肋骨について考察してみる、その2。

さて、昨日の続きです。
肋骨がレベル別に異なる角度を持ち、
その角度によって違う動きが生まれてくる、という話まではしましたね。
で。肋骨で起きるMovementは、以下の3つに分類できます。
1. Pump Handle Action
2. Backet Handle Action
3. Caliper Action

ではまず、1のPump Handle Actionから。
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b0112009_0573564.jpgPump handleというその名の通り、ポンプ(←)を漕ぐときのような上下運動です。Movementが起こるのはSaggital planeで、言ってしまえば単純なup/down。この要因はというと、vertebraeがarticulateする箇所の角度の関係なんです。RibsはVertebraeにがっつり固定されていて、ここがstableなnon-moving足場だという前提で想像してみて頂きたいのですが、Upper Rib(T1-6)ではrotationの軸がよりlateralに向いているため、動きが顕著に出るのはよりanterior、ということになります(上図中央)。
複数の肋骨が一緒になって胸骨に働けば、胸骨を押し上げるチカラになるんです(上図右)。

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お次は、Bucket Handle Action。これは一番分かりやすいかも知れません。
バケツの取っ手がぱたぱた動くように、ribの両端がそれぞれvertebraeとsternumで固定されつつbodyの部分が上下する、という感じです。ペンギンが羽でぱたぱたやっているようなイメージ?っていうんでしょうか。Pump handleとは違うfrontal planeで起こるmovementです。Lower Ribs(T7-10)ではvertebraeとarticulateする場所での動きの軸がよりanterior⇔posteriorに近くなるので、dynamicなmovementはribのlateral sideに見られる、ということになります(上図右)。

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さて、最後はCaliper Action。
最後の2つのribs(T11 & 12)は、胸骨まで届かずに浮いたような状態になっている(故に、floating ribsと呼ばれている)と昨日書きましたが、この2つの肋骨は、ちょうどピンセットで物をつかむような動きをします。Transverse plane上で、両端を近づけたり離したりするような動きをイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。

※それぞれ、Ribの幾つ目でどの動きが、という書き方をしましたが、実は例えばRib2でもPump HandleとBucket Handle両方の動きが同時に起こっているんです。でも、Rib7と比べたときに、やはりPump Handleの動きのほうが如実に大きいし、逆にBucker Handleの割合は少なめ、ということが言えます。つまり、"region別に、こっちの動きのほうがpredominantな傾向にあるよ”という風に言える、という程度に覚えておいてください。別に、Rib6がPump Handle Actionのみで、Rib7になったとたんに全てがBucket Handleに切り替わる、みたいな、白か黒か、じゃないんです、解剖学って。

さて、まとめると、こんな感じになります。

Upper Ribs (T1-6)
- Pump Handle Action
- Saggital plane
- Increase the anterior diameter of the thoracic cage by elevating the sternum

Lower Ribs(T7-10)
- Bucket Handle Action
- Frontal Plane
- Increase the lateral diameter of the thoracic cage by elevating the ribs

Lowest Ribs(T11-12)
- Caliper Action
- Transverse Plane
- Increase the lateral diameter of the thoracic cage by separating each end of the ribs

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これが全て同時に起こると、いわゆるChest expansionになるんです。息を吸って、胸が膨らんだ状態のことです。胸骨は前に押し上げられ、肋骨は横に広がり、pleural cavityは膨張し、吸い込んだ新鮮な空気を収容する袋になります。ヒトって成人平均で一日に約17280回も無意識に呼吸をしてますけど、こんな複雑なことが毎回起こっているんですよ。すんごくないですか!

Ribが動くのは、呼吸時だけではありません。
胴体を動かせば、肋骨も当然一緒に動くことになります。
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例えば、Trunk Flexion。胸部が押し付けられる形になり、肋骨同士はapproximateします。
逆に、Trunk Extensionをしたときは、肋骨同士が離れ、胸部全体が伸びる格好に。
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Sidebendingをすれば、片側だけが押し付けられ、逆側が伸ばされますし、Rotationをすると…
更にRotation + Extensionのコンビネーション、Sideflexion + Rotationのコンビネーション…
考えていくとキリがありませんが、私たちが普段している行動の中に、どれだけ肋骨たちがcontributeしているかが見えてくると思います。なかなか頑張ってくれてると思いませんか?

