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Patellar Lateral Instabilityの原因と、バレンタインデー。

以前にも書いたAnatomy of Movementという本ですけれども、
実はカンファレンスに発つ前にちょうど読み終わっていました。
なかなか面白い本でした!前にも書きましたが、Junior/Seniorくらいの学生にお勧めです!

中でも思わずなるほどと唸ってしまったのが、PatellaのLateral Instabilityの話。
Patellar Dislocation(膝蓋骨脱臼)っていう怪我が、スポーツではたまに見られるのですが、
これはどういうことかというと、膝のお皿が本来あるべき位置から逸脱して、
戻らなくなってしまっている状態のことを指します。
下の図(↓)でいうと、左上が分かりやすく図解されたもの。
左下が実際に怪我をしたときにはこんな風に見えます、という写真で(この人の左膝、
変なところがぼこっと出っ張っているのがそうです)、右がレントゲン写真です。
(白い矢印が指している、うっすら白い部分が膝蓋骨。明らかに飛び出ています)
b0112009_12471150.jpg
この怪我の良いところは、多くの場合は膝を頑張って伸展させれば自然にreduceされる、というところで、しかもほとんどの場合は手術を必要としません。リハビリは色々必要ですけれどね。
統計で言うと、5.8/100,000くらいの確率で起こる怪我だそうですが、
adolescent(思春期の子供)に限って言うと、29/100,000と途端に跳ね上がります。
スポーツをしたり、一番アクティブに動く時期だからでしょうか。

私も何回かdislocation(脱臼)やsubluxation(亜脱臼)を見たことがありますが、
膝蓋骨の脱臼のほとんどの場合がLateral(外側)と言われており、
私が見たケースも例外ではありませんでした。授業でもundergradのときに散々習いましたもの。
Patellaの脱臼はlateralがダントツで多いって。
当時は“何故?”と疑問に思うことも無く、そうなのかー、と納得してここまで来たんですが、
この本がその理由を詳しく解説してくれていたので、非常に納得してしまったのです。

Patellar Dislocationの2大原因と言われているのが、
 ●Direct Blow
 ●Twisting Force
Direct blowに関しては非常にstraight forwardだと思います。
何かが膝に、横からがーんとぶつかる、お皿がスコーンと動いてしまう、脱臼が起こる。
さて、じゃあ、Twistingというのはどういうことなんでしょ?

b0112009_1312211.jpg

これを解明するには、
ちょっと解剖学の知識が必要になります。

左の図をよく見て欲しいのですが、これは人間の下半身の骨格です。骨盤から出ている長い骨が、Femur(大腿骨)。人体の中でも一番長い骨です。これ、見てもらえると分かると思うのですが、地面に垂直に、というよりは、膝に向かって少し内側にナナメに走っていますよね?この角度が、実は非常に重要なんです。

ASISからMid-patellaに引いた直線と、Mid-patellaとTibial tubercleを通る線をそれぞれ引き、これら2つの線を結んで出来る角度のことを、Q-angleと呼びます。
この角度、男性は平均14°ほど、女性は約17°と言われています。女性のほうが骨盤が大きいので、自然と角度も大きくなるわけです。Genu valgum、英語で俗に言う“knock-knees”、日本語で言うところの“内股” の人なんかは、もっと角度が増えてキツくなるわけですね。



ということは、です。
大腿四頭筋から伸びているQuads tendon(大腿四頭筋腱)、ひいてはPatellar tendon
(膝蓋靭帯)を繋ぎ、守り、Biomechanical advantageを作る役目をしてる膝蓋骨は、
この角度によってどう影響されるのでしょうか?

