Swimming Facts - 誰も教えてくれない、水泳のあれこれ。

水泳のチームで働く、という経験は初めてで、
とにかく他のスポーツとは勝手が違う、ということが沢山でした。
戸惑うことも多かったですが、へぇぇ、こんなこともあるんだ!と学んだことも沢山でしたので、
ちょっとここで皆さんとシェアできればと思います。

b0112009_10252113.jpg●Ugg Boots
水泳の大会や練習中、選手はもちろん水着を着ているわけですが。
それじゃあ彼らの足元はどうなってるの?というと、
まぁ皆さんの想像通り大方ビーチサンダルを履いています。
しかし、それじゃあちょっと肌寒い気候の時はどうするのでしょう。
なんと、びっくり。もこもこブーツを履く人の多いこと多いこと。
水着にブーツ。何というか、斬新なスタイルですが、
水泳界では結構アタリマエみたいです。
こんな格好でプールデッキをうろちょろしてる選手たち(→)。
うーん、い、いけてる、のかなぁ…。

●重ね着。
あとびっくりしたのが、水着を重ね着する選手もまた多いこと多いこと!
カンファレンスのウォームアップ中によく目にした光景ですが、
最近流行の競技用の水着は非常にぴったりとしてタイトなものが多いため、
体のラインがはっきり出ることを気にする選手や、
非常に破けやすいために念のため、と、
競技用水着の上から普段練習時に使っている水着を着用している選手を多く見かけました。
大会時だけでなく、普段の練習の時にも、
少し古くなって生地が薄くなったものや穴の開いた水着を下に着て、
上からまた別の水着を着ていたりすることも珍しくありませんでした。
週に10時間以上泳ぐ水泳選手にとって水着は消耗品。
少し古くなってきたくらいでは買い換えてもいられないのでしょう。
苦肉の策なのか、ファッションと呼ぶべきかは、見る方にお任せします。。。
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●耳に水が…
練習後に選手とトリートメントをしながら談笑していたりすると、
今まで普通に会話をしていた選手が、
突然気が触れたかのように頭をぐわんぐわん振り始めることがよくあります。
最初はびっくりして、“どどど、どうしたのっ!!”と本気で心配しましたが、
“あ、ごめん、耳に水が入って”と、選手はあっけらかんとしたもの。
そんなわけで、選手が突然痙攣を始めたかのように見えても大丈夫ですので、
落ち着いて振る舞いましょう(笑)。最後のほうはようやく慣れました。

●Foggy Pool
換気のために、寒い日も暑い日もプールのドアを開けた状態で練習をしています。
プールの水は温水なので、その中で練習している選手たちの体温はすぐに上がってしまい、
熱がこもるため、外の空気を入れないと息苦しくなってしまうんだそうです。
で、気温がものすごく寒くて連日氷点下を記録している時期があったのですが、
練習中、プールは選手がバシャバシャやって水しぶきが上がり、湯気が立つのと、
外の空気が寒くて冷えるのとで、プールの中が水蒸気でいっぱいになり、
まるで濃霧の中で練習しているかのようになってしまうことが度々。
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まさに、一寸先も見えません。
こんな中で、選手に“Sy---!! ちょっと来てー!!”と呼ばれても、
“あいよーー!! どこじゃーーー!!”と霧の中で叫ばなければいけなかったり、色々でした(笑)。

●Swimming Styles
英語で、それぞれの泳ぎのことを、
  平泳ぎ = Breaststroke
  自由形 = Freestyle
  バタフライ = Butterfly (略してfly)
  背泳ぎ = Backstroke
と言い、多くの選手が自分の特化した泳ぎを持っています。
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更に水泳の世界にも、陸上と同じように、
長距離担当、短距離担当という違ったタイプの選手たちがいます。
例えばフットボールやバスケットボール等で、選手のポジションを知らずに治療をすることはできないのと同様、水泳でも、選手を知る上で、彼らの専門が何か知ることは非常に大事。“What do you swim?”と尋ねて、“I'm a sprinter (短距離選手です)” “I'm a freestyler(自由形やってます)”という情報をちゃんと聞き出すことが必要不可欠なのです。競技によって、それに必要なROM、筋持久力、負担のかかる体の部位が、かなり変わってくるからです。例えば背泳ぎは他のどの泳ぎよりも肩のROMを必要としますし、平泳ぎは膝に非常に負担がかかるため、膝の怪我をdevelopする子も珍しくありません。それぞれの泳ぎのfunctionはどういったものなのか、このシーズン、嫌ってほど考えたものでした。例えば、背泳ぎのスタートひとつにしたって、選手はこれだけ背中をアーチしてるんですよ。腰痛持ちの子にはキツイ体勢です。言われないと、ちょっと思いつきませんよね。