私が持っている文献では、個々の肋骨のROMが具体的に何度、というところまでは記述されていなくて、現在学生でないためにDatabaseのアクセスも無くしてしまい、うぅむ、これ以上の研究とかが探せないんですよねぇ。もうちょっと時間に余裕ができたときにもっと突っ込んだところも調べてみたいのですが(肋骨の通常の動きを制限する原因とか、それによって起こるcompensationとか…)、今回はここまでにしておきます。今度機会があったら横隔膜についても掘り下げて勉強してみたいんですよね!結構昔から、呼吸ってAthletic Performanceに相当影響してるんじゃないかって思い始めたんですけど、横隔膜も肋骨みたいに、知らずに常に使っている部位のひとつでしょ。絶対に不具合も起こるし、というか実際腰痛の原因にもなったりするし、underactivateにだってなることもあると思うし、すんごい面白いもんが隠れていると思うんですよ。うぁー、まだまだ知らないことはいっぱいです。
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  by supersy | 2010-03-10 20:00 | Athletic Training | Comments(12)

Commented by Mr.Master at 2010-03-11 12:15 x
DolphinsでInternやった時にPTの人が言ってたんですけど横隔膜の下に肝臓が右側にはあるじゃないですか?あれのせいで横隔膜は形が左右違うためにそれのバランス取るためにほとんどの人が骨盤が右側が前方にRotateしてるっていうのを聞きました〜
Commented by さゆり at 2010-03-12 01:52 x
それは面白いstatementだけど、肝臓が具体的に右横隔膜にどういう影響を及ぼすの?length-tension relationshipかなとも思ったけど、肝臓だって急に現れたわけじゃないしそれに未だ横隔膜が対応できてないってのも不自然な気がする。調べてみたけど、横隔膜と肝臓の間に大腸が挟まったケース程度しかなくて、横隔膜⇔肝臓の関係を、更にはそれらがpelvisに与える影響をちゃんと書いてくれてる文献はひとつも見つからなかったよー。参考にしたソースって何?
Commented by hiro at 2010-03-12 11:10 x
ども。肝臓の方が重いから、全体をみた際に、重心の位置が偏りがちになるよね。後は、筋膜的にも肝臓がある分、右側と左側で横隔膜との付着は異なっています。横隔膜の脚(Crura of the Diaphragm)も左右で腰椎部の付着位が違うしね。
肝臓と骨盤、横隔膜の関係の文献は無いかも知れないけど、右の骨盤の方が前傾するっていうのは、文献でもデータが出てるよ。右利きとか、右回りでトラックを走るとか、色々理由は考えられると思うけど、構造的に、肝臓、または内臓の位置関係の左右差を考えるのが一番理にかなってると僕は思いまーす。
Commented by さゆり at 2010-03-12 12:30 x
hiroさん!お久しぶりです。
あぁ、ちょっと目から鱗です。ネッターとにらめっこしながら、もしやPsoasか?とか構造上のことばかり考えてましたが、単純に重さとは!肝臓は、調べてみたところ、正常成人の体重の約1/50の重さがあり、1.0 ~ 2.5kgのもあるのに比べて、左側にある脾臓は100~200g程度。すぐ隣の胃も空っぽだったら相当軽いでしょうし、満腹時には1.5~1.8リットルに膨らむらしいとは言え、3-4時間で腸へ抜けちゃいますからね。