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膝の曲げ伸ばしの動作をしている最中、Quads tendon/patella/patellar tendonのcomplex(↑)は、
pullyに収まるロープ(↓)のように、femoral condyleの間に挟まれて上下にスライドします。
b0112009_13312634.jpg
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Quadsの収縮時、Q-angleの影響で、ropeは自然にlateralに引っ張られる力がかかり、
それが大きければpullyから外れてしまう可能性も出てきます。
これが、dislocation/subluxの原因となる、“lateral force”なのです。

更に、ここにtibila rotationを加えてみるとどうでしょう?
b0112009_13341310.jpg
Tibial external rotationが起こると、更にTibial tuberosityがより外側に逸脱し、
横に動こうとするロープの力は更に強さを増します。
つまり、より脱臼の恐れが大きくなるということです。
膝蓋骨脱臼の原因にtwisting forceがあるというのはこういうことだったのです。

このinstabilityはactive extensionにmaximumになります。
full flexion時には逆にPatellaはFemurに対して押し付けられる感じになるので、
うまいことGrooveに収まって落ち着いちゃうんです。
Chondromalaciaとか、他の怪我は起きやすくなりますけどね。

Q-angleが増すと脱臼確率が増える、という統計もあり、
Q-angleが25°以上の人は特に、危険が一気に増すそうです。より外側に引っ張られる角度と
チカラが増えるのですから、まぁ当たり前と言えば当たり前でしょうか。
一般的に、Q-angleは女性>男性ですから、女性のほうが脱臼が多いというのも頷けます。

じゃあ、人間は構造的に、
膝蓋骨がlateral instabilityを起こしやすい、という理屈は分かりました。
それじゃあ、人体はどうしてそれを克服しようとしているのでしょう?
人間のカラダが生み出した、“instability対策”は、大まかにふたつあります。
b0112009_13531274.jpg●VMO
Vastus Medialis Obliqueの略で、
大腿四頭筋の中でも内側広筋斜頭と呼ばれる部分。
真っ直ぐ下に向かって走っていた筋肉が、膝の少し上からややナナメに角度を変え、膝蓋骨にattachする部分の筋肉を指します。平たく言えば太ももにチカラをいれ、Quadsを収縮させたときに、ぼこっと飛び出す筋肉でもあります。

この筋肉は、そのまま膝蓋骨に内側からナナメにくっついているため、この筋肉を収縮させることによって、膝蓋骨を内側に引き上げることが可能です。
つまり、この筋肉を、運動の間に正しくfireさせ、膝蓋骨をいるべき場所に留める能力があるかどうか、これがPatellar instabilityに多大な影響を与えることになるわけです。

●Lateral Femoral Condyleの構造そのもの
b0112009_14212273.jpg
図を見てもらえれば一目瞭然ですが、
Femoral condyleはmedialよりもlateralのほうが大きく盛り上がっています。
この“extra projection”を作ることによって、よりPatellaがそれを乗り越えにくいよう
配慮されているわけなんですね。いやー、自分で弱点を作ってそれをカバーしちゃうなんて、
これまた人体の不思議です。何度も言ってる気がしますが、本当に良く出来ています。
まぁこんなことを学んでまた色々感激していたわけなんですが。
とりあえずこの本も読み終えたので、次の本に近々進もうかと思っています。
次は何にしようかなー。皆さん、お勧めの本とかありますか?

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話が遡ったついでに。先日はバレンタインデーでしたねぇ。
日本では“女性が交際中もしくは好意を寄せている男性にチョコレートをあげる日”ですが、
アメリカでは男性から女性にプレゼントをあげるのが主流です。
日本のように不特定多数の人に“義理”をあげる習慣はなく、恋人のみ。
プレゼントは、チョコもメジャーですが、日本ほど王道ってわけではありません。
お花やカード、ぬいぐるみ、それから宝石やアクセサリーなど高価なものを贈る場合も。
また、家族内でもカードやプレゼントを贈りあって、感謝と愛を伝えることもあります。
うちの同僚なんかは、“母親がちょうど遊びに来ているから、
バレンタインにはネイルに連れてってあげようと思って”なんて言ってました。
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うちの相方はというと、“台所に来ちゃダメ!”と宣言して昼間からかしゃかしゃ音をたてていると思ったら、こんな立派なショートケーキを作ってくれました。レシピを色々調べて、初挑戦でやってくれたみたいです。上手くスポンジが膨らまなかった、と嘆いていましたが、いやいや、これ、上出来でしょ!お菓子作りは好きですけど、スポンジ造りは鬼門と思って避けてきた私。こんなに出来る自信ないです(苦笑)。それからテディベアならぬ、テディライオンさんももらいました。可愛い。