●Fins, Boards, Hand Paddles, etc...
水泳の選手はひとりひとり、練習用のequipmentを入れたback packを持っていて、
練習時には必ず携帯し、コーチの指示に従って、様々なものを使いながら練習していきます。
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そのカバンの中はというと、こんなものが大概入っています。
左上は、Fin。抵抗が増える分、足にかかる負担も増えます。
右上は、hand paddleと呼ばれる用具。
手に装着するfinのようなもので、同様に上半身にかかる負担が増加します。
左下は皆さんもご存知の通りビート版。英語ではkick board。
手を使わずに足のテクニックを重視して練習する際に用います。
右下は、その逆。Pull buoyという器具で、両足の間に挟み、
上半身の強化やテクニック向上のために使われます。
下の真ん中にあるのは、Swimming Cordと呼ばれるもの。
これを選手の体に巻きつけて、もう一方のendをプールサイドに立つコーチが持ち、
resistanceをかけて進めないようにし、選手がぬおぉぉぉーと泳ぐという、
加速力をつけるためのトレーニングに使われます。

こういった器具の用途や効果を知っておけば、例えば肩の怪我をした選手に、
“肩の負担を少なくするために、pullingは今日はしないでおこう。Paddleも無しね”とか、
足の怪我をした選手に、“kickingは抑え目にして、上半身中心で行こう。Finはやめとこうね”
とか、具体的な指示が出せるようになり、
より理想的な、選手ひとりひとりに合った練習内容のコントロールができるようになります。
こういうことができるようになったのはシーズンも半ばに入った頃でしたけど…。
それぞれのスポーツって、練習に特別な器具を使うことが多いですけれど、
水泳も例外ではないってことですね。いやいや、難しいけど、面白い!

●Warm down
普通、練習前にする軽い運動のことをウォームアップ、
練習後にするのをクールダウン、といいますが、
水泳というスポーツにおいては、クールではなく、ウォームダウン、と言います。
ちょっとしたTerminologyの違いですが、うぅむ、なんでウォームなんでしょ?
面白いです。

●Pink Eye
Conjunctivitisの英語での俗称です。日本語では流行性結膜炎、と言うみたいですね。
写真の通り、文字通り目がピンク色になってしまいます。
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原因はアレルギー性であることも、そしてバクテリア感染だったりもしますが、
その多くがウィルス性のもので、非常に感染力が高く、こっちでは忌み嫌われています。
水泳も例外ではありません。同じプールにPink eyeの人が一人いようものなら、
チーム全体に広がる危険性もあります。
目が赤くなってきた選手はとにかくすぐにStudent Health(大学の生徒専門医療機関)送り。
Pink eyeと診断されたら、症状が改善されるまで一切水泳は禁止せざるを得ません。
他のスポーツだったらここまで大事にならないのですが、これも水泳ならではですね。

●テーピング
私たちがテーピングに使うテープは、その多くが水に濡れると粘着性が落ちるため、
選手にテーピングを施すときは、どのテープを使うのか慎重に選ばなければなりません。
どのテープがいいよ、なんて教えてくれる人は誰もいなかったので、
色々試してみて、失敗を繰り返しつつ分かったのは、
Adhesive(粘着性)テープは前述の理由で実用性に欠けるので、
Cohesive(結合性?)テープを使うのが一番良さそうだ、ということです。
Adhesiveは、いわゆる、肌にくっつくタイプの、ホワイトテープ、と呼ばれるような種類ですが、
Cohesiveは肌にはくっつかず、テープ同士でしかくっつかない、という特性があります。
恐らくはテープの繊維同士がしっかり絡み合うため、水に濡れても影響が少ないのでしょう。
このシーズンではだいぶお世話になりました。
追記すると、例えばキネシオテープ等を使用したい場合は、b0112009_11262186.jpg
Benzoin Tincture(→)などを予め部位にapplyしておき、
十分な粘着性を出す必要があります。
切り傷にバンドエイドを張るにも同様の手はずを踏み、
防水のものを選んだり、Liquid Bandageを使ったり、
ちょっとばかし、余計な工夫が必要なのです。

