが変わり、restrictionが見られるのは
このtransitional zoneの何れか、または複数であることが多い。
そうすると、周りのstructureも影響され弊害が出てしまう。

さて、それを踏まえて。
Zink氏は研究の結果、Fascial patternsには大きく分けて3種類あると結論付けています。
1. Ideal…Equal fascial glide in the side to side, longitudinal directions
  RotationもSidebendingもなく、均一な状態。
  文字通り理想的ではあるが、ほとんど存在しない、と言って良いほどレア。
2. Compensated…(Alternating Pattern=Counterbalanced rotation)下図左
  ひとつのTransitional zoneでrotational biasが起こっていて、
  それを補うように次のzoneでは逆のrotationが起こっている。結果、釣合っている。
3. Uncompensated…(Non-alternating Pattern)下図右
  Rotationがどちらかに偏っており、全身のバランスが崩れている状態。
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Compensatedはidealからは逸脱しているものの、身体の均衡は全体では保たれており、まだ“Healthy”と呼べるそうなのですが、Uncompensatedは身体の歪みが完全に崩れていて“Less Healthy”、つまり何らかの形でその人の健康に害を及ぼす可能性が高くなる、ということのようです。
更に彼の統計によれば、Compensatedの80%がL/R/L/Rパターン、
残りの20%がR/L/R/Lパターンなのだとか。前者が圧倒的に多いですね!
このL/R/L/Rパターン(つまり、OAがLeft、CTがRight、TLがLeft、LSがRightにそれぞれrotate)
を、Zink氏はCommon Compensatory Pattern (CCP)と名づけました。

このCCP、原因と考えられる要素は幾つかあるのですが、
Left hemispheric dominance(左脳優位性)により、
手も足も右利きの人が多いからではないか、というgeneticな説も根強いですが、他にも、
  1. Developmental fascial bias
  2. Birth trauma
  3. Asymmetrtic leg growth
等の要素もこの文献では挙げられています。
幼児期の、胎内での姿勢や生まれてくるときの首の特有の動きが、
残りの人生に丸々影響を与えるんではないか、という説はちょっと面白かったです。
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赤ちゃんの時って、お腹の中で大きくなるにつれて胎内も狭くなってくるので、
一番コンパクトに収まるには、頭を左に回転させて手足を丸めるのがいいんだそう。
そのまま、その癖というか骨格というかpattern of rotationというのは大人になっても
抜けずに残るんじゃないか、という話でした。

あとですねぇ、面白かったのが、Postural Asymmetriesが起こりやすいのは全身に3箇所あって…
ってとこなんですが、その3箇所というのが、
  ●Lumbosacral Junction
  ●Lower Extremities (leg length, foot posture & arches)
そして残るは
  ●Craniocervical Mandibular Junction
Mandibularっていうのがちょっと疑問になりませんか?顎が姿勢に影響するって。
これ、歯医者さんが提唱しだして徐々にセオリーとして確立されてきているらしいのですが、
私は下の図を見てなるほどと納得。度肝を抜かれました。この簡略図はすごい!
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この図を見て分かるように、もともとアタマの重心というのは、背骨を中心に考えて、ちょっとanteriorになっているんです。ということは、頭を持ち上げた状態を維持するには、筋肉やfasciaを介して前後のテンションを均等に保つ必要があるということになります。見方を少し変えると、つまり、この中のものの、どれかがちょっとずれたところにいると、全てに影響を与えることがある、ということです。Mandibularもまさにその一部。咬み合せが悪いと- 例えばoverbite(↓左)だったりすると重心が前方にずれ、increased cervical lordosis、forward head postureにつながりますし、underbite(↓右)だと逆に頚骨の自然なカーブが失われ、まっすぐになってしまって頭が少し後方にずれることになります。
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どちらにしても、正しい咬み合せをしていない→頭のバランスが狂う→身体が他の所でバランスを取ろうとする→spinal alignment、つまり全身に支障をきたすというわけです。

でもねぇ、前から常々思っていたんですけど、こういう風にして、
ちょっとばかしカラダのあっちやこっちが歪んじゃうのも自然なadjustの仕方じゃないですか。
それが痛みとか日常生活でやりたいことが思うようにできないとか、そういう形で目に見えて
disadvantageが出てしまっていたらもちろん歪みやその原因から治療しないといけないけれど、
歪んでるのがバランス良い、っていうんだったらそれは放っておくべきだと思うんですよね。
歪んでるのを片っ端から直したって、それが本人に一番いいとは限らない。例えばL/R/L/R
patternの人が、腰の歪みが気になるからと言って整体に行って、腰だけ直してもらっちゃったら?
L/R/L/Neutral、になってしまって、Compensatory patternだったのが
Uncompensatory patternになってしまうでしょ。
足首のテープするときだって、以前必ず毎回Talus Neutralにしてからテープするという同僚が
いたんですけど、それが本人にとってbiomechanical disadvantageかも知れないし…。
何でもneutralにすればいいかって言うと、そうでもないと思うんですよね。
別にやるのが悪いと言ってるわけではありません。実際良いことかもしれません。
でも個々の違いを見極めずに、“毎回必ず”というのは間違ってると思うなぁ。
ケースバイケースです。怪我をしない身体作りにcookbookはありません。
ひとりひとり真摯に向き合って、その都度対応していくのがプロですよね。