シーズンも終わって少し時間にも余裕がでてきそうなので、
私もようやくお返しができます。お菓子焼こうー。何か新しいものにも挑戦してみようかな。
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  by supersy | 2010-02-24 22:00 | Athletic Training | Comments(7)

Commented by jiden at 2010-02-26 17:06 x
お久しぶりで。Kinesiology of the Musculoskeletal System: Foundations for Rehabilitation と Skeletal Tissue Mechanicsがオススメ
Commented by さゆり at 2010-02-28 12:32 x
どんな本なん?解説ちょっとして。
Commented by Jiden at 2010-03-06 15:44 x
Skeletal Tissue MechanicsはClinician向けとゆーよりはResearcher向けな感じなんで、Skeletal Tissue Mechanicsはおもんない人には、おもろあらん内容。主にthe skeletal system のbiological&mechanical propertiesについて書かれています。Pathomechanics of boney and ligamentous injuryを理解するための基礎となる本ですかね(基礎科学的な要素が強いからから、退屈な本と感じる人もいるかもしれませんがmusculoskeletal injuryを理解するには、それぞれのbiological&mechanical properties理解しとかなあかんし,Biomechanicsをほんまに理解するにはをPhysics 理解しとかなあかんし、Exercise physiologyを理解するには、chemistry を理解しとかなあかんから、読んで時間の無駄になることはあらんはずです。)
Commented by Jiden at 2010-03-06 16:07 x
Kinesiology of the Musculoskeletal System: Foundations for Rehabilitationの 内容は深すぎず浅すぎずで、基本的なコンセプト(textbook knowledge)とclinical and practical applicationの橋渡しをしている本です。今まで出会ったKinsiology関連の書籍で、一番わかりやすく読みやすかったです。
Commented by さゆり at 2010-03-08 21:25 x
なるほど。ありがとう。どっちかというと私はsoft tissueが動きの中でどう影響してくるかが今興味があるところだけど、Kinesio~のほうは絵がいっぱいでもっと満遍なく色々カバーしている感じだね。Skeletal~はcurrent literatureのsummaryとして良さそうです。Amazonでreviewとかも見てみたけど、どっちも五つ星だったよー。ちょっと色々探してみます。
Commented by 鮭介 at 2017-01-09 21:01 x
こんばんは。昨年末から膝が痛いので検索をしていたら素敵なblogに行き着きリーダーに登録し拝読させていただいております。「天命を知る」べき年代になったのに、却って自由度が高まってアメフト部のOB練習に参加したのが久しぶりの痛みの始まりです。毎日通勤で10km弱歩いたり、土日はゴルフ場で歩いたりしているので、自信がありましたが、人工芝をスパイクでアッチコッチ走り、止まる繰り返しは相当な負荷だってことを知らされました。貴女に教えれれることは、私が選手時代やコーチ時代に求めていた事です。エビデンスに従った歯切れ良い解説は納得感が高いです。こんなメディカルコーチが身近にいるメンバーは羨ましいです。
Commented by さゆり at 2017-01-15 15:01 x
鮭介様、コメントありがとうございます。7年も前のブログ記事で文献の引用もままならず、とてもエビデンスと言えるようなものではありません。内容もかなり古くなってしまい、今はもう私は人体をこういう観点からは見なくなりました。お恥ずかしいですが、当時の学びの記録として古い記事もそのままとってありますので、そこらへんはぜひ半信半疑でお楽しみください。それから、日本でATにあたる職種は様々な名前がつくようですが、アメリカではメディカルコーチではなくて、我々のような職業を「アスレティックトレーナー」と呼びます。長ったらしくて申し訳ありませんが、私が大事にしている素敵な職業の名前なので、心にとめていただけたら幸いです。

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