●足首の捻挫
うちの水泳のチームはDryland(プールでなく地上での練習のこと、走ったり、
跳んだり、バンド使って肩を鍛えたり、色々です。)も結構がっつりするので、
Lower extremityの怪我もちょこちょこ出ました。
中でも、ひとり、派手に足首を捻挫してしまった子がいたのですが、
私、当初は結構楽観的に見ていたんです。“水泳だからweight-bearingではないし、バスケットボールのようなcuttingやpivottingの無いスポーツだから、比較的早く復帰できるだろう”と。
実際、捻挫の翌日から、足首を固定してでしたけれど泳げてましたしね。
しかーし、これが甘かった。とんでもなく甘かった。
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水泳のkickingって、私は勝手に左(↑)のような、dorsiflexionとplantar flexionの繰り返し、みたいなパタパタした動きを想像していたんですけど、実際はかなり違うんです。どちらかというと、右のように足首をfully plantar flexさせ、その状態で足首を固定しながら腿から足全体を使って蹴る、という表現のほうが近いんです。つまり、stability/strength at the extreme range of motion (at full PF in this case)が求められるというわけなんです。それだけではありません。バスケットやサッカーなどでは、患側の足が地面に着いている間だけを心配していればいいわけですけれど、水泳は、水によって抵抗を受けるため、足首に常に外的チカラがかかっている状態になります。それに対抗できる、どの方向にもオールランドな筋持久力も必要。この厳しい現実に気がついたのは、捻挫から3週間して彼女の症状の改善がピタッと止まってしまってからでした。リハビリの序盤は経過が良好で、松葉杖の状態から普通に歩けるまで一気に回復が見られたのに、3週間経過した辺りからなんか、stuckしてしまった感じというか、回復が泳ぎに全く反映されない。足首のリハビリなんて今まで何度もやってきているから、と、深く考えず自分なりに作ってきたプロトコルに沿ってやってきていましたが、水泳という動作を改めてよく考えてみて、自分の計算ミスと甘さに気がついて愕然としました。思い出しても悔しい。まだまだ駄目です、調子に乗ってはいかんです。そのスポーツの動きをよく考えて、それにあった治療とリハビリを実践していかなきゃいけない。普段から自分に言い聞かせているつもりだったのに、足首の捻挫、というありふれた怪我なことから完全に油断していました。深く深く反省。お恥ずかしいばかりです。


そんなわけで、本当に、やってみなきゃわからないとはよく言ったもので、
水泳ならでは、ということを沢山学べたこのシーズンでした。
苦い経験も含めて、確実に私を成長させる要素になってくれたと思います。
そろそろ私も、これから専門にやっていくスポーツを絞ったほうがいい時期なのかも、
とも思うのですが、それでも新しいスポーツに出会うたびに学べることがいっぱいあるので、
何でも新しいことにチャレンジしていきたいなぁという思いもあります。
日々成長の毎日です。一生勉強!
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  by supersy | 2010-02-23 20:30 | Athletic Training | Comments(4)

Commented by Mr.Master at 2010-02-24 13:43 x
コードを使う奴で逆に選手の進行方向にコーチが立って思いっきり引っ張ってるのもありましたよ。何でもその早いスピードにならせるとかなんとか。
Commented by さゆり at 2010-02-25 20:54 x
そうだねぇ、陸上とかでもやるよね。体が経験したことないスピードで走らせて、このスピードで走るとこんな感じですよーっていう感覚を身体に感じさせ覚えさせるのがいいんだなんて聞きました。less weight/resistanceは基本neuromuscularだもんね。
Commented by hoop at 2011-03-12 14:33 x
めちゃめちゃ役に立ちました。ありがとーございます。しろーとスイマーですが、足の甲がずーっとイタい理由がわかりました。
Commented by さゆり at 2011-03-17 05:12 x
こんなしがないブログでもお役に立てて頂ければ幸いです。コメントありがとうございます!

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