それにしても肝臓を原因とする左右差くらい、横隔膜なら影響も受けない様進化してきてるんじゃないかとちょっと過信していましたが、adjustしきれない歪みみたいなのが意外なところに出るもんですね。ありがとうございました!
Commented by かや at 2010-03-12 13:23 x
肝臓は右サイドにあり,サイズも大きいので,横隔膜を上に押し上げた形になっていますよね。その関係で右の肺底は左よりも上方に位置しています。
それと,横隔膜と肝臓とは腹膜で連結されています。肝臓の上方の絵に「無漿膜野」というのがあると思いますが,あの境の部分で横隔膜表面の腹膜が肝臓表面へと移行しています。肝臓の位置をある程度固定するためには強い力としなやかさが必要なので,比較的強い筋の横隔膜がその役を担っているのでは(腹膜を使ってぶら下げておくという形で)・・・
なんか論点ずれたかなぁ ゴメン
Commented by けに at 2010-03-12 16:21 x
肝臓が右サイドにある事によって右横隔膜は呼吸に比較的優位な位置にありますよね。右横隔膜のcentral tendonは左より強い、Transverse Thoracisも右側がひとつ多い人が多い、などを考えると呼吸ってかなり左右比対称ですよね。胸郭、横隔膜、肝臓(内蔵)、骨盤の関係を見てる人達にPRIって人達がいますよ。(実際はもっと色々やってますけど。)PRI=Postural Restoration Institute。ヒロさんとも前に話しましたね。自分は結構お世話になってます。さゆりさんもはまりそう。チェックしてみると面白いかもしれないっす。
Commented by さゆり at 2010-03-12 22:36 x
>かやせんせい
心臓もですけど、横隔膜ってすごく頑張ってくれてますもんねぇ。あれだけ寝ても覚めても24/7で動いてくれていて、fatigueがこないんだから足や腕の筋肉達は到底叶わない頑張り具合です。

>けに
あ、それ昨日色々探してる時に見つけたよ!コンセプトとしては探してるものに一番近いかなと思った。
結局、肝臓/横隔膜⇔骨盤、という単純な関係性があると言うより、その他の色んなもんを介して結果的に骨盤に出ることがあるってだけで、あくまで肝臓/横隔膜もひとつの要素でしかないと思ったけどどうよ。だって結局、決定的scientific evidenceは見つからなかったしさ。
ところでバカなこと聞いていい?横隔膜って右のほうが有利なの?逆かと思ってた。right domeのほうが高いから、収縮の余地はあると思うけど、肝臓がgets in the wayしないの?ってか肝臓はどれだけ横隔膜の収縮に影響されるんだろ。一緒にup/downすんの?
Commented by かや at 2010-03-14 01:26 x
そこまでの左右差ってあるんだろうか?
右下には肝臓,中央やや右の上には心臓が付き,,見た目には部位左のない横隔膜ですが・・・
でも,腹腔内の臓器は多くが大きい可動性を持つので呼吸による影響は普段は少ないと思うんだよね。ただ,腹腔内圧が既に高い場合(内蔵脂肪が多いか,妊娠中など)では少しは影響あるかも・・・
ただ,普段の肝臓は下縁が肋骨弓あたりにあり,極度な肥大がなければ腹腔内への影響もそんなに大きくなく呼吸への影響も少ないのではないでしょうか?(個人的な意見ですが)
Commented by さゆり at 2010-03-17 07:12 x
根本的なところですが、私もそこは疑問ではあります。ネッターとにらめっこしている限りでは、そんなにattachmentでも差が無いように見えるのですが…。敢えて言うなら、右横隔膜にそれだけ重い肝臓をぶら下がっているということは、その重みが収縮時のassistant forceになるのかなぁと思ったところくらいですかね。そう考えれば右のほうがadvantageがあるという説も納得がいきます。UFの解剖学の教授に、聞いてみようかなぁ…。
Commented by tnukky at 2010-05-08 09:27 x
ブログで議論が起こるのって凄いよね。おれもPRIを取りました。けにーほど理解していないと思うけど、右の肺には3lobesあって左は二つだっていうのも差があるよね。
Commented by さゆり at 2010-05-08 21:52 x
賛同!もそうじゃないんじゃないか!も、建設的な議論である限り大歓迎です。というか、色んな意見が聞きたくてブログ書いてるというのもあるので…。ブログ通じて出来た知り合いも少なくないですし、感謝しております。
PRI色々Courseがあるみたいですね、どれ取られたんですか?心臓だってちょっと左寄りだし、右と左で大きさの違う腎臓も見たことありますし、、、生まれてくる前にお弁当箱に具を全て詰めるように神様もあれはこっちこれはこっちと工夫してくれてるんでしょうけど、成長過程で箱も中身も変化していっているわけですからね。
Commented at 2013-03-26 13:56 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。

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