ちなみに私が今回参考にした文献はこちらこちら
興味のある方はどうぞ。前者はosteopathy色が強いです。
でも今回、これらを読んでてちょっと何かが開けた気がする…。
ぱぁぁっと見えなかったものが見えるようになる感覚が楽しくて、勉強やめられません。

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今日は林檎のケーキを作ってみました。
リンゴしっかり2個分、中にもいっぱい入っているので焼きあがりはしっとり。
しゃきしゃきの食感も残しつつ、生地はふわふわとろとろです。
今度は林檎を飾り用と生地に混ぜる用に分けて、中に入れる林檎を軽く煮てみようかなぁ。
ヨーグルトちょっと入れても美味しいかも。このケーキは甚く相方に好評でした。
さて、ケーキもちょっと飽きてきたので、次は何を作ろうかなぁ。

これ、夢中になって書いていたら夜中の2時過ぎてしまいました。
もう寝ます…おやすみなさい。
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  by supersy | 2010-05-05 23:59 | Athletic Training | Comments(8)

Commented by かや at 2010-05-06 20:09 x
オーランドのディズニー  すごいね!

身体のバランス云々はホントに奥が深いし,難しい!!
いろんな意味で生体って良くでき過ぎてると思うよ。
Commented by まさ at 2010-05-07 10:50 x
久しぶりです。元気ですか?
neutral positionについては僕も同じような事を思います。
いったいNPって何って。基準を作る為に作ったようなものだと思うし、人によってちがうと思うんですよね。

紹介されてた文献ですが、何て言う本ですか?教えてもらえますか?
Commented by さゆり at 2010-05-07 14:28 x
>賀屋先生
ははは、カリフォルニアのほうのディズニーは皆で一緒に行きましたよね!もう何年前でしょう?いつかオーランドのほうにも遊びに来るといいですよー、とにかくどでかいです!Disney Worldだけで、一週間は遊べます。
生体って、私たち自身がまだまだ理解できないことがたくさんあるのに、自分自身の中に仕組みとして全てが完璧に組み合わさって機能しているところに神秘を感じますね。この感動を伝えるために、将来本当に教科書を書きたいと考え始めています。難しいかなぁ…。

>まささん
こちらのまささんは、総帥のまささんでしょうか?
ご無沙汰しています!コメントありがとうございます、嬉しいです。文献については、新しい記事として、“おまけ”の中にまとめてみました。是非ご一読下さい。
Commented by まさ at 2010-05-08 12:59 x
シカゴのまさです。どうも。おまけのほう読みました!ありがとう!あの本は知らなかったので機会があるときに読みたいと思います。読みたい本がありすぎて追いつきません。
Commented by さゆり at 2010-05-08 21:56 x
いえいえ、とんでもありません。
ハズレもたまにありますが、アタリの本に出会えるとわくわくしますよね。まだまだそんな本が隠れてると思うと、探し出さなきゃ!という気になります。
Commented by Toyo at 2015-04-15 09:24 x
はじめまして。CCPについて興味深い記事をアップしていただきありがとうございます。

ところでZink氏の書籍などは存在するのでしょうか?興味があるので是非読んでみたいと思いまして。

また、胎児の姿勢とCCPの影響についての文献ソースも、もしご存知でしたら教えていただけないでしょうか。大変お手数ですが是非ご教授いただけますと幸いです。
Commented by さゆり at 2015-04-15 10:52 x
Toyo様、コメントありがとうございます。この記事を書いたのはもう5年も前なので、当時何を読んで勉強していたかはちょっと定かではありません。すみません。この次に書いた「おまけ」記事にあるErik Dalton's Advanced Myoskeletal TechniquesにはZink氏のCCPもかなりページを取って説明されていますし、胎児の話も何度も出てきますよ。論文ではありませんがオススメです。
Commented by Toyo at 2015-04-15 11:13 x
さゆりさん、早速のコメントありがとうございます。私はオーストラリアでオステオパシーを学んでいるのですがクリニックでよくCCPに出くわすことも多く、その原因は何かをリサーチしてみようと思いったった次第です。Erik Dalton氏のHP、さっそく覗いてみますねお忙しいところありがとうございます。

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